通常パスファインダーの冒険を作成する場合、GMは考えの中核に過ぎないものから始める――探検したい設定、使いたいモンスター、詳しく述べたい計画から。この基本的な考えは物語の他の要素を掛ける大枠を提供する。GMは同じ方法でホラー冒険を作成できる。
GameMastery Guideの第1章では、冒険の作成と実行について幅広い詳細が記載されている。ホラー冒険はパスファインダーRPGの冒険のもう1つの種類であるため、そのアドバイスはすべて関係している。ただし、違いはGMにはもう一つの目標があることである:ストーリーを怖いものにすることである。以下のアドバイスはGameMastery Guideのアドバイスを補足するもので、GMがまさにそうすることに役立つ。
冒険のデザイン・プロセス全体を通して、GMはホラー小説や脚本を書いているわけではないことに留意する必要がある――ホラーRPGの冒険を描いているのだ。含みのある伝承やカリスマ的な悪役に気を取られるのは簡単であるが、すべてのGMはPCが物語の主役であり、最終的に最も重要なキャラクターであることを覚えておくべきである。これに加えて、パスファインダーのキャラクターには様々な魔法やその他のオプションがあり、日常の人々を怖がらせるようなものを無意味にしたり、秘密を瞬時に明らかにしたりできる可能性があることに注意せよ。したがってGMはキャラクターの弱点と同様に長所を知っており、最も恐れるものに合わせて冒険をカスタマイズすることが重要である(詳細は下記参照)。これらの能力はその効果や多様性によっては怖気づかせるものかもしれないが、各能力は恐怖を明らかにする新しい方法を提供するかもしれない。
GMが恐ろしい冒険を作成すると決めたら、どのような恐怖を盛り込めばいいのだろうか? ホラーのサブジャンルの議論で説明したように、ホラーにはさまざまな種類がある。GMは自分のホラーの物語を、何か基本的なもの、おそらく唯一の恐怖にまで煮詰めることができるべきである。これは蜘蛛への恐怖や歯を失う恐怖と同じくらい原始的なものかもしれないし、見捨てられる恐怖や機械的災害のようにもっと洗練されているかもしれない。GMが恐怖を選択したら、その恐怖のアバターや化身を選ぶことができる。これは恐怖を体現して増殖するモンスター、人物、他の恐怖かもしれない。例えば、蜘蛛の恐怖をジャイアント・スパイダー、スパイダー・スウォームほどに活用するものはないだろうが、見捨てられる恐怖を表現するには、アティック・ウィスパラーや、死を待っているのに自分が死んだことを確信できない辛辣な老人の霊のようなクリーチャーが必要かもしれない。このアバターはGMが望むものであれば何でも構わない。もしも役に立つのであれば、もっと恐ろしいものにしたり、異常なものにしても構わない――ジャイアント・スパイダーは実際には悪巧みをするレン・スパイダーかもしれないし、アティック・ウィスパラーが自立行動する人形の軍隊を制御しているかもしれない。これは単なるフレーバーとして機能させることもできるし、GMは裏付けるためにルールを探し出して良い(または自分で設計して良い)。選択した脅威は文字通りの具体化である必要はないかもしれないことを覚えておくこと。例えば、エイリアンの拉致や実験に対する恐怖は、文字通りグレイにとって実現できるが、比喩的にはデロによって具現化される。
恐怖の化身が選ばれると、GMは同じテーマを想起させる環境や味方を使って恐怖をサポートできる。暗闇は潜んでいる恐怖の可能性を秘めているので恐怖はしばしば夜に起こるが、ホラーのストーリーは選択した脅威を補強する不穏な雰囲気を伴っているならいつでもどこでも発生しうる。例えば、歯を失うことの恐怖を具現化したトゥース・フェアリーが何十億本もの大臼歯で作られた地下の巣を作ったり、機械的な恐怖が半機械的に機能する時計塔で発生する可能性がある。どのような選択をするにせよ、これは――または別の後に活かされる設定は――探索するためのダンジョンの一種になる可能性が高いため、キャラクターが克服する挑戦を提供すべきである。
