種族はキャラクターというものを構成する重要な要素であるが、詳細を体よくごまかすのは多くの場合簡単過ぎる。詰まる所、多くの人々は種族の基底を知っている:ドワーフはちびであり、エルフは長命であり、ノームは危険なほどの好奇心を持っている。ハーフオークは醜く、人間は――ええと、人間だ。一部のプレイヤーにとって、種族とはキャラクターのクラスに最も適合する種族修正を探すという単なる設問にすぎない。
しかしそれをするには種族は余りに多すぎる。ごつごつ山の地下深くでは要塞の防備の中で生活を送りたいという夢を持ってもらえるよう、ドワーフは古の英雄の末裔たちに悲しみに満ちた民謡を歌い伝える。森林都市の頂部ではエルフがエルフでない友人の1つである、目の前で年経ることも枯れることもない大樹とともに森林浴をする。キャラクターの種族の文化や慣習を調べることで、我々は彼女がどこから来て何を為すのかをより理解でき、そうすることで我々自身がキャンペーン・ワールドにより没入できるのだ。
この項は機構と香りづけの両面によって、君が7つの主要クラスの多くを理解することを助ける目的で設計されている。ここでなら君はその種族の情報の全てを見つけられ、それには新しい代替種族特性や適性クラスの利点といった新しいルールの選択肢、種族的副種別の調査、新しい種族アーキタイプ等が含まれる。この章で扱う種族には以下が含まれる。
エルフ:全員が高貴、あるいは時に傲慢であるエルフたちは長命であり、自然界に巧みに熟達している。エルフは秘術の業に卓越している。時に彼らは彼らは生来の自然との結びつきを使って新たな呪文を練り上げ、彼らの創造主のように時の経過で劣化しない、その他の魔法のアイテムを作成する。非社交的で時に内向的な種族であるエルフは、他者の苦境に無関心であるという印象を与えうる。
ドワーフ:このちびで頑強な山の要塞の防衛者は、時に頑固で諧謔を解さないと見られることがある。地面の財宝を掘り、鉱石や宝石から見事なアイテムを削り出すことで知られる彼らは地中深くの恵みと比べるものなき親和性を持つ。ドワーフは伝統と孤独を重んじてもいて、それは時に偏執さとなって現れる。
人間:野心が強く、時に勇ましく、そして常に自信に溢れる人間は、協力を考えさせるような普遍的な目的に向かって手を組んで労働する力を持つ。他種族に比べると短命ではあるが、その無尽蔵のエネルギーと気力によって彼らはその玉響の一生のうちに多くの事を成し遂げる。
ノーム:フェイの奇妙な国から追放されたこの小さな民族は気まぐれで奇矯な振る舞いで有名である。ノームの多くはむら気な芸術家であり鋳掛け屋であり、魔法、錬金術、そして風変わりな想像力が動力源である奇妙な装置を作成する。ノームは新たな実験で必要な物に対して強欲であり、時にそれで問題を引き起こす。
ハーフエルフ:時折先祖である2つの種族の世界の中間でもうけられることがあるハーフエルフは優雅と矛盾の種族である。その2つの祖先と生来の才能は時に目を瞠るような渉外能力と話術をもたらすが、ハーフエルフは時に強烈で陰鬱な孤立に立たされ、エルフや人間の社会に真に受け入れられることは永遠にないと認識することがある。
ハーフオーク:時に獰猛かつ野蛮、時に高貴かつ毅然としているハーフオークは、両親の種族の最高と最悪の性質を現すことができる。ハーフオークの多くは人間性の英雄の評価の典型となろうと、自身の獣のような性質を抑制し続けようと抗っている。不幸なことに、部外者の多くはハーフオークを、もしも憐れむべきモンスターや会話のできるモンスターでないとすれば単なる教養に欠ける期待の持てない厄介者と見做している。
