悪知恵とずるがしこさでアーケイン・トリックスター(秘術使いの悪戯者)に敵う者は少ない。この種の驚異的な盗賊は秘術のいわく言いがたい面とならず者や無頼漢の根っからの奸智を融合させ、呪文を使って元来の盗みの能力を強化する。アーケイン・トリックスターは魔法の手妻でもって安全な距離から錠前を外し、罠を無力化し、財布を持ち上げ、そして敵に打ち勝つ目的として恥をかかせようとする頻度はより暴力的な解決法と同じ程に多い。
アーケイン・トリックスターとなる道は、秘術を学ぶことで盗みの才能を補うローグにとり、自然な進路である。マルチクラスのソーサラー/ローグやバード/ローグが最も一般的なアーケイン・トリックスターだが、それ以外の組み合わせもありうる。アーケイン・トリックスターは魔法の窃盗の才能を最も効果的に使い倒せる国際的な大都市で頻繁に見かけられ、大通りをうろついて不注意な者から物を盗むのだ。
役割:魔法に精通するアーケイン・トリックスターは標準的なローグよりもいっそう巧妙で混乱を引き起こす相手となりうる。遠隔精密作業はその盗賊の技を強化し、また挟撃せずとも急所攻撃を行なったり呪文の一部として急所攻撃を行なったりするその能力はアーケイン・トリックスターをおそるべきダメージ・ディーラーたらしめる。
属性:すべてのアーケイン・トリックスターは悪ふざけと盗みをひどく好んでおり、それゆえに秩序属性であることは決してない。アーケイン・トリックスターは時にその魔法能力をウィザードの学究の道を経て入手するが、その魔術的才能は大抵はソーサラーの血脈より生じる。そんなわけで、多くのアーケイン・トリックスターは混沌属性を持つ。
アーケイン・トリックスターになるためには、キャラクターは以下の基準すべてを満たさなければならない。
技能:〈装置無力化〉4ランク、〈脱出術〉4ランク、〈知識:神秘学〉4ランク。
呪文:メイジ・ハンドの呪文、および2レベルの秘術呪文を少なくとも1個発動する能力。
アーケイン・トリックスターのクラス技能(と各技能の対応能力)は、〈隠密〉【敏】、〈軽業〉【敏】、〈鑑定〉【知】、〈交渉〉【魅】、〈呪文学〉【知】、〈真意看破〉【判】、〈水泳〉【筋】、〈装置無力化〉【知】、〈脱出術〉【敏】、〈知覚〉【判】、〈知識〉(どれでも、別々の技能として修得すること)【知】、〈手先の早業〉【敏】、〈登攀〉【筋】、〈はったり〉【魅】、〈変装〉【魅】。
レベルごとの技能ランク:4+【知力】修正値。
1日の呪文数 | ||||||
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1 |
+0 |
+0 |
+1 |
+1 |
||
2 |
+1 |
+1 |
+1 |
+1 |
急所攻撃+1d6 |
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3 |
+1 |
+1 |
+2 |
+2 |
臨機急所攻撃1回/日 |
|
4 |
+2 |
+1 |
+2 |
+2 |
急所攻撃+2d6 |
|
5 |
+2 |
+2 |
+3 |
+3 |
巧妙な呪文3回/日 |
|
6 |
+3 |
+2 |
+3 |
+3 |
急所攻撃+3d6 |
|
7 |
+3 |
+2 |
+4 |
+4 |
||
8 |
+4 |
+3 |
+4 |
+4 |
急所攻撃+4d6 |
|
9 |
+4 |
+3 |
+5 |
+5 |
||
10 |
+5 |
+3 |
+5 |
+5 |
以下のすべてがアーケイン・トリックスター上級クラスのクラス特徴である。
武器と防具の習熟:アーケイン・トリックスターはどんな武器にも防具にも習熟していない。