小説や映画でのホラーは単独で動くことが多いが、パスファインダーの冒険ではそのようなことはほとんどしない。GMはホラーの主となるアバターを支えるような弱い脅威を選択する必要がある。これらは、味方、日和見な取り巻き、錯乱した犠牲者、クリーチャーの仕事の残骸、またはクリーチャーの怪物性の源であるかもしれない。この味方は主要な敵よりも強力ではないかもしれないし、少なくとも積極的な恐ろしさがあるものではないかもしれない。例えば、レン・スパイダーがエターキャップのカルトに取り囲まれていたり、トゥース・フェアリーが盗み出した歯を半分寝ているアルビノ・パープル・ワームに食べさせているかもしれない。罠、災厄、霊障、その他の挑戦は、PCがに経験を与える弱い遭遇を与えるだけでなく、リソースを奪い、弱点を伴うような最終的な脅威に直面させる。
パスファインダーのルールには有限のデータとルールの選択肢を提示しているが、GMはそれらをどのように組み合わせるかで無限のシナリオは可能となる。ホラー冒険の場合、ルールにこだわっているプレイヤーにさえも衝撃を与える無限の機会があることを意味している。恐ろしい秘密を明らかにしたり、事態は予想していたものよりも遙かに悪いと気が付かせるような想像を提示したりしてキャラクターを驚かせる機会は、冒険において沢山ある。例えば、アティック・ウィスパラーのコレクションの中から実物大の母の人形を見つけるかもしれない。あるいは、時計塔の上部にある自動巻き上げ機が太古から1回だけ発生する13時を考慮して内部を作り直しているかもしれない。
物語の衝撃的な暗示は最も強力なものであるが、GMはゲームのルールをひねり、プレイヤーを不安がらせることもできる。
モンスターを偽装する/Mask Monsters:GMがモンスターの基本的な記述に従わなければならない理由はなにもない。モンスターの説明を調整したり、完全に置き換えてしまうことで、GMはベスティアリィから新たに得られる多様性だけでなく、解放された恐怖に対する冒険に最適な敵も獲得する。PCは、自分の脚に絡みつくスネークとマゴットの打ち寄せる山がPCの体勢を崩して身をよじる大口のところまで下げさせることに怯えるかもしれないが、GMの画面にはウルフのデータが表示されているだけである。
モンスターを変化させる/Transform Monsters:ベテランのプレイヤーは獰猛な死体を即座にグールであると見分けるかもしれないが、トゥース・フェアリーがそのグールの歯を盗んだ場合、恐らくその噛みつき攻撃は無害で湿った齧りつきに変更されるだろう。これはグールがそれほど強力ではないことを意味するかもしれないが、ホラー冒険にとって1d6ポイントのダメージを与えることよりも、それが引き起こす衝撃と反発が遥かに重要である。クリーチャーのデータを変更するのは簡単である。特にGMがクリーチャーをより強力にするためではなく、不安がらせる遭遇を作成するためである場合は簡単である。Pathfinder RPG Bestiaryの付録を使い、攻撃種類を入れ替えたり、近しい脅威度のクリーチャーと能力を交換したりする。GMが致命的な相乗効果のために利用できる力を意図的に組み合わせていない限り、このようなユニークな遭遇はあっても構わない。また、GMが物語の不安を煽るよりも致命的なものを即興で作成してしまった場合でも、PCに有利になるように物語を動かし続けることができる。即興のルールの節にはPathfinder RPGのルールをホラーの物語に活かすための人が書かれている。
現実性を捻じ曲げる/Warp Reality:ルールはゲームの物理的な性質――起こり得ることと起こり得ないことの法則――であり、時にGMがホラー冒険でできる最も不安にさせることはこのルールを破ることである場合もある。おそらく、PCは奇妙な悪夢のグループがあるか、現実を歪めているモスマンに追跡されているか、心を失い始めている。いずれにせよ、GMはPCが期待するようにゲームを機能させないことでこれを伝えることができる。例えば、ディテクト・マジック呪文は悲鳴の大合唱として情報を明らかにしたり、孤立したキャラクターが壁の上を一瞬歩いたり、一瞬時間が逆転したり、PCがある能力を使おうとすると説明もなく効かないと伝えられたりする。これらのトリックは、PCの命が危険にさらされていない時に控えめに使うのが一番効果的である。
