「オカルト」という言葉は「隠された」あるいは「閉鎖した」を意味し、知る者の少ない奇妙な広範な訓練を包括する。古いかもしれないが、心霊の謎は未だ不明瞭であり、秘奥なる騎士団によって守られているか知識の深遠なる宝庫の内に施錠されている。
心霊の冒険に於いて、キャラクターは当惑させるような出来事と超常現象との裏にある意味を求める事で手がかりを明らかにしていく。その調子は通常不気味であり、キャラクターが心霊的な謎の不吉な撚り糸を解きほぐすにつれ秘密と不明瞭な脅威を帯びてくる。一般人が出来事の裏にある規則性を認識する事は稀だ; 精神や肉体や霊魂への危険を恐れぬ真なる実践者のみが、見えざる危機から世界を守ろうと心霊の深みを敢えて測る。
魔法が一般的なゲームに心霊という主題を導入するには、入念な熟考が要求される。心霊の考え方は玉葱の層に似ている。そうした層を1枚づつ剥いていく事で、PCはこの並行世界を統べる奇妙な法則にまず当惑し、それから精通していく。しかしひと度PCたちにとって心霊の現実が快適になってきたなら、彼らはより深い、より暗い層を発見する。
心霊の冒険において、判じ物の新たな断片それぞれはそれが答えるものより多くの問いを明かし、そして物語と筋書きの謎はマトリョーシカ人形のように多層に亘って丁寧に入れ子になっている。そのようなゲームにおいて、霊障は自身の霊的な汚染の原因を躊躇わず開示し、儀式的な印の付いた死体は雰囲気を醸し出す窓の飾り付けなどより遥かに明かす。冒険者たちが調査する場所そのものが、神秘的なレイ・ラインによって同様に心ざわめかす歴史を持つ他の場所と本質的に結び付いているのかもしれない。
心霊キャンペーン内のキャラクターが関係なさそうに見える出来事と結び付いている隠された紐を発見し始めると、その者は以下の要素を含む、奇妙で深遠なる心霊の物語と関わり始める。
標準的な冒険は、問題と障害物をモンスターと罠、そして解決法という形で提示する。比較して、心霊の冒険はより巧妙だ。冒険者にとっての成功の鍵は時に未知と不可解を調査する事か、手掛かりの痕跡からその源を追求する事にある。奇妙な現象、不可思議な殺人、そして不気味な出来事は心霊的な冒険において一般的な契機であり、キャラクターは真実を見つける為に何層も剥いていかなければならない。
これは心霊的な冒険には英雄的な戦い、ダンジョンの探索、あるいは大立ち回りを含められないと言っているわけではない。キャンペーンの調子と速度を時と共に変えていくのは良い考えであり、凶兆に思えたものが心霊的な冒険において独自の価値を持つ囮だと明らかになる事もあるかもしれない。
君の物語における心霊要素は、完全に異なる主題と共にキャンペーン内に現れては消えるかもしれないし、最初はお互いとほぼ関係がなかった――あるいはそのように見える――脇道としての冒険毎に繰り返すかもしれない。キャンペーンの物語内でPCたちが進歩するにつれ、彼らの冒険全ての基礎となっていた規則性が明瞭に判別できてくる。例えば、幾つかの冒険を通して発見した暴かれた墓全ては、ある黙示録を予言している書物を複製していた写本師集団の安息の地であったとPCたちは理解するかもしれない。心霊的な物語を再提示すべき時、GMに必要なのは初期の冒険と結び付いた新たな手掛かりを示してこの心霊的な世界に再びキャラクターを引き込む事だけだ。
段階的な謎:謎めいた冒険は描写がやり辛いかもしれない、手掛かりが余りに明瞭な時あるいは余りに不明瞭な時を常に見通すのはGMには不可能であるし、そのどちらの時でもプレイヤーは不満を覚えるからだ。心霊を時々に細切れにしてキャンペーンに齎せば、GMもプレイヤーもキャンペーンの開始時に謎の正体について知らなくてさえ、密かに蠢く不可視の諸力の幻像が創造される。キャンペーンが進みピースが嵌まるつれ、謎はその姿を晒していき輪郭を明らかにしていく。
実践者にのみ分かる手掛かり:ゲーム・マスターは時に、ゲーム内の重要な情報を隠す事で、運命的な時期を得た開示の為に謎を温存しようとする。そして余りに多くの場合、狡猾なPCが早期にその情報を得る手段を見つけ出し、GMが入念に練った冒険を妨害し、数少ない選りすぐりの手掛かりに過度に依存してその冒険の勢いを駄目にしてしまう。そうした情報隠匿は時に計略を保持しPCたちを導くのに必要不可欠であるが、心霊ゲームは情報をより躊躇なくより頻繁に、しかし些細で異なる方法で施す。心霊の謎における最も重大な手掛かりは手掛かりとして認識する事すら難しいかもしれないため、こうした手法は将来の計画を推進する情報の鍵の断片をより容易に覆い隠すだけでなく、より謎めいた雰囲気を作り出しもする。
陽動は陽動にあらず:陽動は毎回手詰まりになるべきではない。そうではなく、陽動とはPC用の冒険を更に配置できるようにし、不可思議で不気味な動機によって駆り立てられた奇妙な出来事が自分たちの周囲の世界の中に隠れているという不安な感覚を彼らに持たせ続けさせるようにできるものだ。例えば、PCは殺人デーモン教団を追っている間、不運にも異常な入会の儀式を行う秘密結社に出くわす。この誘導は本来の調査において袋小路となるかもしれないが、もしかしたらこの集団の一見無害な入団方法には実際には危険な死霊術が含まれていると気付くかもしれない。
PCによる介入の確立:時にPCをキャンペーンに巻き込む最良の方法は何が欲しいかを聞く事である場合もある。心霊キャンペーンの開始時に、プレイヤーそれぞれに自分のキャラクター用の個人的な謎、十代に異常な現象を目撃したとか説明不可能な出来事を経験したとか、を提示するよう頼むこと。例えば、あるPCは血のように赤いローブを纏い不穏な動物の仮面を付けた男たちの来訪によって、幼少期の一瞬が鮮明に閃くかもしれない。この記憶の意味を暴く為のそのキャラクターの捜査は彼女を暗い道へと導くかもしれない、特に近隣の都市でそうした1着のローブのボロボロの残骸を着た辻説法師を目撃し、そしてその辻説法師から、そのPCは子供の頃ある黙示録の教団の志願者だったと判明した時には。他の契機には友人あるいは親類の未知なる命運、あるいは都市の記念碑の型破りな設計の意義が含まれているかもしれない。それは夢に繰り返し出るあるいは幽霊の出没する、雑草の生い茂る邸宅の庭といった特定の場所を中核に置くものかもしれない。サイコメトリー使いの手中で痛々しく脈動する、肖像画の嵌められた首飾りや、毎日新しい捻れた言葉が鏡文字で記述されていく古書といった謎めいた物品と関わらなければならないかもしれない。
一部の契機はキャンペーンにおいて重要な役割を果たすが、そうでないものは些細な逸話であると明らかになる。にも拘わらず、キャラクターの好奇心、需要、あるいは切望に基づいた冒険の契機は物語内でのプレイヤーの投資を構築する貴重な道具である。
心霊的なゲームを運営する時、情報を売買するNPCの一部を、霊、ダイモン、この世のものならぬ実体、そして沼の畔にあるガタのきた木製の小屋で霊と交信する心霊をたづきとする定命の者といった存在に取り替えること。心霊的な冒険は定命の者の精神の理解の範囲を超えた不明瞭で秘されている知識の探求を強調する。そうした情報は、霊と、踏み均された道を彷徨う事が稀な迷える魂の領分である。
一部の建造物はその構築の内に謎めいた印を隠しているかもしれないし、心霊的な力を惹き付けるようにあるいはそれと交信するように設計されているかもしれない。例えば、ある強力なソーサラーの石塚を動かした冒険者はすぐにその建造物そのものの心霊的な性質が彼の霊魂を抑制していたと知るなど。そして、勿論、GMはそうした規則性を垣間見せる相互接続された陰謀の蜘蛛の糸を設計し、PCたちに対して解けた現実の織り糸を引いて自分たちが知っているもの全てを解明し、その下にある恐ろしき秘密を暴けと迫るべきだろう。
心霊的な伝承と実践に浸かったキャンペーンにおいて、霊とデーモンは主要な目的与えであるか、あるいは一般的な仲間、引き立て役、もしくは敵役であるかもしれず、そして彼らの企みはPCを意図した方向へと引き寄せる。彼らは全く徳に篤いように見えるかもしれないし、あるいは全く非難すべき存在に見えるかもしれないが全員が何かを欲しており、それを達成する為の駒としてPCを使うつもりでいる。非協力的なエンジェルがそのキャラクターに渋々情報を与えるかもしれず、何かを望むデヴィルはより現れやすいかもしれない。
知識の探求は心霊的な冒険において目玉の要素だ。しかし知識と力が高くつくのは避けられない、その価格が即座には明らかにならないとしてさえ。災厄は、定命の者たちが盲滅法に押し寄せてまだ理解していない力へ通ずる扉を開け放つ時に訪れる。
キャラクターが自身を取り巻く心霊的な世界を知覚し始めたなら、彼らが心霊へと更に浸かるに従って直面するであろう、恐ろしい命運と酷い犠牲を考えてみること。知識あるいは力の代償は、最初は安っぽく見えるかもしれない――PCの初めての接吻の、あるいは春の雨の記憶など――が、最終的にはそうした人間性の断片は支払うべき恐るべき対価となり、そのキャラクター独自の願いあるいは切望が無為に帰すと判明するかもしれない。
心霊の下層世界の深みでは、実践者はデーモンの皇子の真名を得ようと人工的な生命創造の為の希少な処方を差し出し、恐るべき秘密を隠す死体の中で故買屋をする。そうした神秘的な取引が力の公平な取引である事は僅少であり、隠秘の騎士団と信徒はそうした交換を操作して手放した知識の価値を下げ、得た知識の価値を上げる。
心霊的な住人の振る舞いは時に異常な規則性を帯びるに至る。上記で論じた通り、これらの規則性は構築物として発現する事もあるが、象徴的な規則性を以て発見される複数の死体といった心霊的な探索者にとって重要である不可思議な偶然の一致として示される事もある。心霊的なクリーチャーそのものが奇抜な性質の存在であり、PCは彼らの振る舞いの周期性を利用する事で彼らを暴露あるいは彼らと対決でき、もしかしたら最終的に結実すべき何らかの悪魔的な計画の為に生じなければならない天上の属性を発見するかもしれない。
これらの怪異なる法則と奇妙なる規則性の知識は時に敵対者を打倒する為の鍵である事がある。典型的な謎めいた冒険において、GMはあるモンスターの終焉を引き起こす手段という秘密を抱えておくかもしれない。しかし心霊的な知識は調査するプレイヤー・キャラクターに敵についてより知る為の異常な機会を与えるかもしれない。もしかしたら占術あるいは骨相学的な読みはキャラクターが示す複数の弱点を明らかにするかもしれないが、その全てが真実という訳ではなく、一部は対立者を強化さえするかもしれない。究極的には、知る唯一の術は敵対者と直接対峙する事のみであるが、試みるべき得た知識はPCが当初考えていたものより危険であるかもしれない。
死が最後で未知である時、生物にとってそれは恐ろしいと同時に神秘的だ。しかし霊との意思疎通に慣れているキャラクターは、死は終わりではない事を知っている。実のところ、心霊に長けたキャラクターは肉体を持たないそこに暮らす霊を探求、対話、そして交流しにエーテル界へと望んで放浪するかもしれない。こうしたゲームにおいて、キャラクターは通常、自分たちを待ち受けている命運と自らの生前の行動に対する最後の報酬――あるいは罰――について、極めて良い考えを持っている。
キャラクターが肉体から離れ、夢を旅し、アストラル界へ自身の形状を投射する心霊的な冒険において、物理的な肉体の死は重要性が低くなりがちだ。そのため、キャラクターに死んだ方がマシな命運を提示すること。これは、永遠の隷属かつ魂への拷問や、次第に念術クリーチャーを無情と錯乱へと追いやる衰弱させる狂気といった、苦痛に満ちた「生きたままの」死と等価であるかも知れない。ファンタジー・ロールプレイング・ゲームにおける死は概してあるキャラクターの物語の終わりであるか蘇生の前のちょっとした不快であるため、心霊的なキャラクターの持つ精神世界の知識を使って死からの逃避――但し肉体、精神、あるいは霊魂に莫大な代償が要る――を与えるやり方を探すこと。
舞台の設定は心霊的な冒険において重要であり、それは超常の存在の内にある緊張、戦慄、そして不可思議のある不気味な空気の創造にかかっている。GMは小道具と大道具を使い、冒険の感情的な領界にプレイヤーたちを引き込むように彼ら周辺の物理的な空気を創造してよい。ちらつく蝋燭に照らされた部屋は、暗い降霊室あるいは心霊的な儀式を示唆し、音と声の書庫を用意しておけば設定とキャラクターに息吹を吹き込める。キャラクターが心霊の実践者あるいはサイキックである場合、もしくは占い師あるいはミーディアムに意見を求める場合、占い札、水晶球、お守り、文字盤といったアイテムをそうした降霊における小道具として使う事を考えること。キャンペーンを通して一度か二度プレイヤーに鳥肌を立たせるよう挑戦してみること。
以下のキャンペーンの主題では異なる方法で心霊的な冒険の要素を組み合わせており、GMがキャンペーン世界にある心霊の門を開ける助けとなる梱包となる事を意図している。
見えざる領界と怪異なる法則と奇妙なる規則性の要素は日々の生活という薄板の下を操る心霊の犯罪社会を導入する。心霊的な犯罪社会の一員は、社会の夫々の階層を占めている一般市民の仮面を被っている。この主題を使用する冒険において、キャラクターが暗い神秘を調査するにつれ偏執と戦慄の空気が現れてくる。誰も安全ではない。誰も信用できない。
しかし全ての秘密結社が闇の計画を有しているというわけではなく、実際のところ一部の秘密の騎士団は悪の教団の陰謀に対立する為に存在している。時が経てば、心霊的な冒険におけるキャラクターはそうした騎士団に参加するかもしれないし、その一行自体が心霊の犯罪社会の中で独自の派閥であると認識されてくるかもしれない。
敵対者の目標が近付けば緊張と緊迫感が高まり、キャラクターの動機付けを助けられる。キャラクターが悪人の動き夫々を予期できてさえ、君はキャンペーンの表層よりも下で蠢いている闇の計画という感覚を、キャラクターと対立している秘密の派閥のささやかで無関係な勝利の一覧を作成する事で高められる。恐らくある教団による都市の門をヘルへのポータルへと変成する行動を阻止するのにキャラクターたちが苦労している間に、別の場所ではその教団の末端が教団の指導者の中心となる計画の別の一部の第一歩として強力なデヴィルを招来するのだ。
