冒険者が探検する可能性がある不可解な場所の中でも、ダンジョンより致命的なものはない。地下迷宮、無数の致命的な罠、飢えたモンスター、そして金には替えられない財宝がキャラクターの持つあらゆる技能を試すのである。以降のルールは沈没船の残骸から広大な洞窟網まで、どのような種別のダンジョンであっても適用することができる。
ダンジョンには大別して4種があり、現在どんな状態にあるかによって分類される。多くのダンジョンは、この基本4種のバリエーションか、4種のうち複数を組み合わせたものである。古いダンジョンの中には、何度も別々の住人が住みつき、何度も別々の目的で使われたものがある。
廃墟と化した構造物:この場所にはかつては住人がいたのだが、もともとの建造者はこのダンジョンを(完全に、または一部)放棄し、別のクリーチャーがうろついて来て、入りこんだ。地下に住むクリーチャーの多くは、自分の巣穴にできそうな、放棄された地下構造物を探しているものだ。この種のダンジョンの場合、もともと罠があったとしても、すでに作動して無害になっている可能性がある。そのかわり、ワンダリング・ビースト(さまよう獣)はぞろぞろいるだろう。
住人のいる構造物:このダンジョンは今現在も使われている。ダンジョンには、(往々にして知性のある)クリーチャーが住み着いている。ただし、そのクリーチャーがダンジョンを作ったのと同じクリーチャーとは限らない。“住人のいる建造物”には家、要塞、寺院、操業中の鉱山、牢獄、軍の司令部などがある。この種のダンジョンでは、罠やワンダリング・ビーストの出てくる割合は低く、組織された守備要員の出てくる割合が高い。守備要員には、1ヶ所で番をしているものもあれば、見張りで歩き回っているものもあるだろう。罠やワンダリング・ビーストは、もし出てくるとしたら、ダンジョンの住人たちに制御されていることが多い。“住人のいる構造物”には住人にあった調度、装飾、物資がある。また、住人が中を移動するのに便利なようになっている。この種のダンジョンの住人たちは、情報を伝え合う手段を共有しており、また、ほとんどの場合は外部と自由に行き来できる。
ダンジョンの中には、一部は住人がおり、一部はカラだったり廃墟と化していたりするものもある。そんな場合、そこに住んでいるのはダンジョンのもともとの建造者ではなく、廃棄されたダンジョンの中に自分たちの基地、巣穴、砦を構えた知性あるクリーチャーの群れであることが多い。
大事なものの隠し場所:人は、守りたい大事なものを、地下に埋めて隠しておこうとすることがある。彼らが守ろうとするものは、莫大な財宝かもしれず、禁断のアーティファクトかもしれず、重要人物の死体かもしれない。いずれにせよ、こうした価値ある物品はダンジョンの中に安置され、周囲には障壁、罠、守護者が配置される。
“大事なものの隠し場所”型のダンジョンは、他の型と比べて、罠の出てくる公算は最も高く、ワンダリング・ビーストの出てくる公算は最も低い。この種のダンジョンは、見ばえより実用を優先して作られるのが普通だが、時には像や壁画といった装飾が施されていることもある。重要人物の墓などは特にそうである。
時として、墓や宝物庫が、生きた守護者が住むようなつくりに造られることもある。この方法の問題は、侵入を試みる相手がいない間も、守護者を生かしておかねばならないという点にある。こうしたクリーチャーに食料と水を与える方法としては、通常、魔法が一番の早道である。墓や宝物庫を作る際、ダンジョンを守るためにアンデッドや人造、つまり食料も休息も不要なクリーチャーを配しておくのはよくあることである。魔法の罠でモンスターをダンジョン内に招来して侵入者を攻撃させるようにしておく手もある。招来されたモンスターは用が済めば消えるからである。
天然の洞窟網:地下洞窟はあらゆる種類の地下モンスターの住みかとなる。自然の力で形成され、迷路のごときトンネル群によってつながった、これらの洞窟には、いかなるパターンも秩序も装飾もない。生成に知性ある者の力が一切関与していないので、この種のダンジョンでは、罠や扉の出てくる公算は最も低い。
洞窟にはあらゆる種類の菌類がはびこり、ときには巨大なキノコが大森林よろしく生育していることもある。地下の肉食生物が、菌類を食べる生き物を探して、この森をうろついている。ときには菌類がぶきみな燐光を放ち、“天然の洞窟網”の微弱な光源となっていることもある。一部のエリアではデイライトその他の魔法効果によって、緑の植物が育つのに十分な光があるかもしれない。
