知識は力だ。それは古代のダンジョンでも女王の宮廷でも変わらない。パスファインダー・ロールプレイング・ゲームでは、様々な〈知識〉技能でキャラクターが様々な分野の研究に通じていることを表している。〈知識〉判定はしばしば特定の質問に答えるために使われる。しかし、時にキャラクターが〈知識〉判定に失敗する可能性があったり成功の目がない場合もある。そのような時ほど、探している知識が忘れられたものであったり、隠されたものであったり、単純な技能判定で明らかにすると盛り上がりに欠けるような物語で重要なものであったりする。
そこで調査がゲームに登場する。以下のルールでは、キャラクターは図書館を訪れ、その文献を使って新しい情報を発見することができる。パスファインダーRPGコア・ルールブックに記載されているように、モンスター識別や地域の噂、神格と聖印や聖職者を対応づけるなど、単純な質問は依然として一回の〈知識〉判定で回答できるだろう。しかしこのルールでは歴史から名前の失われた古代ファラオの詳細な研究、地獄の契約の解釈、難解な伝承に関する包括的な文献調査といった、より複雑な問題に対応している。多くのキャラクターの構想は知識の探究に焦点を当てているため、以下のルールを使って図書館でテーマを調べることに時間を費やすことは、キャラクターやパーティのそういった側面を表に出す楽しい方法である。
これらのルールは、あらゆる伝承や知識の貯蔵庫の調査を表現できる。例えば、実際の図書館、広大な歴史的保管庫、複雑な法的契約、市役所の記録保管所、古代の巻物の貯蔵庫、神秘的な伝承の魔法文献、ウィザードの個人的な本と巻物のコレクション、サイキックの記憶宮殿など。ただし、これらのルールでは、図書館という用語でこれらありうる要素を包括して表現する。
どの図書館にも主要なデータが2つある。1つは複雑度であり、図書館の蔵書がどれだけ複雑で紛らわしいかを示す。もう1つは知識ポイント(KPと略記する)であり、図書館の収集した情報の合計を抽象的に示したものだ。
図書館内の特定の項目や質問を調査するために、キャラクターは図書館のデータ・ブロックに書かれている技能のいずれか1つを使用して、調査判定に成功する必要がある。ここでは、図書館のサンプルのデータ・ブロックを示す。調査判定は〈知識〉判定に似ているが、それぞれの図書館のデータ・ブロックには、その図書館の蔵書の性質に基づいて、調査判定に使用できる特定の技能が記載されている。図書館の複雑度は、その図書館の手がかりを解明しようとする調査判定の難易度として機能する。
調査判定を試みるには、連続した8時間の調査期間が必要で、出目10や出目20を使用できない。8時間調査時間を費やすたびに、調査判定に累積する+1のボーナスを得る。調査者が1ヶ月以上同じ図書館での調査をやめた場合、これまでのその図書館で獲得した累積ボーナスは失われる。主となる調査者を援護するために、追加でキャラクター2人までが援護アクションを行うことができる。加えて、一部の図書館はその蔵書の深さと完全性により、知識ボーナスを与える。このボーナスは、図書館内で行われる特定の〈知識〉判定(調査判定を含む)に対するボーナスを与える。通常、調査判定は未訓練の技能を使うことはできない。ただし、図書館の蔵書が極めて広範囲で、未訓練であっても判定できる場合もある。この情報は、図書館のデータ・ブロックに記載されている。
調査判定に成功すると、クリーチャーのヒット・ポイントにダメージを与える場合と同じように、図書館のKPを減らすことができる。KPが減少すると、KPが調査の閾値に達するたびに、キャラクターは図書館のデータ・ブロックに記載されている情報を取得する。調査判定が成功した場合にどれだけのKPが減らされるかは、主の調査者の性質と図書館の種類によって決まる。これは通常、キャラクターの訓練と【知力】を反映したもので、キャラクターの能力値修正によって修正されたダイス・ロールで表現される。詳細は後述の専門知識による調査を参照。
これらの基本値に加えて、調査判定が図書館の複雑値を5上回るごとに、図書館のKPが1ポイント減少する。調査判定で出目20を出すことは、クリティカル可能状態と同様に扱われる。調査者がまったく同じ修正値を使用してもう一度調査判定を行って(この判定には追加の時間はかからない)成功すればクリティカル・ヒットが確定し、KPの減少量は2倍になる。逆に調査判定の出目が1だった場合、自動的に失敗するだけでなく、図書館の複雑さのために調査者が間違った調査の道を辿ることにより、図書館のKPが最大KPの1/4だけ増加する。
