神話級のゲームの進め方は、他のゲームの進め方と多くの類似点を持つ。PC達は冒険に赴き、モンスターと戦い、宝物を見つけ、経験を得る。違いといえば、神話級のゲームは劇的な要因、舞台、テンションがより高い水準になっている点だ。同じキャラクター・レベルの非神話パーティと比較すると、神話パーティの冒険は信じられないほど困難な敵や遥かに偉大なる挑戦に焦点を当てている。もちろん、勇敢なる神話級の冒険には、輝かしい報酬もある。
本項では、神話級のキャンペーンを運用する際の指針を提供している。すなわち、何がゲームを神話級にするのか、神話級ゲームの種別、遭遇の困難さを調整するルール、プレイを進め充実した試練のための指針についてまとめている。
神話級を感じるゲームのためには、GMとプレイヤーに覚醒と畏敬の念がなければならない。神話級とは、謎に包まれ、定命のものの手が届かない力を意味している。キャラクターが神話級のものに遭遇すると、彼らは見たこともない世界を垣間見たかのように感じるべきだし、その謎を探索し危険と相対するほどには勇敢であることが約束されている。神話級の雰囲気は伝説を生涯の中に引き込み、キャラクターはその神話を形作る役割を演じることになるだろう。成功すれば、彼らは時が来れば昔話や叙事詩のバラッドにおける主題となるだろう。
神話級のゲームの運営には、単にプレイヤーが神話パワーを持つことができ、神話級の敵と直面する以上のことが必要となる。それも確かに一部ではあるが、神話級の雰囲気を作り出すことも同じように重要だ。世界自身や物語の構成には、既存の物語と並行した神話級のための余白を作る挑戦が必要となる。この変化に新しい世界の再発明は不要だが、神話クリーチャーとその環境はまるで彼らが世界の一部であるように感じられるものでなければならない。彼らは隠れていてもよいが、依然として一般的な出来事やその周りの土地に結びつきがなければならない。
普通の世界と神話の世界の対比は、伝説と謎の雰囲気を伝えるにあたり極めて重要である。非日常性をありふれたものと対比させると、それがどのようなものかが見えてくる。例えば、雷舞う嵐雲の空を漂う、中心に1,000フィートの高さがある塔を備えた飛行する城は、確かに劇的な景色ではある。しかしそれも、牧歌的な農地と埃で汚れた町に影が差した景色と比較した場合だけだ。同じ空飛ぶ城がそびえる火山の中にあり、そこには500フィートの高さがある要塞があるとすれば、この要塞と城はいずれも単なるこの世界の両極にある、別の極端な要素となってしまう。ゲームがゴラリオン世界(あるいは他の出版された世界)を舞台としているなら、この世界には特別な印象があるため、神話級要素との対比を挿入するのは簡単なことだ。単にゲームを神話級にするなら、この舞台の境界を飛び越えるように押してやればいい。神話級要素がいつも存在し、発見されるのを待つ隠された場所を決めるのだ。
神話級ルールはゲームに本当にファンタジー的な要素を加えるために使用することができる。単に冒険の終わりに神話級の敵を差し挟むことから、PCが冒険を通した経歴の全体で神話キャラクターを遊べるよう、他の神話級の敵と戦い神々の力に匹敵できるようになるまで、その使い方は多岐に渡る。究極的には、キャンペーンや世界全体としてこれらのルールがどれほど頻繁に見られるものかをGMが決定することになる。以下に示す尺度の種類は、神話級ルールをゲームに導入するにあたり、GMに簡単な指針を与えるためのものだ。
稀:この尺度では、神話キャラクターは世界の離れた場所にのみ住んでおり、過ぎ去った失われた時代となることに満足している。人々は彼らを物語として口にするが、誰も実際に出会ったことはない。PCはこの種のキャンペーンでは神話級ではないが、旅の中で、特筆すべき試練の末に神話クリーチャーに到達するかもしれない。逆に、ある神話クリーチャーが世界の中でその土地の脅威となっているかもしれない。PC達はそのような恐るべき危険に対処する術を探すために旅をすることになるかもしれない。
限定的:限定的の尺度では、わずかな期間ではあるものの、PCはいくつかの超常的な出来事を通して神話パワーの味を知る。1回の冒険や短い小キャンペーンの間、彼らは目的を達するためにその力を扱うことができる。不幸なことに、それはすぐに手元から離れていく。彼らはすぐにまた普通の存在となる。ひょっとしたら彼らには力の残滓がいくらか宿っていて、将来必要になった時に呼び起こせるかもしれない。ひょっとしたらずっと後になってその力が戻ってくるかもしれない――もしかするとある種の神秘的なサイクルに従って定期的に訪れることさえあるのかもしれない。力の復活とともに、より難しい試練に挑む時期のことを計画できるように。
珍しい:このゲーム尺度では神話クリーチャーと神話キャラクターは珍しいものの、伝説に囁かれ全く期待できないというほどでもない。PCも神話パワーを手に入れるが、階梯の進み方は緩やかだ。GMは登場する試練の数を制限することで進む速度を制御することができる。また、神話級の敵も蔓延していると言うほどではないが、一定の数を見ることができる――秘密結社を率い、文明の縁にある静かな村を苦しめ、世界の暗部に根ざしている。
一般的:一般的の尺度では、神話キャラクターと神話モンスターは日常生活の一部だ。だからといってどの町でも神話級の英雄が守っているというわけではない。でもこういったキャラクターは存在を知られており、その偉業も一般的な知識だ。貴族、神官、その他の権力を持った人々はPCを呼びだし、危険なモンスターや悪役との戦いに無力であるからと助けを求める。この種のキャンペーンでは、PCが神話パワーを持った状態で開始し、レベルを得るように成長していく。おおまかに神話階梯を得る速度はキャラクター・レベル2毎に1階梯となる。
キャンペーンや冒険には多くの形態がある。プレイヤーの気まぐれやゲーム・マスターの必要性に応じて様々な形をとる。しかし神話級のキャンペーンや冒険を成功裏に進めていく鍵は、もうちょっとだけ計画を取り込むことだ。以下の構造は、シナリオの長さに関わらずGMが神話級の体験を計画する指針となる。この方程式は、PCが最初に神話パワーを得、シナリオの終わりに失うような単発のセッションでもうまく機能する。あるいは君は、PCが初期に神話パワーを得て、何十もの冒険をこなした後に引退するようなキャンペーン全体でこのやり方を採用することもできる。
神話級の物語の多くは、よくある物語構造に従っている(モノミスを参照)。この構造は5つのパートに別れている。すなわち接触、覚醒、旅、期間、その後の人生だ。"接触"において、PCは彼らにとってあまりにも強大で手に余る脅威と遭遇する。"覚醒"でPC達は神話パワーを授かり、この脅威に対処する。"旅"では英雄達がその力を高め、脅威を打ち消すために必要となるものを得る。"帰還"において、彼らはついに脅威と同格(あるいはほぼ同格)となってぶつかり、この世界を永遠に正しい状態に戻す機会を得る。"その後の人生"で、神話級の英雄はその試練の余波に対処し、普通のキャラクターに再び戻るか、もしくはその新しい力を保持し続けることになる。
この構造は変更の効かないものではない。GMはキャンペーンに合うように詳細を即興で作っていかなければならない。複数の遭遇で自らを明らかにしていくかもしれない物語のアイデアは、段階を追って現れてくる。
神話級のゲームにおいて、失敗はキャラクターの動機を高める上で重要な役割を担うことができる。失敗はすなわち死というわけではない。しかしPCの努力は目の前の問題全てを解決するほどではなかったということだ。戦闘には勝ったかもしれない。しかし周りの街が破壊されたり、身近な人が衝突の最中に死んだかもしれない。この失敗は物語を紡ぐ切っ掛けである――喪失や特別不幸な状況であってさえ、彼らの旅を続ける動機として使えるかもしれない。PCの敵が彼らに似た力を持つことを描くことにもなり、目の前の試練が英雄たちの限界を試し、解決することになるだろう。
キャンペーンの最初、PCは神話パワーの助けなく問題を解決し成長させてくれる、通常の冒険にあるべきだ。この中で彼らはありふれた英雄としての生活を経験する機会が与えられ、口に糊し、彼らの周りにある普通の世界を探索することができる。
PCが本当に不思議な存在と接触する段になると、神話級のキャンペーンは本格的に始まる。自分たちの周りにある世界は最初に気づいていたよりもずっと大きいのだと、そのとき彼らは気付く。それはPCが現在の力では撃破する期待も持てないほどの、大きく圧倒的な危険といった形をとるかもしれない。あるいは途方もなく強力な竜がその地に現れたのかもしれないし、ずっと昔に滅んだ神が世界に帰ってきたのかもしれない。ひょっとしたら、恐ろしいタラスクが再び覚醒したのかもしれない。この挑戦することもためらわれる脅威に、命を賭して永遠に挑むものとして、PCはこの物語に巻き込まれる。このような低レベルのキャラクターは獣のように戦うべきではないが、この脅威により街は破壊されるかもしれないし、他の人と一緒に逃げるか死ぬか以外の選択肢はないかもしれない。この出来事の後、彼らは脅威とつながる。しかしすぐにそれらに対応できるというわけではない。
神話級の物語における重要な要素の一つに、キャラクターが最初から神話級の英雄として始まるわけではない、という点がある。最初のシナリオのオープニングの場面の間にその力を得るとしても、それぞれのキャラクターは昇格の前まではありふれた生活を営んでいたのだ。このことにより、彼らはこの世界に根ざしたものとなり、彼らのもとに降りかかった変化の度合いを理解する際に、一定の枠組みを与えられることになる。神話パワーの種が生まれた時から彼らの一部であったとすることはできない、といっているわけではない。しかしこういった潜在的な力は、適切な時が訪れるまでは隠れたままであるべきだ。
PCにおける次の段階は、必要な助力を得ることだ。それは神話パワーの形で与えられる。PCがこの力を得ることの実質的な意味合いは様々で(神話の主題を参照)、同じゲーム中であってもPC毎に異なる。物語中のこの分野が終わると、PC達は同時に、あるいはばらばらに、昇華の瞬間を経て、今や神話級となる彼らはまだ第一義たる試練に直面する準備はできていないものの、この時点で勝利への道に向けた最初の一歩が明らかになっているべきだ。
しばしばこの力の源は旅を通して彼らに手がかりを与える。例えば、タラスクは田園地域を駆け回っており、町々の全てを貪り食っている。PC達はこの獣が眠っている場所の近くにある人里離れた谷へ逃れることを余儀なくされる。そこで彼らは、この谷が最近破壊された古代の封印が刻まれた谷であることに気付く。守護精霊はこの獣を封じ続けるという責務に失敗してしまったことをPC達に説明し、君達が勇猛だというならばその妨害をしてくれないかと嘆願する。その力の残りを与えることで、守護精霊はPCに神話パワーを注ぎ込む。精霊はかき消える際、タラスクに死を与えることのできる伝説の剣を探すのだと彼らに告げる。
