ベルクゼンの領土 は、アヴィスタン亜大陸西北部に位置する、オークが多く住む荒野である。
スターストーン落下 Earthfall のため世界が闇に包まれた“暗黒の時代”、ドワーフたちはトラグの神託を受け、大きな被害を受けた地下世界ダークランドから脱出しようと地上に向かって行った。
-5102 AR、ドワーフたちに押し出されるように、オークたちが地下から現れる。
-4987 AR、ドワーフも地表に到達し、ゴラリオンの覇権を賭けて両種族の抗争が始まる。
-4294 AR、地表を覆う塵の雲が晴れ、光に対する適応に劣るオークたちはドワーフや人間の勢力に徐々に圧倒されていく。しかしオークたちも少しずつ体勢を整え、最終的に強力かつ狡猾なウォーロード、ベルクゼンが現れ逆襲に転じる。
-3708 AR、ドワーフの城砦都市 Sky Citadel 一つである Koldukar が築かれていたこの地で、ベルクゼンの軍勢が勝利を収めた。彼は Koldukar を Urgir(オーク後で“第一の家”の意)と改名し、自分の帝国を築いた。ベルクゼンの死後、この帝国は崩壊し多数の部族に分裂したが、現在に至るまでここではオークが支配的な立場にいる。
ベルクゼンのオークたちは大小さまざまな半遊牧部族に分かれている。お互いに同盟を結んだり、雨季の間だけ平和に暮らすこともあるが、オークの好戦的な気質とこの地域の物資の乏しさから、長期間にわたり組織を維持することは不可能である。
有力な部族としてはBlack Sun、 Blood Trail、 Broken Spine、 Cleft Head、 Empty Hand、 Gutspear、 Haskodar、Murdered Child、 Twisted Nail、 Wingripper がある。どんな小さな部族でも、それぞれの部族の名を示す軍旗を持つ。それらは例え魔法的な物ではなくとも非常に古く、オークにとってほとんど宗教的な重要性を持つ。
ウルギ-ル Urgir:ベルクゼンの領土の名目上の首都。現在最も影響力を持っている Empty Hand 族の族長グラスク・ウルデス Grask Uldeth が支配しているが、その権力は自分の支配する都市から遠く離れては及ばない。他のオークの族長とは違い、Grask は人間との交易を好んで行っており、Urgir は危険を顧みない“ピンク肌”たちの奴隷商人やドワーフの古代遺跡を探索しに来た冒険者でごった返している。他の空中要塞と同様にドワーフが地下から脱出してきた時の開口部が残されており、普段は隠されているが、グラスクへの適切な賄賂と追従さえあれば通してもらえる。しかし、近年ここにラストモンスターの群れが住みつき、都市を支える鉄製の梁や構造物を喰い荒らし、そのためこの都市はときどき振動に襲われるようになっている。さらに下にはドゥエルガルの都市 Fellstrok があるが、彼らはラストモンスターの危険を避けるためあまり上に上がってこようとはしない。[4]
ブリムストーンの占者 The Brimstone Haruspex:北部の火山のカルデラの中にある神殿群。オーク族の伝承を伝える炎と石のオラクルたちが、巨額の貢物と引き換えに導きや予言を与える。また、オークの歴史の唯一の完全な記録が、腐食性の噴煙に満ちた洞窟の壁画として残されている。
セノタフ The Cenotaph:タスク山脈 Tusk Mountains の南端にある、高さ50フィートの金属の門がついた黒い石のオベリスク。タル・バフォンの時代には、その門から大帝の命に従う兵士と軍用獣が召喚されたと伝えられているが、現在は閉ざされたままである。タル・バフォン復活の時にはこの門が再び開け放たれるという。
ディープゲート Deepgate:ヴァリシアとの境界であるコダール山脈 Kodar Mountains にある、ダークランドからのオークの最大の脱出口。地上と地下双方の敵に対処するため要塞が築かれている。ここを巡って多くの部族が争いあい、支配者は頻繁に入れかわる。
塵海 Dart Sea:コダール山脈の東にある広大な流砂の海。ブリムストーンやディープゲートに行くにはここを船で越えるのが一番早い。
洪水道 The Flood Road:この地を南北に貫くウルギールからワイヴァーンスティングを通じてマンモス諸侯領に入る通商路。北の地に入るために最も重要なルートだが、春になるとタスク山脈からの雪解け水が流れ込んで通行困難となり、この荒涼とした地を潤す。この季節はオーク部族もほとんど戦争を行わず、他の部族に結婚相手を探したりもする。