キャラクターたちに伸し掛かる至る所にある心霊の犯罪社会の主題を印象付ける別の方法は、彼らの急所を突く事だ。キャラクターたちの1人と親しい重要なNPCを選び、キャラクターたちと対立している秘密結社あるいは教団の団員の1人にすること。NPCが現れる場面を考え、そうした情景の内で、そのNPCが属する秘密結社あるいは教団の計画を推進する、そのキャラクター用の秘められた動機を創造すること。上手く制御すれば、そのキャラクターの動機はPCにとって後知恵で明瞭に見えるだろう、恰も最初から君が裏切りを計画していたかのように。
謎の内側の謎、知識の力と価値、そして死んだ方がマシな命運は、組み合わせて、生者と死者の世界の狭間での権勢の為の足掻きを強調する、力強い、他を上書きするようなキャンペーンの主題を創造できる。 世界間の帳は擦れて薄い状態だ。霊障、ゴースト、そして彷徨える霊魂はいたるところにいるが、彼らは真の敵対者ではない; そうしたキャンペーンにおいて、本物の悪役は時に冥府の領界の有益な闇市の為の霊魂の収穫に特化した手下の軍勢を伴っている強力な来訪者たちである場合がある。安息を求める霊魂は良く発生し、PCはその魂が生前果たせなかった未練を果たすか、その霊魂を武力で永久的に休ませるかする事で、その死者を何とかして先へ進ませる助けとなる手段の発見を課される。そうしたゲームでは利害関係は強固であり、死が終わりである事は決してない。
知識の力と価値と見えざる領界の要素を探求するGMは、最終的に物質界と並行している現実の存在を明らかにするだろう。外なる遠い土地へと旅をするのではなく、君の心霊的な冒険は思考、夢、霊、そして魂の、内なる奇妙な領界に注力される。
この主題に沿った冒険を計画する際、キャラクターたちが目前にある現実をより深い水準で把握できるやり方について考えること。例えば、彼らが謎を調査するにつれ、君は時に手掛かりを発見できるよう彼らに中継次元界、そして外方次元界さえも探検する手段を提供したくなって良い。
心象風景は概して謎めいた超自然的な環境であり、そこでキャラクターはその中を進み、統べる精神を騙しあるいは満足させ、その防備に打ち勝ち、扉を解錠し、その奥深くに埋もれた秘密を知る事で自らの任務を達成する。
GMはキャラクターが自分たちを非物質的な領界へと投射する場面を調整する準備をすべきである。この主題に沿った冒険では、キャラクターは狂ったあるいは憑依された犠牲者の捻れた心象風景に入る事になるかもしれないし、知識を奪う為あるいは潜在意識に示唆を植え付ける為に敵の心象風景に入る事になるかもしれない。
謎の内側の謎と見えざる領界の要素は、日常的な世界が不気味な現象に対しどのように反応するかを示す事で心霊が想起させる、この世のものならぬ畏怖という感情を強調する。心霊的な冒険において、一般市民は自分ではほぼ手に負えない未知なる状況を恐れる傾向がある。噂と迷信は困惑を悪化させるだけで、怯えた群衆は、儚いものであってさえ安全を再び確保する為に異端審問や魔女狩りを含む極端な手段にすぐに頼るかもしれない。社会の癲狂の結果として、心霊はキャラクターたちにとって禁断の御業にして守るべき秘密になっているかもしれない。冒険は他の心霊の実践者を探して彼らと信号で、小物で、あるいは専門的な隠語で意思疎通する事を含むかもしれないが、冒険者たちは自分たちを忌み嫌う世界の為に、果敢に影の戦争を戦う。
この主題の別のやり方として、心霊の御業に長けた人々あるいは実体に対して群衆が崇拝に満ちた熱狂を向けて、彼らに未来の知識について相談するか彼らの念術の才能を用いることで一般人では普通見る事も知る事も出来ない物事を素早く学ぶかもしれない。その反対に、心霊的な力を有する歪んだ個人が、暗黒の御業に尽くす意思のある従僕と奴隷を魅了しており、邪悪な教団の高位の者たちが、統率力のある教団の指導者に心酔している危険で不徳な捕食者と協調していることもある。
PCたちを完全に心霊的なキャンペーンに没入させきりたいと望むGMは、殆どのあるいは全ての心霊的な要素を合体させて重複する複数の主題を調合させる事で、自分のキャンペーンをより暗い領界へと進めたがるだろう。ゲームの機構を変更する事なしに、秘術と信仰のクラスは、「キャラクターは定命の者の理解できる限界を超えた力を敢えて使う特別な存在であるゲーム」を共有する。超常的な力を持つNPCは稀であるか、世界の大部分から自身を隠しているべきである。権威を持つ大きな教会が存在して、驚く程の経済的そして政治的な権力を行使するかもしれないが、奇跡を起こす人は僅少であり、並外れた信仰を持つ人でさえ教会の教義と共に恩寵から外れてしまうかもしれない。恐らくこうしたキャンペーンにおいて、真なる神々はいないか、そうした神々の地位は証明不能の神々しい実体なのだろう。神々と呼ばれるものは、実際には様々な霊魂及び他の次元の狭間の空間を占める不可解な諸力であるかもしれない。外方次元界とそこに坐す神々は、人々が存在しているのだと信じているがためだけに存在しているように見える、単なる集合的意識の共有された発現であるかもしれない。
以下の冒険の種は心霊的な冒険に不可欠な要素と主題において機能する。
都市内で売られているという奇妙なクリーチャーの死体の噂は、市場に並べられている一対の死んだインプによって確証が得られた。それらは何処から来て、何故ここにあるのだろう?
発見:キャラクターたちは2体のインプの死体が地元の市場で売りに出されている時の怒涛の恐怖と興奮を耳に挟んだ。この死体の源は心霊的な知識をいくらか持った地元のばた屋であり、彼は消滅した友愛会の古い拠点の裏に捨てられていたインプを見つけたのだとすぐに明らかになる。間もなくして、新たな一対が発見され、続々と対が見つかっていく。何がそれらを出現させられるのか、そして同時に誰が2匹を殺しているのか?
敵役:インプらは実際には、もう存在しない秘密結社と友誼を結んでいたある強力なデヴィルの伝令である。あるソーサラーが最近その古びた拠点で暮らし始めており、インプらは自分の悪魔的な主人からの魅力的な貢物を伴って出現し始めている。このソーサラーは毎日の使者を殺し、その死体を捨てている。彼らの主人は、日々の要求に対するこの術者の荒っぽい対応に怒っており、より強力な部隊がすぐにでもこのソーサラーの同盟の為の正しき復讐に現れるかもしれない。PCはこのソーサラーの助力が出来るだろうか、それとも既に遅すぎるだろうか?
更なる冒険:PCはソーサラーという形で新たな仲間を、あるいは彼女がデヴィルの取引に応じた場合は強力な敵対者を得るかもしれない。ばた屋は彼自身が望んで認めるよりも知っているのだろうか? その建物は、かのデヴィルが自身の為に探しているであろうどのような秘密を保持しているのだろう?
驚くべき頻度で、来光は昨夜の多数の暴力的な殺人を明らかにし、そして今や定命の器から別たれてしまった犠牲者の霊魂は降霊のあいだ境を異にした縁者の呼び掛けに応えない。誰かがあるいは何かが、故人らの霊魂を、究極の報いに至る前に収穫しているのだ。
発見:PCは対立する2つの、犠牲者の霊魂の命運と殺人鬼を暴こうとしている降霊団体と遭遇する。しかしどちらの集団の野望も曖昧であり、彼らの好戦性は共同体を引き裂きつつある。PCたちは、亡くなった親族の霊魂が最後の安息を見つけられたかを知るという慰めのみを求める遺族の中に自棄の感情が漂っている混沌とした場面に出くわす。
敵役:降霊団体はどちらも善意から始まったが、その片方は気付かぬうちにナイト・ハグの駒となっており、知らぬまま彼女の戦慄すべき野望を隠蔽している。このナイト・ハグは夢中憑依の能力で統率者を人質に取る事で現地の盗賊組合を歪ませ、その奉仕を得ている。その組合は現在、ハグが魂を心臓石に拘束できるよう無辜の犠牲者らを殺している。彼女はまた、降霊会の1つに従事している才能あるスピリチュアリストを歪ませる事で、敵対する集団に、招来した魂の代わりにその者の霊を使わせ、誤情報と欺瞞を広める事で殺人の裏にある恐ろしき秘密の発見に敵対集団が近付かないよう工作をしてもいる。PCはイカサマスピリチュアリストを暴くか盗賊組合に潜入して殺人の裏の本当の黒幕の正体を見つけ出す事でこうした進行の裏にある真実を明らかにし、それから最終的にハグの心臓石を砕き死者の霊魂に安息を与えられるようにしなければならない。
更なる冒険:ハグの心臓石の破壊はその内に縛られている霊魂を解放するが、かのハグは悪の次元界の利益の為の単なる収集よりも更に深謀遠慮な動機を有していただろうか? もしかしたら彼女は強力で堕落した実体の魂を捕らえており、それは自由を得て今やより暗い闘争を伴って都市を脅かしているのかもしれない。PCは一時的に共同体に平和を取り戻しはしたが、どのような代償とどのような致命的な陰謀が待ち構えているのだろう?
何年も前、剣呑なる粛清によって都市の貧民窟から貧しく哀れむべき者たちが一掃されそうになり、謎のクリーチャーが救済に来るまでそれは続いた。世代が1つ交代した現在、都市の権力者たちの死体が砕かれた状態で貧民窟の通りで皆に見えるように晒された。
発見:PCはこの連続殺人を調査するよう求められ、定命の男ではまず不可能な方法で暴力的に砕かれ荒々しく損壊した死体を複数見つける。地元民は見世物一座の独活の大木を疑っているが、真犯人はかつて防衛の為に造られた1体の致命的なクレイ・ゴーレムだ。
敵役:大元の粛清の元凶である秘密結社は新たな粛清を計画している。以前の粛清を止めたまさにその守護者が新たな火種となれば本当に詩的だと彼らは定めたのだ。粛清の元々の計画者の息子はアウェイクン・コンストラクト*呪文を使って古い時代に作成者が死んでいるかつての守護者を覚醒させており、お前の父は私だと納得させている。そのゴーレムを送り出して権力者を殺害させ権力者に貧民窟への怒りを募らせた後で、この若いアリストクラートはこのゴーレムを裏切り、連続殺人を止めた英雄としてこの裏切りを告白し、貧民窟への第二の応報の粛清を導く計画を立てている。
更なる冒険:PCはこのゴーレムを打倒するかもしれないが、秘密結社の真の計画を暴かない限り、その新たな粛清を食い止められはしないだろう。PCらは自衛の出来ない者たちを救いに行くだろうか? 件のゴーレムに真実を納得させればPCたちは強力な仲間を得られるだろうが、そいつを破壊してしまった場合には、かの教団の不浄なる事業を破る希望を持っているならこの古いゴーレムの製作者の走り書きを見つけ、その人物が使用した古い心霊儀式を修めて新たなゴーレムを形成できるようにする必要があるかもしれない。
賢く慈愛に満ちた統治者が謎の気絶状態に陥り衰弱を始めた時、様々な派閥が権力を求めて争い国中が騒がしくなる。
発見:その統治者の摂政にして卓越したスピリチュアリストが必死になってPCを探している。PCはエーテル界へ、夢の次元へ、あるいはその両方へと念術的な危険を伴う旅をし、かの君主の彷徨える精神あるいは魂を見つけ、その肉体が死んで国が引き裂かれる前に持ち帰らなければならない。PCらが旅の途上で非業の死を遂げる場合、彼らの肉体は統治者と同じ命運を辿る事になる。
敵役:統治者は物質界の憂き生に戻る気はなく、事ある毎にPCと対立する。エーテル界で、その統治者の心は忠実なる騎士たちの心を伴いながらヘヴンへと進んでいる。その進行で、件の統治者にとって生持つ頃の驚嘆すべき所であった3つの場所のエーテル版を訪れる。キャラクターが夢の次元を旅している場合、それらの場所はエーテル界の祟りというよりは理想化された記憶である。
PCらの訪れた現実がどうあれ、統治者はPCらに抗う。キャラクターたちは統治者の悲しみの理由を知り、その心あるいは霊魂に肉体に戻るよう納得させなければならない。その最中に、彼らは自分たちの目的を果たす際に統治者のチャンピオンと衝突するかもしれない。
更なる冒険:統治者の昏睡が闇の御業のあるいは暗殺の試みの結果である場合、真犯人はそうした奇妙な領界の旅の間でキャラクターを待ち伏せているかもしれない。そしてキャラクターは探索している間、ヘヴンあるいはヘルへと向かっている別の統治者たちの進行を見つけるかもしれない。これらの出来事には全て何らかの関連があるのだろうか?
世代毎に、ある風掃けの良い湿地帯の村の人々は孤立する一枚岩へと旅立ち、そこで手を繋いで世代から世代へと語り継がれてきたある言語の古い言葉を唱える。その地から更に奥の、隠れた山麓の渓谷に、より小さな環状列石がある――世代それぞれの為にあるものだ――捧げ物の残骸である人の骨もその下にある。
発見:PCは冒険の途中でこの村に泊まる。滞在の間、村人たちは歓迎し御馳走でもてなし、PCの1人は収穫の「君主」になり、ある村人はそのPCの記号的な「配偶者」になると宣言する。その夜、村人たちはその名誉あるPCをぎこちなく誘拐しようとし、その人を一枚岩まで運ぶ(PCの誘拐に失敗する場合、彼らは代わりに2人目の村人を捕らえる)。村人たちは家を捨てて一枚岩の周りに集まり、忘れられた言語の言葉を詠唱する。選ばれた君主は列石の中にいて、無傷のようだ。PCが干渉しない場合、翌日にはその王と王女は忽然と消え去っており、村人たちは彼らの所在を知らないと主張し、調査に消極的なように見える。
敵役:その一枚岩に縛られたサイキック・ゴースト1体あるいは異形の化け物1匹が世代毎に顕現し、村人がもたらした捧げ物を食らう。食す時、この一枚岩は柔らかな金色の輝きを放ち、土地は周囲数マイルもの範囲、まるまる一世代の間富み茂る。PCらが生け贄の夜の間に一枚岩を見張る場合、そのクリーチャーと戦う機会を持ち、生け贄を救出する場合にはそのクリーチャーは彼らを追いかける。
更なる冒険:念術の力を持つクリーチャーはこの一枚岩を通り抜けるレイ・ラインに惹かれる。そのレイ・ラインを辿っていくと、独自の一枚岩を持つ別の村へと至る; 生け贄を否定されているそうした岩は、現在棲む生物のいない乾燥し荒廃した土地に囲まれている。そうした一枚岩からもレイ・ラインは伸びており、延々と続き世界中に広がっている。世代を超えて、これらの一枚岩に縛られている存在は喰らい、より強力に育っていく。どのようにすればPCはこうした謎の怪異から一般市民を解放できるだろうか?