助力を受けとった後、PC達は旅を始める準備ができたことになる。しかしまず、彼らはこれまでの古い世界から離れなければならない。これは痛みを伴う選択となる。PC達は愛する人々と別れ、未知なるものに挑み、本当に危険な者に対処する準備をしなければならない。このときこそ、最初の大きな試練を出現させる好機である。彼らは今まさに扱えるようになった力を完全に手にすることができる。同時に、GMは喪失や敗北という形でこのタイミングを強調すべきだ。状況に引き込まれていく姿と、試練をこなす必要性をPCに強調するのである。上述の例では、PCは故郷が完全に失われたことに、タラスクにより貪り食われ、今やこの谷だけが残っていることに気付くかもしれない。PCがただ嘆くしかない時が来る前に、封印を弱める手助けをするカルティストの一団に攻撃される。命をかけた戦いの後、PC達が悲劇的な運命から他の町を守ろうと思うならば、伝説の剣を得るために旅に出なければならないと気付くことになる。
神話構造の2つめの要素は"旅"だ。物語におけるこの要素はいかなる長さでも構わない。1セッションの中盤に縮めることもできるし、無数のセッションが含まれるかもしれない。今や神話パワーで強化されたPC達は、無数の試練や危険に立ち向かわなければならない。これらの試練は様々に異なった形をとりうるが、いくつか良くある形式がある。
試練の一形態は心の試練である。PC達が自ら以上に大切にしているもののために戦うことを強いられる。この手の試練は、PC達に自分自身の幸福と権力以上の目的を与えてくれる。失敗した時に危機にさらされるものがなければならない。それらはPCに解決策、決断の理由を与えてくれる。彼らがモンスターの経路にある街を訪れた時、PC達は故郷や失われた友人を思い出させる人々と出会うかもしれない。あるいは、一人の子供が敵の支配下にある姿を見つけることができるかもしれない。この子が邪悪な計画の重要な鍵であることを知り、PCがこの子を助けるには期限内に成功しなければならない。脅威が十分に強力であるならば、PC達は彼ら自身が生き残ることを身につけるようになることさえ、二次的な試練完遂の目標となるかもしれない。
もう一つの試練形式に誘惑がある。これは別の捻れた要素を備える。明らかで英雄になることを妨げるだろうと予想できる誘惑もある。例えば旅を止め平和に引退できるような牧歌的な谷を見つけたり、怪しい異邦人が呪われた森を通り抜ける近道を薦めてくるなどが挙げられる。否定がキャラクターを定義しその制限を示すため、このような誘惑は神話物語では重要なものとなる。また、かすかな誘惑もある。それは実際に英雄の考慮に値するものかもしれない――利益と比較して価値が安い(あるいは全くないことさえあるかもしれない)からか、発生源が信頼できるように見えるからかもしれない。何日か飢えた後に邪悪な魔女から食事を得たり、町全体の安全のため彼らが守っている子供を諦めることを選択したり、などだ。善と悪を強制することはその気質を明らかにしたり、堕落への道へ誘うという点で、英雄の試練になり得ることに注意すること。いずれにせよ、PC達は旅の中で何度も誘惑を受ける可能性があるし、その道を進み続け、留まるために解決法を見つけなければならない。
最終的に、PC達は自らの力の源と出会わなければならない場所に訪れ、別の形の試練を与えられる。旅の間に、PC達は力の源についてさらに多くのことを学んでいき、ついにはその本質の真実を明らかにするだろう。このことは、力の源との対立につながることかもしれない。その後、PC達は、自分が力の源の従者ではなく、同等の存在だと感じられるようになる。例えば、PC達はその力が神の力に基づくものであること、そしてその神格がPC達を自らの目的のために使用していることに気付くかもしれない。大きな危険を冒して、彼らは答えを知るために神のアスペクトと対峙する。衝突の結果、PC達は自分が神の大いなる計画のひとかけらに過ぎないことに気付く。自分はもはや、単なる駒ではない。神は彼らを自分の目的を達成するために使用するように、彼らも神を自分の目的を達成するために使用しているのだ。
旅の終わりに、PC達は最終的な目標がもはや手の届く場所にあることに気付く。達成することは今までの試練よりもずっと難しくあるべきだ。価値のないものを選別するためにそこにいる敵もいる。またその一方で、PC達を打ち砕くために配置された邪悪の僕もいる。旅の最終段階では、PC達が今まで見たこともないような報酬があるべきだ。それは旅全体を通して絶頂となるだろう。前述の例では、PCはタラスクを滅ぼすことのできる伝説の剣が眠る場所に到達する。古代の墓所から剣を獲得するのは簡単な任務ではなかった。この武器は神話モンスターと恐るべき罠の持ち主によって守護されていたからだ。剣を手に取り、彼らは危険を打ち払うために帰還しなければならない。
目的を達成するためには、旅からの帰り道は旅と同じように危険なものだ。英雄達はその力を高めたものの、自分たちが失敗しうるものに囲まれた状況下にある。敵はこの使命に気付いているべきだし、PCを殺すためには手段を選ばない。しかし、神話級のキャラクターは下位の脅威は払いのけ、旅の初めへとつながる必要な道具を持っている。これにより彼らは自らの力を完全に理解する機会が与えられ、最近まで本当に恐ろしい存在だった敵を倒すためにそれを使用することになる。
旅から帰る間にPC達は以前と異なる経路を通ることができる。彼らは次元界を移動するかもしれないし、魔法のカーペットを使用するかもしれないし、その他旅を効率よくするその他のやり方を使用するかもしれない。異なる経路を単にとる場合でも、手がかりを探しながら土地土地を放浪する必要はもはやないのである。道に迷ったり旅の始まりにモンスターを追跡する必要があったりした彼らを助けてくれた、支援者がいたかもしれない。旅の手法に関わらず、彼らはその後ろにある神話世界から一般の世界に帰ってきたという自覚を持つべきだ。彼らは変わってしまった故郷に戻り、彼らを待つ試練に立ち向かう準備もできている。
神話級のゲームの終わりに、英雄達は究極の敵と対峙する。この最後の遭遇は最も困難な試練となるだろう。ひょっとしたら、彼らの人生においてさえ最大のものとなるかもしれない。適切に動機付けされていれば、既にPC達はこの脅威を滅ぼすために喜んで身を投げ出すだろう。この衝突が終わり脅威に対処できれば、PCの旅はついに完遂される。
全てがうまくいったのであれば、GMとプレイヤーはPCの力がどうなったかを決めなければならない。彼らは神話級の英雄としての道を続け、ありふれた生活を捨て去ったのだろうか? 他の旅に向かい、さらに強力な敵と対峙したのだろうか? 神話パワーの喪失に気付き、通常の世界に戻るという困難な仕事を持って去って行ったのだろうか? これらの決定の多くは物語とキャンペーンの必要に応じて指針が与えられるだろう。
単に短い神話級のセッションなら、PCは一晩のうちに神話パワーを得、そして失う。何ヶ月もの間続いた短い物語に比べれば、この変化は単純なものだ。神話パワーがキャンペーン全体の主要な主題であった場合、論理的な終焉が与えられるかもしれない。次のキャンペーンが同じ世界で行われ、数年後もしくは数世代が過ぎた後であったなら、プレイヤーの以前のキャラクターは伝説の中へと姿を消しており、新しいキャラクターはこの神話級の英雄の物語を耳にして成長したのだ。
物語以上にキャンペーンに神話らしさを与えるために加えることのできる要素には、様々なものがある。それぞれの要素は冒険の様々な場所で見られる異なる手法である。神話級の冒険にはこれらのいくつかが含まれていたほうが良いが、同時にすべてを入れる必要はない。
ずる賢い敵:神話キャラクターが直面する敵は、自らの計画に従い、狡猾で道を踏み外した存在であるべきだ。戦いの時をウロウロしながら待つ傾向がある通常のモンスターとは異なり、ずる賢い敵はPCを倒すため先回りしようと努力する。このような敵は自分が有利になるような環境を用い、能力を最大限に利用し、不測の事態に備えた計画を少なくとも1つ持っている。ずる賢い敵は戦闘に負けると逃亡することが多く、その後再度徒党を組みもう一度攻撃の準備をする。PCがずる賢い敵と初めて遭遇した後、敵はこの経験から学び、PCの力を無力化するため新しい技と戦術を用いる。敵は戦いの前に調査したり偵察を行うことさえあり、音もなく観測する間に自分の部下とPCを戦わせ、PCの力量を記録するのだ。
厳しい結果:信じられないほどの力がキャラクターのいつでも使えるところに全てあるため、英雄たちが依然として人間であることは簡単に忘れてしまう――彼らは複雑で欠陥だらけだ。神話級の英雄は物語の間中苦しみ、印象的な結末を経験する。そしてそのときこそ、英雄を定義し自らと彼らをつなぐ助けとなる瞬間なのだ。結末をもたらす方法には異なるやり方がある。失敗は選択肢の一つだ。戦闘や技能判定の失敗であることもあるし、正しい選択を選び間違えることもあるだろう(失敗の重要性を参照)。しかし結末をもたらす他の方法もある。例えば、PCの行動のために予期せぬ出来事が起きるといったように。敵を倒すために君が使用した神話級ファイアーボールのために、田園地域が燃える姿を想像してみよう。対価のない選択肢がない、難しい選択の存在という、古典的な物語の瞬間はいつだってある。このような結末に苦しみ反応することを通して、神話級の英雄の本質は露わになっていく。
印象的な舞台:神話級の冒険世界は膨大で劇的だ。大きな天守閣は確かに印象的だが、中心に200フィートの高さの塔があれば、驚きを印象づけるのにより適している。これは自然の環境にも当てはまる。通常の5倍の大きさの植物が生えた森、100フィート以上の高さがある滝、その中心から噴火している非常に大きな火山、といった具合。気持ちが動転した時でさえ完璧に落ち着かせてくれる池や、異常なほどに暗い沼など、超自然的な効果を持つ場所の形をとるかもしれない。これらの場所は全ての感覚に対して主張するべきだ。そうすることでそれらは強烈で記憶に残るものとなるだろう。
伝説のクリーチャー:PCが出会うクリーチャーは、それ自身が正式な伝説でなければならない。古代の神話から取り出してきたもの(ミノタウロスやメドゥサなど)はいかにもその候補に相応しいが、どんなモンスターであれ適切な背景設定を与えることでこの区分に当てはめることができる。自然にいるダイア・ウルフのような無作為な遭遇は特に伝説的というわけではない。しかしPC達が町の近くに初めて訪れ、そこには10年間町の住人を餌とし続けていた恐ろしいモンスターがいると知り、その獣に関する多くの地元の神話があるならば、同じ遭遇は伝説としての格を得る。このような敵を倒すことは神話キャラクターの物語に加えられ、この瞬間が神話級の冒険において重要なものとなる。
