クラスを調整する際、ゲーム自体のような重要なシステムはほとんどない。Pathfinder Roleplaying Gameにおいて、クラスはゲーム内の伝説的な英雄を表現するものであり、同時に何より卑劣な悪人を描くものでもある。特技、呪文、魔法のアイテムは世界全体で見れば限られた影響しか持たないが、クラスはゲーム全体に影響を及ぼす。クラスは世界に生息し、ゲームの雰囲気や物語を表現するタペストリーの一部となる。それほどまでに重要であるから、新しいクラスのデザインはゲーム・マスターにおける最も繊細で困難に仕事の一つである。この指南の章はゲームに継ぎ目なく噛みあうクラス作成を手伝うルールと助言を提供することで、新しいクラスをデザインする流れを示していく。
モンスターのデザイン同様に、クラス創造の過程には考慮すべきいくつかの要素がある。他のクラスのコンセプトと君が考えるコンセプトを比較し、それぞれの異なる能力に重みをつけなければならない。あるクラスでは過ぎた力を与えるクラス特徴は、別のクラスには完璧に噛み合うものかもしれない。それは他の能力に応じたものだ。変数が多いため、(Pathfinder RPG Advanced Race Guideにおける種族作成のような)クラスをデザインする確立されたシステムは存在しない。その代わりに、本章ではPaizoのデザイナーがクラスをデザインする際に検討する過程で考えていることを君に提供していく。これを読めば、君もデザイン時に何を考えればよいかが分かるだろう。
このゲームにおいて、クラスは多くの形式を取りうる。ほとんどのキャラクターはクラス1つを選択し、冒険の経歴全てをそのクラスに従う。別のものはアーキタイプに手を出したり、上級クラスを数レベル取得する。このゲームのクラスをデザインする際、最初の大きな問いかけはこうだ。これは新しいクラスか、クラスのアーキタイプか、それとも上級クラスだろうか?
クラス:クラスはゲームの中核である。1レベルから20レベルまで成長するそれぞれのクラスは、プレイヤーに完結した経験を与える。それぞれにはゲーム内の他のクラスと独立した、強いコンセプトと専用ルールがある。要するに、この「フレーバー」、すなわち考えとシステムの観点故に、このクラスは他のクラスができないやり方でゲームに作用することができる。
アーキタイプ:アーキタイプは既存のクラスと強い関係があり、その中から作られたものだ。元のクラスの幾つかを変更し、新しいやり方でプレイすることができるよう、少しコンセプトをずらしている。君における仕事の殆どが既に終わっているので、アーキタイプのデザインはクラス全てデザインするよりもずっと単純である。アーキタイプはルールと背景のほとんどで、親となるクラスのものを用いる(だから同じ情報を繰り返す必要はない)。だがその一方で、プレイを少し異なるものとするために、細かい部分を幾つかとシステムを変更しなければならない。アーキタイプをデザインするには、クラスをデザインする過程に慣れ親しむ必要があるが、追加のガイドラインも存在する。
上級クラス:クラス同様、上級クラスには基本となるルールとコンセプトがある。しかしキャラクターは上級クラスのレベルを持った状態でゲームを開始することはできない。その代わりに、キャラクターはこのクラスのレベルを得るために条件を満たさねばならない(通常、6レベルまで待ってからでなければ、最初のレベルを得られない)。加えて、上級クラスは通常5~10レベルしか成長させることはできない。つまり、キャラクターは20レベルまで続くキャンペーンにおいて、職歴において他のクラスのレベルを取らなければならないと言うことだ。上級クラスは特定のコンセプト1つやルール1組に非常に強く注力しており、ある分野に専門化したいキャラクターにとっては完璧なものだ。しかしそれは、他の分野における多様性を犠牲にすることになる。上級クラスをデザインする際、クラスをデザインする過程に慣れ親しむ必要があるが、追加のガイドラインも存在する。
クラスのデザインにおける第一歩は君が作りたいクラスの種類を決定することだ。大きな要素が2つある――コンセプトとルール空間。いずれも新しいクラスを既存のクラスの丸写しにならないようにするために必要となるもので、比較的奇抜なものでなければならない。
デザインの流れを始めるために、このゲームのルールを直接参照することなくコンセプトを決め、このクラスが何かを決めることは何より素晴らしい。このゲームのクラスのほとんどは、ファンタジー分野全体のどこかからインスピレーションを得て作られたものだ。新しいクラスのコンセプトを考える際、重要なのは閃きを得、情報を与えてくれるそのような情報源を用いることだ。しばしば、名前やそのクラスはおおよそどのようなものかという一般的なアイデアといった単純なものから開始する。
