基本7種族はパスファインダー・ロールプレイング・ゲームの第一の焦点であるが、プレイされるキャラクターに適しているのは彼らだけというわけではない。他にも、より変わった種族がこの世界で暮らしており、そして――GMの許可があれば――プレイヤー・キャラクターの種族としてうまく機能し、面白く興奮するような新しいロールプレイングの機会を創造する。この章ではそうした種族のうち最も一般的なものの詳細を書く。軽快なキャットフォークから輝くイフリット、ゴミ漁りの鳥のようなテングまで含むこれらの種族は、エルフ、ノーム、そして人間と同程度に冒険への意欲を持ち合わせている。彼らはパスファインダー・キャンペーン・セッティングの主要地において人口比率の大部分を占めているわけではないが、この章で詳述している種族はそれぞれ独特な独自の背景と能力を持っている。
こうした種族の多くは文明化していると考えられているが、概してモンスターだと見られている種族もおり、ロールプレイングやキャラクター間の相互作用に対する、興味深い挑戦となるだろう。ドラウ、コボルド、オークといった種族をプレイする時、彼らの種族や社会の典型に反抗するキャラクター――彼らのありがちな暴力的な文化に同意せず、代わりに他の種族との間で自己の存在を確立しようとするクリーチャー――を演じることは時に一行にとって最良の原動力となる。そうした種族をプレイする時には、他の多くの種族の時以上に、GMと話し合ってそのキャンペーンで機能するそのキャラクターの動機付けと背景を決定することは重要となる。
アアシマール:天上の血筋によって祝福されたクリーチャーであるアアシマールは、この世のものならぬ祖先による特異な性質以外は人間に見える。アアシマールはほぼ間違いなく美しいが、同時にどこか浮世離れしており、全員が善というわけではなく極一部は悪である。
キャットフォーク:優美な探検家の種族であるキャットフォークは生まれつき氏族的かつ詮索好きだ。彼らは自分たちを丁重に扱う種族とはうまく付き合い、そしてそうした種族が持つ境界線を重んじる。彼らは物理的かつ思索的な探検を愛しており、生来の冒険者である。
ダンピール:ヴァンパイアの忌まわしき落とし子であるダンピエールは不死の呪いに冒された生きたクリーチャーであり、その呪いによって彼に正のエネルギーからダメージを受け、負のエネルギーによって治癒される。この種族の者の多くはその暗黒面を称揚し、そうでない者は自身の汚れに強く抗い、ヴァンパイアや自身の同族を狩り、滅ぼしていく。
ドラウ:地表のエルフの闇の側面であるドラウは世界の光を滅しようと励む暗がりの狩猟者である。ドラウは概してデーモンに仕える強力な魔法的なクリーチャーであり、その混沌の気質のみが彼らをより厄介な存在にすることを押し留めている。その種族の堕落した無政府主義的な社会を見捨てることを選択した少数の者は、英雄の道を歩み出す。
フェッチリング:大昔は、フェッチリングとは影界に流刑にされた人間のことであったが、その次元界の粘着くような暗黒が彼らをかけ離れた種族へと変成した。こうしたクリーチャーは影に溶ける能力に長け、生まれつき操影魔法に親和性を持つ。フェッチリング――彼らは自分たちをカヤルと呼んでいるが――は時に影界と物質界の住人の間の使者となることがある。
ゴブリン:筆舌に尽くし難い暴力を冒すことを好む狂った放火魔であるゴブリンは、ゴブリン類の中で最小の種族である。人生を楽しむ達人の種族であるが、その気質は時に非情で時に有害だ。冒険をするゴブリンが他の種族と付き合うには、自身の闇のいたずら心と絶えず向かい合わなければならない。それに本当に成功した者は皆無である。
ホブゴブリン:このクリーチャーはゴブリン類の種族の中で最も鍛錬を受けた軍国主義者である。毅然としていて長身で頑丈なホブゴブリンは冒険者一行にとって恩恵となるだろう、彼らが冷酷無比で時に奴隷を持つ事実がなければの話だが。
イフリット:イフリットは定命の者から身を落とした種族であり、火の元素次元界の奇妙な住人である。その肉体的特徴と人格には時に彼らの燃えるような祖先が顕れ、落ち着きがなく、独立心が強く、傲慢である傾向がある。その炎を操作する能力によって頻繁に都市から放逐されるイフリットは、他の種族では見られない、炎を纏う強力な火のソーサラーかつウォリアーとなる。
コボルド:自分たちを竜の継嗣と見做しているコボルドは小さな体躯に大きな自負を宿している。他の同族よりも竜の特徴を獲得することを選択できる者は少なく、その多くは強力なソーサラー、用心深いアルケミスト、あるいは狡猾なローグである。
オーク:野蛮で、暴力的で、殺しにくいオークは荒野の奥地や洞窟深くで暮らす悩みの種であることがある。多くのオークは筋力を誇る恐ろしいバーバリアンとなり、血まみれの激怒を見せつける。血への飢えを制御できる一部の者が、素晴らしい冒険者となる。
オレイアス:祖先で地の元素次元界のクリーチャーの血が混じった人間クリーチャーであるオレイアスは強固で頑丈な石のようだ。強情で揺るがないその頑固な気質によって、彼らがドワーフを除く大抵の種族と付き合っていく事は難しい。オレイアスは未加工の石と地面を操作できる素晴らしいウォリアーでありソーサラーである。
