山や谷を越えて敵を狩り出すのは古典的なファンタジーの演目である。多くの書籍や映画で深い満足を与える部分ではあるが、パスファインダーRPGの戦闘ルールだけを使って再現するのは難しい。Pathfinder RPG GameMastery Guideに追撃ルールが掲載されているが、このルールは特に、ペースの速い、活劇的な追跡を対象とするように設計されている。旅程を秒単位ではなく時間単位で管理するようになると、迅速な反応と素早い判断よりも、耐久力と戦略が重要になってくる。慎重な追跡と賢い技を使うことによってのみ、追跡者は獲物に追いつくことができるのだ。以下に示す追跡ルールでは、これらの重要な要素をより長い追跡を再現するシステムに統合することで、楽しく管理しやすい方法で実現することができる。
追跡には主に2種類ある。直接追跡では、追跡者は自分たちの獲物に追いつくという明確な目標を持ち、その向かう場所にかかわらず獲物の進路を追っている。この種の追跡では、追跡者は獲物がどこにいくのかわからず、獲物が残した経路を辿るしかない。対照的に、競争では双方とも目的地を知っており、追跡者はおそらく獲物を捕らえるためか、単に獲物が何かを手に入れるのを防ぐために、先にそこにたどり着きたいと考えている。
追跡では、各グループが一連の地形タイルに沿って移動する。各グループはタイルを突破して次に進むために、一定の進行度を達成する必要がある。この値は、その種別の地形ごとに、地形タイルに記載されている。地形タイルの距離はおおよそ12マイルである(詳細は地形タイルを参照)。
獲物は追跡者よりも、GMが定めた進行度だけ先に出発する。直接追跡では、追跡者と獲物は同じ地形タイルを用い、同じタイル上で獲物以上の進行度を得ると、追跡者は獲物に追いつく。競争では、最初に目的タイルに到達した人が競争に勝利し、グループはそこから目標を続けることができる。
個人進行度/Personal Progress:1時間単位の追跡フェイズの間に各グループが獲得する進行度を判断するには、最初にパーティ・メンバーそれぞれが達成できる可能性がある進行度を計算する。これは基本的に、タイルに障害物や不整地がない場合に、キャラクターが移動して1時間に移動できるマイル数に基づいて決定される。各パーティ・メンバーの個人進行度は、基本移動速度を10で割った値(例えば、人間であれば通常3、ドワーフであれば2)である。一時的に移動速度を上げる効果は、1時間の追跡フェイズ全体で効果を持続するもののみ効果がある(オーヴァーランド・フライトやロングストライダーには効果があるが、フライには効果がない)。
グループ進行度/Group Progress:グループ進行度はパーティの個人進行度の最低値に等しい。後で説明するように、戦術と優位によって、キャラクターはグループ全体の速度を高めることができる。
追跡者と獲物の両方の進行度を決めたなら、GMには追跡全体の構造を構築する準備ができたことになる。追跡の構築は比較的簡単だが、その流れは追跡の種類によって異なり、直接追跡の場合には、PCが追跡者か獲物かによっても変わってくる。
追跡を実行する場合、追跡が行われる範囲の視覚的な助けがあると便利だ。GMが出版された冒険を使っていたり、見栄えの良いその地域の地図が使用できたりするなら、各タイルの上にミニチュアや駒がおけるほどの大きさの地図があっても面白いかもしれない。少しのゲーム・ボードがプレイヤーが追跡を視覚化できるようにする助けになる場合には、GMはタイルに絵を描いても良い。
直接追跡では、一連の地形タイルを通過する獲物グループとその後から追いかける追跡者グループが存在する。143ページの追跡の実行に示すように、追跡者は獲物を追跡し続けるために〈生存〉判定に成功しなければならない。PCが追跡者である直接追跡は、一般的なキャンペーンにおいて最も単純で一般的なものだ。GMとプレイヤーがこのルールを把握するために、まず直接追跡を行うのが望ましい。
