モンスターは本当に記憶に残る愉快な存在になり得る。しかしGMが調整したり新しいモンスターを作る必要がある時には多くの手間がかかることもある。モンスターやNPCの作成の標準的な方法はプレイヤー・キャラクターを作るのに似ているが、挑戦しがいのある適切なパワー・バランスに合わせなければならない。
本章に掲載される“単純なモンスター作成”ルールを使えば、すぐにモンスターを作成し、卓上に喚び出すことができるようになる。これは、モンスターに大量の1レベル呪文を選んだり、NPCの資産に応じた魔法のアイテムを選択したり、呪文の効果に応じたデータを再計算したり、というような時間のかかるやり方を削るため、通常のルールを捻じ曲げることを意味する。ゼロからモンスターを構築する代わりに、このルールでは『表:脅威度によるモンスターのデータ』に示される基準値を用いる。これによりほとんど最後のデータを開始点に置くことができ、必要なわずかな調整を行えばよくなる。くびきから解き放たれた恐ろしいモンスターを作るに際し、君は柔軟性を得ることになる。
ステップ3:副種別の補正(任意)
ステップ4:テンプレートの補正(任意)
ステップ5:サイズの補正(任意)
ステップ6:呪文(任意)
このルールは9つのステップに別れている。そのほとんどにさほど時間は必要としない。中でも細かいのはステップ1:基本値とステップ7:モンスターの選択能力だ。それぞれのステップは以下に簡単な指針が、後述の確証に詳細が示されている(本章の頭にリンクが付記されている)。例として、本ルールを実際に適用した作成済みモンスターも掲載している。
モンスターの設計を始める前に、モンスターをどのようにしたいのか、ゲーム内でどのように機能するのかを明確に理解しておく必要がある。第一にその脅威度と物語における主な役割について考え、どのような種別のクリーチャーであるかを検討してほしい。これが、以下の決定を行う指針となるはずだ。
モンスター作成における最初でもっとも重要なステップが、「配役」――クリーチャーがゲーム中で受け持つ大まかな役割――を選択することだ。このステップでは、ヒット・ダイスの選択も含め、君がモンスターに対して行うほとんどの計算を行う。配役には戦闘員、専門家、術者の3つある。戦闘員は攻撃と防御に優れ、専門家は技能と多様な選択肢を持ち、術者は魔法を使い肉体戦闘が苦手だ。クリーチャーは他の領域に手を出すこともできる――あるデーモンは戦闘員の配役を持ち、呪文を2~3使えるかもしれない(ステップ7のモンスターの選択能力で得られる)。
それぞれの配役には、モンスターの指針となるデータを生成するための表がある。配役の選択はこのルールでもっとも数字に集中する部分だが、君が行う計算のほとんどは既に終わっている。例えば、アーマー・クラスを計算するために【敏捷力】を選択し防具と魔法のアイテムを加算するのではなく、モンスターの合計アーマー・クラスとして単に配役に記載されたアーマー・クラス値を用いればよい。
モンスターの配役は指針となる値を設定しているが、後のステップで加えられる補正で値が変化することもある。それぞれの補正(後述)は説明文に示された特定の値だけを調整し、その調整によるデータの再計算に用いる通常の計算式は適用されない。例えば、配役に記載された攻撃値は攻撃ロールにおけるモンスターの合計ボーナスである――以降の能力値修正によって変化しない。人工的な武器を用いる脅威度4の戦闘員は+8の攻撃ボーナスを持つ。力の呪文リストから利益を得た場合でも、その増加はモンスターの【筋力】修正値にのみ適用される――攻撃ボーナスは同じままだ。
クリーチャー種別あるいはキャラクターのクラスにもとづいて、モンスターに「補正」――ひとまとめの調整――を適用する。何より重要なのは、モンスターのコンセプトだ。通常ならヒット・ダイスが10でローグ2レベルのデーモンとしてモンスターを作ろうとしている場合、デーモンとしての生態がクラスよりもずっと重要だ。そのため、来訪者の補正を選択し、後で(ステップ7の選択肢の1つを用いて)急所攻撃ダメージを加えれば良い。逆に、ウィザード8レベルのピクシーを構築したいなら、ウィザードの補正を用いるべきだ。このクリーチャーは高レベルであり、フェイ種別よりずっと重要だからだ。クラス補正を使うことにしたなら、配役を選択する前に補正の説明文を読むこと。クラス補正には特別な配役を必要とするものが多い。
補正に示された調整の中には、後のステップまで決定できないものもある(「上級技能を1つ追加で選択する」など)。メモしておき、後で選択すること。
このすぐに終わるステップでは、モンスターの副種別に基づく特性を加える。多くの主要なモンスターの副種別とPCの種族が掲載されている。NPCとしてクリーチャーを作る場合、副種別は適切な種族特性を与えることになるだろう。