時として、“天然の洞窟網”が他の種類のダンジョンにつながっていることもある。人工のダンジョンを掘っていて、“天然の洞窟網”に行き当たったのだ。これにより、本来無関係な2つのダンジョンが合体し、奇妙な複合環境を生み出すこともある。“天然の洞窟網”と他の種類のダンジョンが合体すると、往々にして地下のクリーチャーが道を見つけて人工ダンジョンに入りこみ、住みつくようになる。
以降のルールは、ダンジョン内に見られる基本的な構成要素についてまとめている。
時として、石造りの壁――これは石を積み上げたもので、モルタルでつなぎ合わせてあることが多いが、常にそうであるとは限らない――が、ダンジョンを通路や部屋に分けていることがある。また、ダンジョンの壁は単に石を掘り進んだだけで、のみあとの残るざらざらしたものもある。また、自然にできた洞窟の、傷のないすべすべした石の場合もある。ダンジョンの壁を討ち壊したり打ち抜いたりするのは難しいが、壁に上るのは概してやさしい。
典型的な厚み |
|||||
---|---|---|---|---|---|
石造り |
1 フィート |
35 |
8 |
90HP |
20 |
質のいい石造り |
1 フィート |
35 |
8 |
90HP |
25 |
補強された石造り |
1 フィート |
45 |
8 |
180HP |
15 |
3 フィート |
50 |
8 |
540HP |
25 | |
5 フィート |
65 |
8 |
900HP |
15 | |
鉄 |
3 インチ |
30 |
10 |
90HP |
25 |
紙のように薄い |
1 |
― |
1HP |
30 | |
6 インチ |
20 |
5 |
60HP |
21 | |
― |
+20 |
×2 |
×23 |
― |
石造りの壁/Masonry Walls:もっとも一般的なダンジョンの壁である石造りの壁には、普通は1フィート以上の厚みがある。古びたものは往々にして割れ目や裂け目だらけで、その中には特に、厄介なスライムのたぐいや、小さなモンスターが潜んで獲物を待ち受けている。石つくりの壁に上るには、〈登攀〉判定(難易度20)が必要になる。
質の良い石造りの壁/Superior Masonry Walls:石造りの壁の中には、特に造りのいいものがある。普通よりでこぼこが少なく、石の噛み合わせがよく、すきまが少ないのである。こうした質のいい壁は、壁土や化粧しっくいで塗りこめてあったりもする。塗りこめた壁には絵、浮き彫り、その他の装飾が施されていることも多い。この種の壁は通常の石造りの壁に比べて、打ち壊す難しさは変わらないが、よじ登るのは難しくなる(〈登攀〉判定の難易度は25)。
補強された石造りの壁/Reinforced Masonry Walls:壁の片側あるいは両側や内部に鉄棒を配して補強された石造りの壁も存在する。補強された壁の硬度はもとと同じだが、ヒット・ポイントは2倍になり、破壊難易度は10上昇する。
岩盤を掘りぬいてできた壁/Hewn Stone Walls:この種の壁は、石塊の中に部屋や通路を掘りぬいた結果としてできることが多い。岩盤を掘りぬいた荒い表面には、しばしば小さな岩棚があって、キノコが生え、小さな生物が棲息している。蟲のたぐいやバット(コウモリ)や地下に棲むスネーク(ヘビ)など。壁に“むこう側”がある場合(つまり、その壁がダンジョンの2つの部屋を分かっている場合)、この種の壁の厚さは3フィート以上あるのが普通である。それより薄いと頭上の岩の重みに耐えかねて崩れ落ちてしまう危険があるのだ。岩盤を掘りぬいてできた壁に登るには、〈登攀〉判定(難易度25)が必要になる。
自然石の壁/Unworked Stone Walls:この種の壁面はでこぼこしており、平らなことはめったにない。触った感じはなめらかだが、小さな穴や隠れたくぼみ、さまざまな高さの岩棚でいっぱいである。また、塗れていたり湿っていたりするのが普通である。というのも、自然の洞窟ができる一番よくある原因は水だからである。壁に“むこう側”がある場合、この種の壁の厚さは5フィート以上あるのが普通である。自然石の壁に登るには、〈登攀〉判定(難易度15)が必要になる。
鉄の壁/Iron Walls:この種の壁は、もっぱらダンジョン内の重要箇所(宝物庫など)の周囲に巡らされる。
