呪文の使い手は戦闘に不慣れなわけではない。しかし術者をバラバラに引き裂く多数の残忍なモンスターを伴った無秩序で大掛かりな乱闘と、議論にけりを付ける方法を見つけようとするライバル間で行われるずっと洗練された決闘との間には違いがある。確かに、このような決闘は命に関わることもあるだろうが、決闘を取り巻くルールは戦闘を異なったスタイルのものにしてしまう――戦闘に参加したものが簡単に攻撃し防御することができることで、勝者を決める本当の技術と力を見出すことになる。
呪文決闘は戦闘の一形態である。しかし通常の戦闘とは異なり、参加者はみな決闘を始めそのルールに従うこと全てに進んで同意しなければならない。一方の参加者がルールを破ったなら、それがどのような結果となったとしても決闘に負けたものとみなされる。そしてルール違反を犯した参加者の仲間たちが攻撃的なアクションを続けたなら、その戦闘は通常の戦闘ルールに戻ることになる。
呪文の使い手の間で行われる決闘のルールは通常とても単純なものだが、両者が同意するのであれば個々のルールを変更したりや置き換えたりすることもできる。このような取り決めは互いに準備ができるように、一般に決闘の前に行われる。しかし決闘のすべての要素に対して言えるように、常にそうというわけではない。決闘は以下に示す単純なルールが使用されることがほとんどである。
使い魔や絆を結んだクリーチャーを除いて参加者はそれぞれ1人で戦い、決闘に参加していないものからの助力を受けてはならない。
参加者は魔法で戦わなければならない。スタッフのように呪文を使用することのできる、絆を結んだ物体や武器を除いては、近接武器や遠隔武器の使用は禁止とする。
この決闘が喚び出したクリーチャーを参加者の命令に従って(決闘の相手を直接攻撃するのではなく)お互いに戦わせることを想定しているのでない限り、招来されたかその他の手段で召喚されたクリーチャーの使用は禁止とする。このようなクリーチャーによる決闘の類は、ドルイド、サモナー、召喚術士の間で一般的である。
決闘は術者の一方が気絶やその他の戦闘が続けられないような状況に陥るまで続けられる。ホールド・パースンのような呪文では決闘は終了しないが、フレッシュ・トゥ・ストーンであれば目標がセーヴィング・スローに失敗すると終了する。決闘の中には死亡するまで続けられるものや、1人の参加者ないしチームが煙たい灰の山になった場合にのみ終了するようなものもある。
決闘はより刺激的で試しがいのある遭遇にするためのいくつか注意すべき例外を除いては、通常の戦闘のように行われる。
決闘のはじめに、個々の参加者は通常の戦闘のようにイニシアチブ判定を行う。決闘は常に計画されたもので想定されたものであるため、決して不意討ちラウンドは発生しない。その一方で、決闘の中には対決するお互いの側が尻込みし決心するまでの間待ってから始めるものもある。そのような場合には〈威圧〉〈真意看破〉〈はったり〉が通常のイニシアチブ判定に置き換えられる。どの技能が選択されるかは個々の参加者によって別々に決定され、それぞれの決闘に対する姿勢を反映している。
それぞれのラウンドの開始時に、参加者は決闘の状態を確認する(この状態の確認を忘れないように、GMはイニシアチブ管理表におけるそれぞれのラウンドの開始に印を入れてもよい)。参加者すべてが決闘を続けることに同意するなら、この決闘は継続する。もし参加者がひとりでも決闘から脱落することにしたなら、たとえ誰かが続けることを望んだとしても全ての参加者に対してこの決闘は終了する。決闘を終了させた参加者やその後援者は決闘の敗者と見なされる。決闘に残っている参加者たちは自ら決闘の再開に同意することもできるが、これは前回の決闘とは別のものとして扱われ、この決闘から脱落したものに影響をおよぼすことはない。
決闘に参加するものはそれぞれ自分のターンにおいて通常通り行動することができるが、呪文を発動するならその呪文は自分自身か決闘の参加者のいずれか1人に効果を及ぼすか目標とするものでなければならない(この参加者が仲間か敵のいずれにせよ)。例えば、決闘を行う魔術師はヘイストを自分自身以外の仲間に発動することはできない。しかしこの呪文を自分自身と仲間に使用することはできる。これはファイアーボールのような攻撃用の呪文にも適用される――決闘を行う術者はこの呪文の目標に自分の仲間の1人を含めなければならず、敵を除外して幾つかの近くのクリーチャーに影響をおよぼすことができない。