ほとんどのパスファインダーの冒険では、PCが成功することが運命づけられている。ホラー冒険を実行する場合、必ずしも難易度が高ければならないということではなく、確実にパーティを完全に殺すことが保証されているわけでもない。ほとんどの場合、GMはPCのダイス・ロールではなくストーリーでPCを不安がらせたいので、PCの成功を想定して計画を建てるべきである; 多くの冒険では失敗は恐ろしい結末を迎えるが、ホラー冒険では成功した場合にも恐ろしい結末を迎える可能性があることを考慮すること。
冒険の途中でPCは劣勢の敵、罠、霊障、その他の挑戦に対して多くの勝利を収める必要がある。これはパスファインダーの標準であり、GMはPCに通常通りに経験点と報酬で報いるべきである。経験点を授与するためのルールは通常のルールに従うが、成功した戦闘遭遇だけに経験点を与えてはいけない。ホラー冒険には探索、調査、ロールプレイの遭遇が含まれている。GMはプレイヤーにこれらの要素を戦闘と同様に真剣に取り組んでもらいたい場合、この分野での成功に対して、報酬を与えることができる――通常はパーティの平均レベルに等しい経験点を。ホラー冒険での経験点の使用の詳細についてはホラー・ロールプレイングの奨励を参照せよ。
宝物はホラー冒険でプロットの詳細を明らかにしたり、PCを不安にさせるためにも特に役立つ。GMは冒険の必要性に応じて宝物をカスタマイズできる。ホラー冒険では+1ダガーが1本だけ転がっていることはめったにない。むしろその+1ダガーには市警の紋章と「J.B.」と、蜘蛛が犬を引きずって下水道に入っていくのを見たと主張して姿を消した警備兵のイニシャルが入っている可能性がある。遭遇が貨幣やありふれた物資の山を要求するだけの場合でも、PCがプロットについて詳しく知るために調べる日記、ジャーナル、本を差し込むのを躊躇うべきではない(ただし、奇妙なほど具体的な手紙や必要な日誌を入れて、ぎこちない強引な方法で直接ストーリーを明らかにするという冒険の陳腐な表現は避けるように試みること)。NPCやPCにとって意味のあることをまとめあげることで、ミステリィとホラーの雰囲気をさらに盛り上げることができる。PCが初めて恐怖に直面した人物というわけではないことを示す証拠は――特に前任者が失敗している場合――主張が激しく、クリーチャーと戦うのに最適な魔法のアイテムが隠れ家にある理由にもなる。さらに、PCが代償を支払う必要のあるものを提供する部分的に呪われたアイテムのように諸刃の剣として振る舞う報酬は、他の危険であるかのようにPCが単純に避けるであろう呪われたアイテムよりも効果的に機能することが多い。これは、PCたちに自分の墓穴を掘る機会を与え、その報酬を手元に留めておくよう誘惑する。
最後に、GMは成功が冒険にとって何を意味するのかを知っておくべきである。PCはしばしば、暴力で物事に終止符を打つと想定することがある。例えば、アティック・ウィスパラーを殺したり、時計台を燃やすことで恐怖がなくなると考えるかもしれない。しかし恐怖と悪は回復することで有名である。恐怖を本当に破壊するには、その原因を知るか特別な弱点を発見することが必要かもしれない。アティック・ウィスパラーが灰の中から蘇り続ければ、PCはそのクリーチャーの父親がまだ生きていることを発見し、最後には――多少の案内とともに――孤独なクリーチャーの脅威に終止符を打つために依頼した神父であることを発見するかもしれない。もちろん、その場合でも、ホラーのストーリーの登場人物が本当に悪が祓われたのかを知ることは難しい――単に続編を待っているだけかもしれない。