スカーウォール Scarwall:700年前、オークとの戦争に疲れ果てたウースタラヴの辺境伯が、ゾン=クーソンに救いを求めた。真夜中の王が遣わした大将軍カザヴォンは、たちまちオークを西と北に駆逐し、コダール山脈に大要塞スカーウォールを築き、そこで止まらずに東と南にもさらなる大虐殺をもたらした。カザヴォンは最終的に敗れたが、それはブルー・ドラゴンの変身した姿だった。この城砦はまだ残っているが、迷信深いオークたちは近づくことを避ける。
トルナウ Trunau:かつてはラストウォール領だったが、200年前に騎士たちが撤退した後も少数の人間が略奪者の中に取り残されている。ここの子供たちは12歳の誕生日に、彼女や彼の愛する者がオークに生け捕りにされる時にはその喉を突くための“希望のナイフ”を与えられる。
ワイヴァーンスティング Wyvernsting:北部にあるベルクゼン第2の都市。この地では希少な森林と洪水道が近く、北の地の巨獣たちなどの資源が豊富なため、この地の支配者 Hundux Half-Man はグラスク・ウルデスに次ぐ影響力を持つ。
オークの種族的な傾向により、その社会は弱肉強食の思想に貫かれており、強者が弱者を思うように支配する。オークたちは自分たちが人型生物の中で最強であると思ってはいるが、3203ARのウースタラヴの囁きの大帝や、4043ARのブルー・ドラゴン Kazavon のような、より強大な力を持つ神格、デーモン、竜、他の種族の大魔術師などには屈することもある。オークたちはどちらが強いか証明するため、力比べや飲み比べ、一方の死に至る決闘などさまざまな挑戦を好む。
オークは一夫多妻制であり、自分が養え支配できるだけの妻を持ち、可能な限りの子を残す。オークたちの社会では女性の地位は奴隷よりは多少マシというだけだが、彼女たちも自分の立場を良くするために闘争と謀略に耽る。より強い夫につき、より強い子を為し、自分の後ろ盾となる男に熱心に贈り物と助言を与え、支配しようとする。子をシャーマンの弟子にすることも力を持つ手段である。魔法の才能を持つ女性は呪医となる。このような中で、自分の力と凶暴性と狡猾さを証明した女性は、男性の魂を持つ者として部族の族長となることもある。力さえあるのなら、肉体的に女性であることなどオークにとっては些細なことなのだ。
オークはさほど宗教に熱心な種族と言うわけではないが、その魔法の力と神と交信する能力により、部族のシャーマンは大きな権力を持っている。シャーマンは通常は男であり、ほとんどはアデプトだが、クレリックやドルイドも存在する。一部の部族では“闇の母”という神格を崇める女性だけの謎めいたシャーマン n'ankha が存在し、大きな影響力を持つが、ベルクゼン社会全体で公的に認められているわけではない。シャーマンの多くは多数の闇の神々のパンテオンを崇拝するが、単一の神を崇める場合はロヴァググ、ゴルム、ラマーシュトゥ、いずれかのデーモン・ロードを選択する。クレリックがパンテオンを崇拝する場合、属性は混沌にして悪。領域は悪、戦、混沌、力、破壊、火。好む武器はファルシオン。
ソーサラーやバードなど秘術の力を持つ者は、呪医として部族の外縁部に住む。多くは信仰魔法を使うクラスのレベルも多少持っている。何の権力も持たず、シャーマンたちからは嫌われているが、長年の伝統と禁忌に守られその存在を認められている。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 65. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] Steve Kenson et al.(2010). Orcs of Golarion. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-256-2
[3] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 46. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
[4] James Jacobs and Greg A. Vaughan.(2008). Into the Darklands, p.8, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-140-4
カテゴリー:内海地域