例えば、バーバリアンを見ていこう。その名前自体が獰猛な戦士、容赦ない激怒に突き動かされる、といった、いくつもの歴史的、ファンタジー的な暗示を思い浮かばせる。レンジャーは熟練し武術に優れたキャラクターであると同時に、自然の中での生存に長け、敵を追いかけ、知らない場所を探し出す。クラスのコンセプトを決定する際、同様に違いを見出すことも考えなければならない。君がデザインしたいクラスが、コンセプトにおいて既存クラスに非常に近しく、ほんのわずかな差異しかないのなら、代わりにアーキタイプの作成に取りかかりたいと思うかもしれない(アーキタイプのデザインを参照)。
強力なコンセプトを持つことに加え、それぞれのクラスは占めることのできるルール上の場所を持っていなければならない。あるクラスのルールは既存クラスのものにいくらか類似点を持っているかもしれないが、新しいクラスそれぞれは通常のものとは異なるものにする何かを持っていなければならない。それはゲームとゲーム世界に作用する意味を、新しく興味深い形で与えてくれる。他のクラスのルールと関わることなく、そのクラスが役割を演じることのできる方法を探してみよう。ルールがあまりに近しいなら、既存クラスのシステムを台無しにする(あるいは既存クラスに台無しにされる)クラスを作るのは諦めた方がいいかもしれない。それはプレイしても魅力のないものになってしまう。
例えばローグのクラスは、誰にも見られることなく移動し、敵を傷つけるため、正確に敵の急所を攻撃することに焦点を当てている。密かに近づき多くのダメージを与えることのできるルールを備えた他のあるクラスが存在したとすると、ローグが――急所攻撃を通して――行動するやり方は、そのクラスを象徴している。君は少し異なるやり方で同じことをするシステムを作ることを避けなければならない。早い段階で、他のクラスが持つコンセプトと十分に異なるコンセプトを目指してルール全てを定めるならば、避けるのは簡単だ。君のデザインしているクラスが、既存クラスのルールに近しいものに落ち込んでいるならば、代わりにアーキタイプをデザインした方がいいかもしれない。
クラスの基本コンセプトとルール空間を何とかまとめたなら、ゲーム内の他の既存クラスと比較すること。クラスのデザインで多くの時間を消費する他の具体的な部分に手を付ける前に、このゲームの他のクラスとうまく機能するかを確認するのは最良の手段である。自分に問いかけるべき質問を幾つか示す。
上記の質問に対して、完璧なクラスはない。しかしクラスのデザインを前に進める指針となるこれらの質問を考える機会になり、クラスは齟齬がなく価値のあるゲームの一部となってくれる。
基本コンセプトとルールについてまとめきったなら、クラスを紹介する物語にとりかかる時間だ。プレイヤーが表やシステムの詳細を読み解くことなく、このクラスができることを提供してくれる、クラスの説明で、最初に書かれることが多い。この文章はクラスで何ができ何ができないか、君が決めたことを伝える物語を提供する。君があとで行うシステム上の決定の指針となるように、クラスの物語を考えていこう。物語での約束を果たすために以降の選択で辻褄が合わなくなるのであれば、選択を改善することを検討した方がいい(あるいは、システムの要素があまりにも素晴らしくて変更できないのなら、物語を変更した方がいい)。
クラスのシステム的な要素をデザインする際、クラス全てに存在する基本要素から始めること。これらの要素を作るための選択は、クラス特有の要素や特徴を決める際に助けとなってくれる。
基本システムの多くは力や能力に多くの段階を持つ。基本システムの全てが最高のクラスは存在してはならないし、ほとんどが優れたものでさえ存在しない。事実、基本システムで例外的に優れていればいるほど、そのクラスは他の興味深いクラス特徴をデザイナーとしての君が加える余地が少なくなっていく。君の選択と既存クラスのものを比較し、その動きを理解し、新しいクラスのバランスを取る方法を見出すこと。
基本攻撃ボーナス:このゲームにおいて、基本攻撃ボーナスの成長には3種類存在する。ゆっくりした成長(ウィザードやソーサラーが用いる)は通常、呪文発動が最大まで成長する(すなわち呪文が9レベルに至る)秘術呪文の使い手向けに準備されたものだ。中程度の成長(クレリック、ドルイド、バード、モンク、ローグが用いる)はクラス特徴に大きな多様性があり、戦闘で行動的な動きを期待されているクラスのものだ。早い成長(バーバリアン、パラディン、ファイター、レンジャーが用いる)は戦闘の只中にいることを求められ、呪文発動能力にほとんど関係しないキャラクター用のものだ。