ラットフォーク:この小さなネズミのような人型生物は氏族的であり、物々交換で生活する遊牧の達人である。時に鋳掛け屋や貿易業者となる彼らは、富を蓄積するよりも面白い小物を収集することにより関心を持っている。ラットフォークは時に硬貨ではなく新鮮で興味深い骨董品を見つけるために冒険をする。
シルフ:風の元素の体重の軽い部族であるシルフは、人間に風の元素部族の血が混じった産物である。イフリット、オレイアス、そしてウンディーネと同様、彼らは彼ら独自の元素領域を支配する強力な元素ソーサラーとなれる。彼らは美しく柔軟な思考を持つ傾向があり、盗聴のコツを掴んでいる。
テング:このカラスのような人型生物のゴミ漁りは模倣と剣技に長けている。人口の密集する都市で固まって暮らすテングは、好奇心や必要性によって時に冒険者の集団に加盟する。その衝動性と奇癖は、彼らに慣れていない者にとって恐怖に映ることがある。
ティーフリング:個々で特徴が異なり時に人間社会で嫌われるティーフリングは魔物の血で汚された定命の者である。他の種族が彼らを信頼することは稀であり、その共感性の欠如によってティーフリングは通常悪心や悪行を称揚するようになり、自身の汚染された血に煮え立つ怒りを覚える。そうした暗い欲望を押さえ込もうと抗うことを動機として選択する数少ない者が英雄の大道を行く。
ウンディーネ:従兄弟のイフリット、オレイアス、シルフと同様、ウンディーネは次元界の元素に触れた人間である。彼らは水の元素の継嗣であり、地上でも水中でも優雅である。ウンディーネは冷気に適応しており耐性を持ち、また水魔法にも親和性を持つ。
各種族の項はその種族の全般的な描写から始まり、それからその種族の肉体的な描写、社会、他の種族との関係、属性と宗教、冒険に対するありがちな動機といった特別な項に続いていく。
各種族の項目の補足説明欄にはその種族の一般的な種族特性の一覧がある。この情報は種族の種別、サイズ、視野、そして基本移動速度が書かれており、その種族の者の多くにとって一般的な他の特性も大量に書かれている。GMの許可があれば、君は下記の項に書かれているルールにある、そうした一般的な種別特性をいくつかの代替種族特性に変更するという選択肢を得るだろう。
それぞれの種族の者は標準的な種族特性をこの項に並ぶ代替種族特性へと取り替えて良い。代替種族特性それぞれには交換する標準の特性も書いてある。特性の交換用の完全なルールは「1章:基本種族」で見つかるだろう。
種族それぞれは通常の適性クラスの利点(+1hpか+1技能ランク)の代わりに書かれている適性クラスの選択肢を得てもよい。適性クラス・オプションの完全なルールは「1章:基本種族」で見つかるだろう。
この項ではコボルドの項目以外の拡張された種族各々にアーキタイプを2つ書いており、コボルドにはアーキタイプが1つとソーサラーの血脈が1つ書かれている。概してこの項の種族の者のみが並べられたアーキタイプあるいは血脈を取得できるが、こうした選択肢は稀にその種族の種族特性や代替種族特性と相互作用することがある。アーキタイプは通常その種族の主題と関連性があり、その種族の能力と背景を補完するクラスの特徴を与える。冒険者は社会からみて畸形児であることがあるため、こうしたアーキタイプは種族の嗜好の平均から外れたものを主題としていることがある。各アーキタイプ用のクラスは丸括弧の中に書かれている。
アアシマール:清浄なる者(オラクル)、穏やかなる守護者(パラディン)
ダンピール:血術士(ウィザード)、同族殺し(インクィジター)
ドラウ:洞窟の狙撃兵(ファイター)、デーモンの使徒(クレリック)
フェッチリング:黄昏の捜索者(レンジャー)、影の招請者(サモナー)
ゴブリン:歯ぎしりする野蛮人(バーバリアン)、炎の爆弾魔(アルケミスト)
ホブゴブリン:残忍な騎手(キャヴァリアー)、鉄皮のモンク(モンク)
イフリット:火刑人(インクィジター)、望みを叶えるもの(ソーサラー)
コボルド:ゲリラ兵(ガンスリンガー)、コボルドのソーサラーの血脈(ソーサラーの血脈)
オレイアス:シャイタンの束縛者(サモナー)、石の学徒(モンク)
ラットフォーク:渓谷の砲手(ガンスリンガー)、疫病の運び手(アルケミスト)
シルフ:空のドルイド(ドルイド)、風を聞くもの(ウィザード)
ウンディーネ:達人ウンディーネ(ドルイド)、水の歌い手(バード)
種族の各項目の中で最後にあたるこの項ではアーキタイプを超えた、以下の4つの分類で詳述する通りの、種族用の新しいルールの選択肢を提供する。
装備品:それぞれの種族用の装備品の項では、その種族が利用可能な、標準的、そして錬金術の装備品用の新しいルールを提供する。
特技:この項ではその種族の者用の新しい種族特技をいくつも提供する。こうした特技は全て前提条件にその種族であることと書かれている為、他の種族の者は取得できない。
魔法のアイテム:この項にある魔法のアイテムはその種族の者によってもっぱら作られ使われていることがある。一部は種族特性と相互作用する効果を持つが、そうでない物はより広く使われており、その種族以外の者でも使用できる。
呪文:この項の呪文はその種族の術者にとっては一般的である。その種族の者のみを目標とすることもあるが、その種族が秘密を厳重に保持しているだけのこともある; 他の種族の者が学習しそれを発動できるようになるにはGMの許可が必要となる。