図書館のKPが0になると、キャラクターはその図書館からできるだけのことを学び、図書館の脅威度に従って経験点を得る。追加の情報を得るためには、他の図書館を訪れ、そこで調査を続ける必要がある。
調査判定に成功すると、図書館のKPがある程度減少する。これはちょうど、戦闘での攻撃ロールが成功すると、クリーチャーのヒット・ポイントが減少するのと同じだ。この量は、調査判定に使用した技能における主の調査者の訓練によって決まる。主の調査者がその技能に10ランクを割り振っているか、その技能に対する《技能熟練》を修得しているか、その技能がクラス技能でかつ5ランクを割り振っているかのいずれかならば、1d12+【知力】修正値に等しい値だけKPを減少させる。主の調査者がその技能に5ランクを割り振っているか、その技能がクラス技能であるかのいずれか(だが両方ではない)場合、1d8+【知力】修正値に等しい値だけKPを減少させる。それ以外の場合、主の研究者は1d4+【知力】修正に等しい値だけKPを減少させる。
代替能力値/Alternate Ability Scores:GMが望むなら、〈知識〉判定で用いる能力値を【知力】から別の能力値に置き換える能力を持つキャラクター(伝承のオラクルやシャーマンなど)は、KPを減少させる際、同様に【知力】の代わりにその能力を使用しても良い。さらに、特定の図書館での調査に適したキャラクターは、別の能力値修正を用いて判定の結果を変更することができる場合がある。例えば、戦闘学校の図書館で研究を行っているファイターやブローラーは、その結果に【知力】修正値ではなく【筋力】修正値を使用することができるかもしれない。キャラクター・クラス、アーキタイプ、上級クラス、その他の選択できる項目に使用可能な様々なオプションを使用して、特定の図書館での調査にどのキャラクターが最も適しているかを決定するのは、最終的にはGMの仕事だ。
キャラクター・クラスを用いる選択ルール/Character Class Variant:この選択ルールでは、図書館のKPがどの程度減少するかは、記載された技能の訓練度合いではなく、調査しているキャラクターのクラスによって異なる。この選択ルールの目的において、キャラクター・クラスは3つの大まかな調査者区分、博学者、学者、初心者に分けることができる。博学者はスカルド、バード、ローアマスターのような、未訓練の〈知識〉の判定を行える能力を持つキャラクターである。博学者は調査判定に成功すると、図書館のKPを1d12+【知力】修正値だけ減少させる。学者は学術的な人物で、【知力】に基づく呪文の使い手やアルケミスト、インヴェスティゲーター、伝承のオラクル、伝承のシャーマンである。学者は調査判定に成功すると、図書館のKPを1d8+【知力】修正値だけ減少させる。他の全てのキャラクターは初心者として扱われ、教育を受けていないか学術調査の訓練を受けていない。初心者は調査判定に成功すると、図書館のKPを1d4+【知力】修正値だけ減少させる。
しかし、特定のキャラクター・クラスはそのクラスと能力に特に関連のある研究分野に焦点を当てた蔵書を持つ、特定の図書館での調査に適しているかもしれない。例えば、自分の信仰と関連の深い宗教図書館で調査するインクィジターやクレリックは、初心者ではなく博学者や学者とみなされるかもしれない。また、有名な国防大学で調査するキャヴァリアーやウォープリーストは学者とみなされる一方で、アーケイニストやウィザードは初心者として扱われるかもしれない。
本章の最後にいくつかの図書館のサンプルを紹介するが、冒険の物語や登場人物と対話するために特別に設計された図書館と合わせて使用すると、調査ルールを最も活かすことができる。次の指針を使用することで、キャンペーンの要求に合わせた図書館を作成できる。
ステップ1-図書館の蔵書の性質の決定/Step 1 - Determine the Nature of a Library's Collection:まず、どのような種類の図書館を作りたいのか、どのような種類の知識を保管しているのか、一般的なアイデアを考え出すこと。それは小さな村の図書館だろうか、首都の広大な、歴史的な蔵書量を誇るものだろうか? 最近発見された、忘れられていた修道院の保管庫だろうか、それとも有名な作家のメモを集めたものだろうか? 闇の魔法と不穏な儀式でいっぱいの古代の蔵書なのかもしれない。この図書館でPCが得られる情報は、その内容次第である。つまり、行方不明の王位継承者の正当な祖先について収められている図書館は、死霊術師による不死者の疫病の治療方法を収めた図書館とは異なる可能性が高い。
