以下の選択ルールは、通常の呪文発動を面白く新しいやり方に変化させる。それぞれのルールはその概念はかなり単純だが、その影響は以下には書ききれない。GMは予期せぬ結果を調整したり解決する準備をしておくこと。
通常の魔法ルールのもとでキャラクターが術者レベルを得ると、呪文の有用性が大きく変化し、それぞれの呪文の汎用性が一様に強化される。制限魔法ルールは呪文の力をより厳密に呪文レベルで階層付けられたものにするとともに、術者の力がレベルとともに徐々に高まる度合い減らすものだ。
制限魔法ルールを使用すると、全ての呪文は最低術者レベルと必要な能力値の最低値で発動される。呪文の最低術者レベルは2×呪文の術者レベル-1であり、クラス・レベルに応じて変化しない。呪文のレベルはクラスごとに様々だ。そのため、異なるクラスであれば同じ呪文でも異なる最低術者レベルを持つこともある。呪文の最低能力値は10+呪文のレベルである。そのためそれぞれの呪文のセーヴ難易度(10+呪文のレベル+術者の能力値修正)も一定になる。これらの値は参照しやすいよう、後述の『表:制限魔法』に記載している。術者レベル(9)列は9レベル呪文まで得る術者(ウィザード、クレリック、ドルイドなど)の最低術者レベルを示している。術者レベル(6)列は6レベル呪文まで得る術者(バードなど)の最低術者レベルを示している。術者レベル(4)列は4レベル呪文まで得る術者(パラディン、レンジャーなど)の最低術者レベルを示している。クラスの呪文発動の成長はこれらの最低術者レベルと異なる場合、常にこの票の数を置き換えること。
術者レベル(6) |
術者レベル(4) |
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0 |
1 |
1 |
― |
10 |
10 |
1 |
1 |
1 |
4 |
11 |
11 |
2 |
3 |
4 |
7 |
12 |
13 |
3 |
5 |
7 |
10 |
13 |
14 |
4 |
7 |
10 |
13 |
14 |
16 |
5 |
9 |
13 |
― |
15 |
17 |
6 |
11 |
16 |
― |
16 |
19 |
7 |
13 |
― |
― |
17 |
20 |
8 |
15 |
― |
― |
18 |
22 |
9 |
17 |
― |
― |
19 |
23 |
魔法のアイテムから発動する呪文は上記と同じルールを用いる。すなわち、ウィザードもしくはソーサラーが作成したワンドから発動したファイアーボールは、ウィザードもしくはソーサラーに発動されるファイアーボールと同じセーヴ難易度とダメージ・ダイス数を用いる。魔法のアイテムの基本コストや市価を算出する際、常にこのルールで決定される最低術者レベルを用いる(例えそのアイテムの作成者がより高い術者レベルを有していたとしても)。ポーションと巻物は基本コストを決定する際、常に適切なウィザード、クレリック、ドルイドの呪文レベルを基準にする。
このルールの下では、呪文は《呪文レベル上昇》で強化される。《呪文レベル上昇》された呪文は最低の術者レベルを用いるが、より高いレベルの呪文であるかのように用いる。例えば、5レベルに《呪文レベル上昇》されたファイアーボールは難易度が17で9d6ポイントのダメージを与える。これは同じスロットを用いたコーン・オヴ・コールドと同じ値だ。
制限魔法に慣れるには少々時間がかかる。ほとんどの呪文の使い手の力は劇的に弱まるが、モンスター、NPC、魔法のアイテムの術者レベルを調べる手間が減るためゲームの速度は早くなる。制限魔法は均整の取れた呪文の使い手キャラクターを奨励しもするだろう、特に能力値を生成するのに購入ルールを使用している場合には、呪文発動に適した能力を一本伸ばしする価値が下がるがために。
このルールを使用するということは、あるクラスが他のクラスよりも低いレベルで呪文を得る場合、その呪文の効果は後で得るクラスのものよりも弱くなることを意味する。バードのヒロイズムはウィザードのものほど優れていない。しかし制限魔法が呪文の力全体を弱めるため、よりゆっくりした呪文の成長をするクラス(バード、パラディン、レンジャーなど)は競争力を保つ他の能力を持つことになる。
平均難易度が低下することで全体を構成する他のルールを変更することも検討しよう。例えば、《頑健無比》、《神速の反応》、《鋼の意志》はセーヴに+1しかボーナスを与えないかもしれないし、《呪文熟練》や《上級呪文熟練》による呪文難易度の増加は2に上昇するかもしれない。
秘奥の物質構成要素ルールの併用/With Esoteric Spell Components:このルールは特に秘奥の物質構成要素ルールとうまく噛み合う。両方のルールを使用することでキャンペーン世界の呪文の使い手は全体的に弱くなる。しかしキャラクターが資金を投じることで、呪文の潜在力を高める機会を得られるのだ。