紙の壁/Paper Walls:紙の壁は視界を遮る障壁として配され、それだけの役にしか立たない。
木の壁/Wooden Walls:木の壁はしばしば、古いダンジョンに新しく付け加わった部品として存在する。動物の囲いや物の貯蔵場を造ったり、一時的な構造物であったり、あるいは単に大きな部屋を区切っていくつもの小さな部屋にするのに使われる。
魔法処理ずみの壁/Magically Treated Walls:この種の壁は普通より強固で、硬度もヒット・ポイントも破壊難易度も上がっている。魔法によってできる強度は、普通は硬度2倍、ヒット・ポイント2倍、破壊難易度+20までである。魔法処理ずみの壁は、壁に影響を与える可能性のある呪文に対して、セーヴィング・スローを行なうことができるようになる。セーヴ時のボーナスは2+(壁を増強した魔法の術者レベル÷2)である。魔法処理ずみの壁を作るには、《その他の魔法のアイテム作成》特技に加えて、壁を一辺10フィートの正方形1つぶん作るごとに1,500GPが必要になる。
狭間窓のある壁/Walls with Arrow Slits:狭間窓のある壁は、耐久性のある素材ならどんな素材からできていてもいいが、石造りや岩盤を掘りぬいてできた壁や木の壁が元になっていることが一番多い。狭間窓のある壁を使えば、防御側は壁で身を守りながら侵入者にアローやクロスボウのボルトを射かけることができる。このような場合、射手は良好な遮蔽を受け、これによってアーマー・クラスに+8のボーナス、反応セーヴに+4のボーナスを得、加えて“身かわし強化”のクラスの特徴を持っているものとして扱われる。
石畳/Flagstone:石造りの壁と同様、石畳も石を組み合わせてできている。大概はひび割れており、何とか平らというレベルのもの。われめにはスライムが育ちモールド(カビ)がはびこっている。ときには水が石と石の間を小川となって流れたり、1ヶ所に水たまりを作っていることもある。石畳はダンジョンの床のうち、もっともよく見受けられるものである。
でこぼこした石畳/Uneven Flagstone:時がたつと、石畳の一部はでこぼこがひどくなる。こうした床面を通って疾走や突撃を行なうには、〈軽業〉判定(難易度10)が必要である。失敗すると、そのキャラクターはこのラウンドの間、移動することができない。これと同じくらい不安定な床はルールに規定せず、例外とすべきである。
岩盤を掘りぬいた床/Hewn Stone Floors:岩盤を掘りぬいた床はごつごつ、でこぼこしており、ぐらぐらする石や砂利や泥などに覆われていることが多い。こうした床を通って疾走や突撃を行なうには、〈軽業〉判定(難易度10)が必要である。失敗してもキャラクターが行動できなくなるわけではないが、ただ、そのラウンドには疾走も突撃もできなくなる。
軽度の瓦礫/Light Rubble:小さな瓦礫の塊が地面のそちこちに転がっている。軽度のがれきは〈軽業〉の難易度を+2する。
重度の瓦礫/Dense Rubble:地面が大小の瓦礫に覆われている。“重度の瓦礫”に覆われたマスに入るには、1マスにつき2マスぶんの移動がかかる。“重度の瓦礫”は〈軽業〉の難易度を+5、〈隠密〉の難易度を+2する。
なめらかな石材の床/Smooth Stone Floors:仕上げをほどこし、時には磨きまでかけた、なめらかな石の床。この種の床は有能で丁寧な建設者が造ったダンジョンにのみ見られる。
自然石の床/Natural Stone Floors:自然洞窟の床は、自然洞窟の壁と同様にでこぼこしている。洞窟に広い平らな底面があることはめったにない。というより、自然洞窟の床は高さが一定ではないのである。隣の床面の高さがほんの1フィートしか違わないこともあり、そんなところを通るのは階段を登るのと同様にやさしい。しかし別の場所では、床が突然何フィートも高くなったり低くなっており、1つの床から次の床へ進むのに〈登攀〉判定が要る。自然洞窟の床に“踏み分け道”のようなものができて、はっきりとわかるようになっていれば別だが、そうでない場合、自然石の床のマス目に入るには1マスにつき2マスぶんの移動がかかる。また、〈軽業〉判定の難易度は+5される。疾走や突撃は、先ほど述べた“踏み分け道”を通って行なうのでない限り、不可能である。