ヒット・ダイス:ヒット・ダイスの種類は、それぞれのクラスの基本攻撃ボーナスの成長によってそのほとんどが決まる。ゆっくりした成長はd6、中程度の成長はd8、早い成長はd10である。このルールの例外もわずかに存在する(バーバリアンなど)が、この例外はクラスを大幅に強化しうるものであり、他のクラス要素をデザインする際に考慮しておかなければならない。
セーヴィング・スロー:このゲームで使用されるセーヴィング・スローの成長は2種類だ。参照しやすくするため、「優れた」及び「劣った」と呼称することにしよう。それぞれのクラスは優れたセーヴィング・スローを1~2つ持つが、それ以外は劣ったものだ。このゲームには1クラスだけ、全てのセーヴィング・スローが優れたクラスがいる(モンク)。これにより、このクラスは特徴的なボーナスを得、通常は他のクラスで同様の処理を行ってはならない。セーヴィング・スローが優れたものか劣ったものかは、そのクラスについて多くのことを語ってくれる。ほとんどの呪文の使い手は優れた意志セーヴを持つ。ほとんどの戦闘に適応したクラスは優れた頑健セーヴを持つ。機動性と敏捷性に注力するクラスのほとんどは、優れたセーヴの1つに反応セーヴを持つ。
技能:クラスの技能を決定する際、考慮する点は2つだ。レベル毎に得られる技能ランクと、どの技能がクラス技能か、である。技能ポイントの観点では、ほとんどのクラスはレベル毎に2ポイント(+キャラクターの【知力】修正値)しか得られない。わずかなクラスが4ないし6ポイントを得る。これは、クラスの他の要素をデザインする際に考慮しておかなければならないボーナスである。ローグのみがレベル毎に8ポイントを得る。同じ値をクラスに与えるならば、十分に納得できるだけの理由を与えなければならない(最も技能に熟達したクラスであるというローグの役割を侵すためだ)。ほとんどのクラスはクラス技能を10前後持つ。しかしレベル毎に多くランクを割り振る必要のある技能はもっと多い。君が選択したクラス技能は、そのクラスに属するものが重要だと考えていることについて多くを語る。クラスは、ゲームにおける役割を演じるにあたり必要な技能には優れていなければならない――そしてそれ以上は不要である。〈隠密〉と〈知覚〉をゲーム中の全てのクラスに与えるというのは魅力的かもしれないが、密かに行動するクラスや斥候向けにデザインしたクラスを作るのでない限り、そのような技能は適切なクラス技能の選択には不要である。パーティの他のキャラクターが埋められる穴を残しておくことが重要なのだ。最後に、ほとんどのクラスは〈職能〉と〈製作〉をクラス技能として持つことをお忘れなく。ただし、特に文明化されていないなら話は別だ(バーバリアン参照)。
呪文の発動:すべてのクラスが呪文を発動する能力を持つわけではないが、呪文発動は一般的なクラス特徴であり、他の基本システムと一緒に考慮するに値する要素である。このゲームでは、呪文発動に3つのモデルを用いている。またそれと同時に、キャラクターが準備する呪文の使い手か、任意発動する呪文の使い手かということに基づいた多様性も備える。下級の呪文の使い手(パラディンやレンジャーなど)はゲーム開始時から呪文発動能力を備えているわけではなく、4レベルまでの限られた呪文リストを持つ。中程度の呪文の使い手(バードなど)は最初からいくらか呪文を発動することができ、6レベルまでだが十分に大きな呪文リストを持つ。最高の呪文の使い手(ウィザード、クレリック、ソーサラー、ドルイドなど)は9レベルまでの呪文を使用することができ、広範な呪文リストを持つ。下級の呪文発動能力は早い成長の基本攻撃ボーナスを持つクラスに最適である。それに対し、中程度ないし最高の呪文発動能力は、ゆっくりした成長か中程度の成長の基本攻撃ボーナスを持つクラス用に作られたものだ。早い基本攻撃ボーナスと最高の呪文発動能力の両方を備えたクラスを作成するのはやめよう。基本システムを決定する際に呪文リストをデザインする必要はないが、作成しているクラスの呪文発動能力の種類がどれかについては決めておいたほうが良い(呪文リストをデザインするを参照し、君のクラス用の呪文リストを作成する助言に目を通そう)。
基本システムの整理が終わったら、クラス特徴のデザインを始める時間だ。それらはレベルを上昇させる際にクラスが得るシステムであり、クラス特徴のそれぞれが、そのクラスをゲーム中の他のクラスとは違う形で目立つようにしてくれる、力と能力を与えてくれる。
