ウィザードには世界中からの様々な歴史があり、伝説には彼らの多くの不思議な力がつきものである。このセクションでは秘術の発見(ウィザードの学べる魔法の秘密)、1つの新しいアーキタイプ(巻物使い)、そして2つの新しい魔術系統(金の元素と木の元素)を紹介する。
ウィザードはその人生の多くを深き真実の発見に費やし、それが生きることそのものであるかのように知識を集める。ウィザードの力は行使する呪文とは限らない。呪文は単にその力が外に発露される最もわかりやすい例に過ぎない。ウィザードの本当の力はその透徹した知性であり、工芸への専念であり、存在を支える根源を理解して実存の真実の表層を剥ぎとる能力である。ウィザードは呪文の研究に多くの時間を費やし、黄金で満たされた部屋よりも未知の図書館を見つけたがる。ウィザードは隠遁した本の虫になる必要はないが、未知に対して激しい好奇心を抱かねばならない。秘術の発見はこの魔法への妄執の結果である。ウィザードは通常の特技あるいはウィザードのボーナス特技の代わりに秘術の発見を学ぶことができる。
クリーチャーが100フィート以内にいる場合、ウィザードは移動アクションにより意図的に名前の発音を間違えることで、その本質を歪めて罰し、1ラウンドの間、不調状態かつよろめき状態にすることができる(クリーチャーが通常のこれらの状態に対する完全耐性を持っていてさえ)。ウィザードはサイレンスの範囲内では真名を使用できないが、クリーチャーがこの能力から害を受けるにあたり、ウィザードの声を聞ける必要はない。
クリーチャーを呼ぶことを控えて、憤りをいくばくか和らげるために報酬をときどき与えてやることで、ウィザードは最善の利害関係を得る。来訪者の種別と気風に応じた適切な報酬を提供することなく繰り返し酷使するなら、クリーチャーは事故を起こして真名の記憶を破壊するなり、二度と呼ばないと誓うまで妨害や危険にウィザードを悩ませるなり、あるいはこうした仕組みやその手下にも関わらず積極的にウィザードを殺そうとするなどして、ウィザードとの絆を破棄する方法を企み出すかもしれない。クリーチャーが秩序でウィザードがその性質に反するなら、ウィザードが従者を堕落させることを許すよりも先に、その上位者がクリーチャーかウィザードを滅ぼすかもしれない。よりひどい場合には、彼らは物質界への足がかりを得るために、地獄あるいは天界の干渉で門を開き、ウィザードがこの来訪者を招来する必要が生じるような状況を作り出そうとするかもしれない。
ウィザードはこの発見を複数回選択できる。この発見を選択するたびに異なる特定の来訪者に適用する。ウィザードは最低11レベルでなければこの発見を選択できない。15レベル以上の時点でこの発見を選択したなら、クリーチャーは最大18ヒット・ダイスを持つことができ、招請はプレイナー・バインディングの代わりにグレーター・プレイナー・バインディングのように働く。
分割したスロットは、どのような目的においても低くしたレベルで扱う(したがって、5レベル・スロットを分割したファイアーボールは通常の3レベル・スロットを使用しているかのような難易度を持つ)。2レベル・スロットを分割した場合は2つの0レベル呪文を追加する(通常通りに準備された0レベル呪文のように、何度でも発動できる)。この発見は0レベルあるいは1レベル・スロットには何の効果もない。ウィザードはこの発見を複数回選択でき、選択するたびに、呪文を準備するとき別のスロットを分割できる。ウィザードは高レベルのスロットを分割して作ったスロットを、さらに分割することはできない。ウィザードは最低5レベルなければこの発見を選択できない。