呪文の使い手の多くは魔法を科学のように扱うことを好むが、魔法の効果は常に予測しやすいというわけではない。荒々しく、制御できない魔法がしばしば呪文発動や魔法実験の副作用としてうねりを上げる。荒乱魔法は魔法が無作為に混沌とした効果を引き起こすかもしれない状況で使用される可能性がある。キャラクターが呪文を発動したり、荒乱魔法のうねりを引き起こす可能性があるアクション(後述の荒乱魔法の実施を参照)を行ったりする際、『表:荒乱魔法のうねり』をロールすること。
呪文が発動される前にうねるの効果を決定するためにロールすること。しかし呪文自信を何らかの形で変更するもの(有効術者レベルの変更など)でない限り、その効果は呪文は発動された後に適用される。表で参照される“呪文”や“呪文レベル”は発動しようとする呪文、使用しようとする超常能力、起動しようとする魔法のアイテムの効果を適用すること。同様に、表で参照される“術者”はうねりを引き起こしたキャラクターを適用する。効果に術者レベルが必要な場合、術者のキャラクター・レベルを用いる。
ロールした荒乱魔法のうねり効果が呪文や効果の特性上不可能な場合、代わりに『表:汎用うねり効果』をロールする。複製した呪文がセーヴ可能な場合でも、荒乱魔法のうねり効果に対してはセーヴィング・スローを行えない。また、通常はヒット・ダイスに制限がある効果であっても、その制限は無視される。高い出目のほうが役に立つ効果になりやすいため、あるアクションが荒乱魔法のうねりが役に立つような方法で行われた場合、判定にボーナスやペナルティを適用してもよい。
荒乱魔法を使用する際のルールはGMに余地を与えられるように曖昧になっている。最も簡単なものから最も複雑なものという順で、以下にいくつかの提案を示しておく。
精神集中の失敗/Failed Concentration:術者が精神集中判定に失敗し、それにより呪文を失った場合、呪文のエネルギーのいくらかが荒乱魔法のうねりとして漏れ出す。
解呪と相殺/Dispel and Counterspell:呪文や魔法効果が解呪あるいは相殺されると、術者あるいは目標に荒乱魔法のうねりが引き起こされる。
荒乱圏/Wild Zones:魔法的に安定していない場所もある。このような場所でクリーチャーが呪文を発動したり、擬似呪文能力を使用したり、魔法のアイテムを起動したりすると、荒乱魔法のうねりのきっかけとなる。
増幅発動/Boost Casting:術者は高いレベルの呪文スロットを消費することなく、今まさに自分が発動しようとしている呪文に呪文修正特技1つを使用しようと試みることができる。この時、(準備する術者の場合)より高いレベルで呪文を準備したり、(任意発動する術者の場合)発動時間を増加する必要はない。そうする場合、術者は難易度10+呪文レベル+呪文修正特技が通常増価させる呪文レベル毎に5の術者レベル判定を行わなければならない。成功すると、その呪文は呪文修正特技の利益を得、術者は荒乱魔法のうねりの効果を受ける。失敗した場合、術者は『表:荒乱魔法のうねり』をロールするが、出目から失敗した判定の値を引くこと。
d% |
うねりの効果 |
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01~02 |
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03~04 |
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05 |
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06 |
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07 |
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08 |
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09~10 |
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11~12 |
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13 |
術者は1d4ポイントの出血ダメージを受ける。 |
14 |
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15~16 |
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17 |
1分の間、術者はリデュース・パースンの効果を受ける。 |
18~19 |
|
20 |
術者を中心としたゾーン・オヴ・トゥルースが出現する。 |
21~29 |
|
30~32 |
呪文の全ての目標はレッサー・レストレーションの効果を受ける。 |
33~38 |
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39~43 |
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44~50 |
