キャラクターの種族を選択するのはキャラクターを構築する第一歩である。それがその種族に定着したアーキタイプに即して機能することを望む場合でも、わざとそれに反して演じる場合でも変わらない。種族のアーキタイプとして機能することにより、わずかなりともロールプレイのやり方を獲得することができる――それらがそれぞれのキャラクターの個性と流儀を持つ場合でも、巨大な斧とエールの入ったジョッキを持つ無愛想なドワーフの戦士のように決まりきったものを採用する場合でも。パスファインダーRPGに存在する7つのプレイヤー・キャラクター向け種族――エルフ、ドワーフ、人間、ノーム、ハーフエルフ、ハーフオーク、ハーフリング――は現実の世界に住む人間よりずっと画一的というわけではない。本章では態度、伝統、経験の多様性を反映し、パスファインダーRPG基本ルールに存在する様々な冒険の経歴に種族が影響を与える方法に対して、それらがどう影響を与えるかをゲーム・ルールとオプションにより提供することを目的とする。
以下に示す種族の考察はPathfinder RPG Core Rulebookに収められた11の基本クラスと、Advanced Player's Guideで導入された6つの新しい標準クラス(訳注:原文では基本クラスbase classesだが、他の訳語と統一した)に属するそれぞれの種族の、一般的な立ち居振る舞いである。人間はどのようなクラスにも容易に馴染む傾向があるが、その一方で他の種族はいくつかの職業がはるかに他のものよりも好まれ、そのような一握りのクラスには軽蔑と疑念をもたらす。種族の立ち居振る舞いにより拡張された視点はそれぞれの種族の定義と奥深さを与えてくれる。そして「何故どのようにその種族が他のクラスではなく、単一のクラスに傾倒したのか」「彼らの社会の気性に逆らった職業の選択に直面させたものが何なのか」について一瞬の閃きを与える一助となるだろう。
キャラクターの種族が何であれ、それらの立ち居振る舞いはプレイヤーがどのクラスを選択するかについて一切の制限を与えることはない。これらによりプレイヤー・キャラクターに考えや行動を規定することもない。例えば、種族の者たちに非常に好まれて(あるいは嫌われて)いるように、あるクラスのものに対して記載されているような形で振る舞う必要はない。いつものように、プレイヤーは自身のキャラクターを任されたただ1人の人物なのである。その代わりにそのような立ち居振る舞いはある種族の一般的なNPCの一般的な立ち居振る舞いとなり、その価値観やキャラクターに対する立ち居振る舞いにより彼らのキャラクターを膨らませることができるかもしれない。キャラクターは彼らのクラスに対するこのような一般的な立ち居振る舞いを、〈知識:地域〉(難易度10、自身の種族のものなら難易度5)判定で知ることができる。
以降に述べる種族の考察もまた、それぞれのキャラクター種族における種族特性の他の可能性を描写している。重要な点として、これらの種族特性は本書の8章(及び原点となる他のパスファインダー製品)に示されている特徴ルールと同じではないことを注記しておく。それらの特徴はゴラリオン・キャンペーン世界における特殊な国、文化、地域、種族とキャラクターをつなぎ合わせることを意図しており、特技の半分程度のものとして機能する。他方、種族特性はそれぞれの種族の描写を根底とした、それぞれの種族能力を説明したものである。人間やハーフオークのように、ほとんど種族特性を持たない種族もいる。ドワーフやノームのように、多くを持つ種族もいる。このような種族特性の全てはその種族の一般的なものを表している。彼らの出自や生態、種族の立ち居振る舞い、その他によってこの種の特殊能力を獲得したのだ。
この章はまた、それぞれの種族の代替クラス特徴のリストも含んでいる。あるものは標準の種族特性を反映しない、種族ごとのアーキタイプを表している。この例としては、ノームの言語への情熱やいじり癖、ハーフリングの投擲や戦場で大きな種族の足の下をすり抜けることへの卓越が挙げられる。それら種族特性の1つを選択するために、君のキャラクターが使用できる1つ以上の既存の種族特性と交換しなければならない。このような種族特性はキャラクターの通常の種族特性を置き換える。それらに加えて能力を獲得することはできない。多くの場合、種族能力は1対1の交換を原則とする。本書に記載された能力1つを獲得するために、君はCore Rulebookに収められた1つの種族能力を諦めることになる。それ以外の場合は代替種族特性を1つ得るために、1つより多くの種族特性と交換しなければならないかもしれない。例えば、あるノームは過激な生き方を避け、“防御修練”と“嫌悪”を“弁舌の才”と置き換えてもよい。その一方で、魔法を使用するノームが“魔法言語学者”もしくはいっそ“炎使い”になるために、伝統的なノームの幻術魔法への特別な才能を無くしてもよい。
