追撃は無数の物語で重要なアクション・シーンとなっているが、パスファインダーRPGでは静的な移動速度値のために1回限りの行動としてあらわされる。ゲーム中の全てのクリーチャーは一定の移動速度値を有するため、自動的に逃げる敵に追いつくことができる(あるいはできない)かのように見える! 明らかにこれは妥当ではない。敵を捕えたり、捕えられるのを避けることには単なる速度以上の何かがある。
追撃をシミュレートするためには多少の準備作業が必要となる。トランプ大の紙片や付箋紙を10枚ほど準備すること。これらの“追撃カード”がボードゲームのように追撃のルートを表す。標準的な追撃のためには10枚の追撃カードを使用するので良いが、より長い追撃のためにもっと多くのカードを使うこともできる。
追撃を“追跡”としてデザインする場合は、あらかじめ定められた終わり(“終着点”)があるかどうかを決めなければならない。それは取り合っている資産、逃亡中の乗り物、追い求めている敵を見つけ出す前に見知らぬ場所へ飛ばしてしまうポータルなどの逃げているキャラクターがつかまる前に到着しようとする目的地である。追撃に終着点がある場合は、カードの1枚にそれを記す。追撃者が逃げるキャラクターがそのカードにたどり着く前に捕らえることができなかった場合は、追撃は終了する。追撃に終着点がなく、単に消耗戦的なレースである場合は、追撃カードを四角や円のような明白な始点や終点がない形に並べる。追撃カードを碁盤目状に並べ、参加者が障害のあるフィールドを好きな方向に移動できるようにすることもできる。
それぞれのカードについて2つの追撃の障害を選ぶこと。必ずしも全てのカードに障害が必要なわけではない。終着点カードには障害をおく必要はなく、またより高速の追撃を望む場合は少数のカードにのみ障害をおくこともできる。しかしカードに障害がある場合は、それには2つの選択肢があるべきである。
追撃が開始したときに、追撃に巻き込まれたクリーチャーをあらわすミニチュアかトークンを以下のスタート状況をあらわす追撃カードの上におくこと。
突発的スタート:全ての者が同じスタート地点からはじめるとされる追撃は、全ての参加者は同じ追撃カードの上からスタートする。
ハンデつきスタート:ある参加者が追撃にいるほかのクリーチャーよりも有利なスタートをする場合は、他の参加者よりも3枚先のカードからスタートする。
大差つきスタート:ある参加者が実際的にはすでに追撃に勝っているような大差がある場合は、追撃の終点から3枚前のカードか、他の追跡の参加者よりも10枚先か、両陣営の差が大きい方からスタートする。
追撃の障害は追撃が行われている場所に相応しいように作られるべきである。屋根の上での追撃は、朽ちかけた屋根、狭い隙間を跳び越す、綱渡り、急勾配の屋根を登るなどのものが含まれているだろう。沼の中のボロボロの遺跡での追撃は、朽ちかけた廊下、狭い通路、蔦に飛びつく、流砂を跳び越す、吐き気を催すような瘴気の雲などが含まれているだろう。
それぞれの障害にそれを切り抜けあるいは克服するための難易度を定めること。些細な障害は難易度10、単純な障害は難易度15、標準的な障害は難易度20、困難な障害は難易度25、非常に困難な障害は難易度30である。高レベルの追撃に関しては、高レベル用の難易度に対応して自由に定めること。障害を定めた場合、カードに書かれた2つの障害の難易度は5ポイント以内の差であるのがよいが、同一であるべきではない――これにより参加者は戦術的判断を要することになる。
一般的なルールとして、障害は〈軽業〉、〈登攀〉、〈脱出術〉、〈水泳〉のような肉体的な技能判定によって克服されるだろう。〈知覚〉は近道のような障害のために使用することができる。〈隠密〉を区域を静かに通り抜けるために、あるいは〈はったり〉を市衛に自分たちが通行許可を持っていると思わせて通行するために行わせることができる。セーヴィング・スローも障害を解決するために使用することができる(頑健セーヴで病気にならずに不潔な沼を通り抜けたり、意志セーヴである区画に祟る奇妙なむせび泣く魂を避けたりする)。創造的に行え! 障害を再利用することもできるが、カードごとに変化をつけるように努め、くりかえし同じ難易度や同タイプの判定にはまり込まないように留意すること。