追跡者としてのPC/PCs as Pursuers:NPCが獲物である直接追跡の場合、GMが獲物がたどる一連の直線的な地形タイルを準備し、追跡者は獲物を追ってそれらのタイルに沿って進む。一般的な種類の地形タイルについては、地形タイルの項を参照すること。より簡単に直接追跡を実行する場合、この章で後に示す全てのデータをプレイヤーに見せないようにして、使用しないようにする。例えば、獲物は優位を得ようとしないかもしれないし、追跡が特に面白くなるものに絞って、戦術を控えめに使用するようにするかもしれない。獲物グループがこれらのデータを使用しない場合、PCの追跡はずっと簡単になる。
獲物としてのPC/PCs as Quarries:PCが獲物である場合、PCには追跡者を惑わすために経路や地形を選ぶことができるため、直接追跡は少し複雑になる。GMは追跡タイルを単純な直線経路ではなく、複数の方向に並べて提示すべきだ。実際、GMは一般的な地形の地図を必要に応じて地形タイルに分割することができる。Pathfinder RPG Ultimate Campaignの探索ルールと同じようにヘクス・グリッドを使用することもできる。
直接追跡の終了/Ending a Direct Pursuit:直接追跡は、以下の4つのいずれかによって終了される。追跡者が獲物と同じタイルにいて、獲物の進行度以上の進行度を達成した時、追跡者は獲物を捕らえる。獲物が進行を終える場所(安全な避難所あるいは要塞など)に到達すると、追跡は終了し、攻城戦に移行する可能性がある。追跡者が獲物を追跡し続けるための〈生存〉判定に成功する可能性がなく、痕跡を再度見つける助けとなる戦略を全て使い果たしてしまうと、獲物は逃亡してしまう。最後に、追跡者は自発的に追跡を放棄できる。選択肢として、GMは追跡者が追いつく可能性が実際にないであろう、追跡者と獲物との間の距離を設定することもできる。例えば、GMは獲物が追跡者の5タイル先にいる場合、獲物は逃走した、と判断することもできる。この距離はジャングルやその他の密集した地形では短くなるかもしれない。
競争では、どちらのグループも旅の選択肢がずっと多い。PCを獲物とする直接追跡と同様に、GMは単なる直線経路ではなく、多くの地形タイルの選択肢を含める必要がある。2つのグループは異なるタイルからスタートし、競争中に異なる種類の地形タイルを移動する。競争には獲物も追跡者も存在しない。一方のグループが指定されたゴールに到達すると、競争は終了する。
追跡は1時間単位の追跡フェイズで進行し、各グループ(一方が休息している場合は動いているグループのみ)は現在の地形タイルを踏破しようと進行する。敵の裏をかいたり出し抜いたりするために、戦術を用いたり優位を得たりしようと試みることもできる。
1日の追跡は1時間の追跡フェイズ8つで構成される。追跡は長い時間をかけて行われ、多くの土地を進むことになる。そのため、追跡者と獲物は、途中で地形の住民や環境に生じる災害に晒される可能性がある。これらの遭遇を利用して緊張感を与え、追跡のペースを操ることを検討しよう。
直接追跡では、どのような進行を行うにせよ、追跡者は各追跡フェイズの開始時に〈生存〉判定を行う必要がある。失敗したなら追跡者は道に迷い、正しい道に戻るためにその1時間を費やさなければならなかったというわけだ。成功すれば追跡者はそのフェイズで自分の速度に従って移動できたことを意味する。その基本難易度は5、10、15、20のいずれかで、地形タイルの主要な地面の種類(詳細は〈生存〉を参照。それぞれ非常に柔らかい、柔らかい、堅い、非常に堅い)によって決まる。この難易度は獲物から1日遅れるたびに1ずつ増加し、獲物グループが3人いるごとに1ずつ減少する。
