アルケミストが筋骨隆々で俊敏な筋肉質のクリーチャーに変じるために分別なく変異薬を使用する時、文化的な人間はしばしば顔を向け、そのような変成には代償が必ずあるものだと皮肉を言う。わずかなアルケミストにとって、その代償とはマスター・ケミストは意志の発露として奇怪な獣性を振るえるクリーチャー、マスター・ケミストへの変成である。
マスター・ケミストになると、2つの人格が1つの身体を共有するようになる。錬金術による卓越した能力を持つ筋骨隆々の“変異薬形態”とそれを作り出した元々のアルケミストの両方が、自らのことを真の形態と考えている。そして彼らはそれぞれの共通の目的を達成するために、一緒に働く術を身につけなければならない。大抵、マスター・ケミストは最終的にはその変異薬形態となってしまい、以後元々のアルケミストの身体と精神は社会的な行事で要求されたり、名を隠したりその身を隠す必要がある場合にのみ現れることになる。不運にもマスター・ケミストの変異薬形態はしばしばはるかに暴力的で、許されることのない個性を持っている(このため、同じキャラクターの2つの人格の間に衝突が生じることとなる)。
役割:その本性がひとたび明らかになれば、マスター・ケミストが社会に受け入れられることは難しくなる。その結果、彼らは居場所を転々とし続けなければならないという強い思いがある。文明があるところの端に足を踏み入れ、多くの危険な地域の探索を先導し冒険を続けることは、その奇怪な形態を役立てることのできる数少ない活動の1つである。マスター・ケミストの柔軟性と爆弾投擲能力、それに白兵戦における蹂躙力を組み合わせた能力は──大混乱がつきものだとしても──多くの冒険者パーティーにとって大きな利点である。もっとも、マスター・ケミストのより不快な側面に目をつぶっても構わないと考える仲間にとっての話だが。
属性:マスター・ケミストはなんと2つの属性を持つ(変異形態能力を参照)。これらの属性の制限は、それらが一致してはならないということだけだ。
ヒット・ダイス:d10。
マスター・ケミストになるためには、キャラクターは以下の条件を全て満たさなければならない。
マスター・ケミストのクラス技能(と各技能の対応能力)は以下の通りである。〈威圧〉【魅】、〈隠密〉【敏】、〈軽業〉【敏】、〈真意看破〉【判】、〈水泳〉【筋】、〈脱出術〉【敏】、〈知識:ダンジョン探検〉【知】、〈登攀〉【筋】。
レベルごとの技能ランク:2+【知力】修正値。
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獣性+2 |
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+5 |
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変異能力(3回/日) |
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+7 |
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獣性+4 |
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+9 |
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+5 |
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獣性+6 |
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+10 |
+5 |
+5 |
+3 |
武器と防具の習熟:マスター・ケミストになったからといって、それで新たに武器や防具に習熟することはない。
1日のエキス数/Extracts per Day:示されたレベルになるたびに、マスター・ケミストはアルケミスト・レベルが上がったかのように、1日に使えるエキス数が増加する。しかし1日のエキス数とエキスを発動する際の術者レベルが上昇する以外の、他の利益を得ることはない。
爆弾投擲者(変則)/Bomb-Thrower:爆弾の破壊力はマスター・ケミストの凶暴な衝動を刺激する。マスター・ケミストは爆弾のダメージを決定する際、自身のレベルをアルケミスト・レベルに加える。