ハーフリング:この小さな種族の者たちは家族、共同体、あるいは自身の生まれつきのそして無尽蔵の幸運を固く信じている。彼らの強烈な好奇心は時に彼ら自身の本質的な常識とせめぎあうことがあるが、ハーフリングは永遠の楽天家であり、人並み外れた技で最悪の状況から好機を掴みとる賢さを持つ。
各種族の項目はその種族の全般的な描写から始まり、それからその種族の肉体的な描写、社会、他の種族との関係、属性と宗教、冒険に対するありがちな動機と続いていく。
各種族の項目の補足説明欄にはその種族の一般的な種族特性の一覧がある。この情報は種族の種別、サイズ、視野、そして基本移動速度が書かれており、その種族の者の多くにとって一般的な他の特性も大量に書かれている。GMの許可があれば、君は下記の項に書かれているルールの、一般的な種別特性をいくつかの代替種族特性に変更するという選択肢を得るだろう。
代替種族ルールによって君は既存の種族特性を新たな物に交換することも、君のキャラクターの種族に基づいた新たな適性クラスの利点を得ることもできる。代替種族特性と代替適性クラスの一般的な種族の選択肢は下に概要がある。
代替種族特性:この項では7つの基本種族それぞれの代替種族特性を並べている。その多くは標準的な種族特性を反映していない種族の主題であり、例えばエルフの代替種族特性である俊足はその種族の優雅さと直感的な反応速度を反映して通常の鋭き五感と武器精通の特性の代わりに《疾走》特技とイニシアチブ判定にボーナスを与えるものだ。これらの代替種族特性の1つを取得するには、君はその種族が利用可能である既存の標準的な種族特性の1つ以上を交換しなければならない。君は1つ以上の標準的な種族特性を交換できるが、1つの種族特性を複数交換に使うことはできない。例えば、俊足の種族特性を取得したエルフは都市育ちの種族特性を取得できない、何故なら後者の特性も鋭き五感を交換するものだからだ。
種族的副種別:この項には主要種族それぞれの種族的副種別がいくつも書かれている。種族的副種別ではその副種族がどのように変わっているかについての簡素な描写をしており、その副種族が種族の標準的な種別特性の代わりに得る代替種族特性一式も書かれている。
適性クラス・オプション:これらのルールによって種族それぞれは、その種族の者が適性クラスの利点のレベルを得る際に代替の利点を獲得できるようになる。それらそれぞれは適性クラスのレベル毎に得る通常の利点――その種族の者がそのクラスの1レベルを取得する度に、追加の1ヒット・ポイントか追加の1技能ランクを得る――から交換するものである。通常の利点とは異なり、代替適性クラスの選択肢はよくそのクラスの特徴や選択肢に直接言及している。ノームの錬金術の器具への好奇心やハーフリングの天性の幸運など、その多くはその種族の好みを表している。
こうした適性クラスの選択肢の1つを選ぶとき、その利点は原則として1レベル毎に獲得される。特記ない限り、そうした利益は常にその利益そのものとは累積する。例えば、あるハーフリング・ファイターはレベルを得る度に足払いあるいは組みつきに抵抗する際の戦技防御値に+1を加えてゆくとする; この利益を2回選べばボーナスは合計で+2となり、10回選べばそのボーナスは合計で+10となる、といった具合に。
そうでない場合、こうした利点には数的な上限が設けられていることがあり、そうなってしまえばそうした適性クラスの利点を再度選択しても無意味となる。そうなってしまった状況では、君は適性クラスのレベルを得る際に標準的な利点を常に選択しても良くなる。