追跡者グループには主となる追跡者が1人いる。しかし他のメンバーも援護アクションにより協力することができる。主であれ、援護を行う場合であれ、痕跡を探すのに協力する追跡者は全て、その追跡フェイズにおける個人進行度を半分にする。もし痕跡を探すものが自分のグループの中で最も遅いメンバーよりもはるかに早い移動速度を持っているなら、グループの進行度を低下させない場合さえある。
追跡においてグループが遭遇する、最も一般的な地形タイルの種類を以下に示す。地形タイル1つはおおよそ横切るのに12マイルかかり、これはUltimatteCampaignの探索行ルールのヘクスと同じサイズだ。しかし追跡では、このサイズが変えられるように抽象化している。GMはこれらの選択肢に手を入れ、状況に応じた地形タイルを作成できる。例えば、PCがエアリアル・トラックスを使って雲の中の敵を追跡する場合、GMは空の地形タイルを作成する必要がある。
各地形タイルのデータ・ブロックには、グループがそのタイルから次のタイルに移動するために必要な進行度の値が示されている。次に、標準的な地面の種類と〈生存〉難易度の基準値が括弧で囲まれて示され、グループがその種類のタイルで使用できる、最大の優位の数も示されている。この制限は、グループが別の1時間の追跡フェイズに入るとリセットされる。優位の数は地形が迷いにくいものであればより少なくなる。これは、例えば乗り物や魔法の移動手段を使うことなく道を早く走ることができる技は多くないためだ。
踏破に必要な進行度 12
地面 柔らかい(難易度10)あるいは非常に柔らかい(難易度5); 最大優位 2
寒冷地形にはツンドラや氷河などがある。冷気による危険のルールがほとんどの場合適用され、両方のグループに影響を及ぼす可能性がある。
踏破に必要な進行度 16
地面 非常に柔らかい(難易度5)、柔らかい(難易度10)堅い(難易度15)のいずれか; 最大優位 3
砂漠地形には温暖な地域と砂地がある。熱気による危険のルールがほとんどの場合適用され、両方のグループに影響を及ぼす可能性がある。
踏破に必要な進行度 16
地面 堅い(難易度15); 最大優位 3
森林地形は落葉樹林と針葉樹林の両方を含むが、密集した密林や熱帯雨林は含まない。
踏破に必要な進行度 16
地面 堅い(難易度15); 最大優位 3
丘陵地形には、山ではないが上り坂と下り坂の移動の多い地域が含まれる。
踏破に必要な進行度 32
地面 堅い(難易度15); 最大優位 8
密林地形は森林地形よりも密集度が高く、熱帯雨林も含まれている。密林地域の進行度はゆっくりとしたものだが、追跡者や獲物より優位に立つ機会は十分にある。
踏破に必要な進行度 24
地面 堅い(難易度15)あるいは非常に堅い(難易度20); 最大優位 6
山岳地形は登攀しなければならない場合がある上、険しい崖や突然落下する危険もある。山に登る必要性が特に高い場合や、キャラクターが樹木限界線を超えて登る必要がある場合(冷気による危険のルールを用いる)、山岳タイルはより高い最大優位を持つことがあり、踏破により多くの進行度が必要になる。
踏破に必要な進行度 8
地面 堅い(難易度15); 最大優位 0
平地地形は特に障害物や容易な箇所のない基本的な地形で、多くの場合は移動が難しくない、平坦で負荷のない草原を表している。より手の加えられていない、草木の茂るサバンナ・タイルであればより多くの最大優位を持ち、踏破のための進行度がより多く必要になる。平地タイルのデータは、他の多くの種別の先を見通せる場所として使うこともできる。
踏破に必要な進行度 さまざま
地面 さまざま; 最大優位 さまざま
次元界の性質は非常に多様であり、すべてを意味のある方法で網羅する一覧を作成することは不可能だ。次元界の範囲は、別の種類の地形タイルを使用して表現できる場合もある。他の次元界に移動すると、追跡はほとんど不可能になる。極めて変化しやすい次元界のように、本当に奇妙で特殊な特徴を持つ次元界の場合、地形における優位や次元界の性質に関するその他の優位について、多くの情報を提供する方が良いだろう。例えば、主観的な重力を理解し制御するために〈飛行〉技能を用いる優位などである。
