キャラクターの背景はキャンペーンにおける英雄譚の中でその役割の前に起きたもので、キャラクター独自の物語を作り出す特徴的な出来事、人々、人生経験を詳しく述べている。特別な環境下で預言や前兆により歓迎されて生まれたキャラクターもいる。その一方で劇的な出来事が英雄やモンスターのそばで旅するという危険な道に追いやられるまでは、全く普通の人生を過ごしてきた者もいる。キャラクターの背景は複雑な動機や感情的な弱さの基盤を形作る。そしてそれら過去の経験は、キャラクターが現在の人生における状況で反応する道しるべとなるのだ。女神と定命のものの子供ならば、普通のクリーチャーを劣った存在と見なすだろうか? 絶望的な貧困の中で育ったなら、君が何かを盗まれた時にどのような反応をするだろう? 軍事神政国家が異端者として君の兄弟姉妹を焼き払ったなら、他の宗教のクレリックにどんな反応をするだろうか? 新しいキャラクターをプレイする際、背景を詳細にすることは、君にその過去に基づく小回りのきく操縦桿を与えてくれる。これによりキャラクターの内に入り込むことや、プレイ時の考え方を採用することがずっと簡単になる。キャンペーンが進むにつれ、初期の冒険が徐々にその背景の一部となる――切れ目のない出来事の連続は君の人生を作り上げ、絶えず起きる変化と役割の発展に貢献するのだ。
キャラクターの背景に近づくにはいくつかのやり方がある。やり方の1つは有機的手法だ――本章に掲載される項目の質問を頼りに、キャラクターの細部を話し合う。また、16ページから始まる、無作為に過去を編み上げる背景ジェネレータを使用することもできる。背景ジェネレータの表を想像の叩き台とすることもできるし、君がいいと思った背景要素や、やりたいと思う方向性に合うものをじっくり選んでもよい。
出版されているPathfinder Adventure Pathにおいては、そのAdventure Pathの関係する特定の筋書きと君のキャラクターをテーマ上で紐つけるキャンペーン特徴という選択肢があることも多い。GMに君のキャラクターがキャンペーンやGMの進めている冒険とキャラクターをつなぐ助けとなる公式のキャンペーン特徴もしくは他の特徴を指示してくれるかどうかを確認しておこう。これらの特徴は、それが無作為にロールしたものにせよ手ずから選んだものにせよ、キャンペーンの主題にうまくかみ合った背景の細部を選ぶことで、本書から細部を加えることができるよい基盤を提供してくれる。
キャラクターの背景の作成をどのように行ったかに関わらず、次の段階はゲームの用語にその背景を落とし込むことだ。君が想像している背景を捉えた特徴2つ(もしくは特徴3つと短所1つ)を選択すること。特徴と短所は51ページから掲載されている。これらの特徴は人生経験から得られた技能や知識を反映した小さなボーナスを提供する。選択したならば、短所は感情的な弱さや汚点を表す。これはわずかながらルール的な不利益を提供するが、それだけではなく、(もっと重要な)面白い選択になり得るロールプレイの道具として機能するのだ。完璧な人なんていない!
背景に関わる作業を始める前に、能力値をロールし、種族とクラスを選択しよう。この基本的な情報を決めることで、これらの鍵となる要素に一貫した背景を作り出すことに集中することができる。種族、クラス、属性が理にかなう形で背景の細部を考えることになるわけだ。
本章の以下の項目では、キャンペーンの開始までの人生を調べていく。誕生から始まり、幼年期や青年期の経験を形作りながら進め、成人しては薬の世界の見方を作り出して終わりとなる。各項では考えるべきいくつかの質問が投げかけられる。これら全ての質問に答えを持つ必要はないし、ゲームが進む中で見つける方がいいと思うものがあるかもしれない。しかしこれらの質問に答える時間を費やすことで、キャラクターの頭の中に簡単に足を踏み入れることができるかもしれない。それは単純に、キャラクターからより多くの情報を引き出すことができるだろうからだ。これらの質問は君の人生の特定の時期に対する想像力の集中を促す。そしてそれは強力なロールプレイと物語のきっかけを、君や君のグループ、GMに生み出すことになる。
ときどき、独自で同じクラスと種族の他のキャラクターと一線を画すと感じるキャラクターの作成は挑戦的に思えることがある。種族やクラスの典型例をプレイするのは簡単だ――エールをガブガブ飲むバトルアックスを持ったドワーフのファイター、ロングボウを手に森の中をさすらう素早く賢いエルフのレンジャー、こそこそとした子供のようなハーフリング・ローグ、などなど。それらはなにも悪いところはなく、多くの楽しみがあるだろうが――結局、そもそも文化的な典型例になる理由があるのだ――、何か新しいことを試したいときもある。典型から離れる際に手助けとして使用できる手法を、いくつかここに示す。
独自性:君があまりにもこだわるのが難しくて独自性を出せないのなら、本や映画、ゲームその他の媒体で既に組み込まれているアイデアを見つけたときに失望するかもしれない。しかし独自のアイデアを呼び起こすのは難しい一方、君が会う人間一人一人は独自の存在で、個々の経験によって形づけられている。独自の構想1つにこだわるよりも、キャラクターの人生を決めたり個性やものの見方を決めた経験に目を向けてみよう。特別な経験は、典型的な存在から離れる助けとなるだろう。
第3の考え:アイデアを考えているとき、心によぎった最初と2つ目のアイデアを外し、代わりに3つ目や4つ目、5つ目に訪れたアイデアを考慮に入れるといいことがある。このやり方では、より広く、より面白い、まだ探索されていない物語の潜在力に満ちた可能性の探索に挑むことになる。心に最初に湧き上がる簡単なアイデアは、おそらく今までに見たことがあるから浮かぶものだろう。
逆:つまらない、面白味のない、典型的だと感じる個性で行き詰まったなら、君自身が真実と思っているものの代わりにその逆にすること。例えば、君が前述のドワーフのファイターをプレイする場合、おそらく以下のうち一つを備えよう。
これらのキャラクターの奇行の一つでもあれば、素晴らしいキャラクターを作り出すことができ、キャンペーンにおける物語の引き金にもなるだろう。
臆面もなく盗む:新しいキャラクターを作るとき、作成のテンプレートや基盤が必要なときがある。文学、コミック、歴史、実生活、テレビや映画のキャラクターは即席の基盤を提供してくれる。君が全く異なる構想を十分持てるように変わるまで、そのモデルとなるキャラクターの様々な側面を変えてみるのが肝要だ。
ドラキュラ伯爵をエルフのウィザードにするには何を変えたらいいだろうか? ハーフリングのクレリックでは? 血を饗じることにこだわるのか、それとも単に古く気味の悪い、孤独で神秘的なところだろうか?