ステップ2-調査判定技能の決定/Step 2 - Determine Research Check Skills:調査判定で使用できる〈知識〉を割り当てること。これらの技能は図書館全体のテーマに関連するものでなければならない。図書館には通常、調査判定に使用できる〈知識〉が3つある。しかし小規模な図書館では2つしか割り当てられないこともあるし、ほかに類を見ないほど大規模な蔵書を持つなら4つ以上割り当てられることもあり得る。もし図書館をこれらの技能のいずれかは未訓練でも使用できるものとするなら、それも決めておくこと。
ステップ3-知識ボーナスの決定/Step 3 - Determine Knowledge Bonus:調査判定に使用される〈知識〉判定にボーナスを与えるかどうかを決定すること。全ての図書館がボーナスを与えるわけではないが、特定の研究分野に焦点を当てている図書館は、ほとんどの場合関連する〈知識〉に知識ボーナスを与える。典型的な図書館では、図書館の規模と蔵書の質に応じて、+2~+5までの知識ボーナスを与える。
ステップ4-脅威度の決定/Step 4 - Determine 脅威度:特定の冒険やキャンペーンの要望に応じて、通常はPCの平均パーティ・レベル(APL)に基づいて図書館の脅威度を決めること。脅威度が高ければ高いほど、キャラクターが調査を終わらせるのが難しくなる。表12-1を参照し、パーティに適した脅威度を決定すること。このとき、遭遇と同じ難易度の指針(簡単、並、歯応えがある、困難、伝説的)を用いること。例えば、6レベルのPC4人のパーティなら、脅威度6の図書館は並の難易度であり、脅威度5は簡単で、脅威度7は歯応えがあり、脅威度8は困難で、脅威度9は伝説的だ。図書館の脅威度を増やしても時間制約(ステップ7を参照)も失敗に対するペナルティ(その他の要素を参照)も存在しないため、いつかは調査が成功することを止められないことは覚えておこう。これらの要素をいずれも使用せずに、低レベルのパーティに対して極めて高い脅威度の図書館を設定する場合、同じ脅威度のモンスターと同様ではなく、適切な経験点に変更すること(減少させるか、一切与えないかになる)。
ステップ5-複雑度の決定/Step 5 - Determine Complexity:図書館の複雑度はかなり挑戦的なものであるべきだ。なぜなら、調査のルールでは、最高の調査者が主の調査者となり、他の調査者が援護するために2回の判定が認められ、しかも調査判定に追加のボーナスが加えられることは多く、継続する調査判定に累積するボーナスが与えられるのが前提だからである。単純な図書館については、表3-3に基本難易度を示す。並の図書館の場合、難易度に5を加えること。歯応えがある図書館の場合、難易度に10を加えること。極めて困難な図書館の場合、君は更に複雑度を上げることさえできるが、このような図書館での調査は非常に困難であるため、代わりに図書館の脅威度を増やす方が理にかなっているかもしれないことに注意。
ステップ6-KPの計算/Step 6 - Calculate Knowledge Points:図書館のKPの合計値は、図書館の脅威度×3に等しいことが多い。
1 |
11 |
2 |
13 |
3 |
14 |
4 |
15 |
5 |
16 |
6 |
18 |
7 |
19 |
8 |
20 |
9 |
22 |
10 |
24 |
11 |
26 |
12 |
27 |
13 |
28 |
14 |
30 |
15 |
31 |
16 |
33 |
17 |
34 |
18 |
36 |
19 |
38 |
20 |
40 |
