ウースタラヴ は、アヴィスタン亜大陸中央部のエンカーサン湖 Lake Encarthan 北岸に位置する、強大なリッチ王の爪痕が残る霧の国である。
“戴冠の時代”、伝説の英雄 Soividia Ustav が近隣のヴァリシア人の居住地を統一してウースタラヴは誕生した。
ヴァリシア人は氏族ごとに分かれて対立し合い、内戦を避けるために国を名門貴族の支配地である16の邦に分割し、Ustav の子孫である王を奉じる連邦国家となった。これにより数世紀の間、ウースタラヴは平和な黄金時代を迎える。
3203AR、古代のリッチ Tar-Baphon が“囁く大帝” the Whispering Tyrant を名乗り、アンデッドとベルクゼンの領土のオークによる軍勢を率いて侵攻を始め、3206AR、この地域を制圧した。
3828AR、タルドールから来た輝ける十字軍 the Shining Crusade はリッチ王を封じ込めることに成功した。しかし西部の山岳地帯にある2邦はアンデッドがうろつき回る Virlych となり、それに隣接した南西部の2邦は、輝ける十字軍がリッチ王を監視するためのラストウォールを建設するためにウースタラヴから失われた。囁きの大帝時代の遺産であるアンデッドを始めとしたクリーチャーがうろつき回り、統治者は弱体化し、復興は遅々として進んでいない。
ウースタラヴは3つの地域に分けられる。
東半分が旧来の貴族政治が続けられているソイヴォダ Soivoda である。無気力な老指導者アデュアード・オードランティ3世公 Prince Aduard Ordranti III を戴き、その前途は不安に包まれている。各邦を支配する伯爵たちは公に仕える事を誓ってはいるが、独自の法令を出すことができ、自分の領地を好きなように改変している。
西北部が自治領 The Palatinates である。4670AR、Lozeri 邦で無血革命が起こり、無為な権力者を追い落として市民による議会が支配権を得た。近隣の2邦もその動きに追随して団結した。 Ordranti III はこの動きを無関心に追認した。
西部の山岳地帯にあった Virholt 邦と Grodlych 邦は、現在ではリッチ王の恐るべき牢獄である Virlych として知られる。Tar-Baphon の居城兼牢獄 Gallowspire の塔は、彼に仕える囁きの道 the Whispering Way の構成員たちの聖地として巡礼と儀式の場になっている。囁きの道はアンデッドこそが存在の最終的な形態であるとし、ゴラリオンの全ての生者に死をもたらすべく、各地の大学や宗教団体に潜入して優秀な人材にその思想を植え付け仲間を増やそうと暗躍している。[2]
アマーンス Amaans:カヴァペスタ湖 Lake Kavapesta 周辺の霧につつまれた谷と岩山の邦。飢餓山脈 the Hungry Mountains の百の幽霊谷 the Hundred Haunted Vales の昔語りと、ゴーチャ山道 the Ghorcha Passage の奇妙な囁き声とうろつき回る死者の話で知られる。
アーディール Ardeal:Soividia Ustav の故郷であり、かつての首都があった地。かつては著述家、詩人、職人。公などウースタラヴのエリートを輩出していたが、今ではその栄光は記憶や物語の中にしかない。Ailson Kindler はそのような作家の1人で、そのゴシック・ロマンスは内海地域で最も読まれているラヴストーリーの1つである。
バーストイ Barstoi:岩だらけの丘陵と平原、岩塩鉱のなかにあるこの地は、疑い深いが働き者の人々が住む地である。非友好的ではあるが、ウースタラヴの中では最も上手く運営されており、労苦に見合った成果が得られ、犯罪はファラズマのインクィジターと黒衣の兵士たちによって厳しく罰せられる。
カリファス Caliphas:エンカーサン湖に面するウースタラヴの首都がある地。都は交易によって巨利を得る貴族たちが住み、北部の田園地帯では葡萄農場、香水製作所、雪花石膏の採掘所が点在している。
ファロウズ The Furrows:4689AR、Barstoi、Ardeal、Varno の間で the Dragosvet Plains を巡って4年に及ぶ内戦が起こった。最終的にバーストイのネスカ伯爵 Count Neska は放棄する地全てに火を放ち、塩を撒いて撤退し、この地はゴーストがうろつく死の平原となった。
オドラント Odranto:何世紀もの間、伝統的に北のケーリド人に対する守りはオドラントの伯爵が行うことになっており、その結果さまざまな城砦の遺跡が残されている。兵士によって未だに守備されている物もあるが、大部分は人々は近づくことを避ける。
シナリア Sinaria:冷たい沼と苔に覆われた森の地。Lake Prophyria 周辺のわずかな肥沃な地で得た資金を音楽の街 Karcau につぎ込んでいる。Karcau の北の小さな沼にはアヴィスタンで最も名高いブラックドラゴンの1頭である Seryzilian が住む。彼は闇夜に突然近隣の人間を攫ったり、家畜を襲ったりして住人たちを不安がらせて喜んでいる。彼は沼の底に住む未知の脅威とコンタクトしようとしているが上手くいっていない。
ウルカザール Ulcazar:ウースタラヴ最小の邦。飢餓山脈の最高峰に位置し、隠者や狩人のほかに、谷の僧院 the Monastery of the Veil といわれる寡黙なモンクたちの謎めいた共同体がある。
ヴァーノ Varno:湖と密生した森が点在する邦。天候が不安定で、何年も続く飢饉が訪れることがある。
ヴァーセクス Versex:農耕に適しておらず、工業とアヴァロン湾の海運で生活している。にぎわう Thrushmoor の町の他に、疑い深く氏族制の居住地が海岸線や高地に点在している。その中で最も奇妙な物が、古代のキャリオン・ヒルである。
カンターウォール Canterwall:ウースタラヴの穀倉地帯。ベルクゼンの領土とヴィルリッチに隣接しているが、その豊富な資金力で守り抜いてきた。近年いくつかの小村で、村人が霧に飲み込まれたかのような説明のつかない荒廃が起きている。
ロゼリ Lozeri:4670ARに最初に民主制度を建てた邦。人々は退任させられた伯爵と議会の治世にほとんど違いを感じていない。近年 the Devil in Gray と呼ばれるクリーチャーが森をうろついていると言うが、それに関する報告は矛盾しあっている。
ヴィーランド Vieland:ロゼリがその伯爵を告発した時、ヴィーランドのカロマーク伯爵 Count Caromarc は風向きを読んで自ら退任し、荘園に引きこもった。ヴィーランドでの生活に概ね変化はない。
かつてヴィルホルト Virholt、グロドリッチ Grodlych として知られたこの2邦は、いまではリッチ王の牢獄であるギャロウスパイア Gallowspire を囲み、その存在に毒されている呪われたヴィルリッチとなっている。正気の人間はこの地を避け、この地を通常通行するのは季節ごとのラストウォールのパトロール隊だけだが、囁きの大帝の暗黒時代の謎を解き明かそうとする探検家や魔術師を絶えず惹きつけている。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 140. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] Crystal Frasier et al.(2010). Faction Guide, p. 52. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-221-0
[3] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 190. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
[4] Mike McArtor(2008). Dragon Revisited, p.8. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-165-7
カテゴリー:内海地域