変異形態(変則)/Mutagenic Form:変異形態は、マスター・ケミストがこの道に就く過程で服用してきた変異薬の副作用として生じた、マスター・ケミストの通常形態の性格とは異なる別人格である。変異形態はマスター・ケミストの正常な人格と同じ記憶と基本的な目的を共有するが、目的達成のために本体とは異なる流儀で行動する。変異形態はしばしば醜く怪物的であり、全く関係の無い2人であるかのように、マスター・ケミストの通常形態とは種族や性別すら異なって見える場合もある。それどころか変異形態はしばしば固有の名前を持ち、この独立した関係を維持し強固にするようたくらんでさえいる(別人格の存在できる限られた時間ではそれは難しいが)。変異形態は独自の属性を持つ(プレイヤーが選択するが、マスター・ケミストの通常の属性とは必ず異なっていなければならない)。属性が変化するのはマスター・ケミストが変異形態を使用している間だけである。
例:ダラボントはアルケミスト7/マスター・ケミスト4の中立にして善のノームである。彼女の変異形態は彼女をブッチャーと呼ばれるねじくれたクリーチャーに変身させる。ブッチャーは真なる中立で、世界がよりよきバランスで維持されるよう務めることに関心を抱いている。ブッチャーはダラボントに呼ばれたときにだけ存在するが、その間はブッチャーの好む友人の輪を作る術を捜し求めている。ブッチャーはダラボントが嫌いなわけではないが、ダラボントのノームとしての形態は脆弱すぎ、厳しい世間を生き抜くには純粋すぎると感じている。ダラボントである間、このキャラクターはディテクト・グッド呪文には反応せず、全ての呪文と効果から真なる中立として扱われる。
変異能力(超常)/Mutate:1レベルの時点で、マスター・ケミストは繰り返し変異薬にさらされてきた結果、今や変異薬を摂取せずとも1日に2回変異形態を取ることができるようになった。この形態の間、マスター・ケミストは変異薬から得られるすべてのボーナスとペナルティを獲得し、アルケミスト・レベルとマスター・ケミストのレベルを合計したものを有効アルケミスト・レベルとして持続時間を決定する。変異薬の使用も同様にマスター・ケミストをこの形態に追い込む。変異薬か変異能力を再使用した場合、変異形態は通常通り働く(新しい変異薬による修正は、元の修正と置き換える。持続時間はより長い方を取る)。持続時間が切れるか、マスター・ケミストの魔法が(アンティマジック・フィールドなどによって)阻害されるか、変異能力の使用回数をもう一度費やすまで、マスター・ケミストは変異形態をとり続ける。
マスター・ケミストはストレスやダメージによって、自分の意思に反して変異形態となる場合がある。通常形態のマスター・ケミストはクリティカル・ヒットを受けるか頑健セーヴに失敗した後、変異能力の使用回数を残しているのであれば、どのような時でも能力を使用する可能性がある。このような場合、マスター・ケミストは難易度25の意志セーヴを行い、失敗したなら次のターンで標準アクションを使用して変異形態に変身する(変異能力の使用回数を消費する)。
5レベルの時点でマスター・ケミストは1日に3回変異形態を使用できるようになる。この回数は8レベルの時に4回、10レベルの時に5回に増加する。
変異薬拡張(超常)/Advanced Mutagen:2レベルおよび以降2レベル毎に変異形態は進化と成長を続け、さらなる力をマスター・ケミストに与える。マスター・ケミストは変異薬拡張を選択する。この力は変異形態の機能を変更するか、もしくはマスター・ケミストが変異形態を取っているときにだけ働くものである。マスター・ケミストは個々の変異薬拡張を複数回選択することはできない。
強壮(変則)/Burly:変異形態の間、マスター・ケミストの重厚な肉体と骨格は【筋力】判定、【耐久力】判定、【筋力】を基準とする技能判定、戦技ボーナス、戦技防御値にマスター・ケミスト・レベルの半分に等しい錬金術ボーナスを与える。
変装(変則)/Disguise:マスター・ケミストは変異形態の持続中に、一時的に外見を通常形態に戻すことができる。標準アクションを用い難易度20の意志セーヴを行うことで、通常形態の外見を1分間装うことができる。最初の1分を超える1分ごとに難易度を+1した新たなセーヴィング・スローを必要とする。このセーヴに失敗すると、マスター・ケミストは(変異形態を中断したように)通常形態に戻るか、変異形態に完全に変身する。この能力を使用している間、マスター・ケミストはいつでもフリー・アクションで変異形態となって意識を寛がせたり、標準アクションを使用して通常形態を再開したりできる。この能力が一度終了すると、マスター・ケミストは10分間が経過するまで再びこの能力を使用することができない。マスター・ケミストが通常形態を装っている間、竜の変異薬、凶暴変異薬、肥大変異薬のような明らかに肉体を変形する変異形態は働かない。この能力を使用している間は変異形態の持続時間として数えない。