ほとんどのクラス特徴は2つの分類のいずれかに落ち着く。すなわち、主要クラス特徴と副次クラス特徴である。主要クラス特徴はクラスを表す特徴である。これらの能力はレベルを上昇させてクラスが成長するに従い、力と使いやすさを高めていく。そしてこれらクラス特徴が成長することこそ、プレイヤーがそのクラスの一員をプレイする際に心待ちにしている要素の大部分なのだ。主要クラス特徴の例として、バーバリアンの激怒、バードの呪芸、悪を討つ一撃、急所攻撃が挙げられる。副次クラス特徴は一度得たらキャラクターがそのクラスを成長させてもほとんど変化しないもの、もしくはわずかしか変化しないものである。副次クラス特徴の例として、武勇、パス・ウィズアウト・トレイス(訳注:おそらく跡無き足取りの誤り)、罠探しが挙げられる。主要クラス特徴は1つのクラスのみに限定される傾向があるが、副次クラス特徴は複数のクラスが持ちうることは、注意しておいたほうが良いだろう。
主要クラス特徴:これらのクラス特徴はクラスに楽しさを作り出し、魅力を与える鍵となる。これらは通常1レベルの時点で与えられ、レベル上昇の過程で成長する。成長はクラスを成長させる中でキャラクターに適した特徴であり続ける。ほとんどの場合、これらは戦闘で優位性を与えることに特化した汎用的なものだ。キャラクターはこの興味深い方法を使いこなすことで、遭遇は魅力的なものとなる。例えば、激怒を使用すれば、バーバリアンは力とダメージを与える能力を増幅させる。バーバリアンがレベルを上昇させれば、激怒により与えられるボーナスと1日にこの能力を使用できるラウンド数の両方が増加する。急所攻撃も同じように機能し、ローグがレベルを上げるに従いその力を高め、より大きな最大ヒット・ポイントを持つ敵に立ち向かい続けることができる。
新しい主要クラス特徴をデザインする際、既存の主要クラス特徴を指針として用いよう。ほとんどの主要クラス特徴は数レベル毎、大抵は短期間毎にその力を高める。持続時間に関するものは、レベルを得るたびに持続時間全体を増加させることも多い。持続時間は個別の単位で使用できるものであるべきだ。それにより、キャラクターは1日にわずか1回だけではなく、何度もその能力を活用することができる(持続時間がかなり長いものでない限り)。
ほとんどの場合、最高の呪文発動能力の成長を持つクラスは、強力な主要クラス特徴を得ないことに注意すること。このような場合、呪文発動それ自体がその役割を担う。下級もしくは中程度の呪文発動能力の成長を持つクラスは、呪文発動に関するクラス特徴を得ることが多い。この手の主要クラス特徴は、キャラクターがレベルを得るたびに大きく変化する必要がないことになる(メイガスの呪文戦闘クラス特徴を参照)。このクラス特徴は比較的変化したいもので構わない。というのは、呪文自身がキャラクターがレベルを得るたびに成長していくからである。
副次クラス特徴:この種のクラス特徴はクラスを締めくくるようにデザインされ、役割によりうまく合うように与えられた能力である。ほとんどの場合、副次クラス特徴は状況限定的で、特定のシナリオでボーナスを得たり役に立ったりする能力である。例えば武勇は、[恐怖]に対する意志セーヴにのみボーナスを与える。このクラス特徴はファイターが恐ろしい敵に対して立ちはだかる、勇気ある英雄としての役割を満たす助けとなってくれる。
副次クラス特徴の全てが、キャラクターがレベルを得るたびに成長するわけではない。プレイ時、どのレベルであっても役に立つ、単なる便利な能力を提供してくれるものもある。例えば、森渡りはどのレベルで遊んでも役に立つものだ。技能や他の判定にボーナスを与えるわけではないので、キャラクターのレベルが上昇したからといって、より強力になる必要もない。
主要クラス特徴とは異なり、副次クラス特徴は複数のクラスで見られる場合もある。クラスはその主題に関連する副次クラス特徴を持っているべきだ。そしてまったく同じ目的を満たすために新しい特徴を発明するのではなく、他のクラスの副次クラス特徴を用いるのは無難なやり方である。例えば、バーバリアンもローグもレベルを上昇させると直感回避を得る。いずれも素早く危険に反応することで知られているので、同じことを有効的に実現するために異なるクラス特徴を受け取るのではなく、このクラス特徴を両方が持つというのは理にかなっている。
死んだレベル:君のクラスが持つ主要クラス特徴と副次クラス特徴を埋めたなら、重要なのはそれらをレベル毎に並べることだ。これにより、いつクラス特徴を得、(主要クラス特徴の場合には)いつその力や能力が増加するかを簡単に知ることができる。これにより、君はそのクラスがレベルを得る際に得られるクラス特徴に極端な偏りがないかを確認することができる。また、「死んだレベル」がないことを避けることもできる。「死んだレベル」はキャラクターが基本システムのボーナスを得るだけしかないレベルのことだ。一般的なルールとして、どのレベルでもクラス特徴を1つ2つより多く得られるレベルを欲しがってはならないし、死んだレベルを避けなければならない――新しい能力を得、能力を成長させることは、レベル上昇の楽しみの一部なのだから!