踏破に必要な進行度 8
地面 堅い(難易度15)あるいは非常に堅い(難易度20); 最大優位 0
土や石畳でできた街道を使えば、遮るもののない地形のように素早く移動できる。しかし街道を走っていると他人に見られる可能性も高くなる。情報収集戦術を使えば、街道を移動しながら行う追跡が容易になる。古かったり、使われていなかったり、雑草の茂った街道は、平地と同様に扱う。
踏破に必要な進行度 16
地面 非常に柔らかい(難易度5)あるいは柔らかい(難易度10); 最大優位 3
湿地地形には、湿原や沼地、その他の濡れた地形がある。沼の深い場所や流砂のようなものを多量に含む湿地タイルは最大優位がより多く、踏破に必要な進行度がより高くなる。
踏破に必要な進行度 12
地面 非常に堅い(難易度20); 最大優位 2
地下には洞窟やダンジョンがある。地面は硬いが、雨や雪がないので追跡者は獲物を追いかけるのがずっと簡単になる。一般的な地下タイルは障害物や動きを妨げる要因が少ないだけだが、非常に狭いトンネル、歪んだ亀裂、危険な傾斜や崖、その他の特徴を持つ地下タイルは最大優位がより多くなり、踏破に必要な進行度がより高くなる。
踏破に必要な進行度 さまざま
地面 さまざま; 最大優位 さまざま
水中の追跡には、他の種別よりも多くの計画が必要となる。移動速度が非常に多岐に渡る可能性がある。メンバーの一部が水泳移動速度を持ち、残りは持たない場合、追跡はちょっとしたことしかできないこともある。通常、追跡のほとんどが水中で行われ、ほとんどあるいは全てのタイルが水中タイルで占められるような場合、両方のグループが水中移動能力が対等であるならば、他の地形タイルから似たものを見つけて、それを代わりに使用する方が良い。例えば、水中庭園を移動するのは密林のように扱え、開けた範囲を通過する場合は平地に似ており、氷山の下を泳ぐ場合は寒冷地や山岳として扱える(そして冷気による危険のルールを用いることになるだろう)。これらは、水中タイルを横断するのに必要な追跡フェイズの間、グループ全員が水中で呼吸できることを前提としている。
踏破に必要な進行度 16
地面 堅い(難易度15)あるいは非常に堅い(難易度20); 最大優位 3
原則的には、都市地形は寒村から大都市までの居住地を包含するものだ。しかし地形タイル全体を都市として扱うには、タイルを占められるだけの十分な大きさの都市でなければならない。他の地形タイルに小さな集落が現れる可能性があるため、戦術や優位が異なってくる。都市環境での痕跡を辿ることは、存在するクリーチャーの数を考えると非常に困難である。しかし同時に情報収集戦術がより効果的になる。都市の移動は比較的簡単だが、人口密集地でクリーチャーを追跡することが難しいため、都市タイルでの移動には時間がかかる。
踏破に必要な進行度 16
地面 非常に堅い(難易度20、本文参照); 最大優位 3
湖や川の多い地形は水界タイルとみなされる。このようなタイルには地面がほとんど含まれていないため、痕跡を辿るための〈生存〉判定は通過した後の濁りや瓦礫を探すといった形のものとなり、非常に硬い地面と同様に扱う。急流が水界タイルを踏破する際により多くの進行度をもたらす可能性があり、流れを伴う水界の特徴は、通常より多くの最大優位を提供する。水上を移動するグループは、通常ボートあるいはいかだを必要とし、船の移動速度を使用する。泳いで移動する場合、1時間の追跡フェイズのたびに難易度20の〈水泳〉判定を行わねばならず、失敗すると1d6ポイントの非致傷ダメージを受ける(詳細については〈水泳〉技能を参照)。特殊移動戦術を行うことで、水泳移動速度を持ったクリーチャーは水界を早く移動することができる。
