あらゆる英雄の冒険は終わる。理想的にはキャンペーンの終わりで起こるが、全ての英雄がそこまで成功するわけではない。何人かは戦いにおいて体が不自由になり、復活の可能性もなく死に、汚い魔法によって見分けがつかないほど変えられる。他の者は冒険中に意志を失うか、冒険をするという動機とは無関係となる。キャラクターは、プレイヤーのスケジュール変更や参加の取りやめ、ゲームやキャラクターを遊ぶことへの興味の喪失のようなゲームの外への理由にとって途中で挫折するかもしれない。
こうなると、キャラクターは新しいことを始める機会を持つ――君は彼女をNPCに変えるためにGMに働きかけることができる。これを選ぶと、回答すべき質問が残る。彼女はどこへ行く? 冒険がない時、彼女は何をする? 同様にGMには興味深いジレンマが提示される:引退したキャラクターはNPCとしてキャンペーンに関わらなければならないか? もしそうなら、どうやって?
前のPCを使って世界を発展させストーリーを進めるのは、プレイヤーと設定の間の私的な結びつきを確立する簡単な方法であるが、使いすぎるとキャンペーンの焦点を、活動しているPCから盗んでしまうかもしれない。好きなPCがほぼ描写されないのを見て喜ぶ者は少ないため、GMはそのキャラクターのプレイヤーの希望も考慮に入れなければならない。
前のPCを含むという決定は軽いものではないが、しかし利益は危険を典型的に上回る。最後の戦いの後にさえキャラクターの行動はゲームの世界にとって本物で不可欠な結果があるという考えを、前のPCを使い続けることは補強する。
大部分の人は引退した冒険者のことを考えるとき、探検家から旅籠の主人への転職や保安官としてストリートをパトロールする慣れたベテランを考える。これらは文明の範囲内でより簡易なより安全な人生を送るために興奮と危険に背を向けたキャラクターである。これは特定の居住地と強い関係のあるものや、ダンジョンの外の世界で役に立つであろう技能や能力を備えているPCのための優れた選択肢である。君が自分のPCをこのように引退させることに興味があるならば、GMと協力して君のキャラクターが追求する専門分野の種類やキャンペーンの世界でどの場所がその役割において最高であるかを決定すること。
GMは、前のPCが地域にどんな影響を及ぼすかについて考えなければならない。3レベル・ウィザードが村や集落に引っ越したら波乱を巻き起こすが、大きな町や都市には少しも影響を及ぼさない。一方、15レベルに到達しそうなクレリックはキャラクターが控えめにしようと非常に苦労しない限り、どんな地域の社会的・政治的構造も急進的に変える。GMは引退のためのキャラクターのゴールがなんであるか、そしてどのように達成する予定かを議論しなければならない。例えば、新しい家やビジネスを建てたり買収したりしたいか? 自身で建てたり、地元労働者を雇ったりするだろうか? PCの結婚の予定は? 子供を持ったり、養うか? 地元のNPCとどんな関係を持ちたいか? 政治に参加するか? こうした質問への回答は、キャラクターが忘れ去られたり付属物になったりするのではなく設定の一部となるのを確かなものにする助けとなる。
新しいキャラクターを持つならば、引退したPCと、新しいキャラクターを含むそれ以外のPCとの協力関係を考慮する必要がある。君のPCを良い関係のままにすると、パーティのメンバーは今やアドバイスや助力に呼び出せる友好的な伝手を持っていることになる。GMが計画に関連した情報をプレイヤーに渡す必要があるとき、引退したPCは便利な代弁者として用いることもできる。しかしながら、GMは引退したPCにキャンペーンに積極的な役割を持たせないように注意する必要がある――引退は引退であり、古いキャラクターが現在のキャラクターとほとんど同じくらい含まれているのならば、君がほかのプレイヤーのよりスポットライトを2倍多くの時間浴びることを意味する。
君の引退したPCは君の新しいキャラクターに対し自動的な親友ではなく、金、魔法のアイテム、呪文発動の源であるべきではない(しかし、前のPCからの継承を処理する情報については親族の項を参照せよ)。君は君の引退したPCを味方のNPCとして考えるべきである――公平にしておくために、君が重要な厚意を得るためには〈交渉〉判定をする必要があり、そしてGMが、君の古いPCがキャンペーンの必要性に基づきどれくらいの援助を提供する気があるのかという最終的な決定者である。
PCでなくなったキャラクターは冒険を終了する必要はない; そのPCはもはやメインの冒険のパーティの一員ではないというだけだ。信心深い神秘主義者は彼女の教会のための神聖な巡礼を行うためにグループを去るかもしれないし、野蛮な戦士は彼女の部族を外からの侵略者から守るために祖国へ帰国するかもしれない。この種の引退は個人主義的なキャラクターや冒険している動機がグループの全体的な目的から独立している者に対し最もよく機能する。その元PCはグループの未来への努力において直接的な役割を果たさないかもしれないが、それは彼女がキャンペーンに影響し続けることができないことを意味してはいない。