すべりやすい床/Slippery:この段で述べたダンジョンの床はどれも、水や氷や粘液や血によって、より厄介になることがある。床がすべりやすくなっている場合、〈軽業〉の難易度は+5される。
格子/Grate:床に格子があり、その下には穴や、通常の床よりも低いエリアがある。格子は鉄製なのが普通だが、大きな格子の中には鉄で補強した木製のものもある。格子の多くはちょうつがいで開き、下へ行けるようになっている(この種の格子は扉と同様、鍵がかかっていることもある)。ただし、中には稼働しない、固定式のものもある。厚みが1インチの典型的な格子は、ヒット・ポイント25、硬度10、打ち破ったり壊して取りのけたりする難易度は27。
岩棚や張り出し/Ledge:岩棚や張り出しがあると、クリーチャーは低いエリアの上を歩くことができる。岩棚や張り出しはしばしば、縦穴の壁面をぐるりと囲み、地下水脈に沿って走り、大きな部屋の周りのバルコニーになり、あるいは射手が眼下の敵に矢弾を射かける足場となる。狭い岩棚や張り出し(幅12インチ未満のもの)を渡る場合、〈軽業〉判定が必要になる、失敗すると落ちる。岩棚や張り出しには手すりが付いていることもある。その場合、そこを移動する際の〈軽業〉判定には+5の状況ボーナスがつく。また、手すりのそばにいるキャラクターは、突き飛ばしによって岩棚や張り出しから突き落とされるかどうかを判定する際、対抗【筋力】判定に+2の状況ボーナスを得る(訳注:現在、突き飛ばしのルールは変わっていることから、この+2の状況ボーナスは戦技防御値に適用されると思われる)。
岩棚や張り出しには、へりに高さ2、3フィート程度の低い壁がついていることもある。こうした壁は、壁の向こう30フィート以内からの攻撃に対して遮蔽を提供する(ただし、防御側が攻撃側よりも壁に近い場合に限る)。
透明な床/Transparent Floor:補強したガラスや魔法の材質(それこそウォール・オヴ・フォースの場合もある)でできた透明な床があれば、危険な舞台を上から安全に眺めることができる。透明な床は時として溶岩の池、闘技場、モンスターを入れる囲い、拷問部屋などの上に配置される。また、防御側が重要なエリアに侵入者が入ってくるのを見張るのに使われることもある。
スライドする床/Sliding Floors:スライドする床というのは、実のところ床についた“落とし戸”の一種だと言ってよい(動いて、その下にあるものを明るみに出すのが役目だから)。スライドする床は、普通はごくゆっくり動くので、上に立っている者たちは、床がスライドしてできる隙間に落ちることはなくてすむ(逃げ場があれば)。尤も中には、急速にスライドするので、キャラクターたちが下に落ちてしまいかねないものもある。落ちた先に何があるのかはいろいろである。針の植わった穴、燃える油の大おけ、シャーク(鮫)でいっぱいの水中……いずれにせよ、こうした急速にスライドする床は“罠”扱いになる。
しかけ床/Trap Floors:しかけ床は突然危険なものになるように作られている。一定の重量をかけたり、近くのどこかでレバーを引いたりすると、床から槍が飛び出したり、隠れた穴から蒸気や炎がごうと吹き出したり、床全体が回り舞台よろしく一回転したりするのである。この種の風変わりな床は、戦闘の舞台となるエリアに配置されていることが多く、戦闘をより面白く危険なものにするようにできている。この種の床は罠と同様に作成すること。
ダンジョン内の扉は単なる入口や出口ではない。扉自体が遭遇であることも多い。ダンジョンの扉には大別して3種がある。木製、石製、鉄製。
一般的な厚さ |
|||||
---|---|---|---|---|---|
たてつけの悪い場合 |
鍵がかかっている場合 | ||||
普通の木製の扉 |
1インチ |
5 |
10HP |
13 |
15 |
上質の木製の扉 |
1.5インチ |
5 |
15HP |
16 |
18 |
2インチ |
5 |
20HP |
23 |
25 | |
4インチ |
8 |
60HP |
28 |
28 | |
2インチ |
10 |
60HP |
28 |
28 | |
3インチ |
5 |
30HP |
25* |
25* | |
鉄製の落とし格子 |
2インチ |
10 |
60HP |
25* |
25* |
― |
15 |
30HP |
― |
― | |
― |
10 |
30HP |
― |
― |