悪天候、特に豪雨は、グループの進行度と追跡中に必要となる〈生存〉判定の難易度の両方に影響を与える可能性がある。
進行度/Progress:大雨、強風、その他の環境要因によって、グループの進行が妨げられる場合もある。進行フェイズ1~2つの間続く短い嵐の場合、各追跡フェイズでグループの進行度を1ずつ減少させる。地形タイル全体に極度の悪天候が発生した場合(風に悩まされる高山やモンスーンの間のジャングルなど)、天候の深刻度合いに応じて、タイルの踏破のための進行度に4~8を加える。タイルの最大優位を1つ増やすことで、旅人たちが悪天候に打ち勝つ方法を見出せる機会を得られるようにすること。
痕跡の探索/Tracking:直接追跡中に雨が降ったなら、雨が降った追跡フェイズ毎に、〈生存〉判定の難易度を1ずつ増やす。雪が降った場合、難易度を10増やす。直接追跡中の降雨時間を計測するには、雨が降り始めた時の獲物の進行度と、雨が止んだ時の獲物の進行度を記録しておく。追跡者がそのタイルの上にいて、低い進行度以上の進行度を達成した時点で、〈生存〉の難易度を上昇させる。追跡者が高い進行度以上の進行度を達成したなら、〈生存〉難易度は通常の値に戻る。もし、獲物がある地域に入る前に雨が降り始めたなら、地面は非常に柔らかい泥または雪に覆われるため、痕跡を探索するための〈生存〉難易度は減少するかもしれない。
1時間の追跡フェイズ毎に、そのフェイズで痕跡を辿らなかったグループのメンバーは、優位を獲得しようとすることができる。グループは最大で、その地形タイルに示された最大優位まで優位を獲得できる。以下に示す優位のサンプルはそれぞれに許可される可能性が最も高い地形種別を示している。しかしどのタイルでも、また同じタイルであっても、1時間毎に使える優位は大きく異なる場合がある。GMは、Pathfinder RPG GameMastery Guideに掲載される追撃ルールで追撃の現在の場所に使用できる選択肢を持たせる場合と同じように、追跡における現在の場所にフレーバーを加える手段としてこれらから適用できるものを選択する。
優位ボーナス/Advantage Bonus:キャラクターが優位を得るのに成功したなら、特記ない限り、グループのその追跡フェイズにおける進行度は1増加する。優位を得る試みに失敗したなら、特記ない限り、努力により疲弊したことでそのキャラクターの個人進行度を1減少させる。その人物が最も遅いメンバーよりも高い移動速度を持つなら、グループ全体としての速度は低下しないかもしれない。優位のサンプルそれぞれには、対応する技能も示されている。
優位を得るための判定に5以上の差で失敗すると、グループ全体の進行度が1に低下する。これは、キャラクターが大きな失敗を引き起こした結果、味方全体の邪魔をするからだ。進行度に対する増減は、trackingやhustlingのような乗算や除算の後に適用される。優位は単に移動速度を示すわけではない。例えば、近道を見つけることも含まれる。そのため、それらは移動速度の速い人物の個人進行度よりも多くの進行度をグループに提供する。
優位を得るために試みた判定は1時間全体の判定に相当する。そのため、1時間持続しない一時的な修正値は適用されない。これらの技能は1回の判定を再ロールする効果で再ロールすることはできず、キャラクターは出目10も出目20も選択できない。
以下に示す優位は一例に過ぎない。優位それぞれには、取得できる可能性が高い地形を示しているが、当然例外もある。詳細な状況に合わせて、選択した優位に手を入れること。同じ地形タイルで同じ分類の優位を複数選ぶこともできる。例えば、地形理解の優位を複数持つ密林では、異なる難易度の〈知識:自然〉が要求される場合がある。
先行登攀(丘陵もしくは山岳)/Climbing Lead:キャラクターは〈登攀〉判定を行い、ロープを使って他のキャラクターの前に立ち、仲間が最悪の事態に陥らないようにする。難易度は登攀の困難さによって変化する。