決闘を行う術者が毎ラウンド行う事のできる通常のアクションに加えて、決闘の参加者はそれぞれ後述する決闘相殺と呼ばれる特別な相殺呪文を行うことができる。
決闘の参加者はそれぞれ1ラウンドに1回、決闘相殺と呼ばれる特別なアクションを行うことができる。決闘相殺は呪文相殺に似たものだが、より扱いやすい。
決闘の相手が呪文を発動しようとするとき、目標となった呪文の使い手は1回のフリー・アクションとして〈呪文学〉判定(難易度 15+発動しようとする呪文のレベル)を行うことができる。この判定に成功したなら、この呪文の使い手は相手の呪文を識別でき、決闘相殺を試みることができる。この判定に失敗すると、この呪文に対して決闘相殺を試みることはできない。
決闘相殺は機会攻撃を誘発しない、1回の割り込みアクションである。決闘アクションを試みるために相殺を行う決闘の参加者は発動されようとする呪文と同じか、それより高いレベルの呪文もしくは呪文スロットを1つ消費しなければならない。(バードやソーサラーのように)呪文を任意発動するキャラクターは相殺呪文を使用する際に消費する呪文を、使用されたスロットに加えて選択しなければならない。相殺を行う決闘の参加者は15+呪文の術者レベルを難易度とした術者レベル判定を行わなければならない。(待機アクションを必要とする)本来の相殺呪文アクションとは異なり、この呪文のコピーとして発動された呪文を消費したからと言って成功は保証されない。相殺呪文を試みる術者は消費した呪文スロットのレベルと使用した呪文に従い、“表:決闘相殺の修正”に示したボーナスもしくはペナルティを判定に受ける。この判定に成功したなら、呪文は相殺される――その呪文は打ち消され失われる。そうでないならその呪文は通常通り発動し、相殺を試みた決闘の参加者はその呪文の効果に対して行う全てのセーヴィング・スローに対して-2のペナルティを被る。
また、呪文の使い手はディスペル・マジックやグレーター・ディスペル・マジックを決闘相殺として使用することもできる。決闘に参加する呪文の使い手がそのようにしたなら、発動された呪文を識別する必要はなくなり、いかなるレベルの呪文も相殺することができ、11+その呪文の術者レベルの難易度に対する術者レベル判定に成功する必要がある。ディスペル・マジックが決闘相殺として使用された場合、“表:決闘相殺の修正”に示されるいかなる状況によっても修正を受けることはない。
呪文相殺のために待機することは自らのアクションであるために、参加者は相殺呪文の待機と決闘相殺の実行を同じラウンドに選択することができる。これは参加者が複数の的に直面した場合や《呪文高速化》あるいは他の能力で同じラウンドに2つの呪文を発動できる場合にのみ役に立つだろう。
決闘は戦闘の別の形態として扱われるものの、通常は仲間やライバルとの間でのいさかいにけりを付けるために行われるものであり、普通は死に至らしめることもない。その結果、決闘には特定の賞を得ることを念頭において戦われる。秘術学園は重要な能力がある位置まで達しているかを確かめるために、価値ある賞品をかけて学生間を競わせる形で決闘を用いることで知られている。とある場所ではこのような類の魔法による決闘は一般的であるために、特定の区画が決闘のために特別に構成されていることもある。そのような決闘場は決闘による競争により起動することができる、(あらゆる攻撃が非致傷ダメージとなったり、敵を即座に殺したり永続的な害を及ぼすような呪文を阻害したり反射するような)特別な魔法が施されていることもある。だからといって事故が起こらないというわけではなく、このような「安全な」場所で脚や命さえ失う学生は複数に及ぶ。
状況によらず、決闘はその日を勝ち抜くために、双方が誇り、名誉、宝、そして命さえ賭ける真剣な出来事であることがほとんどだ。悪党がルールをごまかし様々な利益を悪用しようとする一方で、ずっと高潔な決闘の参加者はこの競争を魔法と機知のみを使用して戦場における自らの優位と技能を証明する機会として捉えている。