異世界の影響:アーティファクトによるものか、古代の魔法によるものか、あるいは神によるものかに関わらず、神話パワーは定命の領域を超えた力だ。PC達がこの力を得ると、彼らは支配ないし何らかの影響を彼らに与える方法を探す奇妙な力の興味を引く。これは様々な形をとりうる。神格が不可解な預言者を通して語りかけたり、星々による奇妙な印といったものから、英雄達の旅の中で助けるために、林の中を静かにしたままにするという贈り物まで。このような影響は全て有益な者である必要はない――PCは強力な嵐に打ち付けられるかもしれないし、常に変化する地図によって道に迷うかもしれない。あるいは邪悪な力を持つ代理人に攻撃されるかもしれない。例え原因や動機が理解できないとしても、PC達は自分の試練が強力な敵の興味を引いたのだと感じるに違いない。
強力な敵:敵はPCが通常遭遇するであろうものよりもはるかに強い力と能力を持っていなければならない。神話能力を用いてPC達はこれらの試練に打ち勝つ道具を手にしているが、この種の敵はそれでもなお強力で危険な存在だ――倒さなければ世界に痛みをもたらす以上の力を備えている。強力な敵との戦闘は、PC達が生き残るために神話パワーがほんとうに必要であることをはっきりさせてくれる。もちろん、すべての戦闘が強力な敵に対するものである必要はない。より弱い敵は、PC達にその能力を明らかにする機会を与えてくれる。
超常的な出来事:奇妙で素晴らしい出来事が神話キャラクターを取り囲んでおり、彼らの周りの世界を変えてしまう。この種の出来事は(小さな谷に永遠に吹きすさぶブリザードのように)一地域のものかもしれないし、(太陽を覆う陰のように)広い範囲を覆い尽くすものかもしれない。これらの超常的な出来事は、いくつかの形でキャラクターの物語につながっている。ひょっとしたらそのブリザードは英雄の興味を引こうとするウォーター・エレメンタルの預言者が作り出した神秘的な氷の印かもしれない。太陽を覆う陰は世界の表面に滅びをもたらそうとする神話級デーモンによるものかもしれない。
驚くほどの力と印象的な敵だけが、神話級の物語に存在するわけではない。このような英雄に対する世界の反応もまた、キャンペーンが本当に神話級と感じさせる重要な要素である。神話級のゲームで遭遇するNPC達は、その壮大さで知られるPC達に何らかの感情を――曖昧なものであれ、明確なものであれ――持っているべきだ。
PC達の神話的な起源と神話パワーを描く際、GMにはいくつか選択肢がある。神話的な本質は輝く剣やほのかなオーラなど、目に見える形で誰にでも目にすることができることもある。いつも見えているかもしれないし、キャラクターが神話パワーを使用する時にだけ表れるものかもしれない。逆にその本質がほのかなもので、視覚以外の方法で感じられることもある。もちろん、階梯が低い時にはほのかなもので始まるものの、神話キャラクターが成長するにつれずっとはっきりしていくということもあるだろう。君がとる形がどのようなものであれ、世界の人々は神話キャラクターを普通の人々と勘違いするようなことがあってはならない。
一般の人々が英雄たちと話すやり方は、他のキャラクターと話す時とは異なったものとなる必要がある。神話PCは何かをするために「任務を携え」「指令を受け」ないようにしなければならない(ただし、大変な力を持った敵が瞬間的に強力な力を備えた場所にいるような場合は例外である)。例え支配者や強力な異次元の仲間であっても、神話キャラクターに声をかける際には悪くても同等な存在、可能な限り嘆願者として彼らに慈悲を乞う形としなければならない。
同様に、NPC達がこのような力ある位置にいる場合、彼らは些細な行為を頼むなどという無駄な時間をとってはならない。それは普通の低レベルの冒険者がすることだ。1レベル/第1階梯キャラクターであっても、尊敬されるだけの価値がある。計画した試練を無駄にしなければならないというわけではないが、PC達(そしてプレイヤー達)に、神話キャラクターの時間とエネルギーは価値があるものなのだと示さなければならない。
エンジェルやデーモンの生のままの力であれ王国や教会の政治的な力であれ、世界の本当の力は神話級の英雄の将来性を認めている。賢い人は、今はまだ階梯の低い英雄に礼儀正しくすることを知っている。将来、彼らは素晴らしい仲間か恐るべき敵のいずれかになるだろうから。
その一方で、神話パワーは人を遠ざける力だ。ごくわずかの人だけが持ち、多くの人はそれを脅威と見なし、友とは感じない。故に英雄に出会った人々は、彼らを崇拝し、恐れ、恨みさえするが、決して親しみや安らぎを抱くことはない。いくつかの点で神話キャラクターは究極の来訪者である。彼らは全く噛み合うことのない世界を救うのだから。
神話級のゲームの構造は「モノミス」の概念からとられたものだ。この概念はJoseph Campbellが著した本、The Hero with a Thousand Faces(訳注:邦訳は『千の顔を持つ英雄』、平田武靖・浅輪幸夫監訳、人文書院、2004、ISBN-13:978-4409590089)に掲載されている。この雛形は聖書からThe Lord of the Rings(訳注:邦訳は『指輪物語』、瀬田 貞二・田中 明子訳、評論社文庫、1992~)まで、現在および古来の神話的な物語で無数に見られるものだ。本や映画で一生懸命模範例を探す必要はない。至る所にある物語の構成を用いた物語や媒介を例示するのと同様に、ゲーム・マスターはより細かくモノミスを読むことで力を得る。
神話級の冒険は様々な方法で伝説的な力を得ることができる。それは神からの贈り物であったり、この世界に属さない古代魔法の影響によるものであったり、力に満たされた遠方の地を旅したことによるものであったりする。これらの主題は与えられたキャンペーンの神話パワーの源泉を表しており、どのように機能するかの一般的な道しるべを与えてくれる。神話物語を語るために主題1つに専念するキャンペーンもあれば、複数の主題を取り込んだものもある――しかし、複数の主題を使用する場合、GMは注意しなければならない。神話パワーの背後にある物語がごちゃごちゃとしたものになりかねないからだ。場合によっては、多様な主題を取り込むことは、主題を1つだけ扱うものよりもずっと劇的な感覚を与えてくれるだろう。
以下の主題は、神話級のルールをキャンペーンに導入する際にGMが世界に機能させることのできるほんの数例である。これらは一般に、どのような種類のゲームにも適用することができる。それぞれの主題には、以下の項目が記載されている。
規模:この神話要素がキャンペーンにどの程度の衝撃を与えるかを表している。これらの要素がゲームの傾向をどれだけ変えるかも示している。
昇華:PCがこの主題を用いて神話級の存在になる例をいくつか示している。
物語:この神話の主題がうまく機能する冒険とキャンペーンの種類を表している。
試練:この主題に関連する、PCが出会う可能性のある神話級の試練をいくつか掲載している。
終焉:キャンペーンが神話級の最高潮に至るいくつかのやり方を示している。
古代のアーティファクト、忘れ去られた呪文、幻想的な魔法による出来事が、PCに神話パワーを与えた。その起源にかかわらず、この力はまさに魔法の綴れ織り自身から引き出されたもので、特別な制約などはほとんどない。
規模:この力は特定のアイテムや出来事に基づくものなので、奇妙な魔法に焦点を当てたキャンペーンの規模は大掛かりなものにすることもできる。しかしこの力はアイテムないし出来事に関連していなければならない。もしかすると古代人は特定の印が現れると破れる、聖なる封印を作り出したのかもしれない。血のように赤い月が一週間表れたり、同時に空に隕石が3つ降り注ぐかもしれない。このような場合、神話ルールは舞台全体に衝撃を与える。しかしその直接の影響は、この力の期限によって制限されうるものだ。
昇華:噂では、一度読むと精神と肉体の内側深くに隠れている潜在力を解き放つ本があると言われている。古代の予言者がこの本に憑依し、英雄が本を読んだ時に神話パワーを与えるよう申し出る。しかしそれは、彼らがこの街を脅かすクリーチャーを打ち負かすならばの話だ。
長きにわたり忘れられていた谷を探索する内に、PC達は古代の呪文が刻まれた、奇妙な石製の記念碑に出会う。彼らは、これが過ぎ去った魔法の時代の神具であることを知り、そのとき神話パワーを授かる。不運にも、彼らはこれを見つけた唯一の存在ではなく、今やこの力は世界に解き放たれてしまっているのだ。
忘れられたダンジョンの奥深く、PC達は複雑な非魔法の鍵と、強力な秘術の鍵が無数にかけられ封印された部屋を発見する。PCは、大いなる宝物が約束されると信じてこの場所に導かれた。この扉の封印を解くと、秘術エネルギーの奔流が扉から放たれ、英雄達を打ち倒し神話パワーを注ぎ込む。英雄達がふらふらしている間に、クリーチャーが蝶番を壊すために先ほどの力を扉に叩きつけ、逃亡する。PCが中に入ると守護精霊が彼らを待ち構えている。彼らが解き放った化け物を再び捕らえるよう、願うために。
PC達は、古い筆記体で書かれた記号が刻まれた、曲がった金属の欠片をPC達全員が継承していることを知る。その欠片をつなぎ合わせると、それは円形となる。円が完成すると、PC達は彼らが継承したものによるエネルギーの鼓動を互いに感じる。
物語:この主題を用いた冒険は、常に力の起源と関わるものだ。それはそれを装備している者によるものかもしれないし、彼らから力を奪い去った存在を探すものかもしれない。PC達はこの困難に巻き込まれ、この力が悪の手に落ちないよう阻止しなければならない……可能であれば、彼ら自身の手にそれがあることに気付く可能性さえある。
離れた次元界からもたらされた古代のアーティファクトとアイテムは、現在存在する場所に滅多に関わりのない秘密や能力を持ち込んでいる。このようなアイテムに興味を持つことは危険なことであり、手にしたものは予想もできない形で永遠に変わってしまうだろう。これらのアイテムはドラゴンやリッチなど、強大で長く生きたクリーチャーのコレクションの中で見つかることもあるし、よく知られた世界から最も離れた地域に隠されているかもしれない。これらに興味を持つことでキャラクターは変わるだけでなく、解放された力が同じ起源につながった恐るべき存在の道しるべとなる。
これらのアイテムはセットの一部であったり、より大きなアイテムの欠片であることもある。無数の欠片を集めることがPC達の力を高め、彼らの周りに存在する神話クリーチャーの世界に対する洞察を深めていくだろう。しかしこのようなアイテムは用心深く守護されており、より大きな力を手にするために期待している以上のものを、PC達は支払うことになるかもしれない。
試練:PC達は彼らが持つものと同じ力につながった敵や、彼らからそのアイテムを奪うために探している敵と直面することになる。PC達がある事件により力を得た場合、ひょっとしたらこうやって力を得たのはPC達だけではないかもしれない。この力がアーティファクトから生じたものならば、敵に力を与える他の神具があるかもしれない。いずれにせよ、扱う力を理解していないだけでなく、何を持っているともしれない敵(おそらくPC達よりうまく力を扱うだろう)に立ち向かわなければならない。