ユリウス・カエサルを人間のローグやノームの幻術士として再構成するにはどうすればいいだろう? この人間のローグは対戦相手を殺し町を支配する腹黒い三人組の1人で、ローマを支配するためにカエサルは殺されるだろうか? ノームの幻術士はカエサルが占い師に言われたように、自らの死を告げる予言を受けただろうか? 既にあるキャラクターや人々を基盤に構築することで、君は骨組みを得る。新しいアイデアを思いつくためには、単に異なる状況に追いやる必要があるだけだ。彼らはゲームを続けるに従い、自ら成長していくだろう。君が選んだ最初の着想やモデルは、車輪の再発明をすることなくキャラクターを素早くつかむ助けとなる。
この手法の別の進め方に、メディアや歴史から全く異なるキャラクター2人の特筆すべき特徴を組み合わせる方法がある。例えば、シャーロック・ホームズの推理術とハムレットの優柔不断さを兼ね備えたキャラクターをどのようにプレイするだろうか? アキレスの武勇とニコラ・テスラの発明精神を組み合わせると? マーリンの魔力とマリー・キュリーの科学の真実への調査力を兼ね備えたら? ジャンヌ・ダルクの信仰心とナポレオンのすさまじいまでの野心だったらどうだろう?
時間がない場合やなるべく単純にキャラクターの基本を作る方法を探しているなら、特異な点2つと短所1つを考えることで、性格の要素を確立しよう。特異な点は個性や性格の特別な性質だ。キャラクター特徴、衝動、奇抜さ、そして一般的でない肉体的特徴だ。ありふれたものや平凡なものではだめだ。「背が高い」だと不十分だが、「自分の体にはでかすぎる」であれば問題ないだろう。「魅力的」では弱いが、「出会った人はほとんど誰もがナンパする」なら特別で実用的だ。「出不精」は特異な点としては不十分で、「家から出ると疲れ、不快になり、腹が減る」の方がいい。
同じやり方で短所を加えよう。単なる「傲慢」ではなく、「知っている誰よりも自分が賢いと信じている」とか。ひょっとしたら「尊大」では十分ではなく、「悪い存在や愚かな存在をおそれている」のがいいかもしれない。「強欲」よりも「死に至る貧困や飢えを恐れている」ほうがいいかもしれない。奇行や短所として使用するために属性や特徴を選択すると、自分にその理由と実現方法を問いかけてその構想の深くまで掘り進むことができる。内気なら、どのように内気なのか? あまりにも内気だから、他人と直接目を合わせたことが今までないのだろうか? 偏執狂なら、何故偏執狂なのだろう? もしかしたら今まで信じていた人が皆、君を裏切ったのだろうか? 欲望と恐怖を誘導することがこれらの質問に答える助けとなるだろう。簡潔にするため、背景ジェネレータには奇行や短所に基本的な説明が使用されている。詳細さを伴う最小限の説明に従い作成するためのわずかな時間を費やすことで、簡単で特徴がないキャラクターに特徴を付ける助けとなるだろう。
本章の残りの部分では、君の背景のさらに深い部分、誕生や幼少期の初めから青年期を介して成人期の初めに至るまでに潜っていく。それぞれ考え(書く)ためのいくつかの質問が記されている。それらを通じて、君に当てはまらない質問を発見するかもしれない。それは何故当てはまらないのかを考える機会となる。そしてそれこそ世界の他の部分と関係を持つことを意味するのだ。同様に、質問に短い回答を見つけられたなら、それが「はい」「いいえ」といったものであれ、何故そうなるのかについて深く掘り下げる機会となる。
何より、背景を作ることが重荷にならないようにしよう。この目的はキャラクターをプレイする助けとすることであり、すぐにやりたくない決定で思考を停止させることではないのだから。