人生は不平等かもしれない。地主の男爵のための労苦を強いられた、満足に食べることもできない小作人や、週にほんのわずかの銅貨を得るために王の新しい宮殿を建設するために働くありふれた労働者のことを考えてみよう。不当な行為を目にしても、何もしないものもいる。他者の苦しみによって得られた利益を、喜んで受け取るものもいる。その一方で、不平等を目にすると、必要とあらば法の外で行動を起こすようになったものもいる。彼らヴィジランテはありふれた風景の中で活動する。日中は尊敬される人物に扮しているが、夜が訪れると周囲の悪事を正すために別の装いを身にまとう。
すべてのヴィジランテが世界をよりよい場所にしようと懸命に活動しているわけではない。ありふれた人物という姿を隠れ蓑に、ただ闇に潜む脅威となり、邪悪な計画を達成するために盗み、殺す犯罪者もいる。いずれにせよ、ヴィジランテは2つの側面を備えたキャラクターだ――誰もが知っている顔と、恐怖を呼び起こす仮面を。
役割:ヴィジランテはパーティの中で多くの役割を担うことができる。ほとんどはデリケートな社会的な状況や宮廷の陰謀の中で取引することに熟達しているが、密かに行動する密偵として振る舞うこともできるし、危険な環境では荒々しい戦士となることさえできる。
属性:どれでも。
ヒット・ダイス:d8。
ヴィジランテのクラス技能は、以下の通り:〈威圧〉(【魅】)、〈隠密〉(【敏】)、〈軽業〉(【敏】)、〈鑑定〉(【知】)、〈騎乗〉(【敏】)、〈芸能〉(【魅】)、〈交渉〉(【魅】)、〈職能〉(【判】)、〈真意看破〉(【判】)、〈水泳〉(【筋】)、〈製作〉(【知】)、〈生存〉(【判】)、〈装置無力化〉(【敏】)、〈脱出術〉(【敏】)、〈知覚〉(【判】)、〈知識:貴族〉(【知】)、〈知識:工学〉(【知】)、〈知識:ダンジョン探検〉(【知】)、〈知識:地域〉(【知】)、〈手先の早業〉(【敏】)、〈登攀〉(【筋】)、〈はったり〉(【魅】)、〈変装〉(【魅】)、および〈魔法装置使用〉(【魅】)。
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武器と防具の習熟:ヴィジランテは全ての単純武器と軍用武器、軽装鎧、中装鎧、盾に習熟している(しかしタワー・シールドには習熟していない)。
毎日、ヴィジランテはいずれの人格を用いて一日を開始するかを選択し、これは単純に社交と不羈と言及する。人格をもう一方に変えるには1分かかり、ヴィジランテの秘密を保つため、他のクリーチャーの視界の外で行為を終えなければならない。人格の変更は、単に衣服や装飾を変えるというわけではない(確かに、それは変更の一部ではあるが)。この作業の一環として、化粧、髪型の変更、その他身の回り品を変えなければならない。更に、この変更は肉体だけでなく精神状況も伴ったものである。そのため、ハット・オヴ・ディスガイズや、同種の使用者の外見を変更する呪文や効果をもたらすアイテムは、人格を変えるために必要な時間を縮めることはない。ほとんどの社交の技はヴィジランテが社交の人格でなければ使用できない。その一方で、社交の人格で不羈の技を使用するヴィジランテは、自分の秘密が漏れるリスクを請け負うことになる。
一人の人物であるにもかかわらず、二つの人格を持つ性質により、ヴィジランテは2つの属性を持つことができる。それぞれの属性は、人格1つずつに対応する。いずれかの人格を使用している間、属性に関係する全ての呪文、魔法のアイテム、能力において、ヴィジランテはその人格の属性を有しているかのように扱う。特技、クラス、能力の前提条件を満たすかどうかを考慮する際、ヴィジランテは属性の両方が前提条件を満たしている場合にのみ、前提条件を満たす。ヴィジランテの2つの属性は、一方の属性の軸において、互いに一段階より離れていてはならない。例えば、秩序にして中立の社交の人格を持つヴィジランテは、秩序にして善、秩序にして中立、秩序にして悪、真なる中立、中立にして善、中立にして悪、のいずれかの不羈の人格を持つことができる。ヴィジランテが属性を変える効果の目標になった場合、その効果は両方の属性を新しい属性に変更する。