木製の扉:分厚い板材を釘止めしたもの。強度を上げるためや、ダンジョンの湿気で木の板が反るのをおさえるために、鉄で補強する例もある。木製の扉は最もよくある扉である。その頑丈さはさまざまで、普通、上質、頑丈の3種がある。普通の木製の扉(破壊難易度15)は、本気で扉を壊そうとする相手を通さないようには作られていない。上質な木製の扉(破壊難易度18)は、しっかりしていて長持ちするが、それでも打撃が続けば持ちこたえられない。頑丈な木製の扉(破壊難易度25)は鉄で補強されており、無理やり通ろうとする者に対して、かなりよい障壁となる。扉は鉄のちょうつがいで戸口の枠に取り付けられている。扉の中ほどには引き輪があって、これを持って扉を開けるようになっていることが多い。引き輪の代わりに鉄の引き棒が扉の一方または両方に付いていて、これが取っ手代わりになるというつくりの扉もある。住人のいるダンジョンでは、こうした扉は手入れが行き届いており(たてつけが悪くなってはおらず)、鍵もかかっていないことが多い。それでも重要エリアの扉は、鍵がかけられるものなら、かけてあるだろう。
石製の扉:堅固な石塊から掘り出した、この種の重く扱いにくい扉は、まん中を軸に回転するつくりになっていることが多い。とはいえドワーフなど、腕のいい工匠なら、石製の扉を支えるだけの強度を持つちょうつがいをこしらえることもできる。石の壁にある隠し扉は石製の扉であることが多い。それ以外では、石製の扉は何か大事なものを守るための頑丈な障壁として配置される。従って鍵やかんぬきがかかっていることが多い。
鉄製の扉:ダンジョン内の鉄製の扉は、錆を吹いてはいても堅牢で、木製の扉と同様にちょうつがいで固定されている。魔法によらない扉の中では、最も頑丈な代物である。鍵やかんぬきがかかっていることが多い。
扉の破壊:ダンジョンの扉は鍵がかかっていたり、罠があったり、補強されていたり、魔法の力で封印されていたり、単にたてつけが悪くて開かなかったりする。よほど力が弱くない限り、キャラクターなら誰でも、重い道具(大金槌など)を使って時間をかければ扉を打ち壊せる。また、特定の呪文や魔法のアイテムを使えば、キャラクターたちが鍵のかかった扉を片付けるのも簡単になる。
扉を斬撃武器や殴打武器で文字通り粉砕する場合、表:扉にある硬度とヒット・ポイントを使用すること。扉を打ち壊す際の難易度を決めるには、以下をガイドラインとして用いること。
難易度11~15:力の強い人物なら1回で打ち破れるだろうし、平均的な人物でも1回で打ち破れるかもしれない扉。
難易度16~20:時間があればほとんど誰でも破ることができる扉。
難易度21~25:力の強い、あるいは非常に力の強い人物だけが打ち破れる可能性があり、そうした人物でもおそらくは1回では破れないであろう扉。
錠:ダンジョンの扉には往々にして鍵がかかっている。このため〈装置無力化〉技能はたいそう重宝する。錠は通常、扉の内部の、ちょうつがいがあるのと逆側のヘリか、扉の中ほどに仕込まれている。組みこみ型の錠は、扉から鉄の棒が突き出して戸口の枠の穴にはまる仕組みだったり、鉄やがんじょうな木の棒が横すべりにすべって扉の向こう側でかんぬき状になる仕組みだったりする。一方、南京錠は扉の内部に組み込まれているのではなく、通常は扉についた輪っかと壁に付いた輪っかを錠前でつないでいる。もっと複雑な錠、たとえば組み合わせ錠やパズル式の錠などは、扉の内部に組み込まれているのが普通である。この種の“鍵のない錠前”は値が張るので、もっぱら堅牢な扉(すなわち、鉄で補強した木製の扉、石製の扉、鉄製の扉)に付いている。
〈装置無力化〉判定で鍵を開ける際の難易度は、20~30の枠内に収まることが多いが、これより難易度の高い錠や低い錠もあるにはある。1つの扉に2つ以上の錠がついていることもあり、それぞれ別々に解錠しなければならない。錠に罠が仕込まれていることも多い。毒針が出てきてローグの指をちょんとつっつくというのが普通である。
時として、錠を壊すほうが、扉全体を壊すより早いことがある。PCが武器で錠をがつんとやろうとしたら、典型的な錠は硬度15、30ヒット・ポイントとして扱うこと。錠が壊れるのは、扉と別々に攻撃された場合だけである。従って、組みこみ式の錠をこの手段で壊すことはできない。住人のいるダンジョンでは、扉に鍵がかかっている場合、必ずどこかに鍵があることをお忘れなく。