PCは自分の行いの中に驚くべき量の成功を見出だすが、その全ては目に見える通りではない。
発見:直近の冒険を終えた後、PCは仕事の成功を祝う。そのどんちゃん騒ぎの間に彼らは、彼らの成功に興奮して郊外住宅に招待する1人の女性に出会う。彼女は快適な寝台、上等な飲食、そして住まいの運営を提供する。彼女は、簡単な仕事で助けてくれれば好きなだけいてくれて良いと告げる。
敵役:彼女は実際には、ある没入型心象風景に幽閉されている古の存在の意識体である。その存在は遥か以前よりその精神の牢獄から逃げようと試みるのを止めており、現在欲しているのは何らかの友好関係のみだ。PCは直近の冒険の間のいつかで知らぬうちにその意識体の心象風景に引き入れられており、現在意識体と共にその内に囚われている。その意識体はキャラクターが望むものを何でも作り出し、最初は物質世界と区別のつかない説得力のある経験の綴れ織りを紡ぐ。最終的に、キャラクターは富、名声、そして幸運は余りにも容易に手中に入ると理解し、この心象風景から脱出する方法を知らなければならないと認識する。
更なる冒険:PCはこの心象風景を破壊すると決断するかもしれない――恐らくは夢の次元を旅する事で、もしかしたらその行程で件の古の意識体を解放さえして。他の囚われたクリーチャーもこの心象風景の内側におり、彼らを解放すればキャラクターは未来の伝手あるいは敵役を獲得できるかもしれない。
連続する災厄や伝染性の疫病に感心を持つ捨て鉢になった群衆は、過激な派閥以外は評判の良い教会の正にその派閥にその信仰を置いている。現在多量の資源を思いのままにできるこの狂信者らは悪人と異教徒を罰する事で神々を慰撫し、この呪いを消去すると約束している。
発見:「魔女狩りたち」は、クレリックや他の信仰者も含め魔術や超常に手を染めている者の異端審問と逮捕を始める。魔女狩りがそうした人たちあるいはその仲間を逮捕しようとしているところ、または一族と郎党がこの騎士団によって捕らえられようとしているところにPCたちは出くわす。
敵役:外見上、騎士団の指導者「真実を探す者」はその中で最も話が分かり親切そうな人だ。実際にはこの人物は念術の暴君であり、能力を使って心を読み、騎士団の敵を暴く。すぐに、「真実を探す者」が魔女狩りたちに対し心を読み未来を占うよう訓練する事で、この分派は強力な新興宗教となる。PCは単純にこの騎士団から仲間を救出するかもしれないし、真実を探す者を暴くかもしれない。
更なる冒険:真実を探す者の教団が力をつけてきたなら、大元の教会はどのように対応するだろう? どれだけの都市と町に教団は侵入しており、数を増やす算段をどうつけているのだろう? 信徒は自身の勢力を増す為に悲劇的な出来事を引き起こした事はあるだろうか? PCが真実を探す者を止めてさえ、別の信徒が彼の外套を引き継ぐ準備を済ませているだろうか?
PCたちは大都市での連続失踪事件の究明を課されている。調査の間、偶然にもその土地の貴族が犯人だと示す証拠を発見する。証拠は彼らを確信させるものであったが、その土地の法廷を納得させる事はできず、すぐに彼ら自身で被告人と係争する事になってしまう。PCたちは、自分たちが疑う相手はソウル・ポートレイトの持ち主である事に気付いていない。
発見:この被告人の背景を掘り下げるにつれ、その若々しい外見にも拘わらず彼女は70代に優に至っている事を知る。更に調査すると、彼女が30の誕生日を迎えて以降彼女の知己、競争相手、そして家族は年々失踪を遂げている事が明らかになる。詳しく調べると、20代終わりに注文した肖像画への被告人による執着、肖像画を希少で目映い美の光景と描写する一部の訪問者、そしてそれ以外の訪問者は自分はつきまとう囁きの中にいたとのみ語る事、が明らかになる。
敵役:被告人の貴族はPCが直接暴力を振るうには余りに強力な傭兵の軍勢によって守られている。ソウル・ポートレイトは彼女の本性を明らかにする占術を妨害し、無垢なるより若い自身の姿を投射する。彼女が失踪と他の犯罪の原因であるとPCは確信していても、この貴族は莫大な富と表向きの慈悲深い性によってあらゆる咎めを退ける。
PCたちが彼女への本当の脅威になる時、この貴族は様々な圧力と責め苦という形で彼らにとって身近な者たちを攻撃する。PCは、人々の持つ「彼女は糾弾されるべき行為は行っていない」という(間違った)考えに裏打ちされている敵と争わねばならない。最終的に、肖像画が彼女を守れない状況でこの被告人を確保する方法を見つけない限り、PCは法の正義を手中に収める以外に術はなくなる。
更なる冒険:被告人が敗北した時、彼女の絵はソウル・ポートレイトの背景へと移動し、PCにはこのアーティファクトをどうするか決めるという気乗りのしない仕事が残る。道徳心の劣るPCは、自分が取得すると決め、芸術家の誰かにその画布に自分の似姿を加えるよう注文し、この肖像画の遺贈される力を学ぶかもしれない。より強い倫理を持つPCはこのアーティファクトを破壊する方法を探すかもしれないが、すぐにソウル・ポートレイトの持ち主のみが――そして他者の命という高い代償を払うことで――これを破壊できると知るだろう。
心霊的な冒険が始まる時、場所自体が生き物となり、超自然的な物語の能動的な参加者として振る舞うかもしれない。
鎮守霊は過剰な念術エネルギーが強力な正の感情を持つ存在に浸かった時に形成される。鎮守霊は概してかつての奇跡、慈悲深い守護霊、あるいは善属性の神格に関連のある場所で起き上がる。鎮守霊は特定の範囲に浸透している; その念術エネルギーはそこで経験された正の感情を高めて平和と保護の思いを創造する。鎮守霊は、その精を産んだ感情エネルギーと特別な結び付きを持つ無二の儀式的な力も発現する。稀な状況を除いて、ある1つの範囲に宿れるのは1柱の鎮守霊だけである。
放たれる平和と保護の温かい思いは鎮守霊を範囲内の者たちに対して明瞭にする。鎮守霊の属性は常に秩序にして善、中立にして善、あるいは混沌にして善であり、ディテクト・グッドと類似の魔法において善の来訪者のオーラを持つ。
鎮守霊は最大で5フィート×精の脅威度の半径の範囲に浸透できるが、実際の範囲は通常その精の起源に結びついた範囲のサイズと形状によって制限される。
永続的効果:鎮守霊は少なくとも以下の永続的効果1つを、宿っている範囲内で発している。鎮守霊は追加の継続する永続的効果を持っているかもしれず、1つ目を超える効果それぞれは鎮守霊の脅威度を1上昇する。
活気付け/Energized:鎮守霊の範囲内での正のエネルギー放出に抵抗する為の難易度は+4の清浄ボーナスを得、負のエネルギー放出に抵抗する為の難易度は4減少する。呪文抵抗はこの効果に適用しない。
保護/Protective:鎮守霊の範囲はマジック・サークル・アゲンスト・イーヴル効果で守られている。
清浄/Sacred:鎮守霊の範囲に入ったアンデッド・クリーチャーそれぞれは攻撃ロール、ダメージ・ロール、そしてセーヴィング・スローに-1のペナルティを受ける。
永続的効果に加え、鎮守霊それぞれは別のクリーチャーが特定の儀式を執行することで起動できる儀式効果1つを持つ。鎮守霊の儀式効果を起動する適切な儀式の知識は稀であり、それ自体が報酬であるかもしれないが、GMはクリーチャーにその儀式の手掛かりを得るあるいは完全な詳細さえ判断する為の〈知識:次元界〉あるいは〈知識:宗教〉判定を試みる許可を適切に、難易度は20+鎮守霊の脅威度で出しても良い。
鎮守霊の儀式効果を発現する為の儀式は執行者に、その鎮守霊の性能の区画に詳述されている必須の技能判定それぞれの実行を要求する。執行者がその儀式を成功裡に完了した時、鎮守霊は即座に自身の効果を発現する。
発現の種類:鎮守霊それぞれの儀式効果は以下の発現の種類のうち1つを持つ。
単一/Singular:この効果は儀式の執行者のみを対象にするか影響を与える。
仲間/Coterie:この効果は鎮守霊の範囲内のクリーチャー全員を目標にするか、儀式の執行者以外のクリーチャーにとって潜在的な有効性を持つ(例えば、誰でも使えるような何かの作成が仲間の発現なのかもしれない)。
恩恵/Boon:効果は鎮守霊の範囲内にいるクリーチャー全員を、影響を受けたキャラクターに以降24時間以内なら割り込みアクションとしてその効果を使える恩恵を伴って目標にする。クリーチャーはいっときに1柱の鎮守霊から恩恵1つのみの利益しか得られない。
鎮守霊が儀式効果を発現したあるいは儀式が失敗した後、その精は以降24時間の間その効果を発現できない。
鎮守霊は慣例的にダメージを受けないが、特定のアクションが範囲内で生じた場合堕落に対し惰弱になる。鎮守霊それぞれは脅威度の倍に等しい値のヒット・ポイントを持ち、堕落に抵抗するのに使える。特定の特別な不浄なる行いは鎮守霊のヒット・ポイントを減少させ、堕落に近付けるが、特定の善行はヒット・ポイントを復元させ、鎮守霊を堕落から保護する。
行為 |
|
---|---|
暴力的な行為を犯す |
1だけヒット・ポイントの減少 |
殺生を犯す |
|
アニメイト・デッドの発動 |
|
クリエイト・アンデッドあるいはクリエイト・グレーター・アンデッドの発動 |
|
ディセクレイトの発動 |
2だけヒット・ポイントの減少 |
アンハロウの発動 |
4だけヒット・ポイントの減少 |
成功裡の執行 |
|
コンセクレイトの発動 |
2ヒット・ポイントの復元(最大でも1日に1回) |
ハロウの発動 |
4ヒット・ポイントの復元 |
鎮守霊が0ヒット・ポイントまで減少した場合、それは堕落する; 以降、それは同じ脅威度の霊障として機能し、鎮守霊の永続的効果を失う。鎮守霊がひと度堕落したなら、それの効果は代わりに[精神作用]、[恐怖]効果として発現する。これらの新しい効果は鎮守霊が以前発現していた儀式効果と同程度の力を持っているべきである。堕落した鎮守霊はディテクト・イーヴル及び類似の効果に際し悪の来訪者としてのオーラを持つ。霊障とは異なり、堕落した鎮守霊はハイド・フロム・アンデッドで騙されるという弱点を持たないが、その脅威度が同一である限り霊障の修正の他の大半を受ける。その霊障は鎮守霊と同じ値のヒット・ポイントを持つ; そのヒット・ポイントは鎮守霊のヒット・ポイントとは別のものであり、残り0になると鎮守霊は浄化される。
堕落した鎮守霊は霊障と同様の方法で無力化あるいは破壊できる。堕落した鎮守霊が無力化されているため不活性状態である間、キャラクターたちは浄化する試みの為に鎮守霊のヒット・ポイントを復元する効果を使用できる(直近の補足欄にある表参照)。浄化の目的において、鎮守霊のヒット・ポイントの上昇はその霊障のヒット・ポイントを復元しない。キャラクターが堕落した鎮守霊の完全なヒット・ポイントを復元できた場合、そのキャラクターは堕落を完全に剥がし、その鎮守霊は以前の慈悲深さを取り戻す。これは潜在的に堕落した精との複数回の遭遇を発生させ得る。それまで、その霊障は再設置され続ける。
鎮守霊は以下の書式で書かれる。
経験点:これは鎮守霊の堕落形態を生き延びたPCへの報酬としての経験点量であり、霊の脅威度によって決定される。GMの裁定により、己の目的の為に意図的に鎮守霊を堕落させたPCはそれを行った事による経験点量を受けるかもしれない。
属性、永続効果、発現の種類、そして範囲:この行では鎮守霊の属性、永続的効果と発現の種類、そしてそれが浸透している範囲の大きさ(最大で術者レベルにつき5フィートまで)を掲載している。
術者レベル:これはディスペル・マジックで継続する効果を解呪する際における鎮守霊の有効術者レベルであり、発生する呪文の効果の結果を判断するのにも使用する。
ヒット・ポイント:ここでは堕落を解決する際の鎮守霊の有効ヒット・ポイントを記載している。鎮守霊のヒット・ポイント数は霊の脅威度の倍に等しい。
弱点/Weakness:堕落に惰弱や治癒しにくいといった鎮守霊の持つ弱点がここに記されている。
儀式/Ceremony:これらは鎮守霊に儀式効果を発現させる為に行わなければならない技能判定だ。
効果/Effect:この項目では鎮守霊の知識効果を詳述しており、鎮守霊の発現の仕方の描写を含んでいる。
堕落効果/Corruption Effect:この項目では堕落した場合に鎮守霊の効果が何になるかを簡潔に記している。
下記の例に似た君独自の鎮守霊を作成するなら以下の手順に従うこと。
ステップ1―基本脅威度の決定:鎮守霊の基本脅威度は1+複製する呪文のレベルに等しい。
ステップ2―実際の脅威度の決定:鎮守霊に持たせたい要素を選択し脅威度にその修正値を加えればその鎮守霊の最終脅威度が現れる(鎮守霊の表の脅威度調整参照)。
ステップ3―術者レベルの決定:鎮守霊の術者レベルは脅威度に等しい。
ステップ4―ヒット・ポイントの決定:鎮守霊のヒット・ポイントは脅威度の倍に等しい。
ステップ5―儀式難易度の決定:儀式の判定難易度は20+鎮守霊の脅威度に等しい。
ステップ6―セーヴ難易度:鎮守霊の儀式効果が効果に抵抗するあるいは無効化する為のセーヴィング・スローを認める場合、セーヴ難易度は10+その呪文のレベル+その呪文のレベルを発動するのに必要な最小能力値の能力修正値に等しい。通常、儀式効果は(無害)であり、そのためクリーチャーが自発的に抵抗あるいは無効化したいと願う場合にのみこれが適用される。
ステップ7―堕落の効果、攻撃、そしてセーヴ難易度の決定:堕落した鎮守霊は独自の効果として同じ呪文レベルを持つ[精神作用]、[恐怖]効果を発現する。堕落した鎮守霊の攻撃ボーナス(必要なら)は通常脅威度に等しい。
脅威度の修正 | |
---|---|
儀式が複数の技能判定を要求する |
追加の技能判定1つにつき+1 |
単一 |
-1 |
0 | |
+1 | |
癒し難い1 |
-1 |
-1 |
経験点 1,600
中立にして善 保護にして仲間の鎮守霊(10フィート×10フィートの部屋)
術者レベル 5レベル
ヒット・ポイント 10; 儀式〈知識:宗教〉難易度25、〈生存〉難易度25
効果執行司祭が適切な小枝と野苺の貢納を執行する時、鎮守霊が、執行司祭とその仲間へと献上する為のクリエイト・フード・アンド・ウォーター呪文と同様の食事の載った盆を持ちクレリックの礼服を纏っている太った幽けき男として発現する。
堕落効果クリエイト・フード・アンド・ウォーターがコンテイジョン(難易度14)になる。
経験点 1,600
秩序にして善 清浄にして恩恵の鎮守霊(祭壇を中心とした半径5フィート)
術者レベル 5レベル