幾人かの哲学者は実存を構成する四大元素──地水火風──は誤った考えであるとして異議を唱えている。これらの学者は四つの元素ではなく五つ──木火土金水──を主張している。こうした主張に賛同するウィザードは金属と木から根源要素を引き出し、通常は他の呪文の使い手が制限されている魔法の力を得る能力を発見した。
いくつかの地においては、魔法の学者は万物の根源要素は4つではなく木火土金水の5つであると主張している。これらの5元素は互いに直接に対立しあうのではなく、木は土に克ち、土は水に克ち、水は火に克ち、火は金に克ち、金は木に克つという輪のような構成で相克し相生する。四大元素の魔術系統と同様に、金または木に基づく魔法の系統に特化したウィザードもいる。通常の秘術系統のように、元素の系統はいくつかの系統の力と、ウィザードに発動可能な1レベル以上の各レベルに1つずつのボーナス呪文スロットを与える。このボーナス呪文スロットには元素の系統の呪文リスト(以下参照)にある呪文を準備せねばならない。通常の秘術系統と異なり、五つの元素システムにおいてはそれぞれの元素の系統に対立系統のように対立する元素をウィザードが選択する必要がある。ウィザードは対立エレメントのように相克エレメントを選ばねばならない(よって火克金により、金の元素術士は火を選ばねばならない)。ウィザードは2つ目の対立系統を選択する必要はない。ウィザードは通常通り、対立する元素系統からの呪文を準備するときに2つの呪文スロットを費やさねばならない。
金は堅固、厳格、根気、強さ、決断、および電気を表す。鉄と鋼に関係する低級の魔法も金の系統の一部だが、一般に最も純粋な形態として金と銀によって表される。
20レベルの時点で、ウィザードは金属製のクリーチャー、あるいは金属製の中装か重装鎧を着用しているクリーチャーに対して呪文を発動するときに、クリーチャーの呪文抵抗を突破するためのロールを2回行い、よい結果を使用できる。
0レベル:メンディング。
1レベル:グラヴィティ・ボウ、ショッキング・グラスプ、マジック・ウェポン。
2レベル:グリッターダスト、シャター、シルク・トゥ・スティール、ディフェンシヴ・ショック、メイク・ホウル。
3レベル:ヴァーサトル・ウェポン、キーン・エッジ、チル・メタル、グレーター・マジック・ウェポン、ヒート・メタル、ライトニング・ボルト。
4レベル:シャウト、ストーンスキン、マルファンクション。
5レベル:アンブレイカブル・コンストラクト、スーズ・コンストラクト、メジャー・クリエイション、ライトニング・アーク、ラスティング・グラスプ、ラピッド・リペア。
6レベル:ウォール・オヴ・アイアン、チェイン・ライトニング、ディスインテグレイト。
7レベル:コントロール・コンストラクト、スタチュー、lightning rod(訳注:存在せず)。
8レベル:アイアン・ボディ、コール・コンストラクト、グレーター・シャウト、ストームボルツ。
9レベル:メテオ・スウォーム、ライド・ザ・ライトニング、リペル・メタル・オア・ストーン。
木は柔軟さ、温暖、風、寛容、協調、そして理想主義を表す。この元素の魔法の修行者は、しばしば性格と使う魔法がドルイドと似通う。
0レベル:ライト。
1レベル:アニメイト・ロープ、オルター・ウィンズ、チャーム・パースン。
2レベル:ウィスパリング・ウィンド、ウェブ、エンタングル、キャッツ・グレイス、プロテクション・フロム・アローズ。
3レベル:ウィンド・ウォール、クローク・オヴ・ウィンズ、タンズ、ツリー・シェイプ。
4レベル:シロッコ、セキュアー・シェルター、チャーム・モンスター、ハリューサナトリ・テレイン、プラント・グロウス、マイナー・クリエイション、リヴァー・オヴ・ウィンド。
5レベル:コマンド・プランツ、センディング、テレパシック・ボンド、ファブリケイト、フィクル・ウィンズ、ミラージュ・アーケイナ。
6レベル:ツリー・ストライド、バトルマインド・リンク、マス・キャッツ・グレイス。