終焉:英雄達は彼らの前に表れる試練となる大いなる存在、古代の神話クリーチャーと戦う。それはPC達を滅ぼそうとするだけでなく、さらなる力を手に入れようとする――PC達を引き裂いてこの力を探そうとするのだ。この敵はPCが持つ力を基にした計画を持つ。力全てを手に入れようとしているのかもしれないし、世界からこの力という脅威を取り去ろうとしているのかもしれない。
英雄達が荷の勝ちすぎる大きな任務を達成する。その後、神話の世界の本質がその成功に屈服し、英雄達を満たす。これは次元界を打ち砕くアーティファクトの破壊や伝説的なモンスターの討伐、奇妙な場所に至る命をかけた旅での生存などが挙げられるだろう。
規模:このキャンペーンの規模は非常に様々なものとなり得る。英雄達に神話パワーを与える経験は、キャンペーン世界のどこでも起こり得る(しかし、世界中でこのような瞬間が起こることは非常に珍しい)。この経験に関係する出来事は、英雄達を遠い土地に送るだろう――ひょっとしたら、英雄達は邪悪なアーティファクトを破壊したことで神話パワーを得て、同じようなアーティファクトが世界中のダンジョンに隠されていることを知るかもしれない。
昇華:NPCがこの世界を腐敗させつつあるアーティファクトの破壊を願う。命を賭した冒険の後、PC達はついになんとかその物体を破壊する。しかしそれによりエネルギーの波動が解き放たれ、PC達は神話パワーを与えられた。
谷全体を破壊しようとするエインシャント・ドラゴンの報告が、英雄達の耳に届く。この獣と戦ってPC達は自分達には不釣り合いなものだと気づくが、智恵と幸運により、このドラゴンを何とか倒す。死の淵で竜の血はPC達を洗い流し、彼らに神話パワーを注ぎ込む。
陸路を移動する中で、英雄達は自然の嵐のために道に迷う。数時間の間、彼らは豪雨にさらされ、不自然なほど濃い霧に包まれて散り散りになってしまう。嵐が過ぎ去ると、英雄達は自分たちが古代の魔力の施された谷の縁にいることに気付く――多くの物語で語られ、ほとんどのものが実在を信じていなかった場所だ。
物語:どのような冒険であれ、伝説的な起源のパーティに訴えかけることができる。神話パワーの本質は、アーティファクトの欠片を取り戻したり神話モンスターの一団の力の源を追跡して捕獲したりといった、特定の筋書きを引き出してくれる。英雄達はこの経験が自分たちに力を与えてくれるなら、同じことが他人、とりわけ邪悪あるいは混沌とした動機を持つものにも起きたかもしれないと気付くだろう。英雄達の肉体に宿る神話パワーはこの力の源を持つものと同調し、主要なキャンペーン中の物語で、英雄達はこの源を追跡し、彼らを邪悪な道具にしようとする計画から自らを守る羽目になる。
試練:世界にある多くの異なる経験、物体、場所が神話パワーの源になるため、神話級の悪役や神話モンスターは頻繁に登場しうる。PC達が力を得るためにアーティファクトを破壊し古代の獣を殺すなら、その行いの報復をするためPC達を探すものも出てくるだろう。
終焉:旅の終わりに、英雄達は完全な円を完成させる。ひょっとしたら、神話パワーを最初に得た場所に戻ることになるかもしれない。彼らの旅の原因となった悪役がPC達に対峙するかもしれない。もしかすると、対決するのは彼らの力の源そのものかもしれない。最終的に、彼らは自分たちの伝説が終焉したことを感じることになる。例え、彼らが神話パワーを保持したままであったとしても。
神話パワーは、神話クリーチャーや神話キャラクターがありふれた存在だった、失われた時代からやってきた。この力はこの世界からは失われたが、ある時、正しい時が訪れると、神話パワーはわずかな期間帰ってくる。
規模:この主題では神話パワーは珍しく、世界から隠されたごくわずかな人と、その人物を探して手に入れようとする人にのみ保持される。規模を大きくするためには、神話パワーが世界に帰ってきて、大いなる召喚の儀によって継承するなどとするのがいいかもしれない。
昇華:天体が、世界に神話パワーが帰ってくることを示す。もしかすると偶然に、PC達はこの凶兆の時に適切な場所に立っており、しかしPC達だけではない――同じ時刻、異なる場所で力を得た者もいた。
冒険の終わりに、PC達は自分たちの出生が過去百年の間慎重に準備されていたことを知る。長い間失われたと考えられていた、神話の血統を復元しようという計画だったのだ。計画に気付いたことは、彼らの潜在力を解き放つことを意味した。
伝説の失われた都市を探索し、PC達は自分たちの住民が現在の一族よりも遥かに強い力を持つことを知る。この魔法が宿る理由は、1,000年に1回だけ催される特別な儀式である。しかしそれにはひどい犠牲と大きな危険にさらされることになる。次の儀式がすぐにやってくる。PC達がこの危険な道を達成することを選ぶなら、神話級に至る機会が与えられる。
物語:これらの冒険では、神話パワー自身が物語である。神話パワーにはたくさんの謎が秘められており、神話パワーを知るものは世界にほとんどいない。神話パワーを持つものにどのような悲劇が訪れるか知るものについても同様だ。PC達は世界中を旅し、神話パワーの起源に関する知識やその崩壊が意味すること、どうやって扱えば良いかを探し求める。もちろん、この力について調べる別の存在もいるだろう。彼らは悪辣な目的のためにこの力を使用しようと企んでいる。
試練:PC達は力の源から神話パワーを得た唯一の存在というわけではない。ひょっとしたら血統に他の存在がいるかもしれないし、そのうちに眠る力を覚醒させる方法を発見した他のクリーチャーがいるかもしれない。しかし何より奇妙なのは、失われた時代からやってきたクリーチャーだ。彼らは自分たちが正しいと思える姿に世界を戻そうとする――それは神話パワーについてかもしれないし、世界全体についてかもしれない。
終焉:事件が終焉に近づくと、PC達はこの力を世界に残すかどうかを選択しなければならない。自分達にこの力を残すことは、すなわち他の悪人がこの力を手にする可能性があるということだ。そうなると英雄達はその神話的な性質を、いつまでも護り続ける必要があるだろう。あるいは、この力を失わせることもできる。例え、神話級の能力を使用しなければ追い払えないかもしれない他の脅威があることを知っているとしても、である。あるいは、この問題に選択肢がない場合もあり得る。この力は帰ってしまい、PC達が取り扱う方法を探さなければならない。いずれにせよ、この力を悪用しようと調査する悪役達を、例えどのような対価を支払ったとしても、止めなければならない。
他の次元界を旅し、PC達は神話パワーを獲得する。この力はPC達がこの次元界にいる間のみ持続するものかもしれないし、訪れたが最後、PC達は永続的に変わってしまうのかもしれない。
規模:たった1つの存在する次元界のみを当てはめることもできるだろう。英雄達が立ち去るとこの力は即座に失われ、戻ってくるとすぐに復活するというような。何か神話的なつながりのある複数の次元界に関するキャンペーンを作ることで、規模を拡大することもできる。あるいは訪れた以後も力は持続するが時が経つと失われてしまうため、神話の泉から水を飲み、その力を復活させるために英雄達がこの旅に戻ってくる必要があるということもあり得る。
昇華:強力なウィザードの仲間が国を救う重要な儀式を完成させる前に、奇妙なクリーチャーが近くの鏡から足を踏み出しウィザードをさらってしまった。この鏡のポータルはまだ開かれており、PC達は追跡することができる。未知の次元界に姿を現すと、この次元界の物理特性は出生次元界とは似ても似つかないものだった。その結果、PC達は今や彼らが一度も考えることもできなかった、広範な能力を授かっている。
神々の使者がPC達の前に現れ、神でさえ足を踏み入れるのを恐れる次元界に神具を運んで欲しいと頼まれる。神具はPC達に、恐ろしい次元界に入るための祝福と昇華を通して防護を与えてくれる。
認めたこともない大逆の罪のためにPC達は法廷で有罪となった。彼らは戻る価値があると認められるまで、“カラーズ・オヴ・ジャッジメント”を着けられて数限りない次元界を彷徨う刑罰を下された。今や彼らは次元界から次元界へと飛び回り、出身国の脅威を打ち負かそうとしている。首につけたカラーズ・オヴ・ジャッジメントはPC達に神話パワーを与え、現在の次元界での仕事が終わると次の労役に向けてPC達を瞬間移動させる。うまくいけば、最後には彼らを罠に嵌めた相手と対峙することになるだろう。
物語:物質界と同じように振る舞う――重力や呼吸向けの大気などがある――次元界もあるが、本当に異質な環境を持つ次元界もある。後者のいくつかは入ってきた者が生き残れるように力を与える。この力は訪問者がその次元界にいる間だけ持続するかもしれないし、永続的に続くかもしれない。(全ての生命体に存在する潜在的な能力が引き金となってこの強化が生じるのだと信じる者もいる。)他の例では、特殊なアイテムや儀式が、特定の次元界を移動する間にこれらの力を授けてくれる。
試練:次元界は予測のできない風変わりな存在や非現実的なモンスターに溢れている。これらのクリーチャーの多くは神話級の存在でなければ全く対処できないほどに強力で、PC達以上の存在となり得る。その力にも関わらず、PC達は大天使やデーモンの皇子の面前で軽快に歩みを進めなければならない。最終的には、彼らはそのような存在と対峙しなければならないだろう。例えPC達が、最初はその軍隊や他の下級の代理人に挑んでいたとしても。
終焉:旅の終わりに、英雄達は故郷に帰る場所を守る門番の類と戦わなければならない。このクリーチャーは文字通り彼らの旅を妨害しているかもしれないし、英雄達がありふれた生活に戻る前に倒さなければならない恐るべき脅威なのかもしれない。例えPC達が偶然次元界を旅することになったとしても、普通の生活に戻る道に立ちはだかる、信じられないほど強力な力が存在していなければならない。
一柱の神が英雄達に神話パワーを授ける。それは彼らが達成した偉業に応えてのものかもしれないし、まだ行っていない偉業を見越したものかもしれない。この主題において神話パワーは神々に由来するものであり、神の代理人だけがこの力を手にすることができる。
規模:英雄達は特定の神格から神話パワーを授かるため、その活動は神格が一般に信仰されていたり信仰が不足している場所で発生するかもしれない。神が正義のためだけを考えて国を守るなど、英雄達はその神格の推進派として働くことになるかもしれない。彼らは使者となり、神が知らない遠くの国々を旅するかもしれない。キャンペーンは英雄の奉じた神の信者が国教によって厳重に違法なものとされた国を舞台とすることさえあり得る。
いずれにせよ、規模は神々の望みに応じて決定される。簡単に取り除けるように、彼らはできることをして、それを彼らに与えるのだ。(あるいは、ひょっとすると神話パワーを授かっただけで、それを取り除くことができないのかもしれない。昇華した定命の存在には、危険な課題となるだろう。)