ヒット・ポイント 10; 儀式〈交渉〉難易度25、〈芸能:朗誦〉難易度25
効果壮麗かつ活力溢れる儀式を行えば、古の鎧を纏った幽き姿の幹部たちが鎮守霊の効果範囲内にいるクリーチャー全員の前で跪き、自分たちの武器を示し、アライン・ウェポンの恩恵を授ける(受容者それぞれは秩序あるいは善のみから選択する)。
堕落効果アライン・ウェポンがシャター(難易度13)になる。
経験点 1,200
混沌にして善 活気付けにして単一の鎮守霊(英雄の像を中心とした半径15フィート)
術者レベル 4レベル
ヒット・ポイント 8; 儀式〈知識:歴史〉難易度24、〈芸能:朗誦〉難易度24
効果儀式司祭は太古の昔からの勇敢な英雄に嘆願し、その英雄の偉業を回想し、儀式司祭独自の探求の為にその英雄の力を要求する。儀式が成功する場合、その英雄の像は敬礼の一種として剣を掲げ、儀式司祭はヒロイズム呪文の利益を得る。
堕落効果ヒロイズムがスケアー(難易度13)になる。
霊障は複雑な敵対者となりうるが、それらは心霊ゲームの叙情や雰囲気を描写するのに適した多用途の道具である。この項では新しい霊障ルールとこれまでのルールの明文化を記している。
霊障は概して適用された正のエネルギーのみからダメージを受けるが、聖水はそれらに対する、異なる潜在的な武器となっている。飛散武器として霊障への命中に成功した聖水のビン(1パイント)は、直接命中すれば2d4ポイントのダメージを霊障に与え、飛散半径5フィート以内にいる霊障に1ポイントのダメージを与える。
一部の霊障は特別な物品あるいはクリーチャーと結びついている。そうした霊障は正のエネルギーから通常通りのダメージを受け、その霊障の種類用の通常の再設置ルールに従う。ディスペル・イーヴルは迅速に発動された場合霊障1つの存在を放逐できる; 術者は「10+霊障の脅威度+クリーチャーあるいは物品が憑依されている期間ひと月につき1」に等しい難易度の術者レベル判定に成功しなければならない。
縛られし霊障は作成された時にアイテムに憑依し機動性を得ているが、その代償としてより容易に壊されてしまう物理的な物品に結びついているという悲劇的運命を負っている。これらの霊障は、悲劇的出来事の念術的残滓がその出来事に結び付いたアイテムに染み込んでいるため、大いなる恐怖の光景に応じて発現する。アイテムに縛られると、その品縛霊は霊障の通常のルール全てを使用するようになり、その憑かれた物品を中心にその効果が放たれるようになる。憑かれた楽器が鳴らされる、武器が使われるなど、一部の効果はそのアイテムの性質に基づいた特別な起動条件を持つかもしれない。この取り憑く存在は憑依しているアイテム用の破壊難易度に5を加え、そのアイテムの硬度とヒット・ポイントを倍にする。
悪意ある霊も同様にアイテムではなくクリーチャーに憑き、対象が行くところへと憑いて行き、その霊障を発生させた悲劇的出来事への認識した侵害や関与の復讐として、対象の周辺に奇妙な現象と騒霊活動を引き起こす。最初は宿主に対し慈悲深いように見えることもあるが、そうした霊障が宿主の破壊を求めるのは避けられない。そうした霊障に憑依されている個人はしまっていたアイテムを取り出すのに常に標準アクションを使わねばならない、通常であれば取り出すのにそれより時間がかからない限りは。加えて、持ち主が地面に落としたアイテムは無作為な方向へと10フィート離れる。憑霊霊障は霊障用の全てのルールを使用し、憑依されている対象を中心とした効果半径を持ち、憑依対象は霊障の効果に対するセーヴィング・スロー全てに-2のペナルティを受ける。GMの裁定によって、憑かれたクリーチャーは悪夢に苛まれて毎日その霊障に適切な能力値1つに対し1ポイントの能力値吸収を受けるかもしれない。
一部の霊障は本来非実体のアンデッドの実体(一番一般的なのはゴースト)と結び付いており、関連したクリーチャーの断片化した霊魂の顕示として発現する。連鎖霊障はその結び付いた実体に最後の安息を齎すことによってのみ破壊できる。連鎖霊障はゴーストの悲劇的な物語を描写し強調するのに使用できる。例えば、一連の連鎖霊障が廃墟と化した邸宅中に広がっているかもしれない:絆を結んだクリーチャー――ゴースト――は自分が殺された屋根裏部屋にいるが、階下にある寝室は血の滴る壁の霊障を発現してそのゴーストの該当する悲劇的な喪失の場面を強調するかもしれない; 要求のある死者の霊障は、侵入者にそのゴーストの死体が埋葬されている庭内の浅い墓を掘らせるかもしれない; そして殺害者の武器は邸宅の広間を徘徊しており、悪性武器の霊障として発現するかもしれない。
一部のPCは無力化された(0ヒット・ポイントに減少した)がまだ破壊されていない霊障との意思疎通を確立したいと願うかもしれない。霊障の本来の力あるいは脅威度に拘わらず、GMは無力化された霊障をその再設置期間の間ラップ音の霊あるいは憑依する死者の霊障に戻すことを選べる。同様に、GMはゴーストやポルターガイストのような黄泉がえるアンデッドを選んで、その黄泉がえりの期間の間にそうした状態の1つを想定して良い。未だ潜在的な脅威あるいは悪意さえ持っているが、そうした霊障は潜在的に発せられた言葉、数、そして文字への対応として暗号を用いることで(1回叩くことで「是」、2回叩くことで「非」等)意思疎通できる。要求のある死者の霊障と連絡を取っている者は、反対に、概して霊障が示唆する通りに暗い降霊室で伝言を囁くか記述を記す。いずれにせよ、そうした霊は時に信頼できないものとなり、そして常に謎めいており、決して生前に知っていたものを超えた知識を齎すことがない。
〈交渉〉、カーム・スピリット*のような呪文、そして暗い降霊室の飾り戸棚のような快適な環境はどれも霊の態度を向上できる。霊障と意思疎通する試みをする一部のキャラクターは霊応板として知られる平坦な文字盤、円錐形の霊用ラッパ、あるいは自動書記用占い板――チョークや木炭の鉛筆で書くようになっている車輪の付いた板――を持ち運ぶ。これらは一般的なアイテムであり、生得的な独自の魔法を備えていないが、正しく関係を確立した者の手にあれば、こうした道具は霊障から受け取る伝言の有用性を増加し、意思疎通の速度を1ラウンドに2つの信号(叩打音、文字等)を1ラウンドに4つの信号へと倍加できる。
霊障の一次的攻撃の[精神作用]、[恐怖]に基づく効果の裁定は霊障の有効距離の外にいるあるいはそうした効果に完全耐性を持つキャラクターにとって問題となりうる。これによって一部のPCは霊障の物語要素を目撃する能力が、つまり霊障の存在に見舞われている仲間にとっての助けとなる能力が奪われるかもしれない。幸運なことに、霊障の二次的効果は完全性が劣る。霊障の二次的効果は何らかの形で一次的効果を反映しているべきであり、あらゆるPCが目撃できる。例えばお化け蟲の霊障は、その霊障の一次的効果がそうしたPCに影響を及ぼさないとしてさえ、完全耐性を持つあるいは有効距離の外にいる者にとっても依然として視認でき、小走りする幽きラット・スウォームの骸骨の幻影を発現する。これによってPCは霊障の二次的効果を目撃してその霊障の手掛かりをより解釈できるようになるだけでなく、仲間のPCが冒され助けが必要である時をより容易に認識できる。
持続時間が瞬間でない呪文を使って作成された霊障も問題を発生しうる。霊障が持続性の特性を持たない場合、その霊障の不意討ちラウンド攻撃が終わった後の通常の持続時間にそれらの呪文が持続するか不明瞭だ。この問題を解決するため、持続時間を持つ霊障の作成を持続性の霊障と考えること。
以下の霊障はこの書の新しい霊障のルールと念術魔法効果の多くを使用している。
最も一般的な霊障はラップ音の霊だ:夜間に実体の無い叩打音と衝突音を発生させる要素だけを持つ、騒がしい死者だ。キャラクターはこうした知的な霊と、その霊が謎めいた伝言を齎すのに用いる暗号を使って意思疎通する試みが出来るし、自動書記用占い板のような道具を使ってその霊との意思疎通の有効性を増す事も出来る。
経験点 400
属性可変/持続性の霊障(半径5フィート)
術者レベル 1レベル
感知〈知覚〉難易度10(壁、床、そして家具を微かに叩く音を聞くのに)
ヒット・ポイント 4; 弱点ハイド・フロム・アンデッドで欺ける; 発現条件接近; 再発現 1日
効果騒がしい霊が自身の不安を生者に齎す際、動揺した叩打音と鳴り響く鈴の合唱が付近の固い表面から発する(最大でもメイジ・ハンドによって物理的に操作されて生じうるもの)。この超常の叩打を聞く者全てはコーズ・フィアー効果の影響を受ける(意志・難易度11・無効)。
破壊霊の属性に依るが、ラップ音の霊は概して自身の定命の遺体を安らかな眠りに就かせるよう頼むか、PCたちに自身の死の復讐を頼む。頼みを満たせばこの霊障は霧消する。
一部の霊障は浮世にいる者の思考と行動に影響を与えて自分たちの怒り、欲望、あるいは目的と疎通させ、それによって声を借り自動書記させる実体にできる。要求のある死者は悪意に満ちていることもあるが、潜在的に衝撃的な秘密を明かす事になるあるいは自らを永眠に導く鍵となる要求の為の手段である方が多い。
経験点 800
属性可変/持続性の霊障(半径15フィート)
術者レベル 1レベル
感知〈知覚〉難易度15(僅かな呟き声を聞き冷風を感じる)
ヒット・ポイント 13; 弱点ハイド・フロム・アンデッドで欺ける; 発現条件接近; 再発現 1日
効果この霊障は生者の行動に影響を与えようとし、犠牲者をサジェスチョン効果あるいは呪文レベル上昇コマンド(どちらでもセーヴ難易度14)の目標にする。霊障の属性と目的に依るが、示唆を受けたアクションは悪意(有害な方法で犠牲者を微妙に動かしたり会話に矛盾を撒いたりする)か善意(生者の世界に自身の野望を伝えようと謎めいた自動書記や無意識の譫言を促す)に満ちているかもしれない。
破壊要求のある死者は概して自身の定命だった頃の死体の安息や生前満たせなかった望みの再解決を求める。要求を満たせばこの霊障は霧消する。
圧倒的な未解決の罪――あるいは数千の小さな歯による恐ろしい死――は幽き蟲のスウォームの発現を導くことがある。霊障の範囲は太古の齧歯類の蔓延という形で現れる事もある。
経験点 1,600
混沌にして悪/浮遊霊・持続性・靄の霊障(30フィート×30フィートの部屋)
術者レベル 5レベル
感知〈知覚〉難易度15(壁をひっかく音を聞く)
ヒット・ポイント 22; 弱点ハイド・フロム・アンデッドで欺ける; 発現条件接近; 再発現 1日
効果この浮遊霊の霊障は古い伽藍堂や湿った地下牢を徘徊する。この霊障が起動した時、幽体ラットの骸骨の遺体が部屋の罅と亀裂それぞれから溢れ出て、サモン・スウォーム呪文と同様に範囲を走り回り通行人を貪り喰らう。
破壊キャラクターは範囲内の普通のキャット1匹を儀礼的に殺さなければならない。そのキャットのゴーストが発現し1週間かけてそのエクトプラズミック・スウォームを食い尽くし、キャットもラットも永遠の眠りに就く。
強力なウィッチあるいは魔女を殺した武器はその犠牲者の悪性の憎悪によって汚染されることがある。霊障武器は依然として本来の持ち主あるいは敬われる聖人の骨といった遺物によって聖なる痕跡を帯びていることもあるが、それらが武器の内に篭もる悪意を飲み込む程に強力であることは決して無い。
経験点 4,800
秩序にして悪/持続性・品縛霊の霊障(最大で半径35フィートに影響を与える憑かれた物品)
術者レベル 7レベル
感知〈知覚〉難易度25(武器に触れた時に遠くから哄笑を聞く)
ヒット・ポイント 36; 弱点インヴィジビリティで欺ける; 発現条件特殊(下記参照); 再発現 1日
効果この霊障武器の持ち主がこの武器でのクリティカル・ヒットを確定させようとする時に、その範囲では即座に耳障りな哄笑が反響する。その武器を中心とした半径35フィート以内の全てのクリーチャーは以降8ラウンドの間ソング・オヴ・ディスコード呪文(意志・難易度17・無効)の影響を被る。この武器の持ち主が影響を受けた場合、彼女はそのクリティカルを確定させるためのロールに+2のボーナスを得る。
破壊この武器は同意するハグの魔女団の大鍋で沸騰させなければならず、そうすればその武器と大鍋が同時に破壊される。
この霊障は宿主の肉体の内側に隠れ、まずは自身の存在で宿主を快適にするという魅力的な恩恵を齎し、それから最終的には宿主の破滅を求める。
経験点 4,800
中立にして悪/憑霊・持続性・怨嗟の霊障(クリーチャーに憑依していない時半径45フィート)
術者レベル 10レベル
感知〈知覚〉難易度20(悪性の存在を感じ僅かな譫言を聞く)
ヒット・ポイント 40; 発現条件接近; 再発現 1日
効果この霊障はポゼッション*(意志・難易度20・無効)と同様に生きている宿主に僅かに憑依して恐怖と傷をより広い世界に撒こうとする。最初に宿主のクリーチャーに憑依する時、この狡猾なる存在は数ヶ月の間シャドウ・カンジュレーション効果を使ってうまい恩恵を授けるかもしれない(宿主を助ける仲間を招来するなど)。だがすぐに、霊障の内なる悪性が凌駕し、シャドウ・カンジュレーション(セーヴが適切なら難易度18)を使って有害なあるいは命取りですらある効果を宿主に向けて発生させる。
脅威度に等しい数の異なる宿主を殺してきた狡猾なる存在は驚くべき変成を遂げる。この強力な実体は脅威度12を持ち、グレーター・シャドウ・カンジュレーション(セーヴが適切なら難易度22)の活用を学び、術者レベル14を持ち、クリーチャーに憑依していない時半径60フィートを持ち、54ヒット・ポイントを持つ。
破壊狡猾なる存在は無垢なるクリーチャーがこの霊障を自発的に体内に受け入れてそれからこの霊障を永久に破壊するため意図的に自らの命を捧げた場合のみ破壊される。
心霊研究者は、物質界と生きている世界の先にある諸次元界の世界中を理論化する。宇宙が見せる生命と意識の正しき尺度は議論されているが、その宇宙生物学を計測する試みでは証明としてレイ・ライン現象が注目されている。レイ・ラインはあらゆる既知の創造に矛盾する魔法のエネルギーを導いており、生きているクリーチャーの血管及び幹線として機能している。そうした導管は大小様々な地理的及び宇宙理論的な要素と関連しており、それを活用する者に知識と力を授ける。
レイ・ラインは念術的印象を与え、周辺から吸収した他の取り巻くエネルギーを伴う未加工の魔法のエネルギーを運搬する。このエネルギーによりレイ・ラインはその経路に沿っている魔法的効果、潜在意識、そして他の超常現象の源となっており、時折異常で超常的な効果を生み出す。