GMが離脱した人物を関連させておく簡単な方法はほかのPCに彼女の活動を知らせるようにしておくことである。彼女は手紙や魔法的なメッセージ(センディングのような)を他のPCに送ったり、町のゴシップを通してバードから彼女に関するニュースと噂(特にPCたちが引退したPCの縄張りにいるとき)を聞いたりするかもしれない。引退したPCの個性に従いこれらの話は現実的であるかもしれないし大げさであるかもしれない。通常のルール通り、活動しているPCの成果をこれで覆うべきではない――その目的は引退したPCがスポットライトを奪うのではなく、常にPCに知らせたり楽しませたりするものであるべきである。
このアプローチはGMに、キャンペーンにおける将来を示すかさらなる冒険へパーティを導く、輝かしい道筋を提示する。例えばPCの懐かしい味方が近くの町で数セットの大型用の武器と鎧を売ったとPCは聞くかもしれない、そしてPCがその地域に到着すると、ヒル・ジャイアントのギャングに攻撃される事になるなど。地方史と伝説を肉付けするために引退したPCを使うことはキャンペーンにより強い連続性の感覚を与えもする。
ニュースが真実であるか単なる嘘であるかは勿論、GMとその前のPCを作ったプレイヤー次第である。その引退者は、彼女の過去からの問題に対処し続けているかもしれないし、もしくは彼女が直面することに特に適している脅威と戦っているかもしれない。あるいは彼女はあまり直接的でない方向でグループを援助することを選ぶかもしれない、活動しているPCのためにキャンペーンの悪党を追い詰めるか、残ったままの未解決の問題を解決するなどだろう(PCが破壊した寺院から逃れた最後のカルトの信者を追いかけるなど)。引退したキャラクターは気が付いているPCの有無にかかわらず共通の敵に対する第二の戦線と戦っているかもしれない。
引退したすべてのキャラクターがPCを助けるために働くというわけではない。君のキャラクターは古くからのチームメイトに対する若干の悪意を心に抱いているかもしれないし、適当な刺激を与えられて完全に背を向けてさえいるかもしれない、グループ内に個人間の論争があるならば特に。パーティの弱点を知っているため、かつて友人であった相手は危険な敵となる。キャンペーンの悪党として前のPCを使うことは2つの大きな利点を持つ。1つ目に、通常、同じレベルの標準的なNPCより少し強力なキャラクター・シートを使うことによってGMは時間を節約できる。2つ目にPCから悪党になったPCはプレイヤーの感情をすぐに魅了する。しかし後者の理由は正に、GMが悪党として前のPCを用いるのに慎重になるべき理由である。度重なる裏切りは素早く裏切りの力を失わせ、プレイヤーに疲れ切った、冷笑的な感情を残すかもしれず、グループに加わる新しいPCに対して疑わせてしまうかもしれない。多くのプレイヤーは自分の英雄が悪党になるのを見ることが好きではないので、GMは引退したPCのプレイヤーに許可を取っておくべきである(驚きを台無しにしないように慎重に行う)。当然のことながら、GMはプレイヤー1人と協調して、パーティ内で一仕事終えた後に悪党に転じさせたいとその2人が願う新しいPCを導入するのは有りだ。
良い裏切りとは予想外だが後で考えれば信じられるものだ。GMとプレイヤーが合理的な動機を作ることができる限り、引退のこの方式はパーティがすぐに疑わないであろうキャラクターにおいてうまく機能する。時々状況はこれを簡単にする。死者として残されるか、戦争で死んだと信じられているキャラクターは生きているかもしれなく、彼を捨てた友人に対する復讐を誓うかもしれない。彼はPCを(まさしく文字通り)祟るためにアンデッド・クリーチャーとして帰ってくるかもしれず、もしくはフレッシュ・ゴーレムのような異なる形で戻ってくるかもしれない。裏切りの明らかな動機がなければ、GMは前のPCが最も評価するものを考慮し、その情報を使ってそのキャラクターにパーティに対し反旗を翻えさせるべきである。最も正義のキャラクターでさえ、適切な状況下で元友人に牙を剥くかもしれない。おそらく悪党たちがそのキャラクターの家族を人質に取って協力を強制しているか、もしかしたら適切なサジェスチョン効果やドミネイト・パースンの呪文、悪魔的な憑依のような単純なものかもしれない。
引退したキャラクターの裏切りを最大限に活用することのカギは、GMがそれをキャンペーンのストーリーと結び付けることだ。単独で動くかつてのPCは一つの戦いや緊張したロールプレイングのシーンにはよいが、それだけだ。しかし定期的な悪党になるものはPCをストーリーに引き入れる更なるフックを与え、プレイヤーに裏切りの感情に従った行動をさせる。またそれらは彼らに前のPCを裁判にかける――もしくは改悛を齎す――機会を与える。