昇華:PC達は実際に神の子だ。彼らは定命のものとの間に生まれた。決められた時が訪れるまで、すなわち神からの授かり物が顕現するまでの間、このことは知るよしもなかった。このきっかけを用いて、全てのPCが親族であることもあり得るだろう。もしかすると、初めはこのことに気付いていないかもしれない(それぞれ、定命の代理親によって育てられたのだ)。
特に聖地で起きた忌まわしい戦いの最中、英雄達の一人が死んだ。その仲間が死から呼び戻すために蘇生魔法を使用した時、この呪文は全ての英雄に注がれる目映いオーラを放ち、神話パワーと共に彼らは新たに蘇った。
信仰の地における防戦もしくは信仰の地を取り戻すため、英雄達は勇敢に戦う。最後の敵を倒し聖地が再度浄化されると、英雄達は神の感謝の念に満たされ、神話パワーにより祝福された。
物語:この主題において、神々は世界でずっと能動的な役割を果たす。彼らは単に直接働きかけを行うことができるかもしれない。そしてPC達のような英雄に願いを達成させる必要がある。あるいは神々でさえ対峙するには多すぎる脅威が存在するため、他の前線で戦うための戦士達が必要なのだ。
同じ神にその身を捧げた複数のメンバーで構成された一団が、この種の物語に自然と導かれていく。この英雄達は時折、夢や前兆、お告げといった形でその守護者から神聖な連絡を受け取る。彼らは神格に関わりのない冒険に行くこともできるが、キャンペーン全体の物語はその進行に導かれたものであり、その守護者の敵との戦いで最高潮を迎える。
各々のメンバーが異なる信仰を持つ一団においては、PC達に神話パワーを与える謎の後援者の正体を知ることを物語の中心にすることもできるだろう。夢と前兆が依然として冒険のきっかけになるだろう。しかしそれらは曖昧でぼやけたものだ。最終的に、英雄達はその力が特定の神格から与えられたもの、あるいは特定の手強い敵に対して手を組んだ神格連合から与えられたものだと気付くかもしれない。
試練:英雄達を妨害するため、敵となる神々は力を自らの英雄達に注ぎ込み、神話モンスターを生み出すことができる。全ての冒険で神話級の試練が含まれているわけではないが、主要な敵や最高の試練は自然と神話級となる上、PC達の守護者らと真っ向から対峙するものとならねばならない。
終焉:英雄達の旅の最終段階では、守護者たる神格の目的を軸としたものとしなければならない。対立する神格はほとんどいつでもこの目的を妨害し、PC達の失敗を目の当たりにするまで止めることはないだろう。PC達はこの対立する神格の強力な代理人、あるいは神格自身の化身の類と対決しなければならないかもしれない。最高の力を持つものとして、PC達はこの対立する神格の本拠に赴き、怒れる神と直接戦う使命を受けるかもしれない。英雄達はそのような遭遇で生き残れないかもしれないが、守護者の支援により目標を達成できるかもしれない――その勇敢な行為は時を超えて語り継がれる宗教談話の1つとなるだろう。
PC達は他の神話クリーチャーから授り神話パワーを得る。それは強制かもしれないし、偶然かもしれない。あるいは精緻なる儀式や祭典を通してかも知れない。この主題では、神話パワーの総量は有限である。それ以上の力を得るには、他人から奪わなければならない。
規模:この世界の神話パワーの総量は限られている。しかし実際の総量はキャンペーンの必要に応じて様々だ。世界中に点在する神話存在が多くいるかもしれない。表に現れることのない神話存在もいれば、公然のものもいる。あるいは世界にそのような人々はわずかしかいないものの、その一つ一つが軍隊一つに相当する。いずれにせよ、この力を手にし扱えるだけで賢くも満足する者がいるにもかかわらず、誰もがいつでも欲しがる力を持つものがいる。更なる力を探すかどうか、彼らを殺すためにやってくる人をどう扱うかにかかわらず、PC達はこの力をどう御するかを決めなければならない。
昇華:英雄達がある強力な敵を討伐した後、稲妻の嵐がその身体から飛び出し、PC達に打ち寄せて神話パワーを与える。PC達は更なる階梯を得る方法を即座に理解する。他の神話級の敵を撃破し、その力を回収するのだ。
PC達は寂しい山頂に招来される。そこには年老いたモンクが待っていた。老衰で死ぬ前に、そのモンクは何年もの間保持していた神話パワーをPC達に与える。彼らこそ、自分の遺産を受け継ぎ守るにふさわしい人物である、と。
謎めいた教団から来た奇妙な使者がPCのもとに訪れ、メンバーに加わらないかと誘いをかける。彼らは奇妙な儀式をとり行い、縛られた虜囚から盗んだ神話パワーを注ぎ込もうとしている。PC達はすぐに、所属した教団がその仇敵と長年に渡り戦っている事を知る。いずれの組織も、この古来の儀式を用いることで他人から神話パワーを盗むというゲームを何百年もの長きにわたり続けている。
いくつかの偶発的な前兆の後、PC達は神話パワーを持って目覚める。PC達はこの強力な力は自分たちが隠された世界の一部となった証だと気付く。ここではPC達の持つ力を求めて、神話的存在がPC達を狩ろうとする。友好的な神話キャラクターと偶然出会うことで、PC達は自分たちに降りかかった事態について理解する。
物語:PC達はこの主題においていつもと同じ冒険をたくさんこなすことになるかもしれない。しかし彼らが出会うことになる神話クリーチャーや神話キャラクターとの遭遇は危機的状況を孕んだ困難なものだ。敵はその力をかすめ取る手段を探しているかもしれないし、どうやってその力が使用されるのかを説明する助けになるかもしれない。PC達はその力を道徳的に受け入れられていいものかを決定しなければならないだろう。神話パワーを得るにはその力を持つものを殺す必要があるならば、その力自身は一種の呪いである。PC達の人生を終わらせ、その神話級の精気を盗むために、全ての曲がり角で敵が待っているかもしれないのだから。
試練:遭遇に成功するたびにPC達はその力を高めるのだから、神話級の敵はこの主題では比較的珍しい存在となるだろう。階梯を得ると、PC達はより下位の存在を殺しても、神話パワーを高めるには至らないことに気付くかもしれない。あるいは、階梯の最高位に至るには、非常に多くの神話クリーチャーを殺し、全ての力を一つの肉体に集めることだけが唯一の道なのかもしれない。PC達は他の神話級の敵に絶えず気を配らなければならないだろう。その敵は自分より高位のものかもしれないし、下位のものかもしれない。
終焉:最終的に、PC達は第10階梯に到達し、それ以上得るものが無くなる。この頂きで、PC達は自分が獲得したものを奪おうとする全ての神話級の脅威から、自らを守らなければならない。また、力の高みに至ったものは、さらなる高みに進む唯一の道を見出すかもしれない――神格や膨大な力を持つ他の存在から力を奪い取るのだ。あるいは、世界中の全ての神話パワーを手に入れたものを待つ、大いなる報酬が存在するのかもしれない。
神話級の遭遇をデザインすることは、多くの点で他の冒険における遭遇をデザインすることに似ている。プレイの間、PC達は様々な試練に直面する。モンスター、NPC、罠、などなど。神話級の冒険で異なる点は、その試練が遥かに危険なものだということだ。プレイヤー達に緊張を与えることは重要だが、直面する遭遇は神話級のゲーム以外で通常遭遇しうるものよりも遥かに危険なものだ。このほとんどが遭遇のデザインに表れる。PC達によって大きく変化させることもできるし、どのような試練を与えたいかによって変わってくる。最も基本的な言葉でいえば、神話級ルールは以下の2つの方法のいずれかで使用することができる。通常のPC達に試練を与えるか、神話級のPC達に試練を与えるか、だ。
通常のPC用の遭遇:PCが神話級でない場合、これらのルールは予想外の自然への挑戦を提示する目的で使用することができる。神話クリーチャーや神話級の悪役は通常のもの達よりもずっと強力であり、それ故に遭遇はとりわけ危険なものとなる。脅威度とレベルの調整サイドバーを参照のこと。
通常のPC達はこの調整後の脅威度を元に経験点と宝物を獲得するようにしなければならない。これによりPC達は元の脅威度であれば通常は格下のクリーチャーと遭遇することになるのだが、その奇妙な能力は本当の脅威となるだろう。このような遭遇は少なくとも、PCの平均パーティ・レベル(APL)において危険なものでなければならない。
例えば、6レベルPC4名の一団がアンデッドに満たされた古代の墓所を探索している。彼らは通常のアンデッドの敵に数多く出会うが、遥かに邪悪な存在がこの中に潜んでいることに気付き始める。この存在は何百年も前に神聖なる組織によって封印されたのだった。最後の部屋を解き放つと、PC達は闇の魔法によってぱちぱちと音を立てる神話級ミイラ2体と出会う。この一対の神話級ミイラは脅威度8に調整されており、6レベルPCにとって命を賭けた脅威となっている。
神話級PC用の遭遇:神話級の冒険は、このレベルのキャラクターに通常期待されたものよりも遥かに危険なものとして準備されている(脅威度とレベルの調整サイドバーを参照)。これらのキャラクターに試練を与えるために遭遇をデザインする際、大ざっぱに言って遭遇の1/3に調整されたAPLを用い、1/3にキャラクター達の元々のAPLを用い、残りにその2倍のものを充てるのがよいだろう。
もちろん、ここの遭遇は通常その重みが様々に変わりうる(歯ごたえのある遭遇と簡単な遭遇の比較のように)。神話級の敵に遭遇した際、その神話ランクの半分を元の脅威度に加え、その敵の(上述した)調整された脅威度として用いること。
例えば、12レベル、第6階梯の神話級PC4人の一団に対する試練をデザインする場合を考える。遭遇の約1/3は脅威度12、1/3は脅威度15、残りは脅威度13か14にするのがよいだろう。遭遇の全てはずっと簡単なものであり(神話パワーを用いれば優位に立てるように)、別のものは平均的な難易度で、また別のものは真の意味で限界に至らせるようなものとなる。歯ごたえのある遭遇は神話級の敵に対するものが良いだろう。PC達は類似の力を持つ敵と相対することを余儀なくされるのだ。
合計経験点 |
個人経験点 | |||
---|---|---|---|---|
1~3人 |
4~5人 |
6人以上 | ||
26 |
2,457,600 |
820,000 |
614,400 |
409,600 |
27 |
3,276,800 |
1,092,000 |
819,200 |
546,000 |
28 |
4,915,200 |
1,640,000 |
1,228,800 |
819,200 |
29 |
6,553,600 |
2,184,000 |
1,638,400 |
1,092,000 |
30 |
9,830,400 |
3,280,000 |
2,457,600 |
1,638,400 |
ゆっくり |
標準 |
速い | |
---|---|---|---|
21 |
55,000gp |
84,000gp |
125,000gp |
22 |
69,000gp |
104,000gp |
155,000gp |
23 |
85,000gp |