道具の作成あるいは修正(どこでも)/Craft or Modify Tools:キャラクターは凍った地面を移動できる靴のような、特殊な道具を作成したり、元々あった道具に手を入れたりするために〈製作〉判定を試みることができる。通常とは異なり、この優位を得るためには、キャラクターは1回の判定の間移動することなく、1つの追跡フェイズを費やす必要がある。これにより、グループ進行度は0になるか、グループを分割して後で追いつく必要がある(分割戦術を参照)。キャラクター毎に1回成功すれば、道具を再度修正する必要があるほど状況が変化しない限り、優位は現在のタイルの残りに適用され、追加のアクションは必要としない。難易度は通常は15(高品質のアイテム向け)だが、道具の複雑さに応じて変化する。キャラクターが新品の道具を製作するのではなく、類似のアイテムを必要なものへと修正する場合、移動しない追跡フェイズ1つにつき判定を2回試みることができる。
群衆制御(都市)/Crowd Control:キャラクターは〈威圧〉判定を行って人混みをばらけさせ、グループが簡単に進めるようにする。難易度は人混みの構成と大きさに依存する。
災厄の回避(どこでも)/Evade Hazards:キャラクターは〈生存〉判定を行い、災厄や起伏のある場所を把握してグループが可能な限り回避できるように動く。難易度は災厄がどれだけわかりやすいものか、隠されているかによって変化する。
予想外の歩み(どこでも)/Fancy Footwork:キャラクターは〈軽業〉判定を行い、凍ったり濡れたりした場所でバランスを取ったり、流砂や屋根の上を飛び越えたり、素早く移動したりする。ロープを使ったり、安全な道を見つけたり、他の方法で道を先導することで、キャラクターは仲間がより早く移動する助けとなる。難易度は足場の危険度によって異なる。
領域理解(どこでも)/Know the Area:キャラクターは〈知識:地理〉判定を行い、危険な要素や邪魔な要因を避けつつ、キャラクターの把握している近くの便利な地形要素を利用できるようにする。難易度は要素の分かり難さによって異なる。
地形理解(どこでも)/Know the Terrain:キャラクターは適切な〈知識〉判定(通常は自然だが、地下ではダンジョン探検、都市環境では地域、次元界環境では次元界)を行い、現在の地形について、グループに利益を与える要素を推測する。難易度は要素の他の地形との違いによって異なる。
近道認識(どこでも)/Notice Shortcut:キャラクターは〈知覚〉判定を行い、優位を与える近道や他の隠された要素を見つける。直接追跡における追跡者にとっては、彼らが分離するか、彼らが獲物の道と必ず交差する点を予想できない限り、それほど有益ではない。
専門家の意見(どこでも)/Professional Opinion:関連する〈職能〉を持つキャラクターは、追跡において大きな優位を与えられる可能性がある。例えば、鉱山を通過する探索では、〈職能:鉱夫〉を用いて、鉱山労働者が同僚のために残した印やその他の指標に従って鉱山の構造について知ろうと試みることができる。
狭路への侵入(地下)/Tight Squeeze:キャラクターは〈脱出術〉を用いて、狭いトンネルをより素早く、簡単に通過しようと試みることができる。これにより、キャラクターは前方を調べてより近い経路を見つけたり、通路を開くための爆弾を設置したり、その他の方法で仲間のために道を切り拓いたりすることができる。難易度は狭路がどれだけ狭いかによって異なる。