ステップ7-時間制約の決定/Step 7 - Determine the Time Pressure:調査判定における累積ボーナスのおかげで、最終的には調査技能を訓練済みの1レベルのキャラクターであっても、脅威度20の図書館を完全に調査できるようになる。時間制約や失敗によるペナルティ(その他の要素を参照)がなければ、調査ルールはストーリーの進行を不必要に遅らせるだけになる。なぜなら、結果は問題にならないからだ。そのため、ほとんどの調査任務では、PCが成功するまでの日数に厳しい制限を設ける必要がある。図書館のKPを減らすPCの能力は、図書館のKPほど迅速には拡大しない。そのため、低レベルの図書館はKPを0に減少させるために1~2回の調査判定を成功させる必要がある。その一方で、最も学術的な人物であっても、脅威度20の図書館のKPを0にすることを期待するには6回の成功(より劣った調査者が率いている場合には、最低でも12回の成功)が必要だ。このように、低い脅威度の図書館はその調査の完了までに1週間程度の時間制約で十分だが、高い脅威度の図書館は、その調査の完了までに2週間~1ヶ月を必要とする。いつものように、時間制約を設計するときは、自分のグループを把握しておこう。もし高レベルのパーティに関連する技能のどれかで数ランク以上の人がいなければ、図書館の調査が完了する前に累積ボーナスを貯めるために、より多くの時間がかかるだろう。
ステップ8-調査閾値の決定/Step 8 - Determine Research Thresholds:図書館のデザインの最後のステップは、調査閾値の設定だ。一般に、25KP以下の図書館では5KP間隔で1つの調査閾値を持ち、5KP毎に調査結果が明らかになる。また、30KP以上の図書館では10KP間隔で1つの研究閾値を持ち、10KP毎に調査結果が明らかになる。しかしこれはあくまでも指針であり、調査閾値の正確な数とその頻度は、図書館にどれだけの情報が収められているか、あるいは物語がどれだけの情報を必要としているかによって決定されるべきだ。例えば、30KPの図書館は、20KP、10KP、0KPの調査閾値を持つように設定することもできるし、その代わりに25KP、20KP、10KP、8KP、0KPで情報を明らかにしても良い。
図書館の調査閾値の数と頻度を決定したら、それぞれの調査閾値で明らかになる特定の情報を決定すること。調査の段階で得られた知識は、伝えたい物語やキャラクターが調査している内容に基づいている、独自のものでなければならない。また、新しく明らかになる情報は前に得られた情報に基づいて構築されており、より具体的な情報と役に立つ側面に絞り込まれるものだ。
以下の要素を組み込むことで、調査をより困難にし、恩恵を与えるようにし、あるいは危険になるように図書館を調整できるようになる。
追加言語/Additional Languages:共通語以外の言語で書かれた書物だけで図書館を構成することもできる。そのような図書館で調査判定を試みるには、その言語を話せないキャラクターは〈言語学〉判定に成功するか、コンプリヘンド・ランゲージズのような魔法を通してでなければならず、この場合の魔法は調査の8時間の間でずっと効果を発揮していなければならない。〈言語学〉判定の難易度は言語と調査者によって決まる。民族語や国民語のような現在の人間の言語や、キャラクターの種族ボーナス言語に含まれる人間以外の言語(エルフが森語の文書を調査しようとする場合など)の場合、難易度は20だ。キャラクターの種族ボーナス言語に含まれない、人間以外の言語(ドワーフがノールの図書館を調査する場合など)や秘密の言語(ドルイド語など)の場合、難易度は25だ。古代語や古文、忘れられた言語、異世界の言語、極めて珍しい言語の場合、難易度は30だ。〈言語学〉を使用するキャラクターは翻訳を行うため、通常の頻度の1/3の頻度で進行する(累積する+1のボーナスを得るために8時間の調査を3回行う必要がある)。また、〈言語学〉あるいは魔法を使用するキャラクターは、母語であれば明らかにわかる意図の把握により多くの手間がかかるため、調査判定に-2のペナルティを受ける。
迷宮と隠し部屋/Labyrinths and Secret Chambers:図書館の中には迷宮になっているものもある。それはごちゃごちゃしすぎてパズルのようになっているものもあれば、意図的に秘密を隠すように設計されているものもある。迷路じみてないものの、深淵の秘密は隠された扉の中や、最も意志の強いものだけが発見できる秘密の部屋の中にあるかもしれない。