7レベル:コントロール・ウェザー、スコーリング・ウィンズ、ライヴオーク。
8レベル:トランスミュート・メタル・トゥ・ウッド、マス・チャーム・モンスター、ユーフォリック・トランクィリティ。
9レベル:ウィンズ・オヴ・ヴェンジャンス、コントロール・プランツ、レフュージ。
ある種のウィザードにとっては、巻物は単に書き留められた呪文の一形態というだけでなく、剣や盾のように戦闘に使える物理的な武器でもある。この奇妙なウィザードはしばしばそれぞれの手に1つずつの巻物で武装して戦闘に参加し、モンクの格闘術に似た戦闘技術を練習する。
この能力の起動はフリー・アクションである。巻物の刃は巻物使いの手中にあるときだけ能力を保有する。巻物の刃は硬度0と最も高レベルのウィザード呪文の呪文レベルと同数のヒット・ポイントを有する。巻物の刃が命中するたび、巻物の刃のヒット・ポイントは1ポイント減少する。このダメージは修復できないが、巻物から呪文を発動するには何の影響もない。ヒット・ポイントが0になると巻物は破壊される。巻物が呪文修正特技によって修正された呪文を含んでいた場合、この能力はその呪文の本来の呪文レベルを使用する(《呪文威力強化》されたファイアーボールの巻物は3レベル呪文として扱う)。
3レベルの時点で、巻物使いは4レベル以上のウィザード呪文の巻物を巻物の刃に使うとき、強化ボーナスを1減少させて(最小+1強化ボーナス)間合い武器として扱うことを選んでもよい。例えば、チャーム・モンスター(4レベル・ウィザード呪文)の巻物を使う場合、+2ショート・ソードか、間合いつきの+1ショート・ソードのどちらかとなる。
5レベルの時点で、巻物使いは4レベル以上のウィザード呪文の巻物を巻物の刃に使うとき、強化ボーナスを減少させて(最小+1強化ボーナス)以下の特殊能力を与えることができる:ディフェンディング、フロスト、アイシー・バースト、キーン、キ・フォーカス、ショック、ショッキング・バースト、スピード。これらの特殊能力を加えることで消費される強化ボーナスは特殊能力のコストに等しい(Core Rulebookの表15-9:近接武器特殊能力を参照)。巻物使いは武器の特殊能力を与える前提となる呪文を修得していなければならない(例えば、巻物の刃にスピードの特殊能力を与えるにはヘイストを修得していなければならない)。この能力は秘術の絆と置き換える。
この能力の起動はフリー・アクションである。巻物の盾は巻物使いの手中にあるときだけ能力を保有する。巻物の盾は硬度0と最も高レベルのウィザード呪文の呪文レベルと同数のヒット・ポイントを有する。巻物使いに攻撃が命中するたび、巻物の盾のヒット・ポイントは1ポイント減少する。このダメージは修復できないが、巻物から呪文を発動するには何の影響もない。ヒット・ポイントが0になると巻物は破壊される。
5レベルの時点で、巻物使いは3レベル以上のウィザード呪文の巻物を巻物の盾に使うとき、強化ボーナスを減少させて(最小+1強化ボーナス)以下の特殊能力を与えることができる:ゴースト・タッチ、ライト・フォーティフィケイション、モデレット・フォーティフィケイション。これらの特殊能力を加えることで消費される強化ボーナスは特殊能力のコストに等しい(Core Rulebookの表15-5:盾の特殊能力を参照)。巻物使いは盾の特殊能力を与える前提となる呪文を修得していなければならない(例えば、巻物の盾にフォーティフィケイションの特殊能力を与えるにはリミテッド・ウィッシュを修得していなければならない)。
巻物が呪文修正特技によって修正された呪文を含んでいた場合、この能力はその呪文の本来の呪文レベルを使用する(《呪文威力強化》されたファイアーボールの巻物は3レベル呪文として扱う)。