レイ・ラインが齎す念術的印象はレイ・ラインの経路沿いで暮らす人々の文化的かつ心理的成長に衝撃を与えうる。そうした直列は数千マイルの距離――あるいは次元の境界さえ――で分かたれた2つの文明に相似の発展を生じさせるかも知れない。レイ・ラインの両端に建築された町は同質の(あるいは時に鏡写しの)街路計画と歴史を持っているかもしれない。レイ・ライン付近で生活する芸術家は無意識に他の次元界にいる他の芸術家から着想を得、並行した設計の作品を生み出すかも知れない。レイ・ラインが次元界間を突破する時、ある次元界から別の次元界に影響を齎し得るため、レイ・ラインはこれまでの歴史で来訪者と接触を持たなかった血脈にティーフリングやアアシマールが現れる理由の1つとなっている。この効果はソーサラーの力、念術パワー、そして霊障や鎮守霊といった他の異常な魔法現象の増殖の原因である事もある。
循環系に於ける動脈と同様、レイ・ラインには多くの異なる規模がある。レイ・ラインが大きくなると、運搬する魔法のエネルギーの容量も大きくなる。しかしレイ・ラインの規模は時を経て変わりうり、全長のうちの地点によって規模も変化するしれない。レイ・ラインの規模は通常術者が引き出せる力の強さと種類に影響を与える。レイ・ラインは、レイ・ラインの全体的な強さを表しそれに関連している効果の強さを決定する1から20までの幅で有効術者レベルを持つ。
レイ・ラインの本来の状態は知覚不能のエネルギーの奔流である。レイ・ラインの発見にはレイ・ラインが放つ魔法のエネルギーを検知する技能あるいは呪文の使用が要求される。ディテクト・マジックは効果範囲内にあるレイ・ラインの活用できる部分の存在を突き止められ、レイ・ラインが魔法のアイテムであるかのようにレイ・ラインの有効術者レベルを使ってそのオーラの強度を判断できる。トゥルー・シーイングは効果範囲内にある通絡可能なレイ・ライン全てを明らかにする――それらはエネルギーが緊密に凝集された幽き束のような見た目をしている。レイ・ラインの色は全体的な力の位階を表している。術者レベル1を持つレイ・ラインは紫黒色をしているが、術者レベル20のレイ・ラインは猩々緋色をしている。1から20の間にある術者レベルのレイ・ラインは適切な分光分布にまたがっている(菫色から開始し、青、緑、黄、橙、最後に赤)。コンタクト・アザー・プレイン、ディヴィネーション、そしてコミューンのような占術魔法はレイ・ラインの場所の絞り込みの助けをする。加えて、レジェンド・ローアは既知のレイ・ラインについての情報開示の助けが出来る。ダウジングのような心霊技能解放も遠くにあるレイ・ラインの存在の検知の助けになり、レイ・ラインの通絡可能な場所の確認に極めて有用である。
レイ・ラインの取り巻くエネルギーを集める能力によって、一部の地方の効果はレイ・ラインの一部を可視状態にする事がある。例えば、原初魔法の範囲内において、現存するレイ・ラインは分光分布に従って絶えず遷移する虹色に煌めく川として発現するかもしれないし、強力な負のエネルギーの存在のある場所ではレイ・ラインは、赤い色合いもある儚き黒い煙が滲み出る闇の蔓として現れるかもしれない。
レイ・ラインは普通場所から場所へと移動しない。それが通る正確な経路は数千年あるいは永劫という周期で移り変わるかもしれないが、そうした変化は最長寿の種族を除いては殆ど気付けない。そのため、レイ・ラインの発見は数千年の期間その地域に影響を与え、レイ・ラインの力を搾取しようとする者の注目を集める。レイ・ラインを見つけた文明はその力が最も引き出しやすい地点にメンヒルの円やオベリスクといった直立した塚という目印を置く事がある。そうした土地は概して儀式の執行あるいは他の、レイ・ラインの見えない力を活用して呪文発動を強化する機能に使われる。強力なウィザードは極めて強力なレイ・ラインの上に塔を建築するかもしれないし、ドルイドの派閥はメンヒルの円をレイ・ラインが地表に触れる箇所の近くに建造するかもしれないし、太古の竜は空中にあるレイ・ラインに出来るだけ近付けるよう山頂に棲み家を建てるかもしれない。レイ・ラインの経路や交差地点を記した正確な地図や表は数世紀以上の間信頼でき、世界や次元界を跨ぐ力の結び目を明らかにしうる。
レイ・ラインは数百から数千マイル、あるいはそれ以上の長さを持ち、レイ・ラインの殆どの部分は強力な魔法でも極めて見辛く、その力への通絡は不可能である。しかし、術者はレイ・ラインの力が集中しているあるいはレイ・ラインが交差している極めて珍しい場所を活用して自身の力を高められる。そうした土地は大山の下にある極小の洞窟から山脈全体に至るまでどのような規模でもあり得る。
レイ・ラインの通絡可能な地点から発生する効果の大半は受動的で見落とし易い。次元界エネルギー、念術的印象、そして他の収束したエネルギーが土地へと滲み出しその土地の生命の進歩に影響を与える。呪文発動が可能なあるいは擬似呪文能力を使用するクリーチャーは100フィート以内にあるレイ・ラインの通絡可能な箇所を活用する試みが出来る。それにはレイ・ラインの2術者レベルにつき1時間かかり、20+レイ・ラインの術者レベルに等しい難易度の〈呪文学〉判定が要求される。成功すれば試みたクリーチャーはそのレイ・ラインと調和し呪文と擬似呪文能力全ての有効術者レベルに+1のボーナスを得る。このボーナスはレイ・ラインの5術者レベルにつき1づつ上昇し、最大で+5になる。レイ・ラインの収斂の在り方にも依るが、このボーナスは特定の呪文あるいは擬似呪文能力にのみ適用されるかも知れない。例えば、大火山の上で収斂するレイ・ラインは[火炎]の補足説明を持つ呪文と擬似呪文能力にのみボーナスを適用するかもしれない。ハグと魔女団の能力を持つ他のクリーチャーは、その魔女団の1人以上がそのレイ・ラインと調和しており魔女団の団員全員が調和したクリーチャーの10フィート以内にいる限り調和したレイ・ラインから利益を得る。レイ・ラインの一部は、自身と調和したクリーチャーにボーナス呪文、擬似呪文能力、あるいは他の超常的効果のような特別な能力を授ける事もある。ひと度クリーチャーがレイ・ラインと調和したなら、解呪されない限りその調和は永続的となる。ディスペル・マジック及び類似の効果ならクリーチャーのレイ・ラインとの調和を破壊できる; 調和を壊そうと試みる術者は11+レイ・ラインの術者レベルに等しい難易度の術者レベル判定に成功しなければならない。調和したクリーチャーがレイ・ラインから100フィートを超えて離れた時、調和による利益は得られなくなるが、再度近付いた時に利益は戻る。
レイ・ラインは過度の魔力にせよ他の歴史的出来事にせよ年月を経て傷ついていく。この方法での損傷はレイ・ラインの周辺地域に流れ出す超常的な傷跡を創り出す。レイ・ラインの損壊あるいは破壊は困難であり、歴史的な規模と力が求められる。最弱のレイ・ラインでさえ大抵の物理的及び魔法的攻撃に対し不透過性であるが、大規模な力であればそれらに影響を与えられるかもしれない。メイジズ・ディスジャンクションはレイ・ラインを破壊する潜在性を持つが、術者には20+レイ・ラインの術者レベルに等しい難易度の術者レベル判定の成功が要求される。そうすれば即座にレイ・ラインの術者レベルにつき2d6ポイントのダメージ(セーヴィング・スロー不可)が術者に与えられる。加えて、レイ・ラインと調和しており調和から利益を得られるクリーチャー全員は破壊した時にレイ・ラインの術者レベルにつき1d6ポイントの非致傷ダメージを受ける。レイ・ラインの術者レベルにつき1%の確率でその破壊は破壊されたレイ・ラインの術者レベルにつき半径100フィートの永続的なアンティマジック・フィールドを作り出す。更に、この方法でアンティマジック・フィールドを作り出したメイジズ・ディスジャンクションの術者は難易度25の意志セーヴに成功しない限り永続的に呪文発動能力全てを失う。これらの能力は定命の者の魔法では回復できず、ミラクルやウィッシュでさえ無理だ。
心象風景は、就寝中の人物が夢見ている間に創造した景色と同様、アストラル界で形作られまた消える、精神の一時的な被造物である。心象風景と夢の主な違いは意図である; クリーチャーは計画的に精密に心象風景を構築する事があるが、夢見る人は概してそうではない。心象風景は念術決闘に参加したクリーチャー、同様に特定の呪文、魔法のアイテム、そして他の心霊現象の産物として存在を得る。
理論的には、心象風景は好きな形あるいは外見を取れる――そして想像可能な特性を持てる――様々な次元界と同様に。実際には、心象風景は大抵は大半が通常通りの見た目になるか、物質界から1つか2つの特性のみが離れた要素を持つことになり、心象風景内で発現するクリーチャーの念術的な化身はもはや物質界にあるものと区別できないかもしれない。
心象風景には2種類ある:二層の心象風景と没入型心象風景だ。二層の心象風景はクリーチャーが念術パワーで別のクリーチャーを精神戦闘に引きずり込む時の念術決闘の最中に発生する。参加者2人だけが二層の心象風景を専有する。この頭脳の決闘場は参加者たちの感覚を完全に呑み込んではいない; 二層の心象風景内で念術決闘で交戦しているクリーチャーは依然として現実世界を知覚できるが、大半の部分念術決闘に囚われている。この場合、心象風景は心眼の内にある強力な幻像であり、抽象的な位階で知覚され、現実世界にいる目標に影響を与えられ、現実世界の出来事から目標を乖離させるが目標は依然として現実世界を知覚できる。
没入型心象風景はそれより遥かに実体的で現実的だ。没入型心象風景において、クリーチャーの感覚それぞれは、実質的に肉体の本当の感覚器官の代わりに完全に幻想的な周辺を感知する。
クリーチャーの意識が心象風景内にある間、現実世界にあるそのクリーチャーの肉体はアクションを取れず、アーマー・クラスへの【敏捷力】ボーナスは失われるが、クリーチャーの精神の無意識領域の一部が依然としてそのクリーチャーの破壊に抵抗するため、無防備状態とは見做されない。没入型心象風景にいる間、その精神は肉体が見、聞き、嗅ぎ、触るものの情報を何も得ない。つまり、その肉体が現実世界で攻撃に依るダメージを受けた場合、その精神はそれに気付かないままだ。しかし二層の心象風景では、クリーチャーは現実世界にある自身の状態を検知できる。
心象風景に引き込まれたクリーチャーは自身の姿を取る必要はなく、代わりに精神覆面と呼ばれる変わった姿を取れる。それが出来るのは、自分が心象風景に入っていると知っているか、夢の中にいると信じている場合のみだ(心象風景の作成者なら常に可能)。精神覆面によってクリーチャーは自己の正体を隠せ、敵から自分の特徴を覆える。非念術クリーチャーは精神覆面を取れない; 彼らは本来の姿を没入型心象風景に表さなければならない。
二層の心象風景は概して単なる念術決闘用の必要最低限の背景である――純然たる記憶の如き幽き幻影であり、緻密さと迫真性を欠く。濃霧で囲われた平坦な表面として発現することもあれば、特性のない曇りの日の草原として発現することもある。時に、二層の心象風景はクリーチャーが良く知っている現実世界の一地方を模倣することもあるが、その時でさえ、その幻視の端の精緻さはぼやけ不鮮明であり、匂いや味が欠けているなど、そこの特徴は余り感性に触れない。二層の心象風景は念術決闘に効果を及ぼさない; それは単に参加者が自らのアクションを視覚化するのを助ける、精神的な被造物である。
創造と制御
念術決闘の項で説明した通り、二層の心象風景は2人の念術クリーチャーが精神的な対決に入る時に創造される。インスティゲイト・サイキック・デュエル呪文を発動できるクリーチャーのみが念術決闘を始められる。連結が確立したなら、二層の心象風景が創造される。
ひと度この心象風景に入ると、クリーチャーは念術エネルギーを消費して発現と呼ばれる精神的災害を創造して他の戦闘者にダメージを与え、精神的な景色を捏ね直せる。心象風景は創造以降分かち合う精神的空間となるため、どちらの戦闘参加者も本当にはこれを制御できず、精神を結合させて以降どちらも環境を変更する能力を等しく持つ。
二層の心象風景は明確、無限、そして有害である(下記の心象風景の特性参照)。他の特性(重力、時間、そして魔法など)は通常であるが、念術決闘の項に記載しているように特別なアクションという例外と呪文発動の制限がある。
没入型心象風景は更に一般性が低いが、遥かに強力であり、心象風景として幅広い。作成された時、1つ1つが現実世界と同様に明白で鮮烈に見える。没入型心象風景内の生き物は大地を見、息吹を感じ、雨音を聞き海を嗅ぎ、そして飢えや渇きさえ経験できる。ある場合では、没入型心象風景内のクリーチャーは自分が心象風景の中にいるとさえ認識できない。騙されてそうした心象風景を本物だと信じさせられた目標は、心象風景の中で完全な生活を営む間物質世界で本当にやせ衰える。
没入型心象風景は二層の心象風景より更に細部まで彫り込め、その特性を変えられる。創造者は没入型心象風景の特性を規定し、訪問者は招待側が心象風景に配置できる拘束の対象となる。心象風景の被造物は丹精込めて設計されているかもしれないし、(意識的にせよ無意識的にせよ)創造者自身の欲望あるいは意図から引かれたより本能的な表現であるかもしれない。一部の呪文によって創造者は心象風景を作成する時に目標の記憶あるいは欲望を利用して更に目標を騙しやすく出来る。
心象風景それぞれはその外見と振る舞いを示す特定の特性一式を、次元界と全く同様に持つ。これらの特性はアストラル界の通常の次元界特性に取って代わる。時にこれらの特性は物質界のそうした特性を模倣するため、心象風景内にいる生き物は概してほとんど慣れた快適なものだと感じる。クリーチャーの精神的写し身は心象風景内において現実世界の身体的個性と全く同一のものを持つ(同じアーマー・クラス、ヒット・ポイント、能力値など)。武器と鎧、魔法のものでさえ、心象風景の中では機能する。
心象風景それぞれは有情であると見做されるが、独自の意思に従って変化するのではなく、内側にいる者たちの意思に応じる。概して、心象風景を創造したクリーチャーがその特性を制御する。熟達の程度に依るが、創造者は心象風景の特性1つ以上を目的に適うよう変更できる。念術決闘のルールと一部の呪文によって他のクリーチャーも心象風景を変更できるが、通常は自分が心象風景の内にいると気付いている場合のみである。
心象風景の創造者は概して自分が自身の心象風景の中にいる時にその事実を知っているが、他のクリーチャーは心象風景の種類に応じて知らないかもしれない。