迷宮の場合、到達したKPの閾値毎に、調査者は図書館の混乱した隘路や曲がり道に深く入り込む。自分の求める道を見つけたり、次のKPの閾値への経路を見つけたりするには、慎重に計画するか(物体の痕跡だったり、糸を辿って戻ったり)、経路を見つけるために【知力】判定に成功する必要がある。【知力】判定の難易度は10、15、20などがあるが、図書館の大きさに応じた時間がかかる。それぞれの試みは数分や数時間だが、図書館が本当に巨大か異次元のものであれば数日かかってもおかしくない。調査者が出口を探している間、調査を進めることはできない。
隠し部屋の場合、一般には、KPの閾値が破られる前に、そのような場所への扉が発見されなければならない。あるいは、そうした部屋はシークレット・ページで隠され不可視の墨で書かれた一枚紙のようなより象徴的な物かも知れないし、秘密が明らかになり調査を進められるようになる前に念術決闘が要求されるかも知れない。
図書館での遭遇/Library Encounters:図書館にあるのは本と巻物だけではない。図書館は独立した部屋と部屋を異なる遭遇の場所として扱うことで、冒険やダンジョンに変えることができる。PCが図書館で調査を行う際には、図書館に住むモンスターと戦うことも、自分の調査に没頭しているNPCとロールプレイすることもできるし、災厄や罠、その他の障害(崩れそうな天井や壁、イクスプローシヴ・ルーンズ、グリフ・オヴ・フォーディング、シークレット・ページ、シンボル、ファイアー・トラップ、あるいは単にガタガタの梯子や不安定な棚)を突破することもあり得る。
加えて、図書館のあるひと部屋で調査するだけでは、キャラクターが図書館のKPを限られた値しか減らせないかもしれない。図書館のKPを完全に0にするには、PCはおそらく図書館内の複数の蔵書にあたり、調査完了までにそれらの部屋の全ての危険に対面しなければならない。ある種の図書館では定期的に護衛を生み出し、PCが図書館のKPを0に減らすまで毎日あるいは毎週、遭遇しなければならなくなるかもしれない。
失敗によるペナルティ/Penalty for Failure:図書館の中には非常に複雑で混乱させるものがある。それらでは調査判定に失敗すると、調査者の進捗が妨げられたり、頓挫したりする。これは何十年にも渡って蓄積されてきた、老齢のウィザードの本の寄せ集めのように極端に整理されていなかったものかもしれないし、地獄の契約のように意図的に読みにくくしていることが原因かもしれない。そのような図書館では、特定の回数の調査判定の後、あるいは調査判定が失敗した後に、様々な特殊なペナルティが発生する可能性がある。このような図書館では、調査判定における8時間毎の累積ボーナスが得られないかもしれない。加えて、調査判定に2回連続して失敗することで、調査者が調査の行き詰まりに達し、図書館のKPをこれ以上減らせないことになる場合もある。この場合、図書館のKPは最大値に戻り、調査者は図書館に関連した技能の1つ以上にランクを新たに割り振るか、解読するのに役立つなんらかの鍵または手掛かりを取り戻すまで、特定の図書館での調査を再び試みられなくなる。
調査報酬/Research Rewards:キャラクターは図書館の知識以上のものを得ることができる。貴重な財宝も見つかるかもしれない。GMは図書館のKPが特定の調査閾値にまで減少したときにのみ発見される財宝を図書館に配置できる。そのような財宝は巻物、呪文書、魔法の手順書や書物の形をしていることが多く、また、ヘッドバンド・オヴ・ヴァスト・インテリジェンスやヘルム・オヴ・コンプリヘンド・ランゲージズ・アンド・リード・マジックのような「知的な」アイテムの形をしていることもある。ロッドやワンド、フィギュリーン・オヴ・ワンドラス・パワー、クリスタル・ボールのような物体は、熱心な調査者によって発見されるのを待ちながら、より大きな本の山に埋れたり、隠されていることもある。
専門技能/Specialized Skills:特定の〈知識〉技能を図書館の調査判定に割り当てる代わりに、デフォルトの調査判定技能に〈言語学〉を使用し、図書館の蔵書の特定の性質を反映する専門技能を割り当てることもできる。このような図書館で調査を行うためには、キャラクターは〈言語学〉判定か、図書館のデータ・ブロックに書かれている専門技能1つの判定に成功しなければならない。この〈言語学〉判定は調査判定の通常のルール全てに従うが、調査者が専門技能で調査を進める場合、一般的な〈言語学〉を用いた場合とは異なり、+2の状況ボーナスを得る。これは、その図書館におけるより適正な技能を使用したことを示している。それ以外の点については、この要素は調査判定の他の全てのルールに従う。〈知識〉以外の技能も専門技能になり得る。例えば、軍事図書館では専門技能として〈職能:軍人〉を持つかもしれないし、有名な戯曲をまとめた保管所では〈芸能:演劇〉を持つかもしれない。難解な魔法の書籍であれば専門技能で〈呪文学〉を持つ場合もあるだろう。専門技能による状況ボーナスは、図書館が専門技能ルールを採用していなければ与えていたであろう知識ボーナスを置き換える。もし図書館が極めて有益なら、+2を超える状況ボーナスを与える可能性もある。