戦術は執拗な追跡者を揺さぶったり、見つけにくい獲物を捕らえる鍵となる。以下の戦術はこのような目的に沿う基本的な方法の多くを示している。しかし、PCが新しい戦術を思いつくなら、GMはこれらの例を指針として用いるべきだ。戦術はキャラクター1人、キャラクター複数人、グループ全体のいずれかに影響する。キャラクターやグループが使用できる戦術の数に制限はないが、常識的に矛盾した戦術2つを同時に使用することはできない。キャラクターとグループは、1時間の追跡フェイズ毎に、どの戦術を使用するかを決定する。いくつかは複数の追跡フェイズの間持続し、使用したキャラクターが止めるまで続くものもある。グループが追跡者か獲物のどちらかでなければならない戦術もある。このような戦術は、競争では使用できない。
これらの戦術は個々のキャラクターに適用され、各キャラクターがその戦術を使用するかどうかを決定する。
高速痕跡調査/Fast Track:この戦術を使用するキャラクターは、痕跡を辿る際に進行度を半分にしない。しかし、このキャラクターは痕跡を辿るための〈生存〉判定に-5のペナルティを受ける。レンジャーの狩人の極みクラス特徴のような能力は、このペナルティを打ち消す。
痕跡隠し/Obscure Trail:キャラクターがこの戦術を使用する際、戦術を開始する地形タイルと終了するタイルに印をつける。この作戦を使用するキャラクターは、印をつけた区間全体で進行度を半分にし、自分のグループの痕跡を辿るための難易度を5増加させる。この戦術は、キャラクターのグループが獲物でなければ使用できない。
回復/Recovery:キャラクターは、1フェイズを自分や仲間の健康を看護することに費やすことができる。これにより、キャラクターは(治癒)呪文を発動できるようになる。例えば、早足や強行軍を行っている間に受ける非致傷ダメージを取り除く際に役に立つだろう(集団戦術を参照)。回復を支援するためにフェイズを費やしたキャラクターは、そのフェイズで痕跡を辿ったり、優位を得たりすることはできない。
特殊移動/Special Movement:追跡フェイズ全体で飛行移動速度、水泳移動速度、その他の移動速度を保持できるキャラクターは、適切な種別の地形上を特に早く移動できる場合がある。しかし、例えば密林の樹冠の上を飛ぶキャラクターは、地上の痕跡を辿ることはできない。
これらの戦術はグループに適用される。全てのキャラクターが同意した場合にのみ使用できる。
強行軍/Forced March:この戦術を使用するグループは、その日の第8追跡フェイズの後に、第9追跡フェイズに入る。地上を移動する強行軍と同様に、この戦術を使用すると各キャラクターは【耐久力】判定を行わねばならず、失敗すると1d6ポイントの非致傷ダメージを受ける(そして疲労状態になる可能性がある)。
情報収集/Gather Information:敵を追跡するのを妨害されたグループは〈交渉〉判定で情報を集めようとすることができる。しかし、これには2追跡フェイズを必要とする。また、周辺に情報を集められる人がいるか、動物、植物、石といったものに質問できる能力を有していなければならない。難易度は通常15だが、地域や獲物がどれだけ密やかに行動しているかによって変化する。この情報は〈生存〉判定に成功しなくても、追跡フェイズで進行度ぶん進むには十分なものだ。
早足/Hustle:この戦術は陸路で早足で無理に移動する場合に似ている。この戦術を使うグループは、追跡フェイズでの進行度を2倍にすることができる。1日1回だけ使用する際には影響はないが、再度使用すると、グループ全員が1ポイントの非致傷ダメージを受け、疲労状態になってしまう。2回目以降追加で1時間この戦術を使用するたびに、受ける非致傷ダメージは2倍に増加する。強行軍を行いながら早足を使用することもできるが、パーティは非致傷ダメージと状態を両方の戦術から受けるため、そうする場合には健常なグループであっても通常は過労状態になってしまう。早足は効果的な戦術であり、影響はかなり小さい。しかしグループは全ての時間を移動に費やしてしまう。つまり、痕跡隠し、回復、情報収集、罠設置といった戦術を早足中に使用することはできない。優位が移動に特化しているもの(先行登攀や予想外の歩みなど)でない限り、早足の間に優位を得ることはできない。