呪文の使い手はこの指針の例外となる場合がある。最高の呪文発動能力を持つクラスの場合、発動できる呪文レベルが新しく得られるというのは、クラス特徴に相当する価値あるものだ。例えば、ドルイドを見ていこう。このクラスはクラス特徴が成長したり新しいクラス特徴を得られないレベルがわずかに存在する。しかしそれらのレベル全てにおいて、ドルイドは新しい呪文レベルを得る。ソーサラーの血脈能力の全ては、奇数レベルで得られる。これは、偶数レベルのたびに新しい呪文レベルを得るためだ。この原理は中程度の呪文発動能力を持つクラスにも適用できるが、一般的な指針として、下級の呪文発動能力を持つクラスや呪文発動能力を持たないクラスは、1レベルから20レベルまでの各レベルにおいて、クラス特徴を獲得するか既存のクラス特徴が強化されるかするべきである。
頂点:ほとんどのクラスは頂点能力(すなわち、20レベルで得られる能力)を持つ。ほとんどのゲームにおいて、これはキャラクターが得る最後の能力であり、力の高遠な高みに至った報酬としても感じられるものであるべきだ。この能力の頂点では、少し限度を超えたことを自由に考えよう。プレイヤーがずっと欲しがっていたものにしよう。そんなに長く生き延びたなら、それは確かに得られるものだ。
呪文発動能力を持つクラスにあった呪文リストをデザインするのは、困難な作業といって差し支えない。呪文リストを構築する際に使用できる様々な情報源について考慮しなければならないが、その一方で新しい呪文が使用できるようになった将来の時点で、拡張できる余地を残しておかなければならない。
呪文リストはクラスの本質を語る、内的な整合性を備えていなければならない。ウィザードは治癒魔法を知らない。それこそキュア呪文が彼らの呪文リストに入っていない理由である。バードは仲間の能力を強化するために多くの時間を費やす。だからその呪文の多くは1人もしくはそれ以上のキャラクターを助けるものなのだ。クラス用の呪文リストをデザインする際、自分に問いかけるべきだ。「このクラスは呪文によって何を獲得するのか?」この質問は何より勝るもので、そのクラスに適切だと感じる呪文リストを作る助けとなってくれるだろう。
クラスの呪文リストに掲載された呪文の数もまた、重要な検討事項である。下級の呪文発動能力の成長を持つクラスは一般に選択できる呪文の数は他よりも少ない。しかし高レベルになると、彼らは中程度もしくは最高の呪文発動能力の成長を持つクラスがもっと高レベルでないと使用できない呪文を使用する。最高の呪文発動能力の成長を備えたクラスは選択できる呪文は広範なものであるべきだ。それがこのゲームで彼らが貢献する主要な方法の一つとなりがちだからである。
呪文の使い手がある呪文を使用できるようになるレベルを決定することは、呪文リストのデザインで最も困難な要素の一つである。様々な呪文が様々なクラスの異なるレベルで登場すべきだ。例としてホールド・パースンを見ていこう。クレリックはこの呪文を2レベルの時点で獲得する。しかしウィザードとソーサラーはこの呪文を3レベルの時点で獲得する。ここで注意したい大切な事は、ある呪文(そして同様の能力が与えるもの)は、PCがある最低限のレベルになるまで使用できるようにしてはならないということだ。例えば、このゲームでは通常、PCは5レベルになるまで安全に飛行することはできない。そして9レベルまで死者を蘇生したり瞬間移動することはできない。この指針にはいくつか例外があるが、それらは非常に珍しいものであり、注意深く扱うべきである。冒険はこれらのベンチマークを念頭に置いて記されているからだ。また、4レベル以下のリストに載っている呪文は全てワンドに仕込むことができ、3レベル以下の呪文はポーションとして作ることができることを忘れてはならない。判断が付かないときは、ウィザード/ソーサラー呪文リストとクレリック呪文リストを指針にすると良い。
基本システムを決定し、クラス特徴の全てをデザインし終えたなら、立ち返って作成したものを見る時間だ。理想的には、デザインを具体化する際、評価はプロセスの一部とするべきだ。しかし全てのパーツが適切に収まった時点で評価することこそ、もっと重要な手順である。