念視ないしヴィジランテの位置を特定する試みは、ヴィジランテの人格が、そのクリーチャーが位置を特定しようとした人格である場合にのみ機能する(あるいは、クリーチャーが2つの人格が同じ個人であることを知っている場合にも働く)。異なる人格の場合、その呪文あるいは効果は効果を発揮しない。ちょうど目標が不適切であるか存在していないかのように、暗闇以外は何も明らかにならない。
加えて、ヴィジランテが望むなら、ヴィジランテは自分の位置や活動に関して嘘の情報を他人に流布させることで自分の情報を隠すよう、友人に依頼できる。これにより、ヴィジランテに関する情報を集めるための〈交渉〉判定と、追跡するための〈生存〉判定の難易度が、ヴィジランテ・レベルに等しい値だけ増加する。この効果は1日持続し、1週間に1回しか使用できない。
最後に、1日に1回、ヴィジランテは仲間にちょっとした仕事を依頼できる。これはメッセージの伝達、100GP以下の一般的な装備品の購入(支払いはヴィジランテが行う)、ヴィジランテが所有すべき物品の受け取り(その仲間が簡単に扱えること)などである。GMが許可するなら、仕事は他のものでもよいが、戦闘や危険に巻き込まれるものであってはならない。最低3レベルで高名の社交の技を修得していなければ、この技を修得できない。
ヴィジランテが一度に高名を維持できる街の数は限られている(通常は1つだが、他の社交の技により2つになる)。新しい街で高名を得ると、過去に高名を得ていた街から1つを選び、その街での高名を失う。この効果はGMの判断に従う。例えば、GMはNPCやモンスターがヴィジランテの物語を耳にしたことが一切ないかもしれない。あるいは、敵は最初の態度が1段階良くなるのではなく、1段階悪くなるかもしれない。
"社交の人格"でいるとき、ヴィジランテは〈鑑定〉、〈製作〉、〈知識〉判定で援護を行う際、出目10を使用できる。また、ヴィジランテは〈鑑定〉、〈製作:すべて〉、〈知識:すべて〉で知識を有していると見せかけるために行う〈はったり〉判定に、クラス・レベルの半分(最低+1)に等しいボーナスを得る。高名UIの社交の技を修得しているなら、これらの技能判定への援護判定に成功したとき、+2ではなく+3のボーナスを与える。
高名の地域にいるなら、ヴィジランテの"社交の人格"は技術者として高く信頼されており、学者と議論すればその学者は驚くほどの結論に到達し、劇的な飛躍をもたらす。クリーチャーが特定の項目についての〈知識〉判定に失敗していたとしても、ヴィジランテが同じ項目についての情報を得るための〈知識〉判定に援護判定のボーナスを与えたなら、そのクリーチャーはもう一度その判定を行うことができる。
懲罰人は基本攻撃ボーナスとして、表1-1に記載されている値ではなくヴィジランテ・レベルを用いる。ヴィジランテは、他のクラスや種族ヒット・ダイスから得られる他の基本攻撃ボーナスを、通常通りこの値に加える。
静殺者は隠身攻撃と呼ばれる能力を得る。この能力により、ヴィジランテは自分の存在に気づいていない敵、自分を仲間だと思っている敵、驚愕の姿(17ページを参照)によって立ちすくみ状態になった敵に対して行う近接攻撃(あるいは30フィート以内の遠隔攻撃)に、追加で1d8ポイントの精密性によるダメージを与える。3レベルの時点と以降2ヴィジランテ・レベル毎に、このダメージは1d8ずつ増加する。静殺者のヴィジランテは自分が挟撃している敵やアーマー・クラスに【敏捷力】ボーナスを加えられない敵に対しても隠身攻撃を行うことができるが、隠身攻撃のダメージ・ダイスはd4になってしまう。静殺者は視認困難を持つ目標に対しても隠身攻撃によるダメージを与えることができるが、完全視認困難の場合には与えられない。