君が作ろうとしているモンスターが一般的なクリーチャー・テンプレート――ゴースト、スケルトン、ハーフドラゴン、ライカンスロープ、リッチなど――を模倣するものなら、該当するテンプレートの最も特徴的な能力を素早く加えるため、これらの補正から1つを選択できる。このような補正の1つを使用しようとしているなら、本項に目を通そう。これらの補正は特定のクリーチャー種別や副種別の補正を選択しなければならないものもあるし、使用するのに最適なモンスターの配役を示唆するものもある。
このルールの基本データは、モンスターが中型であると仮定している。モンスターが中型よりも大きいあるいは小さいなら、適切なサイズの補正を適用してデータを調整すること。
このステップは、ステップ1で術者の配役を選択した場合にのみ実行される(あるいは、次のステップで呪文発動能力をいくらか加える選択肢を選んだ場合に戻ってくる)。このステップでは呪文を発動したり擬似呪文能力を使用するモンスターを作成できるようになっている。テーマ性のある呪文リストを提供し、モンスターの脅威度に応じてどのように呪文を選ぶかの詳細が記載されている。
モンスターの選択能力は、クリーチャーにあつらえた多様な能力を与え、君が求める役割を正確に満たす助けとなってくれる。このステップは特技、モンスターの共通ルール、その他の特殊攻撃や特殊能力を選択する代わりとなる。選択能力は戦闘、魔法、社会、汎用に分類されている。選択した配役と補正が、どの種別の選択能力をいくつ選択できるかを示している。モンスターが得られる選択肢を自由に選ぶことができる。
このルールはモンスターを複雑にするか、比較的単純にするかのいずれにもなり得る。例えば、君がより多様性をもたせたい場合、戦闘員の配役を持つクリーチャーにブレス攻撃を与え、副次魔法の汎用選択能力にあるレパートリーから呪文を得ることもできる。あるいは、君は単に《強打》と追加ヒット・ポイントを与えるだけにすることもできる。これらはいずれも、一回計算するだけでよい。
このステップは技能ランクを割り振る代わりとなるものだ。モンスターの持つ技能それぞれは良好あるいは達人のいずれかで示され、それに応じて技能のランク、種族ボーナスやその他のボーナスが示される。選択した配役や補正が、モンスターに技能をいくつ与えられるかを示している。また、ある配役において、どのボーナスが初期の時点で良好あるいは達人かも示している。記載のない技能は、通常通りモンスターの能力値修正を初期値とする。
ステップ1で選択した配役は、各攻撃が与えるダメージの平均値を示しているが、使用するダイスやボーナスを示してはくれない。このダメージ表はダメージの平均値をダメージ・ダイスに変換する素早い計算を示している。
最終的なモンスターを最初のコンセプトと比較すること。データはBestiaryに掲載されている『表:脅威度ごとのモンスターの能力』と親しいものにするべきだ。しかしモンスターのデータに多くの調整を行った場合、その結果をよく調べ、作成前の想定と合っているかを確認しよう!
このルールにより、君は卓上で使える準備のできたモンスターをすぐに構築できるようになる。そのため多くの処理や計算が必要とならないようモンスター作成からいくつかの面倒な部分を切り落としている。これにより、求めるものを常に正確に得られるわけではなくなっている。そのためコンセプトに合っているかを確かにするためにモンスターをしっかり確認する必要が出て来るだろう。モンスター作成のゴールデン・ルールは、モンスターが自分の求める形で機能する助けとなるよう、必要があれば変更できるということだ。
補正が示唆するよりも多くの戦闘オプションがモンスターに必要なら、より多く与えよう。より様々な状況に対応できる選択肢を必要とするなら、追加の呪文を与えよう。配役表の“肉体攻撃”列は3つしか攻撃がない。だから触手を6つ持つクリーチャーがいるなら、6回攻撃を与え、『表:脅威度ごとのモンスターの能力』の平均ダメージを用いてそれぞれのダメージを再計算しよう。これらの変更は全て、公平なゲームだ! 基本軸からそれる際には、バランスから目を背けないだけでいい。このルールを用いて作成されたモンスターに、『表:脅威度ごとのモンスターの能力』の指針を適用すること。
モンスターの以下のデータは、個々のステップでは決まらない。この処理の最後に計算すること。
戦技ボーナス:モンスターの戦技ボーナスは最も高い攻撃ボーナスに等しい。
精神集中:呪文を発動するモンスターにおいては、精神集中ボーナスをモンスターの脅威度と最も適切な能力値修正の合計で算出すること。擬似呪文能力を持つモンスターにおいては、通常【魅力】を用いる。
ヒット・ダイス:このルールで作られたモンスターは、ヒット・ダイスにかかわる計算を行う際、脅威度をヒット・ダイスとして用いる。脅威度が1未満のモンスターにおいては、1ヒット・ダイスを持つものとして扱うこと。
イニシアチブ:強化イニシアチブの選択肢、補正、即興の調整がない場合、モンスターのイニシアチブ修正は【敏捷力】修正値に等しい。