127,000gp |
190,000gp |
24 |
102,000gp |
155,000gp |
230,000gp |
25 |
125,000gp |
185,000gp |
275,000gp |
26 |
150,000gp |
220,000gp |
330,000gp |
27 |
175,000gp |
260,000gp |
390,000gp |
28 |
205,000gp |
305,000gp |
460,000gp |
29 |
240,000gp |
360,000gp |
540,000gp |
30 |
280,000gp |
420,000gp |
630,000gp |
神話キャラクターは出会った遭遇の脅威度全体よりも高い値に基づいて、経験点と宝物を獲得するべきだ。一般に、これにより神話キャラクターは通常のキャラクターと比べてより速い割合で経験点と宝物を獲得することになるだろう。その結果、GMはこのようなキャラクターの経験点や宝物を、“標準”あるいは“ゆっくり”を用いようという衝動に駆られるだろう。神話キャラクターは次のキャラクター・レベルに到達するのにわずかな遭遇としか出会わなくても良いが、その経験点と宝物の総量は、同じレベルの非神話キャラクターに近しいところに収まるべきだということに注意すること。
Core Rulebookには脅威度25を超える遭遇による経験点とAPL20を超える遭遇に対する宝物が掲載されていない。しかし神話キャラクターそのような遭遇に出会い、こういった報酬を得る可能性がある。高い脅威度における報酬経験点および高い脅威度における遭遇毎の宝物表は、30までの脅威度やAPLにおける経験点や宝物がまとめられている。
神話階梯を得ることで、キャラクターが出会う脅威や得られる宝物を決定する際に用いる、有効レベルが変化する。同様に、神話階梯や神話ランクを持つことで、英雄達が相対せねばならない敵の有効脅威度も変化する。
キャラクターのレベルを調整するために、階梯の半分(最低1)を合計キャラクター・レベルに加える。そのため、10レベル/第5階梯キャラクターは、試練や報酬を決定する際に実質的に12レベルのキャラクターとなる。また、20レベル/第10階梯キャラクターは実質的に25レベルのキャラクターとなる。
敵の脅威度を調整するために、階梯やランクの半分(最低1)をその脅威度に加える。そのため、第2ランクのミノタウロスは実質的に脅威度6のモンスターとなる。また、第6階梯のチャンピオン・ピット・フィーンドは脅威度23となる。神話モンスターにおいては、既に計算済みである。
神話級の英雄の伝承は狂気じみた冒険、危険な敵、奇妙な力に満ちている。ほとんどの場合、これらの旅はこれらの一瞬一瞬によって定義されている。こういった試練は物語の最高潮であり、まずい行動や犠牲の大きい失敗が試練全てを失敗させることもあるかもしれない。ゲーム上、これらの出来事は神話キャラクターの旅の舞台を示している。試練をプロット上の重要な地点と考えてみよう。これらは本質的に、キャラクターの伝説に結びついている。
神話キャラクターは2つの方法で成長する。彼らは経験点を獲得することでキャラクター・レベルを得るとともに、試練を何度かこなすことで階梯を得る(表:階梯毎の神話級試練を参照)。これらの試練は神話級の英雄的行為を示す本当の物語であり、冒険全体やキャンペーンの一幕を締めくくるものである。その中でPC達は恐るべき危険を克服したり、劇的な勝利を手にしたりする。試練はGMの創造力の限りどのようなものでも構わない。しかし大きな目的が完遂するまでは達成できない――モンスターを倒したり、街を救ったり、アーティファクトを取り戻したりなどだ。そのため、冒険全体は試練となりうるが、英雄がそれを完遂するまでは成長したと扱わない。
これらの試練を達成する比率によって、PC達がどれほど早く神話階梯を得るかが決まってくる。指針としては、PC達は2キャラクター・レベルを得るたびに1階梯を得るのに必要なだけの試練に直面する、というのがいいだろう。これにより、キャラクターの神話階梯はおおまかにキャラクターの総合レベルの半分に等しくなる(もちろん、GMはキャンペーンに合うようにこの比率を変更してもよい)。つまり、PC達が1レベルの時点で最初の神話階梯を得た場合、おそらく4レベルに到達する時点までに1回だけ大きな試練に直面するという形が良いだろう。これにより第2階梯に至るというわけだ。逆に、より高いレベルのキャラクターが、その職歴の後になって神話パワーを得た場合、成功して階梯を早く得るために複数の試練に出会うこともあり得る。あるいは平均に近づくよう、開始時に階梯を多く得てから始めることもありえるだろう。表1-2には、キャラクターが新しい階梯を得るために試練をいくつ達成せねばならないかが示されている。しかしこの数はGMの決定や物語の必要性にしたがって変化しうる。
GMは代わりに、PCが試練を達成するたびに階梯を得るとしてもよいだろう。この場合、各試練ははるかに珍しいものとなる。GMは必要な試練の数を2倍にすることもでき、そうすれば試練はずっと一般的なものになる。いずれにせよ、階梯を上げる比率は通常起きるものとはずっと異なる感覚を抱かせるものでなければならない。
試練をデザインする際、GMは以下の点を念頭に置いておかねばならない。試練は神話キャラクターの伝説において重要な物語を表している。特にひどい戦闘や危険な罠に関する逸話のように、試練は複数の危険な遭遇や神話級の敵、想像できないほどの困難に関する伝説の物語である。試練は冒険全体、あるいは冒険中の短編における最高潮でなければならない。
加えて、試練それぞれには、神話級の冒険の要素で言及した要素から少なくとも3つを含んでいるべきだ。これらの要素は、試練が神話級であり旅の主要な部分に近づいていることをプレイヤーに理解させる手助けとなる。試練が間近に迫っていることを直接伝える必要はないのである。
以下の試練は神話級キャラクターが階梯を得るために出会わねばならない、様々な試練のアイデアを提供してくれるだろう。これらをそのまま使うこともできるし、自分自身のデザインに洞察を与えるために使用することもできる。神話級の起源を示唆するものもあるし、他の神話キャラクターのために改変されることもある。これらの中には規模が大きいものもあるし、小さなキャンペーン全体を表しうるものもあることに注意すること。GMが望むなら、このような長い出来事はいくつもの試練として扱われることにしても良い。
貴族の精神崩壊:偉大なる王もしくは皇帝が奇妙な狂気に陥る。それは予期せぬ病気によるものかもしれないし、悪者の魔法による堕落なのかもしれない。その後に続く熱狂の中で、この為政者は今まで王家を強く支援し、一般の人々に恩恵を授けてきた主要な宗教の信者の撲滅を宣言する。王家と宗教の間に徹底的な戦争が勃発することを望まない神話キャラクター達は、君主の蝕まれた精神を癒やす術を探すよう守護者に請われる。
奈落の寄生生物:複数の神話呪文による強力な相互作用が強力なデーモンの身体を打ち砕く。しかしその場所では死んでも生きてもいない復讐心に燃える魂が生み出された。この魂は他人に憑依し、宿主にデーモンの力を与えることができる。この力を使用することで、この魂は邪悪な仲間を集め力を得ることができる。デーモンと戦う天界の存在がPC達を呼び出し、この邪悪な存在を止めるよう命じる。彼らは犠牲者から犠牲者へと渡り歩くデーモンの魂を追跡し、デーモンの影を全て滅ぼさなければならない。
余波:王国は侵略軍との厳しい戦いにより荒廃した。王国軍はこの犠牲多く実りの少ない勝利の影響を受けている――この地域は平定したが破壊されている。PC達はこの地にかつての栄光を取り戻す手助けをしなければならない。残存する敵を根絶し、被害を受けた人々に手を貸し、都市を復興し、近隣の国々から援助を得るために取引を交わし、つけあがった敵どもによる攻撃から王国を守らねばならない。
最初の一歩:PC達は普通の冒険者だ。彼らはひどい敵に苦しめられていた奇妙なクリーチャーを助けた。不運なことに、PC達がこの敵を追い払った時、致命傷を負ったこのクリーチャーは息を引き取る。死にゆく中で、このクリーチャーは英雄達に神話パワーを与え、自分が完遂することのできなかった試練を彼らに託す。新しい能力を手に、PC達はこの試練を終え、堕落した支援者に報復し、今まで自分たちが知っていたよりも広い、挑戦しがいのある世界と敵に向けて最初の一歩を踏み出す。
後に続くもののために:闇の神格や宇宙より来る力によりもたらされる、来る黙示録の前から、PC達は英雄だった。PC達が大事件を止めねばならないキャンペーンとは異なり、この試練ではPC達は来る災害に逆らう望みはない。その代わりに、PC達は神話パワーを得、将来英雄達が世界を救うための基盤を作り出さねばならない。この冒険群において、PC達は自分の神話パワーの知識や破片を含む、秘密の倉庫を作り出すことになるだろう。世界中にある全く異なる集団との深い関係を構築する試みの傍ら、いつの日か生まれ、PC達自身では救うことのできないこの世界を救う運命に追いやられる英雄達の足場固めをすることになる。
奈落へ:PC達は奈落界アビスで試練に挑む。混沌にして悪の領域の無限の階層を通り抜け、彼らは辛い遠征に耐えなければならない。デーモンの奴隷に売り飛ばされた重要な人物を救出、誤ってアビスに送られた魂の回収、特に破壊的なデーモン・ロードの討伐といった使命を受ける。理由がなんであれ、冒険者たちはその新しい力を極限まで費やす試練に直面することになる。
失われた魂:死者の魂は最後の到達点には至らず、待機状態のまま囚われている。PC達は自然の摂理を妨げるほどに強力な存在を見つけなければならない――そして、その暗い目的も。まずいことに、死を妨げられた魂は捻れ、恐ろしい姿に変わろうとしている。それは不安定な堕落の窪地であり、世界の新たな脅威になるだろう。PC達はどうにかしてこの謎を解き、全ての背後にいる隠れた悪役を打ち倒さねばならない。
多次元宇宙を映す鏡:秘術的な地震のような、魔法的な事件が突如として起き、並行世界の間にある障壁が砕かれる。各領域の神の力は互いを脅威と見なし、昇華させた英雄を通して自分の世界の紛い物である敵を放逐する術を探す。PC達はこの世界にある神々のパンテオンの代理として選ばれ、敵を探すことになる。この敵の中には、不気味なほど自分達に似ているものがいるかもしれない。GMはプレイヤーが敵を支配するか、それともこの宇宙的な戦いを食い止めるために互いをつなぐ努力をするため、彼らを仲間にすることを選択するよう、プレイヤーに提案しても良い。
大いなる彼方の武道会:PC達は囚われ大いなる秘術を受け、強力な次元界の存在の手慰みとして、伝説のクリーチャーとの戦いに興じる。この競技における試合は前の試合よりもさらに危険なものになっていき、トーナメントを生き残ることができるのが1チームだけであることが次第にはっきりしてくる。PC達が勝てば、大いなる恩恵が与えられるかもしれない。だから現状から逃げ出す機会がある時には、続けるかどうかを選択しなければならない。