追撃が開始されたときに最初にすべきことは、基本速度――追撃の参加者多くの移動速度値――を決定することである。ほとんどの場合、これは30フィートの地上移動速度であるが、一部の場合では他の値でスタートするかもしれない。この基本速度は各追撃カードの間の“距離”を定めるため、大抵の場合、それぞれのカードは30フィートの空間を表すことになる。
2隻の帆船が遠く離れた島を目指して競走している場合や賞金稼ぎが獲物を追って砂漠を長い距離旅している場合などの例では、追撃の間を調整したいと思うだろう。それをすれば各カードの距離が変更され、また呪文を発動するなど、参加者に各ターン行うべき複数の選択肢も与える。この場合もこの追撃ルールを使用することはできるが、追撃のラウンドの長さと各カードの距離を適切に決定すること。
追撃の最初に、各参加者は移動する順番を決定するためにイニシアチブ判定を行う。(囚人が自由への破れかぶれの逃走を始めたときのように、参加者の1人が追撃の引き金を引いた場合は、その参加者は不意討ちラウンドに他のクリーチャーへの不意討ちが成功したかのように最初に動くことができる。)
キャラクターの実際の移動速度はどれだけのカードの間を移動できるかには直接に影響しないが、どれだけ迅速に障害を切り抜けられるかには関わる。追撃の基本速度よりもあるキャラクターの移動速度が10フィート遅いごとに、障害を切り抜けるためのあらゆる判定に-2の累積するペナルティを被る。同様に、基本速度よりも10フィート移動速度が速いごとに、これらの判定に+2の累積するボーナスを得る。基本移動のタイプよりも著しい機動力の優越がある場合(飛行など)は、キャラクターが障害を回避するために移動力の強化を行うことをシミュレートするため、障害を避けるための判定にさらに+10のボーナスを得る。適切に特に強力な効果(瞬間移動のような)を使用することで、キャラクターは即座に数枚のカードの先に移動することができる(距離を決定するに際しカード毎の間隔を使用する)。
30フィートの基本速度を使用する場合、1枚のカードを通過することは1回の移動アクションとなる。キャラクターが1枚のカードから出ようとする場合、次のカードに移る前に1回の標準アクションとしてカードの2つの障害から1つを選択しなければならない。成功すればキャラクターは次のカードに移れるが、失敗した場合は 次のラウンドもまたその障害に相対していなければならない。カードから出る代わりに、キャラクターは追撃のコースを進行することとは直接関係しない、呪文を発動したり武器を抜いたりするような行動を取ることもできる。
キャラクターが自らのターンにカード3枚分を移動しようとする場合、全ラウンド・アクションを取ることでそうすることができる。そのキャラクターは自分が出るカードの障害を両方とも克服しなければならない。この場合、キャラクターがどちらかの障害を5以内の差で失敗した場合、カード1枚だけ前進することができ、ターンは終了する。キャラクターがどちらかの障害を6以上の差で失敗した場合、そのターンは全く移動することができない。不運にも1ターンで障害判定を2つとも失敗したキャラクターは今いる区画で苦境に陥る(尾根から落ちるのかもしれないし、木の根で足を強打するのかもしれないし、人込みで立ち往生するかもしれない)。苦境に陥ったキャラクターは脱出するのに全ラウンド・アクションを必要とし、結果的に追撃の次のターンを失うことになる。いくつかの場合には、苦境に陥ることで(落下ダメージのような)追加のペナルティを受けるかもしれない。
キャラクターは追撃の際に自分のターンで遠隔攻撃を行ったり呪文を発動したりすることもできる。そのアクションが全ラウンド・アクションの場合、移動をすることはできない。必要な距離を決定するためにはカードの枚数とその間の距離を使うこと。追撃が起こっている地形により、GMの望むように目標は部分遮蔽、完全遮蔽、視認困難を得る。キャラクターは同じカードの上にいる目標に対してのみ近接攻撃を行うことができる。