評価における最初の手順は、キャラクターがこのクラスのレベルを上昇させる姿を想像することだ。選択したシステムによって、とりわけ精彩を欠いたり過積載となったレベルはないだろうか? プレイ中の各レベルにおいて、このクラスはゲームの中でその意味を与えられるだろうか? 他のクラスと比較することで、レベル毎に能力と多様性に重みをつける基本を見ていこう。与えられるレベル以上に優れたものならば、クラス特徴をいくつか削る必要があるかもしれない。また、そのレベルにしては弱すぎる場合、クラス特徴を強化したり、新しいクラス特徴を追加する必要があるかもしれない。
君がクラスに満足したら、システムに磨きをかけわかりやすく簡素なものにする時間だ。友達や仲間のプレイヤーに、文章でルールを見てもらおう。彼らは疑うことなく、どう機能するのか、他の既存のルール要素とどう作用するのかについていくつか質問をしてくれる。この質問が、文章を改善しクラスをわかりやすくプレイして楽しいものにする助けとなる。
最後に、クラスのテストプレイをしよう。このクラスのルールを使ってキャラクターを何人か作り、他のキャラクターやモンスターと模擬戦を行おう。キャラクター1体と敵1体だけのテストプレイでは、同じレベルのキャラクターに対する理解を深めることができる。戦闘はほぼ同数で行う方が良く、環境や状況毎に行うと良いだろう。モンスターに対しては、脅威度がキャラクターのレベルよりもおおよそ4低いモンスターとの戦いを見れば、このキャラクターを戦闘でうまく扱う考え方が得られる。テストプレイはシステムが実際に実行されるかどうかを見極める感覚を養ってくれるはずだ――しかし、戦闘の結果が極端に偏ったダイスの出目に従ったものでないか、注意しておこう。結果が極端に偏ることだってあり得るのだから。
クラスをデザインする過程では、この全ての段階を何度も繰り返すことになるだろう。最初に多くの作業が必要だからといって、諦めてはならない。君が最終形に満足するまで、デザイン、テストプレイ、そしてクラスのコンセプトの再デザインを繰り返そう。新しいクラスの作成は、ゲーム・デザインの中でも最も難しい作業の一つなのだということをお忘れなく。
アーキタイプのデザインはクラスのデザインに似ているが、既に完了した仕事が多くある。クラス同様、アーキタイプもコンセプトやルールの隙間を持つ必要がある。しかし個性は固有のものである必要はない。アーキタイプは通常、既存クラスの持つコンセプトやルールに強く関連している。しかし、クラス特徴のいくつかをコンセプトにより沿うものに変更することで、わずかに異なる方向にクラスを配置しようとするものだ。
多くのアーキタイプは新しいクラスのアイデアとして始まっている。しかし同じように進めていくと、既存クラスに非常に近しいことが明らかになったのだ。このような場合、別の場所で生きようとする新しいクラスを完全に作るのではなく、アーキタイプを作るのがよいだろう。例として、Advanced Player's Guideに掲載された、レンジャーの遊撃兵アーキタイプを取り上げる。自然を舞台とすれば活躍し、一般に武器戦闘に傾倒している。無意識的にほとんどレンジャーのルールほとんど全てに基づいているが、レンジャーの呪文発動能力の代わりに、狩人の技をいくつか得る。レンジャー自身をわずかに変えるだけで適切であることを考えれば、このコンセプトを持つ新しいクラスを新規に作るのはばかげたことである。
アーキタイプにおけるデザイン上の仕事のほとんどは、クラス特徴に向けられる。一般的なルールとして、基本システムのほとんどは変わらない。基本攻撃ボーナス、ヒット・ダイス、セーヴィング・スローはまず変更されないし、それらが特に見合わない場合でもない限りは技能と呪文発動能力も変更する必要はない。
クラス特徴の置き換え:成功したアーキタイプを作成する鍵となるのは、どのクラス特徴を何に置き換えるかを決めることである。一般的に、主要クラス特徴を置き換えるのは非常に難しく、非常に注意深く行うべきだ。しかし副次クラス特徴はクラスにおいて比較的わずかな影響しかなく、新しいクラス特徴に変更するのはずっと簡単である。