特殊な扉には、錠があっても鍵がないという場合もある。かわりに扉の近くにある複数のレバーを正しい組み合わせで上げ下げすることで開いたり、模様の書かれたボタンがたくさんあって、それを正しい順番で押すと開いたりするのである。
たてつけの悪い扉/Stuck Doors:ダンジョンは往々にして湿気が多いため、扉のたてつけが悪くなって開かなくなることもある。特に木製の扉に多い。木製の扉の約10%、木製でない扉の約5%は“たてつけが悪い”ものと見なすこと。長いこと忘れられていたり、放っておかれたりしたダンジョンの場合、この確率を2倍にすること(つまり木製の扉は20%、木製でない扉は10%になる)。
かんぬきのかかった扉/Barred Doors:キャラクターがかんぬきのかかった扉を打ち開けようとする場合、扉自体の材質ではなく、かんぬきの頑丈さの方が重要になる。木のかんぬきのかかった扉を打ち明けるには難易度25の【筋力】判定、かんぬきが鉄なら難易度30の【筋力】判定が必要になる。ただし望むならかんぬきを無視して扉のほうを攻撃して破壊し、かんぬきは開いた戸口に突き出したままでほうっておくという手もある。
魔法の封印:アーケイン・ロック等の呪文によって、扉を通過するのがより面倒になっていることがある。アーケイン・ロック呪文のかかった扉は、たとえ物理的な錠はなくとも、鍵のかかったものと見なされる。これを開けるにはノックかディスペル・マジックの呪文を使うか、【筋力】判定に成功しなければならない。
ちょうつがい/Hinges:ほとんどの扉にはちょうつがいがある。もちろんスライド式のドアにはついていない(代わりにレールかみぞがあって、簡単に片方にすべらせることができるようになっているのだ)。
普通のちょうつがい:このちょうつがいは金属製で、扉の片方の端と戸口枠や壁をつないでいる。扉はちょうつがいのあるほうに向けて開くことを忘れないように。このため、ちょうつがいがPCたちのいるほうにあれば、扉はPCたちのほうに開く。そうでなければ、扉はむこう側に開く。冒険者たちは〈装置無力化〉判定に1度成功するごとに1つのちょうつがいを取り外せる(もちろん、ちょうつがいが扉のこちら側にあればの話だが)。ほとんどのちょうつがいは錆びて離れなくなっているので、取り外す作業は難易度20。一方、ちょうつがいを打ち壊すのは難しい。ほとんどのちょうつがいは硬度10、30ヒット・ポイントを有する。ちょうつがいの破壊難易度は扉を打ち壊す際の難易度に等しい。
入れ子式ちょうつがい:このちょうつがいは普通よりずいぶん複雑なつくりで、よほど立派なつくりの場所にのみ見られる。この種のちょうつがいは壁の内部に仕込まれており、扉をどちらの向きにも開くようにしている。PCたちがちょうつがいに取りついていじろうと思ったら、まず戸口の枠なり壁なりをぶち抜かないといけないというありさま。入れ子式ちょうつがいは石の扉に見られることが多いが、木や鉄の扉に付いていることもある。
旋回軸/Pivots:旋回軸というのは実のところ、ちょうつがいでもなんでもない。単に扉の上下にこぶがついていて、そのこぶが戸口の枠に開いた穴にはまるようになっているだけのものである。旋回軸の利点は、ちょうつがいと違って取り外されずにすみ、作るのも簡単だということ。欠点は扉が重心(普通は中央)を中心に旋回するため、扉の幅の半分までのものしか通れないということだ。旋回軸のついた扉は石製のものが多く、先述の欠点を補うために横幅がかなり広くなっていることがよくある。欠点を補う方法その2は、旋回軸を片側に寄せ、扉の一方を厚く、もう一方を薄くして、もっと通常の扉に似た開き方をするようにしておくことである。壁にある隠し扉には、旋回軸を中心に旋回するものが多い。ちょうつがいがないぶん、扉があることを隠しやすいからである。また、旋回軸を使えば、本棚等の調度を隠し扉として働くようにすることもできる。
隠し扉:一見、単なる壁面(や床や天井)や書棚や暖炉や噴水のように偽装してある隠し扉を除けば、そこには秘密の通路や秘密の部屋がある。隠し扉のある区画を調べるものは、〈知覚〉判定(典型的な隠し扉なら難易度20、巧みに隠してある隠し扉なら難易度30)に成功すれば、隠し扉を発見できる(そこにあればの話だが)。