この選択を行うと、以降変更できない。不羈の技の多くは両方の流儀で使用できるが、いずれかの流儀に固有の不羈の技もある。静殺者のヴィジランテは1回の隠身攻撃に対して、アスタリスク(*)の付記された技を1つだけ適用できる。また、特記ない限り、このような不羈の技を適用した隠身攻撃が効果を発揮するのは、驚愕の姿に気づいていない(あるいはヴィジランテを仲間と考えている)敵に対してのみである。
ヴィジランテが社交の人格のときに不羈の技を使う場合、ヴィジランテは周囲で自身を見ている人達全ての〈知覚〉判定に対する〈変装〉判定に成功しなければならない(この判定にはつなぎ目なき変わり身による+20のボーナスは得られない)。失敗すると、見ている人はヴィジランテが社交の人格の意味している以上の存在であることに気づくだろう。場合によっては、社交の人格と不羈の人格が同一人物であることを理解するかもしれない。不羈の技がセーヴィング・スローを要求する場合、特別に示されていない限り、そのセーヴの難易度は10+ヴィジランテのレベルの半分+ヴィジランテの【魅力】修正値に等しい。
この方法で一時的に得た特技が1日の使用回数制限がある場合、この能力を使用している間、この特技の1日の使用回数制限を消費する。この不羈の技は複数回修得できる。2回目以降に修得するたび、ヴィジランテは種族特技を追加で1つ同時に獲得できるようにするか、この技を起動するのに必要なアクションを1段階小さくする(移動アクションを即行アクションに、即行アクションをフリー・アクションに、フリー・アクションを割り込みアクションに)。ヴィジランテが複数の特技の利益を選択した場合、特技は同じ種族の前提条件を共有していなければならない。ヴィジランテは2つ目の特技の前提条件を満たすために特技を得ることもできる。その場合、現在他の特技の前提条件を満たしている特技を置き換えることはできない(ただし、前提条件を必要としている特技を置き換えた後ならば構わない)。個々の特技は、この能力の1日の使用回数を消費する。
クリーチャーがこの能力の目標になったなら、それが攻撃の目標であったか近くのクリーチャーに対する攻撃によるものか、また成功したかどうかにかかわらず、24時間の間、このヴィジランテの行う身の毛もよだつ姿に対して完全耐性を得る。この効果は驚愕の姿能力から得られるボーナスと同時に使用できる。これは[恐怖、精神作用]効果である。
エルフ(Ultimate Intrigue 17ページ):森林地域における、全ての〈隠密〉、〈軽業〉、〈登攀〉判定に+1/3を得る。
ドワーフ(Ultimate Intrigue 17ページ):〈製作〉技能に対するsocial graceによるボーナスを+1/2増加させる。
人間(Ultimate Intrigue 17ページ):つなぎ目なき変わり身により与えられる〈変装〉へのボーナスに+1/2を得る。
ノーム(Ultimate Intrigue 17ページ):ヴィジランテの現在の人格という観点について、今が本性だという嘘を吐こうと試みる際に行う〈はったり〉に+1/2を得る。
ハーフエルフ(Ultimate Intrigue 17ページ):つなぎ目なき変わり身による〈変装〉ボーナスに+1/2を得る。
ハーフオーク(Ultimate Intrigue 17ページ):揺るがぬ心による難易度増加に1/2を加える。
ハーフリング(Ultimate Intrigue 17ページ):新しい社交の技を1/6個得る。
キツネ(Blood of the Beast 12ページ):つなぎ目なき変わり身により与えられる〈変装〉へのボーナスに+1/2を得る。