置き換えるクラス特徴を決定する際、アーキタイプの主題を忘れないようにしよう。そのクラス特徴はアーキタイプの役割に重要ではないだろうか? 取り除いても、そのクラスはちゃんと機能するだろうか? 選択したクラス特徴に関連して機能する、他のクラス特徴はあるだろうか? そしてそれらも置き換える必要があるだろうか? こういった質問は、どのクラス特徴がそのクラスにとってかけがえのないもので、どれが置き換えても影響が少ないかを決定する指針となってくれるだろう。
既存のものを置き換えるためにアーキタイプ用の新しいクラス特徴をデザインすることは、完全に新しいクラス用のクラス特徴をデザインする、同様のルールの多くに従う。しかし、置き換えるクラス特徴の能力と多様性を考慮しなければならない。ファイターの武勇クラス特徴を、アーマー・クラスにボーナスを与える新しいクラス特徴を入れ替えるのは等価交換ではない。その結果、基本クラスよりずっと強力なアーキタイプとなるだろう。より弱い別のクラス特徴と置き換えることでこの交換のバランスを探すかもしれないが、可能ならばこのような交換は避けた方が良い。そうしなければならない場合、新しく強力なクラス特徴に支払う代償として、強力なクラス特徴を置き換えるよりも、より弱い選択肢がより早いレベルで登場するようにした方がよい。そうすることで、キャラクターがその強力なクラス特徴を得るために、そのクラス特徴に支払う代償を避けるために別のクラスを置き換える代わりに、ほんの数レベルだけそのアーキタイプを取得することを避けられる。指針として、クラス特徴の置き換えはおおよそ置き換えるクラス特徴と同じ能力を持つ、同種の役割を与えるべきだ。いつもこの条件を満たせるわけではないが、役割について議論する際にさえ、作成している代替クラス特徴が元のものより明白に強力であったり劣っていたりしてはならない。
部分的な置き換え:状況によっては、複数のレベルに渡って得られるボーナスや能力を全て置き換えるのではなく、一部だけ置き換える方が適切な場合もある。例えば、ファイターはボーナス特技クラス特徴を持つ。このクラス特徴は1レベル、2レベル、以降偶数レベルにボーナス特技を1つ与える。アーキタイプは新しいクラス特徴を与えるために、ボーナス特技の全てを置き換えても一部だけを置き換えても良い。
部分的な置き換えを行うと決める際には気をつけよう。君が部分的に置き換えようとしているクラス特徴のルールは、後で置き換えられずに成長することを想定していないかもしれない。例としてクレリックのエネルギー放出を考えよう。君が3レベルの時点の2d6への成長を置き換えた場合、5レベルでは何が起きるだろうか? キャラクターは2d6に成長するのか、それとも一足飛びに3d6になるのだろうか? このような場合、最良の方法は、クラス特徴全てを置き換えるか、既存クラスの残りをどう取り扱うかを説明しておき、置き換えの曖昧さをなくしておくことだ。
代替クラス:時々、アーキタイプがあまりに多くのクラス特徴を置き換えた結果、ほとんど新しいクラスになってしまうことがある。このような場合、例え基本クラスと共有するものでさえも、このクラスは全てのクラス特徴を説明した方がいいかもしれない。正確には依然としてアーキタイプのままだが、このクラスをプレイするキャラクターは、キャラクターを成長させる際に必要となる全ての道具を備える。アンティパラディン、サムライ、ニンジャは全て、代替クラスの例である。
混成クラス:既存クラスから多くのものを引き出しているという点で、混成クラスはアーキタイプに似ている。しかし混成クラスは、能力の基本を形作る2つの異なるクラスから混ぜ合わせたものだ。その結果、独自の隙間とクラス特徴を備えた、全く新しいクラスとなっている。
クラスと多くの点で似ているが、上級クラスは高レベルのキャラクターがマルチクラスの際に用いるよう、専用にデザインされている。一般的なデザイン指針は似ているかもしれないが、上級クラスのデザインは考慮すべき追加の要素がいくつか存在する。