隠し扉には、隠れたボタンや踏み板を押すなど、特別な方法でないと開かないものも多い。いざ開くときには、通常の扉のように開くものもあれば、回転したり横にすべったり床に沈みこんだり天井に上がっていったり、はね橋上に下りたりして入口ができるものもある。ダンジョンを作る側は、隠し扉を床近くの低いところや壁の高い所に配して、見つけたり取りついたりするのを難しくすることもある。ウィザードやソーサラーにはフェイズ・ドア呪文があり、これを使えば彼らにしか使えない魔法の隠し扉ができる。
魔法の扉:ダンジョンの本来の建設者たちが魔法をかけたことにより、扉は探検家たちに話しかけたり、戻れと警告したりするかもしれない。損害を受けるのを防ぐために、硬度やヒット・ポイントや、ディスインテグレイト等の呪文に対するセーヴィング・スローが高くなっていることもある。魔法の扉は、扉の向こうに見える空間につながっているとは限らず、どこか遠くの土地や、ことによると別の次元界につながる門になっている場合もある。また、合言葉や特殊な鍵がないと開かないものもある。
落とし格子/Portcullises:これも言ってみれば扉の一種で、鉄の棒や、鉄のたがをはめた太い木の棒を組み合わせたつくりで、戸口の上の天井のくぼみから落ちてくる。横棒があって格子状になっていることも、そうでないこともある。巻き上げ機やキャプスタンを使って引き上げるしくみになっていることが多い。落とすときはすぐに落ちる。落とし戸の下端にはスパイク(棘)が着いていて、下に立つ者をおどし、落とし格子が落ちる最中に下をくぐりぬけようという気をなくさせる。下に落ちた落とし格子はそこで固定される。ただし中にはあまり重くて、固定するまでもなく常人には持ち上げられない代物もある。典型的な落とし格子を持ち上げるには【筋力】判定(難易度25)が必要となる。
石の壁、鉄の壁、鉄製の扉には、ディテクト系の呪文(ディテクト・ソウツなど)を妨害するだけの厚さがあるのが普通である。木の壁、木製の扉、石製の扉には、それだけの厚さはないのが普通である。ただし壁に仕込まれた、壁と同じだけの(かつ1フィート以上の)厚さがある石造りの隠し扉は、ほとんどのディテクト系呪文を妨害する。
ダンジョン内の階と階をつなぐ通常の方法は、階段を使うことである。階段の上り下りにおいてキャラクターは移動速度にペナルティを受けることはないが、疾走することはできない。階段では、〈軽業〉技能の判定の難易度が4上昇する。階段には特に急であるため移動困難な地形と見なされるものもある。
トンネルの落盤や崩落は実に危険なしろものだ。ダンジョン探検家たちは、落ちてくる何米トンもの岩に押し潰される危険に加えて、たとえ生き延びても山のように積もった石くれに埋もれて動けなくなったり、これまでにわかっている唯一の出口への道を閉ざされてしまったりする。落盤が起きると、崩落したエリアのまっただ中(埋没域という)にいる者はみんな埋もれてしまい、崩落の周辺部(流出域という)にいる者も転げてくる瓦礫でダメージを受ける。天井が弱くなっていて落盤の可能性があることに気付くには、〈知識:工学〉または〈製作:石工〉の判定(難易度20)に成功すればよい。〈製作〉技能は未修得でも【知力】判定で代用できることに注意されたい。ドワーフは弱くなっている天井の10フィート以内を通りがかっただけで自動的にこの種の判定を行える。
弱くなっている天井は、何か大きな衝撃や振動が始まれば崩落する可能性がある。また、キャラクターが天井を支えている柱の半分以上を破壊した場合も崩落が起きる。
埋没域内のキャラクターは8d6ポイントのダメージを受ける。反応セーヴ(難易度15)に成功すれば半分ですむ。その上で、いずれにせよ“埋没”する。流出域内のキャラクターは3d6ポイントのダメージを受ける。反応セーヴ(難易度15)に成功すればダメージを受けない。この反応セーヴに失敗したキャラクターは“埋没(buried)”する。
“埋没”したキャラクターは、その状態が続く限り、1分ごとに1d6ポイントの非致傷ダメージを受ける。意識を失ったなら【耐久力】判定(難易度15)を行なうこと。これに失敗すれば、以後は掘り返されるか死ぬまで、1分ごとに1d6ポイントの致傷ダメージを受ける。
“埋没”せずにすんだキャラクターは、仲間を掘り出すことができる。なにも道具なしに手だけでやるなら、1分ごとに自分の重荷重の5倍までの石や瓦礫を取り去れる。一辺5フィートの立方体の空間を満たす石くれの量は1米トン(2,000ポンド)である。つるはし、かなてこ、ショベルなど、しかるべき道具を持っていれば、手でやる場合の2倍の早さで石くれをきれいに取り除けられる。“埋没”したキャラクターは【筋力】判定(難易度25)に成功すれば自力で脱出することができる。