図書館は印刷された本、手書きの巻物、索引がついた一揃いの本のような実際のコレクションから、難解な知恵を集めた単一の百科事典、難解な言語に満ちた骨の折れるほど細かい法的契約文書まで、様々な形態で存在しうる。以下に示すのは、キャラクターが調査のために訪れる図書館の例示だ。これらのサンプル図書館には特定の名前ではなく、蔵書の性質や保存場所を示す一般的な名前がつけられている。これらの例は、GMが特定の用途の図書館を自作する際のガイドラインとして使用できる。
以下の示す図書館は、以下の形式を使用する。
図書館名/Library Name:図書館、保管所、書物、その他知識の集積の名前。
脅威度:図書館の脅威度。複雑さとそこに潜む危険の度合いを示している。
経験点:図書館のKPを0に減らすことで得られる経験値が示されている。
複雑度/Complexity:この値は図書館のKPを減らすために必要な調査判定の難易度を示している。
言語/Languages:ここには魔法の補助や〈言語学〉判定なく図書館を調べて回るのに必要な言語が記載されている。もし図書館が複数の言語を持っており、記載された全ての言語を読解する能力を調査者が持っていない場合でも、調査者は判定を行うことができるが、調査者は自身の知らない言語1つにつき、調査判定で-2のペナルティを受ける。
調査判定/Research Check:本項には調査判定を試みる際に使用される技能(通常は〈知識〉)が示されている。図書館がその広範さのために未訓練でも〈知識〉判定を行える場合、それも本項に記載される。
知識ボーナス/Knowledge Bonus:本項は、図書館が特定の〈知識〉判定に与えるボーナスが(存在する場合)記載されている。このボーナスは、その図書館で調査判定に使用できる全ての〈知識〉に適用される。その判定が調査判定か独立した〈知識〉判定であるかにかかわらず、図書館内でキャラクターが行なった、あるいはその蔵書で学習している際の全ての〈知識〉に影響する。
調査閾値/Research Thresholds:本項には図書館の調査閾値と、各閾値で調べた特定の情報が書かれている。
町の賢者が行方不明になって約1ヶ月になる。彼の研究で用いられた様々なメモや書物には、その故郷についての秘密が書かれているだけではなく、注意深い調査によって失踪に関する手掛かりが見つかることもある。
経験点 600
複雑度 13(簡単)
言語 共通語
調査判定 〈知識:自然〉または〈知識:地域〉; 知識ボーナス +0
KP 6
KP3 干潮時には、地下の洞窟に入る隠れた入り口が町の港の下に見える。多くの地元の伝説によれば、海賊たちは洞窟に戦利品を隠したという。
KP1 町の広場の花売りは、地元の聖職者の認知されていない娘だ。僧侶は純潔の誓いを行なっているので、この知識が公になれば、町民の尊敬を失い、町の僧侶としての地位を失うことになる。
KP0 町の外の森を根城とする盗賊のリーダーは、自分は近隣の男爵が退位させた領主であると主張している。彼はその地位と土地を取り戻すために軍勢を募ろうとしている。賢者の手記によれば、賢者はこの盗賊のリーダーを探し、その主張の正しさを証明する手段として自分の記録を使おうと計画していた。
残酷なウィザードが討伐されたため、彼が呪文書に配置していた防護がどのようなものかを知る唯一の手がかりは、彼の難解な図書館にのみ存在する。また、図書館には別の秘密もある。
経験点 2,400
複雑度 18(簡単)
言語 共通語
調査判定 〈知識:次元界〉、〈知識:宗教〉、または〈知識:神秘学〉(未修得); 知識ボーナス +2
KP 18
KP15 ウィザードの呪文書にはファイアー・トラップが仕掛けられている。
KP10 呪文書に仕掛けられたファイアー・トラップの合言葉は「エヴァリス」だ。