贖い:堕天使やアンティパラディンのような、かつての女神の強力な信徒を追跡して、PC達はこの敵と争うのではなく、この敵が光の側に戻る望みを持って反抗した理由を探すために神話パワーを使用する。あるいはPC達は、増幅する悪意によって汚染された神具を浄化しなければならない。この汚染はあまりにも深く染みこんでおり、PC達は最も強力な神話パワーを備えた英雄達のみが到達できるという、遠く離れた高名な地へと旅立たなければならない。
不屈の復讐:かつて休眠や石化、永続的な魔法の眠りの中へと封印した竜や巨人のような、伝説の戦士や強力なモンスターが帰ってくる。自分のいた世界が過去のものとなり、家族や同族が全員、遠い昔に英雄達の手によって去ってしまったのだと知り、その心は狂気に堕してしまう。このクリーチャーはかつての敵の子孫、あるいは世界全てに復讐を誓い、激しい怒りのなかで虐殺を繰り返す。英雄達はこの復讐者の狂気と苦しみの魂を休息させる術を見つけなければならない。
疫病による淘汰:珍しい病気が偉大なる種族を苦しめる。巨人、竜、来訪者でさえこの衰弱させる疫病の犠牲者となりうる。感染した場所の最長老が冒険者にこの恐ろしい疫病を食い止めるよう嘆願する。珍しい素材を探したり回復薬を調合するため、PC達が世界から遠ざけられた場所(世界の外であることさえある)に向かうこともあるだろう。逆に善悪、来訪者や竜の境界なく病気の影響範囲が広がり、PC達は治療方法を探す傍ら、エンジェルとデヴィル、クロマティック・ドラゴン種とメタリック・ドラゴン種との間を仲介しなければならないかもしれない。
授けの雨:誰も知ることのできない犯罪により裁かれた神格をばらばらにした肉体が、国中に生臭い雨となって降り注ぐ。最も集中した場所には、奇妙で面倒な効果が表れる。このような場所の近くにいたPCは神話パワーを得る。神の肉に引っ張られたように他のこのような地から引き寄せられた英雄達は、この嵐によって引き起こされた変化に対処しなければならない。英雄達のように奇妙な新能力を得たモンスターを討伐し、地中深くや山の最高峰に隠された神の肉の塊を捕らえ、このような神の祝福を得た事で戦争へと踏み出してしまった王国に平和を取り戻さねばならない。
古き守り:PC達は年老いた英雄の一団から、神聖で重大な命令と共に大いなる責務を継承する。それは多次元宇宙の裂け目の守護かもしれないし、恐ろしいリッチや古き神の牢獄を受け持つことかもしれない。あるいは秘術魔法の最初の教えや聖なる戦闘スタイルを保存することかもしれない。年老いた守護者はPCを代理に任命し、彼らに他の人が神話パワーを行使できるかを知るための神聖な試練を課し、偉大なる熟練者に後を引き継ぐ。あるいはPC達に新しい守護者になることのできる機会を与える。後者の場合、古き英雄達はPC達に試練を与える。この試練を達成すれば、PC達は退役する守護者を代替するのに必要な段階にまで神話パワーを高めることになるだろう。ひょっとしたらPC達は、冒険を経験するまで、この重大な役割に向くか吟味されているのだと言うことを気付きさえしないかもしれない。
神に挑むために:邪悪な神格とその軍勢が、定命のものの世界にその極限の力を行使しようとしている。神々の協定に従いこの侵略を食い止めようとする他の神々は、キャラクター達に侵略者と争うという使命を与える。PC達はこの神格の軍勢の陰謀を妨害し、出世していかねばならない。一度に一つの鎖の輪を砕き、最終的にこの野心的な神と相対するまで。
軍を率いて:戦火が国中で猛威を振るう。種の異なる人型生物やモンスター種が互いに争う。彼ら全てを危険にさらすであろう、脅威が立ち上がろうとしているのは明白だ――あるいは、軍勢で占拠するために、最初の場所で衝突を画策したのかもしれない。ただ英雄達だけが真実を知った。彼らは神話パワーを用いて戦争中の一団を束ねなければならない――しかしそうするには、交渉、陰謀、粗暴な力といった数々の試練に相対せねばならない。この究極の戦争の中では、結束することだけでしか、この国は強大な敵を負かすことができないのだ。
神話恩恵は、劇的な業績がなされた瞬間に与えられる特別な報酬だ。神話級のPC達は信頼とともに大胆に危険に飛び込み、英雄的な流儀に則って繰り返し行動しなければならない。彼らがその大胆さ、幸運、勇気による目覚ましい技を成し遂げることには、褒章が与えられるべきだ。神話恩恵を与えるかどうかは、プレイヤーが自分のキャラクターを限界に追いやることを、GMが奨励する一つのやり方である。
恩恵を与えるのは単純だ。PC達が勇気、狡知、幸運による目覚ましい技を成し遂げた時に、神話パワーの使用回数を1回分回復させる(しかし総使用回数を超えることはない)。これにより、起源に基づいたものを異なる形で表すことができる。PC達に向けられた神の微笑み、内に宿る魔法エネルギーの奔流、キャラクターの自信でさえも、実際の力として具現化するのである。
恩恵を与える際、GMはある瞬間に関わった全てのPCを含めるようにすべきだし、これらの報酬は全体で均一にしたほうが良い。例えば、バーバリアンのチャンピオンが突撃し、斧を用いた幸運なクリティカル・ヒットで強力な敵を打ち倒したとしよう。君はこのバーバリアンに恩恵を与えるだろうが、ローグのトリックスターがこのバーバリアンと共に敵を挟撃し、バードのマーシャルもバードの呪芸で攻撃ロールにボーナスを与えていたことも忘れてはならない。キャラクターは遭遇に1回以上の恩恵を得るべきではない。しかしGMは特殊な状況下においてはこの指針を放棄してもよい。
以下に恩恵に値する瞬間の一例を示す。これは網羅的な一覧ではない。超常的な結果を与えた状況であれば、どのようなものでも成果となりうる。これらは自動的に得られるものではない。キャラクターがクリティカル・ヒットを何度も行えるように構築されているなら、彼が一回の戦闘で3回以上のクリティカル・ヒットを行ったからといって毎回恩恵を得るべきではない。あくまで、極端な環境で成し遂げた場合のみにすべきである。
これらの恩恵の多くには、キャラクターが神話級の敵に対して偉業を達成することが求められる。しかし通常の敵であっても、偉業に値するほど難易度の高いものであれば恩恵を与えても良い。GMの決定に従う。特記ない限り、恩恵が与えられる条件は、同じ遭遇の中で起きなければならない――例えば、2回のクリティカル・ヒットを受けても生存したものの、1回目のクリティカル・ヒットがある戦闘で発生し、2回目が次の戦闘で発生した場合、“頑丈”の恩恵が与えられる瞬間としては扱われない。
暗殺:たった1回の近接攻撃もしくは遠隔攻撃で、キャラクター1人が最大値のヒット・ポイントを持つ神話クリーチャーを打ち負かす。
私の後ろに:PC達が少なくとも4体以上の敵を倒したが、その戦闘中にPC達はたった1人しか(あるいは誰も)ダメージを受けなかった。
無血の勝利:PC達が非致傷ダメージのみを用いて神話級の敵を倒す。
なだめ:〈交渉〉や〈はったり〉のような技能判定1回だけで、キャラクター1人が神話級の敵との戦闘を終わらせるか妨害させる。
生への固執:キャラクター1人が大規模ダメージ(最大ヒット・ポイント総計の半分以上のダメージ、最低50)を与える攻撃1回を受けたものの生き延び、その後に続く頑健セーヴィング・スローに、難易度に5以上の差をつけて成功する。
危機一髪:絡みつかれた状態、組みつき状態、飲み込みのいずれかを受けたキャラクター1人が、これらの状態を与えたクリーチャーを倒す。
相殺呪文の使い手:キャラクター1人が、敵の呪文の使い手1体が発動した呪文3つ以上を相殺呪文により相殺する。
クリティカル・ヒットの連鎖:攻撃ロールに失敗すること無く、キャラクター1人が連続して3回のクリティカル・ヒットを与える。
命がけの舞い:1ラウンドの間に、キャラクター1人が機会攻撃を4回以上誘発させたが、1回も命中しない。
三途の川:ヒット・ポイントが0以下の状態で、キャラクター1人が神話級の敵にクリティカル・ヒットを確定させる。
深呼吸:呼吸を助ける呪文や能力の助けなしに、キャラクター1人が水中で神話級の敵を倒す。
非常事態:神話パワーの使用回数が残っていない状態(あるいは不確かな状態)で神話級の敵との戦闘を開始する。
遠方のクリティカル・ヒット:武器の最大射程単位にいる目標に対して、キャラクター1人が遠隔武器を用いてクリティカル・ヒットを与える。
最後の贈り物:0ヒット・ポイントで、キャラクター1人が自分ではなく仲間を癒すために呪文、アイテム、特殊能力を使用し、それにより意識不明状態かつ瀕死状態となる。
一番槍:戦闘の開始、他のクリーチャーが行動を行う前に、キャラクター1人が神話級の敵を倒す。
頑丈:キャラクター1人が3回のクリティカル・ヒットを受けたが生き残る。
戦技演舞:キャラクター1人が少なくとも4種の異なる戦技を行い、成功させる。
集団撃破:呪文1つだけを使用して、キャラクター1人が6体以上の敵を倒し、遭遇を終了させる。
大打撃:キャラクター1人が大規模ダメージ(最大ヒット・ポイント総計の半分以上のダメージ、最低50)を与える攻撃1回を、神話クリーチャーに行う。
薙ぎ倒し:キャラクター1人が近接攻撃もしくは遠隔攻撃を用いて、1ラウンドの間に5体以上のクリーチャーにダメージを与える。
癒しの達人:呪文、アイテム、能力1つを使用するだけで、キャラクター1体が瀕死状態のクリーチャーのヒット・ポイントを最大まで回復させる。
神話級の挑戦:1日の内に、パーティが神話クリーチャーを何体も倒す。その神話クリーチャーの神話階梯の合計が、パーティに属するキャラクターで最高の神話階梯の3倍以上になる。
見事な嘘:キャラクター1人が〈はったり〉を使用して、およそあり得ない嘘(判定に-20の修正がつく)をクリーチャーに信じこませる。
過剰殺戮:キャラクター1人が投石機、バリスタ、破城槌を用いて神話クリーチャーに大規模ダメージ(最大ヒット・ポイント総計の半分以上のダメージ、最低50)を与える。
芸の勝利:キャラクター1人が8ラウンド以上の間、仲間を鼓舞するためにバードの呪芸を使用する。
精緻:キャラクターが完全視認困難を得ているクリーチャーに対して3回の攻撃を成功させる。
勇往邁進:集団が休憩や能力の回復を行うこと無く6回以上の遭遇をこなす。
耐え忍ぶ術者:キャラクター1体が呪文を発動する際にクリティカル・ヒットを受けた後、精神集中判定に成功し、その呪文で敵を倒す。
返報:クリーチャー1体が遠隔攻撃による矢弾を受け止め、1ラウンド以内に受け止めた矢弾を用いた攻撃を成功させる。
学識:キャラクター1人が出目5以下をロールして難易度20以上の技能判定に成功する。
系統の誇示:キャラクター1人が魔法の各系統から少なくとも呪文を1つずつ発動する(発動することのできる最高レベルから2レベル以上下回った呪文は数えない)。
友の盾:少なくとも3回、道能力を使用してキャラクター1人が攻撃から仲間がダメージを受けることを妨害する。