明確/Overt:明確な心象風景は引きずり込まれた者にとって心象風景である事が明白である。これは意図的に主人として他者を招いた一個人によるためか、目標らが念術攻撃を受け心象風景に捕われたと知っていて自分たちに何が起こっているかを理解しているためである。クリーチャーが自分は心象風景の中にいると知っている時、(マインドスケープ・ドア呪文を使用して)より容易に脱出できるが、この知識は没入型心象風景をそのクリーチャーにとって事実と何ら劣らぬものにする。知っている者も依然として心象風景の影響を受け得、有害な心象風景(下記の返照参照)からダメージあるいは状態異常を蒙り得る。二層の心象風景は常に明確である。
不明確/Veiled:不明確な没入型心象風景は更に狡猾だ。この起因型機構は目標を騙し、この現実は自分のあるいは他人の精神による被造物だと認識させない形でクリーチャーを捕える為の設計である。創造者の記憶がこの心象風景の基底を提供し、そして経験したことのない場所あるいは現象を自身の想像力のみを用いて納得させるほどに複製するのは難しい。
念術的心象風景の罠と呪文は、自身の不明瞭性を維持する為の現実世界から心象風景への繋ぎ目のない移行を含んでいる事がある。例えば、不明確な没入型心象風景の罠のかかった宝箱は視覚的かつ触知的な現在の状況からの継続性の起因となり、泥棒に、見つけた部屋にあるその容器の前に依然として跪いていると信じさせる。この効果がうまく発揮され十分に強力である場合、泥棒は何時間、何日、あるいは何週間も人生を自分の精神の中で過ごす事になり、その間肉体は宝箱の前で微睡み、食料と水の欠乏によりゆっくりと死んでいくかもしれない。
心象風景が発現する時、創造者は精神的場所の形状と大きさを決定する。以下の分類それぞれがありうる。
有限/Finite:有限の心象風景は明白に識別できる境界と空間の限界がある。そうした境界を超えて動く方法はなく、その先にはただ何もない。有限の心象風景は無限に続く石の中にある空洞であるかもしれないし、扉と窓の先には黒と虚空以外には何もない小屋の内側なのかもしれない。二層の心象風景は常に有限である。
無限/Infinite:この形状の心象風景は永遠に伸びているか、少なくともあらゆる実質的な目的において、知覚できる限りでは延々続く。これによって三次元内で無限の虚空が生じているかもしれないし、目視出来る限りひたすら伸びる完全な地面あるいは無限の大海が生じているかもしれない。この心象風景内の個別の物品は、無限の平野の中央に座す建物1棟や虚空内で浮遊する岩の塊溜まりといった独自の制限によって定義されているかもしれない。
内包型/Self-Contained Shape:この物理特性を見せつける心象風景は永久に続くように見えるが、その中のクリーチャーがどの方向に移動しようと空間的な繋がりは本当はその空間自身に折り返している。そうした心象風景はどこかで循環する階段で構成されているかもしれないし、一本道に見えるが開始地点と終着地点が同じ場所である曲がりくねる隧道かもしれないし、立方体の一面の出口が常に移動者を反対側へと戻す四次元超立方体かもしれない。例えば内包型の中世様式の城塞は旅人が入り口の門から出るのを認め、単に裏のポータルから再入場する事になるだけだと理解させるかもしれない。
心象風景は精神的被造物であるが、時に精神の返照を介して生理学的な効果が生じることがある。特出した念術の力を持つ創造者は自分にとっては無害だが他の住人全員にとっては有害な心象風景を創造できるが、多くの心象風景は万人に同様に影響を与える。
有害/Harmful:有害な心象風景を訪れている個人が蒙った傷と状態は現実のものだ。念術攻撃は、ダメージは本物だと脳を納得させる事で肉体を害す。二層の心象風景は常に有害である。
無害/Harmless:無害な心象風景の滞在者は依然として環境や他のクリーチャーが自分を害するのを感じるが、その傷と状態は現実のものではない――それらは宿主の肉体に何の身体的外傷も生じさせない。無害の心象風景で死んだクリーチャーは以前と変わらぬ状態で目覚める。
心象風景の創造者あるいは制御者はその心象風景内に存在する重力の有無を決定し、あるとする場合には引力の強さも決める。
通常の重力/Normal Gravity:重力は物質界と全く同様に機能する。
低重力:重力の効果は減少し、クリーチャーは跳躍、飛行、そして重い物品の運搬が楽にできるようになる。
高重力:重力の効果は増し、クリーチャーたちは跳躍、飛行、そして物品の持ち上げにはより力を働かせなければならないと分かる。
無重力/No Gravity:重力は存在せず、何者かによって動きを制御されていない限り複数の物品がお互いとの関係がどうあろうと空間を漂っており、制御されている場合は別の物品かクリーチャーにぶつかって動きが何らかの変化を遂げるまで一定の速度で直線に移動する。
客観的重力方向:重力は個々人が望むように機能し、個々人に依る。つまり、クリーチャー1体が居間の床に立っていて、別のクリーチャーが同じ部屋の天井でその表面を「下に」して立っているのが見える場合、それぞれは異なる重力を経験しており、お互いを「頭上に」「逆さまに」見ている。
心象風景内の時間の制御は難しい。大抵の場合、時間は現実世界の時間経過と1対1の比率で流れる。強力な念術を持つ個人のみが心象風景内の時間の流れを変えられる。
通常の時間流/Normal Time:時間は通常通り流れる。
遅い時間流/Slow Time:特定の状況では、心象風景の創造者は時間の流れを遅めたいと願い、心象風景内の者に、心象風景内での活動で現実世界の時間よりも時間を浪費させたがるかもしれない。これが起こる時、心象風景内の1ラウンドは完遂までに現実世界で2ラウンド以上かかる。
速い時間流/Rapid Time:別の例では、心象風景の創造者は心象風景の時間を現実世界よりも早めたいと願うかもしれない。その例では、心象風景内の2以上のラウンドの活動は完遂するまでに現実世界で1ラウンドしか経過しない。制御者は大量の時間を費やして複雑な精神的考え物を熟考し、それから心象風景から出て実際の時間を全く失わずに仲間と合流できるかもしれない。
一部の心象風景は創造者の属性を反映する明白な共鳴を示す。意図的であろうとなかろうと。多くの心象風景は属性を持たない。
軽度な属性/Mildly Aligned:軽度な属性の心象風景は住人が気付くか気付かないかという極めて些細な効果を生じる。このような状態では、その証拠は秩序のクリーチャーの為の整然とした庭や善属性の生き物の為の理想的な天候の長閑な田舎として表れる。
強度な属性/Strongly Aligned:強度な属性の影響を受けた心象風景は常に気付ける個性を示す。天候単体で正反対の対立属性の生物に不快感を、あるいはダメージさえ与えるかもしれない。強度な属性の心象風景の創造を願う創造者は獲物にこうした特質を気付かれないようにするのが困難であると気付くかもしれない。忍び寄る属性の影響は、内に捕われた者に全てが見える通りではないという手がかりを与えるだろう。
魔法――特に念術魔法――は心象風景の中では奇妙な振る舞いを見せる。
通常の魔法/Normal Magic:魔法が通常通り振る舞う没入型心象風景において、キャラクターとクリーチャーは呪文、擬似呪文能力、そして魔法のアイテムを通常通り使用できる。呪文は消費され、チャージ回数や使い捨てアイテムは費やされる。魔法によって与えられるダメージは本物であり、現実世界の肉体もその心象風景が有害である場合それに従って傷つく。しかし、物理的操作を要求する魔法(ポーションを飲むなど)は予期される方法通りには振る舞わない(キャラクターはポーションを「飲んで」何も起こらないことに気付く)。術者の精神がここを別の場所だと勘違いしている間に一部の占術魔法が現実世界で起こっているのは何かについての詳細を齎す場合、それは奇妙なあるいは馬鹿げた情報を提供するかもしれない。クリーチャーが心象風景から出る時、中にいる間に使った魔法は消費されている。
魔法の枯渇/Dead Magic:魔法は心象風景の中では全く働かない。魔法の解放に要求されるエネルギーの招来や操作の努力は妨害され、心象風景を創造したクリーチャーあるいは物体の念術的障壁を通り抜けられない。そうした事例では、心象風景は中に捕われた者を騙そうと偽りの正の結果を生み出すかもしれないし、出さないかもしれない(例えば、治癒魔法は実際に作用していない時に作用しているように見えるかもしれない)。結果が心象風景で発生するかに拘わらず、クリーチャーは魔法を消費しない。唯一の例外はその念術呪文が、魔法の枯渇する心象風景内でさえ動作して心象風景の働きを操作するよう特別に設計されたものであり、それは通常通り消費される。
魔法の変容/Altered Magic:魔法は心象風景内で全く異なる振る舞いを見せるかもしれない――増強、阻害、制限、あるいは暴走の次元界魔法の特性のルールを使うこと。
大いなる彼方の諸次元界は物質界の単純で雄大な不可思議からヘヴン、ヘル、そしてその中間にある有り得ない事物まで、あらゆる存在を内包している。秘術的伝統ではこの諸次元界の多元宇宙を、それぞれの層を備えた網状の球の連なりと現実の異なる景色を表すものの間にある空間へと概念化している。それら全ての中心にはアストラル界の銀色の海の中で停滞した、元素次元界と物質界の内方次元球がある。元素界は多元宇宙の未加工の構築材料であるが、正と負のエネルギーの属性を持つ次元界は生と死、創造と破壊を司っている。エーテル界の不可視の霧と渦は内方次元球の諸世界と接続し浸透しており、それと同様にアストラル界はそれらの世界を、神々の領域にして多元宇宙の魂の終着地点である外方次元球の無限の領界へと順番に接続している。
時に「古よりの知恵」と言及される秘要なる伝統は多くの次元界、擬似次元界、そして内方次元球と外方次元球の隅々を認めるが、神格たちの領土よりも内方次元球に焦点を置く傾向がある。心霊学者たちは自分たちの調査は多元宇宙の裏に隠された真実を解き明かすと、そしてこの秘密の含意に熟達すれば自身の定命の生を超えた巧みな力だけでなく死後の命さえ獲得できると信じている。彼女はそれからこれによって可能になる転生の循環へと入り、複数回存在とその反映の成功裡の輪転を超えることで肉体、生命、そして魂の練達を完了し、新たな意識の展望と不滅性を開眼する。
結果として、熟達者は最後の報酬を享受するか魔物の主人の下永遠の苦役を強いられるペティショナーの法廷に携わる事も、風、地、火、そして水といった物質世界の未加工の構成部品に携わる事もなくなる。彼女個人の、最後のより進化した存在への旅路は、基底元素よりも高みへ押し上げ、敬虔なペティショナーの除外された命運よりも自己決定できる。
一般的な諸次元界の見方は2つの対立する力を、多元宇宙の基礎をなす存在だと見做している:正と負のエネルギーを。これらの根本的な力夫々は、内方次元球の中枢において独自の広大な次元界を統括している。正のエネルギー次元界は命の源であり、負のエネルギー次元界は死の源である; どちらもお互いの対称として存在している。心霊学の大いなる秘密は正と負のエネルギーを対立する力と捉えず、実際には大いなる全体を2つに等分したものであると捉えている。これらの極峰は対立するものではないが、単一なる二重の輪転の不可欠な表層であるという。この二重性のうちの正の表層は宇宙の火、生きているクリーチャーに活力を与える生命の息吹だ。負のエネルギー次元界は同じ息吹を摂取し、塵へと帰させ、次に来たる者の為の道を舗装する材料へと再活用する。
古よりの知恵を深く掘り起こすと存在のあり方に関する更に魅力のある秘密が明らかになる。大いなる彼方の内にいる最古のクリーチャーたちの中にはアイオーンとして知られる謎めいた来訪者がおり、彼らは物質界の介添えでありこの多元宇宙そのものの設計者であり建築者であると言われている。諸次元界の深遠なる見方に相応しいこれらの根源的存在は常に平衡を維持する強力な二分法を発現している:生と死。運命と自由。創造と破壊。
アイオーンは、自分たちは「モナド」あるいは「万物の状態」として知られる多元宇宙を伴う上位の調和、生けるクリーチャー全員の超越的な阿頼耶識と結び付いていると信じている。彼らはこの調和を、正のエネルギー次元界の命を与える宇宙の火と負のエネルギー次元界の破壊的な虚空両方と同一視している。更に、彼らはこの宇宙の調和を自分たちのみに制限せず、モナドの概念の内に多元宇宙のクリーチャー全員を含めている。人間とプレローマ・アイオーンはどちらも宇宙の炎の放射である――アイオーンは単にその源にずっと近く自分はそれと意思疎通できると信じているだけであり、一方人間の単子的な霊魂は宇宙の火から深遠なまでに遠く、主に物質界に基づいた定命の問題に注意を注ぐ存在である。
厚い緞帳で遮られた輝くエネルギーの燃え盛る球体を想像してみよう。この球体は宇宙の火を表している。今度はその緞帳に空いた無数の小さな穴を想像しよう、それぞれによってこの輝く光の一部が通り抜けられる。門外漢の通俗的な視点からすると、各々の光の針穴は異なるもので、無二のものに見える。深遠なる観点はこの緞帳の裏を見通し、個別の光全ては単なる単一の発生源からの光条なのだと理解する。あるクリーチャーの霊魂はその緞帳の星空で瞬く明かり1個のようなものであり、定命の学者が「モナド」と語る時、彼らは通常、宇宙阿頼耶識、即ち無二の実体でありこの多元宇宙の普遍的霊魂、の個人のように見える表出に言及している。この理論体系における自身の立ち位置の理解に熟練する程に、永遠の運命を超越する力を保持できる。
下記の短い概要では概して秘要次元界として言及される領界への心霊的な視点を提供する。影界や元素界といった、一般的な理論体系において重要な次元界の多くは、多元宇宙の真実や定命の霊魂の旅路に関心を持つ熟達者の宇宙観において重要な要素ではない。心霊学はそうした次元界の存在を遠慮なく認めているが、ここでの観点に似た試行としてそれらを詳述してはいない。