難路の選択/Intentional Hardships:この戦術を使用する獲物グループは、追っ手を揺さぶるために、回り道やややこしい経路を選ぶ。この戦術を使用する間、そのグループのグループ進行度は2だけ減少する。この戦術の使用を開始及び終了した地形タイルとその時の進行度を記録しておく。追跡者が同じ範囲にいる間、その進行度は2だけ減少し、最大優位は2増加する。優位と同様に、この現象は痕跡を辿ったり早足を使用するといった乗算または除算の後に適用される。話を簡単にするために、GMは獲物グループに対して最初に地形タイルに入ったときに難路の選択を使用し、地形タイルを完全に脱出した時点で終了するように指示するかもしれない。
罠設置/Set a Trap:難路の選択をより極端にしたこの戦略は、経路のどこかで追跡者のために罠を残したり、待ち伏せしたりする。状況によっては、罠を作動させるのに時間がかかることもある。獲物が罠を設置ないし待ち伏せした場所を記録しておき、通常の遭遇として処理する。もし罠や待ち伏せに獲物自体が含まれるなら、彼らは罠が作動するまで進行を止めなければならず、グループを分離して別の者を目的地に向かわせない限り、罠の作動が追跡の終了につながる可能性が高い。この戦術は、獲物グループでなければ使用できない。
分離/Split Up:この戦術により、グループは複数のグループに分離できる。例えば、獲物は最低でもキャラクター1人が逃げられれば良いと考えているかもしれない(例えば、追跡者が欲しがるものを持たないおとりのグループを送り出すなど)し、追跡者はより多くの〈生存〉判定を試みて遅れを取らないようにするために、あるいは疲労状態だが足の速いキャラクターを後に残しておき、後で追いつかせるために、このような行動をとるかもしれない。分離した追跡者は、おそらく魔法や狼煙によって合流しようとする必要があるだろう。これにより追跡はより複雑なものとなる。そのため、GMはこの戦術をグループの最初の数回の追跡では禁止することを検討するかもしれない。
追跡中に受けたダメージは、通常のダメージのルールに従う。治療する人は回復戦術を使用して休息し、(治癒)呪文(あるいは災厄や状態異常を、適切なルールに従って取り除く呪文)を発動できる。
強行軍や早足戦術は非致傷ダメージを与える。また、キャラクターは疲労状態になる可能性がある(そして既に疲労状態なら過労状態になる)。この非致傷ダメージは通常どおり1時間に1ポイントの速度で消え失せ(訳注:ルール通りなら1時間につきキャラクター・レベルだけ消える)、キャラクターは回復戦術を使用してさらに多くのダメージを取り除くことができる。ただし、疲労状態あるいは過労状態のキャラクターは非致傷ダメージが回復してこれらの状態が取り除かれる前に適用されるペナルティを受けている。
疲労状態あるいは過労状態のキャラクターは、以下のようなペナルティを受ける。
疲労状態:疲労状態のキャラクターは個人進行度を1だけ減少させる。この減少は痕跡を辿ったり、早足を使用したり、その他同様の行動によって計算される乗算あるいは除算の前に適用される。
過労状態:過労状態のキャラクターは個人進行度を半減させる。これは進行度を半減させる戦略と累積し、通常の個人進行度の1/4にまでする。また、進行度を2倍にする戦略と累積し、通常の個人進行度にする。既に過労状態のキャラクターが戦術によって疲労状態にさせられたなら、気絶状態になる。
気絶状態:気絶状態のキャラクターの個人進行度は0になり、気絶状態の間個人進行度を増やすことはできない。疲労状態や過労状態の場合と同様、キャラクターは気絶状態から回復するまでの間、このペナルティを受けなければならない。