こうしたクラスの代替の利点の一部は利点が選択される度に(1ではなく)+1/2、+1/3、+1/4、あるいは+1/6しかロールに加えないことがある。これをダイス・ロールの結果に適用する際には必ず切り捨てること(最低0)。例えば、ガンスリンガーを適性クラスとしているハーフオークはその適性クラス・ボーナスを選択する度に銃把叩きの発露を使用する時の攻撃ロールに+1/4ボーナスを、ダメージ・ロールに+1/2を加えるが、これは1回だけ選んだだけでは実質的に+0であることを意味する(+1/4も+1/2も切り捨てれば0だからだ)。20レベル以降、この利益はハーフオークに(20レベル・ガンスリンガーであることの基本的価値に加えて)銃把叩きの発露を使用する際の攻撃ロールに+5のボーナスと、ダメージ・ロールに+10のボーナスを与える。
この項では拡張された種族各々のアーキタイプを2つ書いている(訳注:2つ以上書いている)。時にはこの項の項目にアーキタイプの代わりに新しいキャヴァリアーの騎士団やソーサラーの血脈が書かれていることがある。概してこの項の種族の者のみが並べられたアーキタイプ、血脈、あるいは騎士団を取得できるが、こうした選択肢は稀にその種族の種族特性や代替種族特性と相互作用することがある。アーキタイプは通常その種族の主題と関連性があり、その種族の能力と背景を補完するクラスの特徴を与える。冒険者は社会からみて畸形児であることがあるため、こうしたアーキタイプは種族の嗜好の平均から外れたものを主題としていることがある。以下はこの章で扱うアーキタイプ全ての一覧であり、種族ごとにまとめている。各アーキタイプ用のクラスは丸括弧の中に書かれている。選択肢がアーキタイプではなくソーサラーの血脈である場合、それは丸括弧の外で宣言される。
エルフ:太古の語り部(オラクル)、呪文舞踏士(メイガス)、呪縛者(ウィザード)、木の歌い手(ドルイド)。
ドワーフ:司教(インクィジター)、鍛冶司(クレリック)、石の王(パラディン)(訳注:戦鎚士(ファイター)が抜けている)。
人間:バッカニア(ガンスリンガー)、野生児(ドルイド)、皇族の血脈(ソーサラー)、行者(モンク)。
ノーム:実験的な銃匠(ガンスリンガー)、悪戯者(バード)、破壊工作者(アルケミスト)。
ハーフエルフ:茨の精製師(アルケミスト)、絆繋ぎの魔女(ウィッチ)、自然の招請者(サモナー)、荒野の影(レンジャー)。
ハーフオーク:血神の門徒(サモナー)、憎悪の激怒者(バーバリアン)、救い手(パラディン)、チンピラ(ローグ)。
ハーフリング:共同体の守護者(オラクル)、ちょろまかし屋(ローグ)、パウ騎士団(キャヴァリアー)、足下の達人(モンク)。
種族の各項の中で最後にあたるこの項ではアーキタイプではない、種族用の新しいルールの選択肢を提供する。新しい種族ルールは4つの項に分かれ、それぞれ以下で詳述する。
装備品:それぞれの種族用の装備品の項では、その種族が利用可能な、標準的、そして錬金術の装備品用の新しいルールを提供する。そうした装備品は公開市場でも見られ他の種族の者も購入できることもあるが、大抵の場合、それが錬金術の装備品なら特に、他の種族の者には効果がなかったり、効果が劣ったり、有害であることすらある。
特技:この項ではその種族の者用の新しい種族特技を提供している。これらの特技はその種族の特定の主題と張り合うものであるものであるが、多くの場合その種族の種族特性を強化したり拡張したりする。こうした特技は全てその種族であることを前提条件としているため、他の種族の者は取得できない。
魔法のアイテム:この項にある魔法のアイテムはその種族の者によってもっぱら作られ使われていることがある。一部は種族特性と相互作用する効果を持つが、そうでない物はより広く使われており、その種族以外の者でも使用できる。
呪文:この項の呪文はその種族の術者にとっては一般的である。その種族の者のみを目標とすることもあるが、その種族が秘密を厳しく保持しているだけのこともある; 他の種族の者が学習しそれを発動できるようになるにはGMの許可が必要となる。