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51~58 |
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59~64 |
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65~71 |
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72~74 |
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75~78 |
楽器1つが互いの目標の隣接したマスに現れる(サモン・インストゥルメントと同様)。 |
79~80 |
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81~83 |
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84~86 |
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87~90 |
術者は2d6の一時的ヒット・ポイントを得る。この一時的ヒット・ポイントは1時間持続し、他の一時的ヒット・ポイントと累積しない。 |
91~92 |
サモン・モンスターIの一覧から無作為に選択されたクリーチャー1体が、術者に隣接するマスに招来される。このクリーチャーは術者の命令に従う。 |
93~95 |
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96~97 |
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98 |
呪文は《呪文持続時間延長》の効果を受ける。 |
99 |
|
100 |
d% |
うねりの効果 |
---|---|
01~20 |
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21~80 |
1ラウンドの間、術者はフェアリー・ファイアーの効果を受ける。 |
81~100 |
1時間の間、術者は1d6の一時的ヒット・ポイントを得る。この一時的ヒット・ポイントは他の一時的ヒット・ポイントと累積しない。 |
基本ルールにおいて、呪文の使い手は呪文の効果を解決する際ほとんど受動的だ。自分が発動している呪文を伝え、目標はそれに反応してセーヴを行う。それに対して攻撃では、攻撃者は全てのダイスを振る。以下の選択ルールを使用することで、呪文の使い手は呪文の解決により介入したと感じられるだろう。
過負荷呪文選択ルールを使用することで、自信を持つ呪文の使い手は、発動時に呪文により多くの力を織り込もうと試みることができる。危険がないわけではない。安定した標準的な方法から外れることで、呪文とその魔法のエネルギーは無駄になる恐れがある。
呪文を発動する際に即行アクションを用いることで、呪文の使い手は発動しようとする呪文の難易度か術者レベルのいずれかを増加させようと試みることができる。呪文の使い手は15+呪文のレベル+術者のクラスにおけるその呪文の最低術者レベルに等しい難易度の〈呪文学〉判定を行わなければならない。成功すると、呪文の使い手は術者レベルもしくは呪文の難易度を2だけ増加させることができる。失敗すると、呪文は発動されることなく、準備した呪文あるいは呪文スロットは失われる。呪文の使い手が〈呪文学〉を5以上の差で失敗すると、巻物の事故と同様の事故が発生する。
制限魔法ルールの併用/With Limited Magic:制限魔法を使用している場合、過負荷呪文の判定に成功して術者レベルあるいは難易度を2増加させるのではなく、術者が本来の術者レベルと能力値を用いて呪文の標準の利益を得ることができる。
呪文の大失敗ルールの併用/With Spell Fumbles:事故の代わりに呪文の大失敗の結果を適用すること。
呪文を発動したりセーヴィング・スローを行える魔法敵効果を使用したりする際、術者は呪文攻撃ロールを行う。これは呪文発動能力の修正値+呪文レベルに等しいボーナスで1d20をロールするものだ。呪文を通常より避けにくくする全てのボーナス(《呪文熟練》など)も適用される。このロールの難易度は11+目標の対応セーヴ・ボーナスに等しい。術者が成功すると、目標はセーヴに失敗したかのように呪文あるいは効果を受ける。失敗した場合、目標がセーヴに失敗したかのように扱う。通常の攻撃ロール同様、出目1は自動失敗であり、出目20は自動成功となる。このルールで成功率は変化しない。誰がダイスを振るかが変わるだけだ。
例えば、【知力】18のウィザードがオークの護衛にチャーム・パースンを発動する。通常、このオークは難易度15の意志セーヴィング・スローを行う(10+1レベル呪文の1+ウィザードの【知力】ボーナスから+4)。オークの意志セーヴの修正値は-1なので、16以上をロールすれば成功する。つまり、今回80%の確率でセーヴは失敗する。呪文攻撃ロールのルールにおいては、オーク外資セーヴを試みる代わりに、ウィザードが+5のボーナス(呪文難易度15-10)で難易度10(11+オークの-1意志セーヴ修正値)に対して呪文攻撃ロールを行う。ウィザードは5以上をロールしなければならない。そのため、目標は80%の確率で呪文の効果を受ける。