正のエネルギー次元界はあらゆる生命の源であり、多元宇宙の心臓部に存在し定命の魂に生を与える宇宙の火である。この次元界に地表はなく、恒星の融解する中枢にも似た白熱する内側から放たれる、生命を与えるエネルギーの放射として存在している。生命と関連する次元界としては皮肉なものだが、遍在するエネルギーが定命の者の器では破裂させずに吸収できない程に強力であるため正のエネルギー次元界は定命の訪問者にとって極めて致命的である。幾つかの極点では宇宙の火の光の屈折が固い島を創造しており、そこではこの次元界のエネルギーはそこまで激しくなく、定命の者が理解できる形で生命が存在できるようになる。その広大な原野では、ジョティとして知られるフェニックスの羽をしたクリーチャーが、山のように高い一輪草に似た成長する木々の果樹園の世話をしており、その果樹園では艶やかな果汁の多い果実に似た未熟な魂が芽吹いている。余所者嫌いであるジョティは宇宙の火の奇妙な輝きを反射するよう特別に設計された複雑な水晶都市に住む。ジョティがこれらの建造物から旅をするのは稀であり、自身のエネルギー全てを、この多元宇宙に発生する霊魂の管理と防護という聖なる役割に注いでいる。ジョティの都市それぞれの中央には、物質界の宇宙にある星へと通じる印象的な門がある。新たな霊魂はこれらの門を通って光の波に乗り、定命の器への受肉を果たす。
孵化させている未成熟な霊魂の保護にジョティが従事しているとするなら、正のエネルギー次元界の他の主要な住人であるマナサプトラは定命の霊魂の霊的な発展の補助に従事している。こうした「精神の子ら」は、何十回もの定命の転生を経てそれぞれの段階でより宇宙阿頼耶識と調和していった定命の者の強力な念術的受肉者である。最も偉大にして最強のマナサプトラ――栄光を纏うソーラー・クマーラ――は宇宙の火の中心に棲まい、宇宙の火と意思疏通していると主張する。アグニシュヴァッタ、バルヒシャド、そしてマヌといったそれより下位のマナサプトラは内方次元球じゅうに広がって定命の熟練者たちを多元宇宙における心霊の在り方に入門させ、そうする事で彼らも再び一歩自分たちを産んだ光へと踏み出せる。
最古の原住民さえも知らない理由によって、神々しい存在たちは正のエネルギー次元界に侵入できない。神々の報復からの難民、あるいは特定の神性から重要な遺物を隠そうとする者は時に正のエネルギー次元界へと旅立ち、世界を破壊するアーティファクト、庶出の半ば定命の私生児、異端者、そして他の危険の驚くべき収集品を数世紀をかけて集めているジョティと折衝する。
通俗的な内球次元界への見方は負のエネルギー次元界に、正のエネルギーという双子の嫉妬深い仇敵にして、創造とは対になっている消費と破壊に適した虚空なる無限の闇、の役を割り当てている。負のエネルギーはそれ自体が命を与える正のエネルギーの暗い裏面であるが、それは大抵破壊の源あるいは道具であるにせよ、アンデッドの活動力でもある。心霊への古よりの知恵はこの矛盾しているようにも見える創造との関連性を把握しており、拡散律は、想像できないほど広大な進化の独自の循環に沿っているこの多元宇宙の粛々とした歩みに従い、次に来たるものの為に石板を掃いているのだと仮定する。完全化とは固定された状態ではない。完全化とは常に成長し変化するものだ。完全化を構成する「自然」――例えば、完全なる忘却――状態があるというのは、無制限に対し制限を課す程に有り得ない事だ。心霊学者たちはこの負のエネルギーによる破壊によって変化が可能になるのであり、また変化を促しているのだと信じている。
にも拘らず、負のエネルギーは、闇と恐ろしき領界の圧倒的な広がりを構成している不毛にして荒涼とした無の入海で蠢いているアンデッドの群れを維持している。この次元界は堅固な大地をほぼ提供しないため、そこのアンデッドは非実体で、そしてこの次元界の中心にある完全なる闇へと訪問者を無情にも導くように見える、魂を凍らす潮流を飛翔できる傾向がある。この内側の漆黒はポータルを通して物質界の宇宙に点在するブラック・ホールへと繋がっている。これらのポータルの物質界側へのアストラル的な旅行の記録には、事象の地平面の内側に捕らえられた非実体のアンデッドたちが群がる、ブラック・ホールの降着円盤の話への言及がある。
この次元界の内側の、負のエネルギーが完全になるほどに集中する場所では、結晶体が発現して完全なる拡散律の美しくも致命的な構造へと成長する。これらの結晶が怪異なる角度をなす時、この次元界はスケイドゥナーに命を与える。この不浄なるクリーチャーは生命と非生命を同等に憎んでおり、拡散律と破壊を蒔く為だけに存在する。どういうわけかそれらの発現ではこの次元界の拡散律のエネルギーがある程度吸収されるように見え、皮肉にもその忘れられないような雪片状の構造体の周辺地域は、そこ以外では敵対的なこの次元界において最も安定した生存しやすい場所になる。負のエネルギーの心配は減るが、スケイドゥナー自身が訪問者に対する重大な脅威である。
スケイドゥナーは霊魂の創造で意味を成す破壊の役割に関する知識を持っているがためにジョティは彼らを憎んでおり、そしてその情報が広まるのを恐れている、と古の智慧は示唆している。負のエネルギー次元界の最も恐ろしく悪意に満ちた住人である、ナイトシェイドとして知られる真に恐ろしきアンデッドはこの次元界を跨がる諍いに斟酌しない。彼らは、その結果がどのようなものであれ、宇宙の全ての生命を根絶し、物質界の星々を覆い隠し、宇宙の火を消火するという使命を持つ。
物質界は肉体的な感覚と受肉した存在の領界だ。魂はここでは物理的な肉体という殻の内に顕現し、その調和は余りに完全であるため大抵のクリーチャーは肉体的な形状全体と、自身の動きと運命を導く高次の単子的な魂の間の差異を沈思するのにそこまで時間を費やさない。ある魂の最後の目的地は定命の人生の間まだ決まっていないため、物質界は、死すべき定めの者を自発的にせよ強制的にせよその死後己の旗下に引き入れる事に熱心な神々や来訪者から注目を集めている。次元界的な辻である物質界はエーテル界及び影界と併存しており、内方次元球のあらゆる領界と隣接している。
ほぼ未知の力が物理的な肉体をアストラル的及びエーテル的な対称と結び付けているように、宇宙全体は連なる複数のレイ・ライン――この多元宇宙の多くの次元界に浸透している霊的な導管――によって繋ぎ止められている。レイ・ラインは物質界上のいたるところにあり、心霊的な御業の賢明な熟達者、秘術の利口な学徒、そして村の魔女でさえ、自身の目的の為にこれらを認識し操る術を学習する。これらのレイ・ラインのうちで最も有名なものの1つは、定命の者の受肉と死後を通してモナドの霊的な旅路を導く「魂の川」と呼ばれるものであると信じる者もいるが、それは単にこの多元宇宙の動脈の管網の一面に過ぎない。
エーテル界は感情の力の座であり、霊障と化物の霧に包まれた故郷であり、諸世界と内方次元球の間の存在し続ける扉だ。エーテル界はそうした次元界と併存しており、それらに浸透し、概してその輪郭と眺望を模倣するが、雷雨の中の薄闇にも似た移ろう濃霧と薄れる光の幕の遅々とした出と入りのお陰で視界は大いに減じられている。エーテル界内からでは、これらの隣接する世界は霞がかり不鮮明に見え、まるで霜の降りた玻璃を通して見ているかのようだ。隣接する次元界の住人はエーテル界を全く知覚できないが、念術的な感性を持つ寿がれたあるいは呪われた特定の定命の者は時にその眺望を垣間見る。エーテル界は内方次元球の他の諸次元界からは概して不可視であるため、イセリアル・ジョーントやイセリアルネスのような呪文の効果を受けているクリーチャーは、自身がエーテル状態でないクリーチャーからは見られない。通常、エーテル界のクリーチャーは物質界のクリーチャーを攻撃できず、逆もまた然りである。
エーテル界の靄の中では、内方次元球の土地の、歪んで輪郭のぼやけた変更版がその対照と重なっている。これは、この次元界の中のクリーチャーの生来の体重の欠如と相俟って、非実体の壁を通り抜ける事で容易に未知の場所を斥候できるという優位としてのエーテル界の利用を魅力的なものにする。しかしこの次元界の生来の住人がこの景色を恐ろしい眺望にしており、エーテル界への襲撃の大半は束の間の努力に終わると確信させる。その地域の脅威の中で最高に致命的な者たちの中には朱殷色のジルがいる――生きた定命の者に卵を植え付ける、好戦的な、次元遷移する来訪者だ。より悪い事に、狂笑するぞっとするようなナイト・ハグがエーテル界を夢の次元への通り道に使っており、夢の次元で悪夢の中へと滑り込んで定命の者の霊魂を誘拐している。
定命の者の捻れた残骸がエーテル界の住人の大多数を構成している。死によって物理的な肉体から解き放たれた一部の魂は深い感情的な苦悩によってエーテル界に繋がれたままとなり、それらを縛っている強力な感情の綱を断ち切るまで、多元宇宙の潮流に沿って進み無情にもボーンヤードへと向かう魂の川へと合流することができない。実のところ、死出の旅路で長く失速し続ける程に、魂は負のエネルギー次元界へと滑っていき、記憶と人格のより大部分が未加工の感情の苦悩と念術ダメージに呑まれていく。これらの霊魂は最終的に非実体アンデッドとして、よくレイスとスペクターという形で顕現する。
スピリチュアリストはエーテル界から霊を呼び求め、自分たちの身体的な精神を霊たちが棲まえる避難所として開放する。鍛錬を積んだスピリチュアリストの助けと実践により、霊は2つの世界の狭間にある薄幕として機能する幽き物質である心霊体の鞘で自身を包む事で隣接する次元界において物理的な姿を取る事さえ出来る。こうした霊の案内人は守護霊として知られ、自らを拘束しているスピリチュアリストに忠実ではあるが、エーテル界への感情的な接続は強力なままであり、最も優しい魂からさえ嫉妬そして激しい感情の爆発といった形で表れる。エーテル界の心霊体の有り様は、その次元界の住人の思考と感情に異常な迄に敏感だ。物理的な土地のエーテル版は、その様相と見た目からだけでなく、そこを跳梁する霊の記憶と印象からも伝わる。例えば、エーテル界において古い邸宅はそこの幽けき住人の時代の頃の外観をしているかもしれない。霊が最後の安息を見出した場合、その記憶は構造を維持できず、エーテルの廃墟になる。一部の非実体の霊はこの次元の感情的な在り方に余りに絡みつかれ、隣接する次元上の重複する場所にそうした心霊体の眺望を発現できるようになり、一時的に何らかの過去の受肉の不穏な反映で本来の眺望を覆い隠す。
同様に、外側の世界にあるそうした場所はエーテル的な反映の重複を保有し、定命のクリーチャーもイーサー二重体の形で物理的な形状と完全に重なるエーテル的ドッペルゲンガーを持つ。そのイーサー二重体は、クリーチャーに動く力、気として最も知られているもの、を与える存在である宇宙の息吹を収める器だ。この気というエネルギーは、イーサー二重体と物理的肉体を繋ぎ止め、その両方に活力エネルギーをもたらすチャクラとして知られる色とりどりのエネルギーの燃え盛る7つの渦へと集まる。このエネルギーはそのクリーチャーの物理的輪郭から2~3フィート伸び、そのクリーチャーの気質と心理状態について多くを明かす色彩豊かな心霊的エネルギーの輝きである独自のオーラを構築する。
あるクリーチャーのイーサー二重体、オーラ、そしてチャクラはそのような知識あるいはそれらを見る魔法を持つ者を除いては見れない。物質界からでは、その知識や魔法には《念術感応》特技を持つクリーチャーによる〈知覚〉技能の秘要なる使用あるいは多数ある呪文のいづれかが含まれる。エーテル界の内側からでは、そうした力の相互作用の観察に必要なのは単に精神集中だけである――何を調べるべきかを君が知っている場合、君はそれを明瞭に見ることができる。この情報の解釈は、勿論、別の問題だ。イーサー二重体は竜胆色あるいは淡藤色の光で縁取られている。アストラル・プロジェクションによって生成されるアストラル体あるいは夢の次元の明晰体とは異なり、イーサー二重体は通常、独立した意識の乗り物として振る舞う能力を持たない。
最後に、エーテル界の広大無辺の空間は、擬似次元界として知られる無数の現実の小袋の故郷である。これらの無二の領界の多くは、強力な秘術呪文術者の私的な領域か、小神の遊び場か、不可解なエロヒムの実験場か、決して解放してはならない宇宙への脅威となるクリーチャーの牢獄だ。
定命の者が眠ると、その者の単子的霊魂は物理的肉体から引き上げられ、夢の次元で発現する。この夢での化身は明晰体として知られ、夢見人の潜在意識に基づいて様々な形状を取りうる。物質界にいる無数の夢見人の精神はエーテル界で整形され、泡沫の擬似次元界でその夢見人の明晰体は自身の無意識に啓発されて不可思議な冒険を体験する。夢見人は自身の周辺を変容でき、《明晰夢》特技を持つ者は更なる制御方法を獲得する。夢の中で発動された呪文と使用されたアイテムは現実世界にあるものを枯渇させない。傷と状態はそのクリーチャーの起きている肉体と精神に何ら影響を与えない。不可思議な冒険は本物の宝物や経験を起きている存在に齎さないが、夢の中で得られた知識は時として起床世界で直面する挑戦の助けとなることがある。最悪の悪夢でさえ夢見人にとって真なる危険は皆無である。明晰体が死んだ場合、夢見人は起きるだけであり、恐らくは身震いする以外にその経験で悪いことはないだろう。《明晰夢》特技を持つクリーチャーは自身の精神における夢景の知覚をより鍛えているため、そのような経験から疲労状態で目覚める。
夢景内での経験は通常私的な出来事となる。希少な呪文(ドリーム・カウンシル等)、魔法のアイテム、そして他の能力によってクリーチャーは短時間の間他のクリーチャーの夢の次元に入り共有できる。そうした二次的夢見人は、その次元界の動的な変動性の特質に対して、また主要夢見人に対して干渉ができ、そしてされうるが、その擬似次元界の存在は依然として主要夢見人1体に左右される。主要夢見人が目覚めた時、その擬似次元界の存在は弾け、他の夢見人は夢――自身の作成した夢景に切り替わったもの――を見続けるか、目覚める事になる。
明晰体は夢に入る唯一の方法であるわけではないが、物理的な肉体で夢の次元に侵入した探索者は考慮すべき危険に直面することになる。プレイン・シフトのような一般的な次元間旅行の手法は夢の世界への輸送を提供しない――ドリーム・トラヴェル呪文といった専用の手段のみがその業を成し遂げる。物理的なクリーチャーが夢景に入界した時、彼は最初の状態を決定する為の判定を行う必要はないが、不可能な行為を試みる事も不可能になる(下記参照)。発動された呪文、使用された魔法のアイテム、そして他の消費された有限の能力は、そのクリーチャーが他の何らかの次元界を冒険しているかのように失われている。物質的な形状を持ったクリーチャーは夢景内で生産されたアイテムは使えるが、それらのアイテムは主要夢見人が目覚めた時か物質的な形状を持ったクリーチャーがその夢景を離れる時に弾けて消える。傷と経験は本物であり、クリーチャーが夢景を離れた後も残る。夢の次元内で死んだ物質的な形状を持ったクリーチャーは本当に死ぬ。主要夢見人が目覚めた時に未だ夢景内にいた物質的なクリーチャーは隣接する夢景へと、あるいは夢の次元と境を接するエーテル界へと押し出される。