君はキャラクターの通常の種族特性を、1つでも複数でも交換することができる。しかしもちろん、同じ種族特性を2回以上置き換えることはできない。人間が“熟練”特性を“child of the field”や“child of the street”と置き換える場合、その新しい特性の両方と2回置き換えることはできない(訳注:恐らく“畑の心”、“ストリートの心”)。しかし“ボーナス特技”種族特性を“才能を見抜く目”に置き換えた人間が、上述の2つのうちのいずれかを選択することは可能である。
いかなる代替もしくは追加ルールによるものであっても、本章の特性とキャラクターが持つ通常の種族特性を置き換えるためには、GMの許可がまず必要である。
それぞれの種族に対する考察の最終項では、ある種族に属するものが適性クラスのクラスを獲得した際に代わりに取得できる利益について述べている。適性クラスの獲得における通常の利益は単純で有効なものだ。すなわちキャラクターはそのクラス(そのキャラクターがハーフエルフであれば、2つの内いずれかのクラス)のレベルを獲得した際に、追加の1ヒット・ポイントか追加の1技能ランクを獲得する。ここにまとめられた代替適性クラス能力は通常の選択に比べれば幅のあるものではないかもしれない。それらは通常のものに比べて優位性が少ないものの、そのキャラクターが力を入れた能力に合致した状況においてはその有効性が証明される、特色の強いオプションとなるよう作られている。これらの多くは例えばハーフオークの頑強さや物品の破壊癖、エルフの高貴さや精密さといった、種族ごとのアーキタイプに適合している。
多くの場合、適性クラス・オプションによる利益はレベルごとに獲得されることを基本としている――キャラクターが新たなレベルを獲得するたびに、特定の利益の増加を獲得することになる。特記がない限り、これらの利益はそれ自身と常に累積する。例えばパラディンを適性クラスとした人間はレベルを獲得するたびに、エネルギー抵抗1ポイントの獲得を選択しても良い。この利益を2回選択するとこの抵抗ボーナスは2に増加し、10回選択すれば10に上がる、といったように。
いくつかの場合、これらの利益は最終的に上限値に達してしまうこともあり、それ以降適性クラスから得られる利益には何の効果ももたらさない。もちろん、ボーナス・ヒット・ポイントやボーナス技能ランクを適性クラスの利益として選択することは依然として可能であり、適性クラスに固執することによる利益は常に存在する。
最後に、適性クラスによる代替利益のいくつかにはその利益を選択するたびに、ほんの+1/2、+1/3、+1/4、+1/6をロールに加えるというものもある。これらはダイス・ロールの結果に加算されたあと、切り捨てられる(最低値は0)。例えば、ローグを適性クラスとするドワーフがローグの適性クラスによる代替利益として石製の罠に対する罠感知に+1/2を加えるとする。しかし1回選択しただけでは、この効果は+0である(なぜなら+1/2は切り捨てると+0となるからである)。この利益を20レベル分選択した後では、このドワーフは(20レベルのローグである基本値に加えて)罠感知に+10ボーナスを得る。
前述の項に示したように、ここに示されたものはそれぞれの種族のキャラクターが適性クラスの通常の利益の代わりに選択してもよい代替利益のセットである。そのため、追加ヒット・ポイントや追加技能ランクを獲得する代わりに、プレイヤーはここに示された利益をキャラクターに獲得させることを選択してもよい。この選択は永続的なものや取り消しの利かないものではない。キャラクターは適性クラスのレベルを得た時に技能ランクやヒット・ポイントの代わりとするように、これらの利益は第三のオプションを提供し、キャラクターはそれらの中から自由に置き換えて構わない。
いかなる代替および選択ルールを使う場合と同様に、通常の適性クラスの利益を本章に記載された利益と置き換えるかどうかを決めるようGMに相談し、許可を求めること。