KP5 ウィザードが塔に閉じ込めたゴーストは、結婚指輪がゴーストの子孫に返されたときにのみ、永久に破壊される。ウィザードは結婚指輪を別次元界の拠点に隠した。
KP0 エルダー・ゾーンのギシジャークはガーネットが大好物で、特大の石を贈与すれば、地の次元界にあるこのウィザードの別次元界の拠点に人を案内できると確信されている。
ここの戦記、図式、戦闘計画のコレクションは膨大なもので、軍事戦略と要塞建設についてまとめたものが多い。しかし、秘密はより不確かな書物の中に隠されている。これらの秘密は公国の国境に集まっているホブゴブリンに関する洞察と、長い間行方不明だった家宝の運命、それを取り戻す可能性がある方法についてのひらめきを与えてくれる。
経験点 19,200
複雑度 32(平均的)
言語 共通語
調査判定 〈職能:軍人〉(未修得)、〈知識:工学〉(未修得)、または〈知識:歴史〉; 知識ボーナス +4
KP 36
KP30 『槌と金床』の主人サヴァルは、赤毛は戦王の祝福であると信じており、赤みを帯びた髪を持つ戦士には、高品質の武器や魔法の武器の値引きを行っている。
KP25 ゲイシー侯爵が「百槍の戦い」で命を落としたとき、彼の伝説の盾、ブルワークは回収されなかった。ホブゴブリンの無慈悲な戦長クラトゥックが、それを戦利品として手に入れたと信じられている。
KP15 詳細な設計図はカリン要塞の強固な箇所と脆い箇所を示している。北部国境の国境要塞は、全て同じ計画で建設された。
KP5 斥候の報告書によれば、黄色ヶ丘で軍隊を集めるホブゴブリンの武将が持つ盾は、ブルワークの記述と一致するという。この新しい司令官は、無慈悲なクラトゥックの子孫か、老齢の武将を戦で倒したかのどちらかだと噂されている。
KP0 ドミナル城の南東の壁にある秘密の通用門が、守衛の兵舎への経路となる。城は1ヶ月前にホブゴブリンの武将に落とされ、その作戦の拠点として使っていると考えられている。
この難解な図書館は、エインシャント・アストラル・ドラゴンが精巧な雲の宮殿に知識と記録を保存した、没入型の心象風景だ。その心象風景は明確で内包型だ。返照は無害で、通常の重力と時間を持ち、その中で魔法は通常通り作用する。
このドラゴンの記憶宮殿は非常に複雑で、極めて伝承的な形で分類された、数千年存在し続けた全ての経験が記録されている。さらに厄介なことに、外部の人が心象風景にアクセスできるのは、ドラゴンが眠っている間だけだ。ドラゴンは長い間(通常は7~13日)眠り込む傾向があるが、ドラゴンが目を覚ますと、どんな侵入者も心象風景から追い出される――ドラゴンが目覚めている間も心象風景の中にとどまるための秘密を見つけ出すまでは。
経験点 153,600
複雑度 46(複雑)
言語 竜語
調査判定 〈知識:次元界〉、〈知識:神秘学〉、または〈知識:歴史〉; 知識ボーナス +5
KP 54
KP50 ドラゴンはシュルサガの一団を救った。その援助と引き換えに、奇妙な円盤に乗ったこの人型生物は、ドラゴンやその仲間がシュルサガの領域に自由に入ることができる合言葉を与えた。
KP40 シュルサガの合言葉は「カイス・ナマスト」だ。
KP30 アストラル界の特に不安定な部分の深みで、シュルサガは他の次元界を襲撃するために使用を計画している大船を建造している。彼らは特にボーンヤード、負のエネルギーの次元界、正のエネルギーの次元界の襲撃に執着しているようだ。
KP20 ドラゴンが起きている間、侵入者が記憶宮殿の中にいる方法がある。彼らは記憶宮殿にいる間、最初にディメンジョナル・アンカーを発動し、ドラゴンが起きている間、飲食と睡眠をしてはならない。
KP10 次元界の地図によれば、アストラル界の周囲に多数のポータルが点在しており、他の知られている次元界のほとんどを通過できる。これらのポータルはマナサプトラによって生み出されたとドラゴンは信じていたが、それらを開くためにどのような鍵が必要なのかを知ることはできなかった。
KP5 アストラル・ドラゴンは、ジョティの一団のために正のエネルギーの次元界に保管していたかなりの財産を渡してきた。ドラゴンはジョティがこの財産を返すつもりがないことを心配している。
KP0 図書館にある地図と心霊儀式によって、心霊哲学と結びついたアストラル界にある擬似次元界、アカシック・レコードにクリーチャーが侵入できるという記述がある。