ダンジョンの暗くじめじめした片隅には、カビや菌類が繁茂している。呪文その他の特殊効果に関しては、スライム、カビ、菌類はみな植物として扱うこと。罠と同様、危険なスライムやカビには脅威度があり、キャラクターはこれと遭遇することで経験値を得る。
暗く湿った場所にあまり長く放っておかれると、ほとんどのものは有機物のねばねばに覆われる。この種のスライム(ねばねばしたもの)は、たしかに気色の悪いものかもしれないが、危険なものではない。暗く涼しく湿った場所には、カビや菌類がはびこる。ダンジョンによくあるスライムと同様に無害なものもあれば、きわめて危険な物もある。マッシュルーム、ホコリタケ、酵母菌、白カビ、その他いろいろの丸いキノコや細長いキノコや平たいキノコは、大方のダンジョン中に生息している。通常は無害であり、一部は食用に適する(あまりうまくなかったり、変な味がするものも多いが)。
ブラウン・モールド(脅威度2):ブラウン・モールド(茶色いカビ)は熱を食って生きており、周囲のあらゆるものから熱を奪い取る。通常は直径5フィートの斑点となって生育しており、その周囲、半径30フィートの気温は常に冷たい。このカビから5フィート以内の生きているクリーチャーは3d6ポイントの[氷雪]による非致傷ダメージを受ける。5フィート以内に炎を持っていくと、カビの斑点は即座に2倍の大きさになる。[氷雪]ダメージ、例えばコーン・オヴ・コールドによるダメージなどを与えれば、ブラウン・モールドは即座に破壊される。
グリーン・スライム(脅威度4):スライム(ねばねばしたもの)はダンジョンにはごくありふれたものだが、グリーン・スライム(緑色のねばねばしたもの)はその危険なバージョンである。触れた肉や有機物をむさぼり食い、金属すら溶かしてしまう。色は明るい緑色、水気があってねばねばしており、壁や床や天井に斑点のように群生して、有機物を取りこむにつれて増殖する。下で何らかの動きが(そしておそらくは食物が)あると、壁や天井から落ちてくる。
一辺5フィートのマスを占めるグリーン・スライムは、肉を1ラウンドむさぼり食うごとに、相手に1d6ポイントの【耐久力】ダメージを与える。接触した最初のラウンドには、グリーン・スライムをクリーチャーからこそげ落とすことができる。これにより、こそげ落としに使った器具は破壊される公算が高い。だが次のラウンドからは、凍らすか焼くか切り取るしかない。これにより、スライムの犠牲者にも同様にダメージが及ぶ。[氷雪]ダメージや[火炎]ダメージを与えるもの、太陽の光、リムーヴ・ディジーズの呪文はグリーン・スライムの一塊を破壊する。木材や金属に対しては、グリーン・スライムは1ラウンドあたり2d6ポイントのダメージを与える。このとき金属の硬度は無視されるが、木材の硬度は有効である。石にはダメージはない。
フォスフォレッセント・ファンガス(ヒカリゴケ):この地下で育つ奇妙なキノコは、ちょうど小さな森のようなかっこうで群生する。そしてスミレ色のおぼろげな光を放ち、その光はちょうどろうそくと同じように地下洞窟や通路を照らす。ごく稀に、松明ほどの光を放つものも存在する。
シュリーカー:この人間大の紫色のマッシュルームは、動くものや光源が10フィート以内に近づくやいなや、1d3ラウンド続くひどい音を発生させる。この叫び声により、50フィート以内で発生した一切の音が聞こえなくなってしまう。また、この音を調査するために配置された近くのクリーチャーを引き寄せる。シュリーカーの近くに生息するクリーチャーには、この音が食料や侵入者が近くにいることを意味すると学習したものもいる。
イエロー・モールド(脅威度6):この一辺5フィートのマスを占めるカビの群れは、平穏を乱されると有毒な胞子の雲を放出する。10フィート以内にいる者は、みな頑健セーヴ(難易度15)を行い、失敗すると1d3ポイントの【耐久力】ダメージを受ける。以降の5ラウンドの間、毎ラウンド頑健セーヴ(難易度15)を行ない、失敗したならラウンドごとに1d3ポイントの【耐久力】ダメージを受ける。頑健セーヴに成功したなら、この効果は終了する。イエロー・モールド(黄色いカビ)は火で焼かれると破壊される。また、太陽光を受けると活動を休止する。