この選択ルールにより、プレイヤーは自分の手でより多くのダイスを振ることになる。NPCの呪文の使い手を基本ルールで運用することを検討しよう。そうすれば、プレイヤーは自分のセーヴに責任を感じるだろう。レベルごとに呪文攻撃ロールのボーナスを書き出すことで、プレイヤーはより運用しやすくなるだろう。
高速版/Faster Variant:通常、術者は目標毎にここに呪文攻撃ロールを振る。プレイを高速化したいGMは、(ゲームの労力を極度に軽減させ、基本ルールにさほど適合させなくても良いと考えているなら)1回だけロールを行い、全ての目標の防御値にそれを適用させてもよい。
攻撃ロールが必要な呪文は、Core Rulebookに記載されている標準のクリティカル・ヒットのルールに従う。この選択ルールでは、セーヴィング・スローを要求する呪文も同様の利益を得る。クリーチャーがセーヴィング・スローで出目1をロールすると、呪文はクリティカル可能域となる。そのクリーチャーはもう一度セーヴを行い、二回目のロールに失敗すると、クリティカル・ヒットは確定し、その呪文の数字で示される効果全てが2倍になる。チャーム・パースンなど、直接数字で示される効果がない場合、持続時間が2倍になる。攻撃ロールとセーヴィング・スローの両方が必要な呪文(レイ・オヴ・エンフィーブルメントなど)は、攻撃ロールのみクリティカル可能域となる。
GMはどの値が2倍になるかを適切に適用すること。例えば、ポイズンはクリティカル・ヒットにおいて毒の効果を2倍にするのではなく、毒2服分を目標に適用するかもしれない。
呪文攻撃ロールルールの併用/With Spell Attack Rolls:このルールは呪文攻撃ロール・ルールとうまく組み合わせられる。呪文攻撃ロールで出目20をロールするとクリティカル可能域となり、クリティカル・ロールとして再度攻撃ロールを行う。呪文のクリティカル・ヒットを併用する場合、呪文攻撃ルールの高速版を使用しないようにするか、少なくともそれぞれのクリティカル・ロールをばらばらに行うようにするのがいいだろう。
呪文の大失敗ルールの併用/With Spell Fumbles:このルールは呪文の大失敗選択ルールを用いるキャンペーンで使用することを想定しているが、それぞれを独立して使用することもできる。
他の攻撃と同様、呪文も自動的に失敗する確率がある。通常、それは目標がセーヴで出目20をロールすることで表現される。しかし、君はより劇的な『大失敗』の結果に興味を持つかもしれない。敵がセーヴで出目20をロールしたなら、再度セーヴをロールする。2回目のセーヴにも成功したなら、その呪文は大失敗し、巻物の事故に似た事故を引き起こす。1d10をロールして『表:呪文の大失敗』を参照すること。呪文を発動するたびに、1回だけ大失敗する可能性がある。目標が2回以上20をロールした場合、目標の最初のロールのみが大失敗を引き起こす。
d10 |
大失敗の結果 |
---|---|
1 |
|
2 |
|
3 |
|
4 |
|
5 |
呪文の使い手は呪文に関係した、わずかだが厳しい効果を受ける。このような効果のほとんどは元の呪文の持続時間の間か、持続時間が瞬間の呪文の場合は2d10分間だけ持続する。 |
6 |
|
7 |
呪文の効果は遅延して発動する。以降1d12時間以内に呪文が起動することもある。通常は元の目標に向けて呪文が発動するが、目標が立ち去っている場合、呪文の有効距離限界まで目標のいる方向に向いて発動される。 |
8 |
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9 |
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10 |
術者は1ポイントの【耐久力】ダメージを受ける。 |
fumble deckの利用/With a fumble deck:ゲーム中にfumble deck(訳注:Paizoの製品の一つ)を使用している場合、表:呪文の大失敗をロールする代わりにfunble cardを1枚引いて魔法効果を適用する。他の大失敗を加えるためにfunble deckを使用しない場合でも、呪文の大失敗のためにゲームにfumble deckを使用することができる。
荒乱魔法ルールの併用/With Wild Magic:表:呪文の大失敗の代わりに表:荒乱魔法のうねりを使用することができる。この表を使用する場合、d%ではなく1d20をロールすること。
呪文攻撃ロールルールの併用/With Spell Attack Rolls:呪文攻撃ロール選択ルールを使用する場合、攻撃ロールで出目1をロールした場合に大失敗が発生する可能性がある。もう一度攻撃ロールをロールする――もし再度失敗したなら、呪文は大失敗する。