上級クラスには、非常に強いコンセプトが必要だ。この世界で辻褄が合う必要があるだけではなく、何故キャラクターがプレイ開始時にそのクラスのレベルを取得できないかという疑問に、論理的な理由が必要となるからだ。しばしば、この論拠が上級クラスのクラスの物語を作り出すことになる。例えば、騎士団に関する上級クラスをデザインしようとした。そこで君は、彼らは戦場で自分の能力を示すものを引き受け訓練することにした。新しく、若い入隊者は騎士団の一員ではあるかもしれないが、決心しテストに合格するまでこの上級クラスに示されているような特別な訓練を受けることはできない。PCがその上級クラスになる前に、特定の能力や技能を得る必要がある上級クラスもあり得るだろう。飛行に卓越したウィザードの一団は、フライを発動できるものを訓練することはできない。
上級クラスは1つのルールとコンセプトに強く専心しているべきだ。そしてそのクラス特徴の多くはこのコンセプトに関わっている。上述の空飛ぶウィザードの例の場合、この上級クラスのクラス特徴は飛行時にボーナスやフライの発動回数を増やす能力、そして落下ダメージを避ける能力を与えるかもしれない。
通常のクラスやアーキタイプとは異なり、上級クラスは注意深く検査する価値のある要素がいくつかある。まず、全ての上級クラスには、このクラスのレベルを得る前にPCが満たさなければならない必要条件の一覧がある。PCが6レベルになるまで上級クラスのレベルを取得できないように、必要条件を設定するべきだ。例えば、基本攻撃ボーナス+5、3レベル呪文を発動する能力、特定の技能を5ランクといったものが必要ならば、キャラクターは前提条件を満たす前に5レベルに到達していなければならない(つまり、上級クラスの1レベル目を獲得するのは6レベルとなる)。
上級クラスに何レベル存在するかも、注意深く考慮すべき内容だ。ほとんどの場合、PCが得られるのは5レベルもしくは10レベルである。この数字はいくらでも構わないが、上級クラスのより高いレベルで得られる、本当に印象的な能力を加えられるように、5レベルより低くはしない方がいいだろう。
上級クラスのデザインは基本クラスのデザインに似ているが、重要な相違点がいくつかある。まず、上級クラスが多くのクラス技能を与えることはほとんどない。ほとんどのキャラクターはクラスを通してクラス技能を得ている。もしそのキャラクターが主題やコンセプトに合う場合、キャラクターは既に関連する技能のほとんどを備えており、冗長なものとなってしまう。次に、上級クラスは優れたセーヴと劣ったセーヴにおいて、異なるセーヴィング・スローの成長速度を用いる。これはマルチクラスによってセーヴィング・スローへのボーナスがインフレを起こさないようにするためだ。
上級クラスの主要クラス特徴と副次クラス特徴をデザインする実際の流れは、他のクラスやアーキタイプをデザインする場合と同じである。キャラクターが与えられたクラス特徴を得るレベルを決定する際に、キャラクターの実際のレベルを用いることを心に留めておこう。1レベルのキャラクターにとって適したクラス特徴であっても、上級クラス1レベル用のクラス特徴としては力不足である。この能力は、実際は6レベルになって得られるものだからだ。その一方で、上級クラスになれる最速のレベル(6レベル)の時点で、キャラクターが上級クラスの必要条件を満たすことができない場合もあることを覚えておこう。とはいえ、強力すぎるクラス特徴を低レベルのキャラクターが使用することがないよう、クラス特徴をデザインしなければならない。
完全なプレイ体験を提供するようにデザインされたクラスとは異なり、上級クラスは冒険者としての職歴の終わりに到達する前に、キャラクターが終わらせることができるようにデザインされる。その結果、キャラクターは上級クラスを11レベルや16レベルで終わらせることができ、レベルの残りを他のクラスで成長させなければならない。優れた上級クラスはクラスが終わるに従い、価値あるクラス特徴をキャラクターに与えることを考慮に入れていなければならない。このクラス特徴は低レベルのキャラクター向けにデザインされたクラス特徴を持つ別のクラスのレベルを取得する際、累積する。これはクラスの頂点能力と同様に感じられるものでなければならないが、キャラクターが獲得できる最低のレベルに向けてデザインされたものだ。