竜の変異薬(超常)/Draconic Mutagen:マスター・ケミストは変異形態でいる間、ドラゴンのような姿──ハーフドラゴンのような鱗状の皮膚と爬虫類の瞳──になる。マスター・ケミストはこの変異薬拡張を得るとき、ドラゴンの種類(竜の血脈の表を参照)を1つ選択する。この選択は変更できず、マスター・ケミストは選択したドラゴンの種類に応じたエネルギー抵抗とブレス攻撃を得る。マスター・ケミストは選択したドラゴンのエネルギー種別への抵抗20を得る。マスター・ケミストのブレス攻撃は選択したドラゴンのエネルギー種別の8d8ポイントのダメージを与える(反応・半減、難易度10+マスター・ケミスト・レベル+【知力】修正値)。マスター・ケミストは1回の変異形態への変身につき、1回のブレス攻撃を行うことができる。この能力は有効アルケミスト・レベル(アルケミスト・レベルとマスター・ケミスト・レベルの合計)が16以上で、フォーム・オヴ・ザ・ドラゴンIのエキス処方を知っており、凶暴変異薬の発見か変異薬拡張を得ていなければ選択できない。
並列思考(変則)/Dual Mind:マスター・ケミストの別人格は、通常形態であるか変異形態であるかを問わず、意志セーヴに+2のボーナスを与える。マスター・ケミストがセーヴィング・スローに失敗して心術呪文か効果の影響を受けた場合、1ラウンド後に同じ難易度で再セーヴを行い、成功したら(最初のセーヴに成功したかのように)その効果から自由になる。そして速やかに変異形態に変異するか、通常形態に戻る。その日に変異能力を使用する回数を残していない場合、マスター・ケミストは並列思考を使用できない。この能力は有効アルケミスト・レベル(アルケミスト・レベルとマスター・ケミスト・レベルの合計)が10以上でなければ選択できない。
身かわし(変則)/Evasion:この変異薬はマスター・ケミストが変異形態でいるときしか働かないことを除いては、同名のローグの能力と同様に働く。
変異時間延長(変則)/Extended Mutagen:マスター・ケミストの変異能力の持続時間は2倍になる。
凶暴変異薬(変則)/Feral Mutagen:この変異薬は同名のアルケミストの発見と同様であり、他の発見や変異薬拡張を得るときの前提を満たす。
激昂変異薬(変則)/Furious Mutagen:凶暴変異薬による噛みつき攻撃と爪攻撃のダメージ・ダイスを1段階大きくする。この変異薬は有効アルケミスト・レベル(アルケミスト・レベルとマスター・ケミスト・レベルの合計)が11以上で、凶暴変異薬の発見か変異薬拡張を得ていなければ選択できない。
大いなる変異薬(変則)/Grand Mutagen:この変異薬は同名のアルケミストの発見と同様であり、他の発見や変異薬拡張を得るときの前提を満たす。この変異薬は有効アルケミスト・レベル(アルケミスト・レベルとマスター・ケミスト・レベルの合計)が16以上で、凶暴変異薬の発見か変異薬拡張を得ていなければ選択できない。
上級変異薬(変則)/Greater Mutagen:この変異薬は同名のアルケミストの発見と同様であり、他の発見や変異薬拡張を得るときの前提を満たす。この変異薬は有効アルケミスト・レベル(アルケミスト・レベルとマスター・ケミスト・レベルの合計)が12以上で、凶暴変異薬の発見か変異薬拡張を得ていなければ選択できない。
肥大変異薬(超常)/Growth Mutagen:マスター・ケミストが変異形態をとるとき、エンラージ・パースン呪文の効果を受けたようにサイズを1段階大きくする。この能力は有効アルケミスト・レベル(アルケミスト・レベルとマスター・ケミスト・レベルの合計)が16以上で、エンラージ・パースンかポリモーフのエキス処方を知っていなければ選択できない。
夜目(変則)/Night Vision:マスター・ケミストは変異形態でいる間、暗視60フィートと夜目を得る。
俊敏(変則)/Nimble:マスター・ケミストの柔軟な肉体と骨格は、【敏捷力】判定、【敏捷力】を基準とする技能判定、戦技防御値、アーマー・クラスへの外皮ボーナスに、マスター・ケミストのレベルの半分に等しい錬金術ボーナスを与える。
変身による回復(超常)/Restoring Change:マスター・ケミストが変異形態を取るときと変異形態から通常形態に戻るとき、1d6+キャラクター・レベルにつき1ポイントのヒット・ポイントを回復する。
獣性(変則)/Brutality:3レベルの時点で、マスター・ケミストはその暴力嗜好によって(その獣性によってさえ容易く扱える武器を使用する限り)より強力な打撃を見舞えるようになる。3レベルの時点で、変異形態のマスター・ケミストは単純武器か肉体攻撃を用いる攻撃のダメージに+2のボーナスを得る。このボーナスは7レベルにおいて+4、9レベルにおいて+6に増加する。