1日の呪文数/Spells-per-Day:アーケイン・トリックスターはレベルを得た時に、自分がこの上級クラスに就く前に属していた呪文発動能力のあるクラスのレベルが上がったかのように、1日に使える呪文数が増える。しかし、追加の1日の呪文数、追加修得呪文数(準備しない呪文の使い手の場合)、呪文を発動する際の有効レベルの上昇以外に、そのクラスのレベルが上がっていたなら得られたはずの他の利益を得ることはない。キャラクターがアーケイン・トリックスターになる前に複数の呪文発動能力のあるクラスをとっていたなら、レベルの上昇があるたび、その新たなレベルをどのクラスに、1日の呪文数を決定するために適用するか決めなければならない。
遠隔精密作業(超常)/Ranged Legerdemain:アーケイン・トリックスターは〈装置無力化〉および〈手先の早業〉を30フィートの距離の内で使用することができる。離れた場所でこれらの作業を行なう場合、その難易度は通常の技能判定の難易度より5上昇する。そしてアーケイン・トリックスターはその判定については出目10を行なうことができない。また操作できる物体の重量は5ポンド(約2.3kg)以下である。
アーケイン・トリックスターは、遠隔精密作業に使用する技能には少なくとも1ランクの技能ランクがなければならない。
急所攻撃(変則)/Sneak Attack:この能力はまさしくローグの同名能力と同じものである。与える急所攻撃ダメージは1レベルおき(2、4、6、8、10)に+1d6増加する。もしもアーケイン・トリックスターが他の単一の源(ローグ・レベルなど)から急所攻撃ボーナスを得ているなら、ダメージへのボーナスは累積する。
臨機急所攻撃(変則)/Impromptu Sneak Attack:3レベル以降、アーケイン・トリックスターは1日に1回、自分が行なう1つの近接攻撃もしくは遠隔攻撃が急所攻撃になるようにすることができる(行なう臨機急所攻撃が遠隔攻撃の場合には目標は30フィート以内にいなければならない)。臨機急所攻撃の目標は、その攻撃に対してのみ、アーマー・クラスに対する【敏捷力】ボーナスをすべて失う。この能力はいかなる目標に対しても使用できるが、クリティカル・ヒットの対象とならないクリーチャーは追加ダメージを受けない(しかし、その攻撃に対するアーマー・クラスへの【敏捷力】ボーナスの喪失はなお適用される)。
7レベルにおいて、アーケイン・トリックスターはこの能力を1日2回使用できるようになる。
巧妙な呪文(超常)/Tricky Spells:クラス・レベル5の時点で、アーケイン・トリックスターは《呪文音声省略》や《呪文動作省略》を使ったかのように、音声要素もしくは動作要素を省略して呪文を発動できる。この能力を使って発動した呪文は呪文レベルが上昇することも発動時間が延びることもない。アーケイン・トリックスターはクラス・レベル5の時点でこの能力を1日に3回発動でき、以降の2レベルごとに追加で1回使用できる(最大で9レベル時の5回)。アーケイン・トリックスターは呪文を発動する時にこの能力を使用するかどうか決める。
不可視の盗賊(超常)/Invisible Thief:クラス・レベルが9レベルになると、アーケイン・トリックスターはフリー・アクションとして、グレーター・インヴィジビリティの影響下にあるかのように、不可視状態となることができる。アーケイン・トリックスターは1日に自分のアーケイン・トリックスター・レベルに等しいラウンド数の間、不可視状態で居続けられる。この効果の術者レベルはアーケイン・トリックスターの術者レベルに等しい。不可視状態でいるラウンドが連続している必要はない。
不意の呪文/Surprise Spells:クラス・レベルが10レベルに達したアーケイン・トリックスターは、目標が立ちすくみ状態であれば、ダメージを与える呪文に急所攻撃ダメージを加えることができる。この追加ダメージはヒット・ポイント・ダメージを与える呪文にのみ適用され、またこの追加ダメージは呪文と同じ種類のダメージを与える。セーヴィング・スローに成功すると効果が無効か半分になる呪文であれば、セーヴに成功すると急所攻撃ダメージも無効ないし半分となる。