夢見人の微睡む魂それぞれはエーテル界で発現する私的な擬似次元界である夢景1つを召喚するが、夢見人全員は集合的に夢の次元の上位の網に属している。無数の夢見人の集合体がエーテルの濃霧にいる時、夢間の遷移はより容易になり、雰囲気、感情、そしてクリーチャーさえある夢から別の夢へとより容易に零れ出せる。個人の夢景はほぼ理解されていない時の次元を掠め、夢は時に予知の要素を帯びる。
夢の世界の虚構が夢の次元からの逃走に成功することがある、通常は特別に想像性豊かな睡眠者が目覚めその擬似次元界が薄れ行く事によってその夢の現実感が最弱になる時に。そうした奇妙で遷移するクリーチャーはアニメイト・ドリームとしてエーテル界を彷徨き、定命の者の精神を喰らい、新たな睡眠者へと竄入し拷問できるよう他の夢を求める。
「ナイトメア種クリーチャー」と呼ばれる邪悪な階級が夢の次元には蔓延っており、夢景から夢景へと旅をし、犠牲者を狩っては拷問し破壊する。ナイトメア・ロードとして知られるこの化物のある序列は、奴隷化された狂った夢見人の、魂の萎んだ抜け殻が詰められた傀儡の宮廷にいる下位のナイトメア種クリーチャーを支配する。何らかの手段によってこれらのクリーチャーは、眠りの領界に対する恐怖の制限に縛られることなく物質界で発現する方法を見つけることがある。
ナイト・ハグは夢の次元における最高に苦しめる脅威の1つである。彼女らは夢々の間を自由に歩き、混沌あるいは悪の夢見人を探し、朝まで彼らの背に乗る。彼らは、夢と夢の間で遭遇するクリーチャー、あるいは獲物の夢景の中で暮らしているクリーチャーをその属性に拘わらず単純に斬殺する。ナイト・ハグは殺した敵の霊魂を宝石の中に集めて諸次元界中にいる常連に売却する。
多くの夢景は儚いもので、睡眠者が目覚めた時に薄れ行くが、再現や無数の夢見人による共有潜在意識によって強化されるような極めて強力な夢景は永遠に続く事がある。夢の次元で最も恐ろしく永続的な土地の中には奇妙な領地レンがあり、そこでは人間に似た住人が、奴隷でいっぱいの黒い船体をした多元宇宙の闇市行きの船でエーテルの海を航海している。
夢の次元は以下の特性を持つ。
動的な変動性:クリーチャーは明晰体で夢景に入った時、重要な装備がないや雪崩の只中の極地の山腹の上にいるといった不利益を蒙りながら夢の次元内に到着するのを避ける為の【魅力】判定(難易度15)に成功しなければならない。セーヴに成功するとその夢見人は完全な健康体で、全ての一般的な装備を纏って発現する(夢の中で使用される呪文と魔法のアイテムは現実世界では実際には消費されない)。しかし最悪の状況でさえ、明晰体は不可思議な――不可能ですらある――離れ技を行える。標準アクションとして、夢にいる間そのクリーチャーの【魅力】ボーナス(最低1)に等しい回数夢見人は呪文を発動する、発動されたかのように呪文の効果を得る、魔法のアイテムを召喚するといった不可能なアクションを試みれる。これには【魅力】判定(難易度10+「発動される呪文」あるいは「複製される呪文効果のレベル」または「召喚されるアイテムの術者レベルの半分」; 魔法的でないアイテムは術者レベル0である)の成功が要求される。他の不可思議な離れ技もGMの認可によって可能であり、【魅力】判定の難易度はGMによって決定される。判定に失敗する場合、その夢見人はその離れ技を行えない。物理的肉体を持って夢に入るクリーチャーは最初の判定を行う必要はなく、アイテムあるいは呪文効果を創造する又は不可思議な離れ技を行う能力を得ないが、それ以外では夢景の奇妙な現実に対処しなければならない。
全ての次元界を互いと接続する、銀色の大空であるアストラル次元界は、純粋なる思考と拡張された意識の領界だ。時折硬い物質の島がアストラル空間内で浮遊しているが、この次元界の大半は広大で永遠にも思える銀の輝きの虚空である。内方次元球と外方次元球の間の門であるアストラル界は、諸次元界の間を旅する実体から、ここに秘されている無数の擬似次元界を求めるあるいはこの広大な世界の内に住まう大量の孤立した霊の1体を探す探検家まで、旅人たちで充ち満ちている。辻としてのその有り様はアストラル界を極めて危険なものにしている。プレイン・シフトを介してあるいはローブ・オヴ・スターズといったアイテムを使用してこの次元界へと訪れる事は有り得るが、大抵の旅人はアストラル・プロジェクションといった呪文によって創造されたアストラル体の中に自身の霊魂を発現させて安全にそれを行う事を好む。
クリーチャーのアストラル体は物理的形態の透明版のように見え、通常は青色のあるいは菫色の柔らかな後光で縁取られている。シルヴァー・コードとして知られる弾性のある非実体のエネルギーの細い緒が、クリーチャーのアストラル体と気絶状態の物理的肉体を接続している。アストラル体が死ぬ場合、シルヴァー・コードは物理的肉体へと引っ込み、魂を馴染んだ座まで戻す(にも拘わらず結果として生じる心的外傷によって2の永続的な負のレベルという費用がかかる)。シルヴァー・コードは自身を傷つける試みの大半に抗うが、どうにかしてそれを破壊した場合、そのクリーチャーは即座に死に、その霊魂を収めていたアストラル形態はアストラルの奔流に投げ出され、無情にも外方次元球の表面からアストラル界へと伸びるボーンヤードの巨大な尖塔へと引かれる。思考の領界であるため、アストラル界は定命の者の思考形態から広まった概念、神話、そして伝説を表す実体の故郷である。ミーディアムたちはアストラル界の住人へと自身の意識を開いて、住人たちを招待して物理的形態を取らせ、彼らの影響力を物質界へと広める。
アストラル界を抜ける旅は奇妙な事態である、この次元界の客観的重力方向は、旅人夫々が重力が引く方向を選択する事を意味しているからだ。クリーチャーは足側が「下」でその方向に「落ちる」と想像する事で好きな方向に通常通り移動できる。この方法でクリーチャーは最初のラウンド10フィート、以降のラウンド夫々で300フィート「落下」する。移動は直線的でなければならない。キャラクターはフリー・アクションとして新たな重力方向あるいは停止の決定の為に難易度16の【判断力】判定を試みて良い; この判定は1ラウンドに1回試みれる。連続するラウンドでこの【判断力】判定に失敗したキャラクターは、成功するまで以降の判定で+6のボーナスを得る。この方法で移動する時、旅人は物理的な移動の感覚を持たない。そうではなく、アストラル界の風景(つまらない風景だが)がこちらに向かってきて、通り過ぎ、去っていくように見える。光の煌きが、凄まじい速度で動くアストラル体に伴って投じられる。
死者の、紐のないアストラル体は魂の川にそってボーンヤードへと流れてゆく。この工程の間に、定命の者の不純物は脱ぎ捨てられ、後に残るのはその魂の核そのもの、記憶、そしてそのかつての生命の一新された特徴のみである。外方次元球の神々は魂の川を侵すべからざるものと考えており、時にセレスチャル及び泥梨の来訪者を、強情な霊魂を審判へと案内し最終的には死後の報酬あるいは刑罰を受けさせに送る手助けに向かわせる。ナイト・ハグやアストラダイモンのような魂を収集するあるいは魂を貪る捕食者はアストラル界を食い物にし、通常は孤立した非実体のアンデッドのみを選ぶと自身に制約を課しているが、余りに頻繁に自身の永遠への途上である肉体を持たない魂の一行を略奪している。
アストラル界の他の住人には以下が含まれる、銀色の海を浮遊して時に通行人あるいは半永久的な居住者さえ背中に乗せているアストラル・リヴァイアサン; アストラル界の旅人から知識と念術エネルギーを収穫する奇妙なコールボーン; テレパシーを通して物質界のアデプトを導こうとする不定形のニルマナカーヤ・マナサプトラ; そしてシュルサガとして知られる、アストラル界の自分たちの領地への侵入者を外人嫌いの嫌悪感を以て見る、魔法的な円盤に乗った多次元界の狩人である人型の来訪者。
アストラル界の奥深くにはアカシック・レコードと呼ばれる、心霊哲学の根幹を為す古の智慧の肝の一部を構成している擬似次元界が横たわっている。アカシック・レコードはこの多元宇宙の歴史の一瞬一瞬それぞれの完璧な念術的記録を収める視覚的な図書館だ。ここに辿り着けた者はあらゆる瞬間あらゆる直近あるいは多元宇宙のあらゆる始まりまで遡れる程の遥か昔までの光景を観察できる。アストラル体から解放された死んだクリーチャーがボーンヤードで審判を待っている間にその目前で生前の走馬灯が走る時、その意識はアカシック・レコードへと旅立っている。サイコメトリストが触れた物の過去を読み取る時、彼は本当にアカシック・レコードに貯蔵された光景から印象を得ている。
普通の存在である歴史書とは異なり、アカシック・レコードは実際の出来事の完璧な記録である。現実の時間で同じ出来事を観察する2体のクリーチャーは起きたばかりの事に対し極めて異なる主観的な理解を抱いてしまうかもしれないが、心霊学者に自然の記憶だと語られるアカシック・レコードの中ではそのような混乱は有り得ない。「因果の王」として振る舞い定命の生命の出来事それぞれを記録してその者の死後に在るべき場所を測る謎に包まれたアイオーンたちによって、この擬似次元界は「リピカの書」としても知られている。
アカシック・レコードに何かを求める訪問者は、単に意識を観察したい瞬間へと向ければそれが目前に、図画付きの一葉のような二次元の画面ではなく恰も彼女が歴史の中の望む瞬間に本当に存在し目撃しているかのように全周囲に、現れる。観察者はいずれにせよそこでのアクションを変更も干渉も出来ない。
観察者はその出来事の速度を設定できる。彼はそこ以外では読み話される言語を理解できないとしてさえ、あるいは彼にとってその文化的標準の重要性や信号が異邦のものであってさえ、記録内のあらゆる意思疎通を完璧に理解する。求められた出来事が目撃者本人の人生のものである場合、彼は部外者としてそれを俯瞰するのを選んでも良いし、再びその出来事を彼の姿に潜んで最初にその出来事に関連した感情を再経験する臨場感溢れる体験をしても良い。
謎に包まれた時の次元に隣接しているアカシック・レコードへの旅は信じられない程に難しい。プレイン・シフトのような次元間旅行が可能な呪文は求める者をアカシック・レコードへと連れて行けない。心霊学の伝承はアカシック・レコードに「入り」そこで見れる幻視に影響を与える(例えば、過去の光景からキャラクターを助けそのキャラクターと共にアストラル界へと逃げる等)方法を幾つか示唆しているが、そうした行為は時の次元の流れの中で失踪し、観察した出来事の本当の過去の中で座礁し、まず間違いなく帰還できない、という程に危険が大きい。このような時間の状況への干渉は因果の王の勘気に触れ、報復に燃えるタイム・エレメンタルあるいはイネヴァタブルを解き放ち、あるいはハウンド・オヴ・ティンダロスとして知られる血に飢えたこの世のものならぬ捕食者を誘引する恐れがある。
アカシック・レコードは以下の特性を持つ。
1本の巨大な尖塔がこの外方次元球の表面からアストラル界の銀世界深くへと伸びており、死後の世界にある最後の審判に向かう魂の川のモナドたちを手招きしている。パーガトリーとしても知られるこの陰気な領地は、最後の審判を待つ数え切れない程の霊魂の住まいである。アストラル形態の皮を纏うこれらの陰鬱な逗留者たちは深い空想に浴し、記憶と魂の浄化の孤独な内面への旅の間に定命だった人生から光景を回顧する。
「カーマロカ」として知られる事もあるこの工程によって霊魂はその定命の人生における重要な光景を再探訪でき、かつての物質界における受肉の教訓を評価できる。自身の過去の精神上の問題を克服した時のみ、更に魂の川に沿って進める。魂がその過去の事態を思い出し解決すると、それはそうした出来事へのしがらみを解き放ち忘れ始め、来たるべき更なる栄光の(あるいは恐ろしい)変成へと魂が浄化される。そういうわけで外方次元球にいるペティショナーが自身の定命だった頃の存在の多くを覚えていることは滅多になく、定命の者の多くは過去の物質界での受肉を何も覚えられない。
古の智慧は時に生命の最後の瞬間を、定命を映す湖への凝視と、そして目前で閃くその者の存在全てへの嘱目と例える。定命の者たちの心霊的な進歩の導き手であるマナサプトラの教えは、最高に深遠なる命運とはその湖を垣間見る事だけでなく、そこに完全に入水して飲み込まれる事だと示唆する。定命を映す湖へと浸かった魂はこれまでの人生の宿業と経験を脱ぎ捨て、再度浄化された単子的霊魂を輪廻の円環の中の新たな物理的な肉体へと落とす。連続する転生それぞれでそのモナドは、宇宙の火によって表される宇宙阿頼耶識の概念の基礎となる多数の異なる受肉の経験を更に認識していく。この理解があればその霊魂の来訪者としての最後の受肉を掌握できる。深遠なる伝承によると、最高に修得した熟練者は自身の命運を選べ、強力な来訪者、比類なき定命の「昇化した達人」あるいは生き神にさえ成れるという。
霊魂の大多数は転生しない。それらがカーマロカの工程を終える時、そのアストラル体は最後の審判の準備が出来る。一部の霊魂にとって、カーマロカの進捗は迅速であり、そうでない者にとっては数年、数十年、あるいはそれ以上さえかかる。死の床での説法、信仰の破棄、あるいは阻止される魂を縛る誓いとは異なるこの出来事において、霊魂の潜在的な命運の擁護者たちは互いと論じあう。
ボーンヤードは以下の特性を持つ。
アストラル次元界の銀色の虚空は、内方次元球の端から、ボーンヤードから送られた霊魂がその信念と属性に調和した領界にある死後の最終的な目的地として到着する外方次元球の諸次元界へと伸びている。 ここに到着する頃、即座に来訪者あるいは神格の従者として受肉しなかったそうした定命の魂はペティショナーとして知られる事になる。定命の人生を超越しているため、彼らの過去の事物は時が過ぎるほどになくなっていく。置き去りにしてきたものを覚えている少数のペティショナーでさえ自分の為の懊悩は出来ず、代わりに目前にある極楽浄土あるいは地獄の景色に集中する。
時が経つにつれ、ペティショナーは更に更にと選ばれたあるいは割り当てられた次元界へと調和していく。一部は最終的にその次元界に関連する来訪者の形態にまで昇華できるが、そうできない者は単に肉体と魂ごとその次元界と完全に融合し、完全に現実から消滅し精髄――外方次元球の物質そのもの――となる事で自身の存在の旅路を終える。