至高の技術:キャラクター1人が、20以上の差で技能判定の難易度を上回る。
孤高の戦士:仲間(動物の相棒や腹心なども含まれる)の手助けなく、キャラクター1人が神話クリーチャーを倒す。
速やかなる破滅:キャラクター1人が戦闘の第一ラウンドの間に、呪文1つを用いてまだ行動していない神話クリーチャーを倒す。
曲芸師:1ラウンドの間に、キャラクター1人が〈軽業〉を用いて少なくとも敵5体の機会攻撃範囲を通り抜けたが、機会攻撃を一度も誘発させない。
不死者狩り:エネルギー放出1回を使用して、キャラクター1人が8体以上のアンデッド・クリーチャーか、4体以上の神話級アンデッドを打ち倒す。
不沈:神話級の敵との戦闘の間に、キャラクター1人が以下の状態から少なくとも3つを同時に受ける。押さえ込まれた状態、恐れ状態、過労状態、混乱状態、聴覚喪失状態、吐き気がする状態、麻痺状態、満身創痍状態、盲目状態、朦朧状態。
自然の戦士:自然の化身もしくは他の(ポリモーフ)効果を使用して、キャラクター1人が神話級の敵を倒す。
レスラー:キャラクター1人が敵に対して組みつきを返し、続くターンでその敵を押さえ込む。
悪役達の再登場はファンタジー小説に不可欠な要素である。少し手間をかけて計画することで、神話級の悪役がプレイヤーの記憶により強く残るようになり、何年もの間語られる存在となる。PC達に仇なす悪役達は、超常的な力を持つ英雄達といるが故にその力の基準を持っているべきだ。記憶に残る象徴的な悪役は、PC達に何度も何度も肘をぶつけることになる。このような悪役は緊張感を生む――PC達がその計画をぶち壊したとしても、彼らはこの悪人を永遠に止めることができないことにいらだちを感じることになる。このような忌まわしい悪人を作ることは、英雄達がより強くなりこの永遠の敵を壊滅させるという、やりがいのある仕事である。神話級の悪役が生き残ることを確実にするためには、非戦闘型の遭遇を準備し、悪役が逃亡計画を常に持つようにしよう。そして、プレイヤーがもうこの悪役も終わりだと思った後で再登場させることを恐れてはならない。
非戦闘型の遭遇は悪役(あるいはPC達)の生活に危険を与えない形で、プレイヤーがPC達と悪役との間に関係を持たせる役に立つ。早い内に、悪役は無害あるいは手助けをしてくれるNPCとして登場させることができる。あるいは、PC達が既に悪役と戦ったことがある場合、手記を残したり魔法を使ったりしてPC達をあざ笑うこともできる。様々な神話パワー、〈変装〉技能、グリブネスやディスガイズ・セルフ、ノンディテクションといった単なる魔法でさえ、悪役が溶け込みPC達に全くの無害だと見せかけるために使用することができる。後になって悪役が明らかになると、その目的を達成するために部下や他の仲間を使って、舞台裏で暗躍することになる。そして、自分達を妨害しているのがこの悪役なのだとPCにも明らかになる。
強力なクリーチャーが獲物となる世界では、妄想と、計画と仲間を放棄する意志が生き残る鍵となる。君が悪役をプレイヤーと戦わせたい場合、素早く脱出することを計画しよう。例え悪役が対立に勝ちそうだとしても逃げるのは問題ない。計画は長いゲームであり、悪役が生き延びて実現するまで止めないことが必要なのだ。悪役が急いで逃げる能力を与えてくれる、たくさんの呪文や神話パワー、クラス能力が存在する。悪役は可能な時にはよりありふれた逃亡方法を用いた方が良い。象徴的な逃亡を隠すことで、PC達が反撃するのがずっと難しくなる。
悪役が殺された場合でも、ちょっとした死後の嘲りや騒乱目的に君のキャンペーンに再来させることをキャンペーンに再度登場することを恐れてはならない。死んだ悪役を登場させる多くの手段がある――時にはそれは、部下がレイズ・デッドやリザレクションといった呪文を発動するような単純なものかもしれない。しかし他の、もっと洗練された選択肢もある。PC達の死んだ敵の一人の足跡を追う、新しい模倣犯を登場させることもできるし、アンデッドの軍勢や所持していたアイテムといった形でその姿を見た目だけ持ち込んでいるかもしれない。あるいはスピーク・ウィズ・デッドを使用して、死んだ敵の秘密を知った人物かもしれない。
神話級の英雄はその力にも関わらず、依然として問題や傷を抱えた人間である。このような伝説的な存在の多くは、同じように究極的な破滅の元となる伝説的な傷を持つ。英雄達の大いなる力のために、このような失敗と弱点もしばしば劇的なものとなり、敵がこの傷を知った場合、それらを探そうと躍起になるだろう。
以下の神話級の傷は、GMが英雄達の年齢を反映するために、神話級のキャンペーンに導入することのできる選択ルールである。このルールは特定の状況下でキャラクターを、軽減させることができないか時が経てば過ぎ去る特定の疾患に罹患させる――傷もまた、その神話的な本質の一部なのだ。
傷はキャラクターに利益を提供することはない――導入する理由は純粋に劇的な目的においてであり、有利なキャラクターを作るためではない。GMはゲームにこれらを持ち込むかを注意深く検討するべきだし、物語全体に与える利益と(何より重要な)プレイヤーがプレイを楽しめるような何かを加えることができるようにすること。
ゲームに神話級の傷を加えると決めたなら、キャラクターが神話パワーを得ると同時、昇華の瞬間の内にこれらを得ることになる。君はPCの神話パワーを与えた主題の側面を表すよう、傷を自分で選んでも良い。あるいはそれぞれの背景を傷が表すよう、PC達がそれらを選択できるようにするのも良いだろう。以下の神話級の傷は傷の種類の一例であり、ゲームに加えることができる。
依存:英雄を養うことのできるのは、わずか一種類の飲食物だけだ。それがなければ君の力は弱まっていく。(水以外の)特定の飲食物を1つ選択すること。その飲食物を少なくとも1日1回摂取しない場合、君は神話パワーを失い始める。摂取しなかった日以降、君は神話パワーの使用回数を回復することはできなくなる。2日が経過すると、君は神話の道から得られた全てのパワーと能力を失う。3日が経過すると君は全ての神話能力を失う。ただし能力値の増加、ボーナス・ヒット・ポイント、ボーナス神話特技は失われない。これらのパワーや能力は、君が指定した飲食物を摂取するとすぐに回復する。
元素に対する脆弱性:他の全てよりも、ある元素1種類が君のパワーに対して不都合な反応を示す。君はそれから、他のものにはない損害を受ける。[強酸]、[雷撃]、[火炎]、[氷雪]のいずれかから1つを選択する。選択した種別のダメージが何であれ、君は2倍のダメージを受ける。君はその元素に対する抵抗や完全耐性による利益を得ることはない。その種別の効果が君に対して使用されると、それは常に神話級の発生源から放たれたものであると扱われる。
激しい怒り:君の怒りは一匹の獣だ。御することもほとんどできない。君にクリティカル・ヒットが命中したり、〈威圧〉技能で士気をくじかれた際、君は常に制御できない怒りに取り込まれる。これはバーバリアンの激怒クラス特徴のように機能するが、君は(例え激怒クラス特徴を有していたとしても)【筋力】や【耐久力】能力値にボーナスを得ることはない。これにより君は行える行動に制限を受け、アーマー・クラスに-2のペナルティを受ける。激怒は1d4+君の神話階梯に等しいラウンドの間持続する。激怒の持続時間が経過しても、君は疲労状態にはならない。君が激怒クラス特徴を有している場合、激怒の使用回数としては数えない。君がこの傷が起動した際に激怒している場合、この激怒は直ちに終了し、この効果が開始される。
尊大:君は一位であり、至高の存在で、他に並ぶものはない。君の力は無双のもので、君はそのことを理解している。君は[恐怖]に対するセーヴィング・スローに+4の士気ボーナスを得る。君が恐れ状態、怯え状態、恐慌状態のいずれかを与える効果に対するセーヴィング・スローに成功した時にはいつでも、君は代わりにセーヴに成功した効果の持続時間と同じだけよろめき状態となる。君はそのラウンドの間、自分の勇気を誇るために費やすのである。これらの効果に対するセーヴィング・スローに失敗した場合、君は不安と羞恥に悩まされるため、この効果の持続時間は2倍となる。
弱点素材:例え君が何よりも頑丈な防護を備えていても、それを貫くことのできる材質が1つ存在する。木、銀、冷たい鉄から1つを選択すること。主としてその材質で作られた武器は、君に対する全てのクリティカル・ヒットが自動的に確定し、クリティカル倍率は1だけ増加する(最大で×4)。君がダメージ減少を持っている場合、主としてこの素材で作られた武器は自動的にこのダメージ減少を無視する。
移り気な心:君が身につけた力は君に話しかける。それは致命的な瞬間で君の心を混乱させる。君がクリティカル・ヒットを受けたり[精神作用]呪文もしくは特殊能力に対するセーヴィング・スローに失敗した時、君は1d4ラウンドの間混乱状態となる。
系統嫌い:そのパワーにも関わらず、君には破滅の元となると記された魔法の種別が1つ存在する。それを身につけたものは、君にとって大いなる脅威となる。魔法系統から(占術を除く)1つを選択する。君がその系統の呪文もしくは効果に対するセーヴィング・スローを試みる際、このセーヴィング・スローには-4のペナルティを受ける。このような呪文の効果は(有害なものであれば)、セーヴィング・スローに失敗した場合に持続時間が2倍になる。加えて、君に使用されたこの系統の呪文と効果は全て、神話級の発生源から放たれたものとして扱われる。君は選択した系統の呪文及び効果から利益を得ることはない(GMの判断に従う)。
弱点武器:予言によれば、1つの武器が君の破滅になるという。ファイターの武器グループから1つの武器グループを選択する。選択したグループの武器は、君に対する攻撃ロールとダメージ・ロールに+4のボーナスを得る。選択したグループの武器が君に対してクリティカル・ヒットを与えたなら、クリティカル倍率は1だけ増加する(最大×4)。君がダメージ減少を持つ場合、このグループの武器は常にこのダメージ減少を無視する。
神話級であると感じられる冒険を作るのは、厄介な作業だ。考える要素がたくさんある。以下のアイデアは、キャンペーンをデザインする際に作業することを与えてくれる。それぞれのアイデアには物語の筋の基本的な要素、英雄達が直面するであろう試練の数々、第一の敵対勢力、その後の冒険のアイデアをまとめている。これらのアイデアの中には英雄の神話級の起源を暗示しているものもあるが、他の神話級の冒険を既にこなしたPC達にも簡単にあつらえることができるだろう。
小説や漫画、テレビ番組、映画における多くの物語には、少しの期間能力を失った強力なキャラクターが描かれることがある。多くのGMにとって、神話級キャンペーンの一部でこれを実現するのは魅力的なことだ。君はゲーム中にこのような物語の道具を用いることは確かにできる。しかし力の喪失が冒険譚を誰もこれ以上遊びたいと思わないものにしないよう、注意深く扱わなければならない。本項には、楽しめるやり方でこのアイデアを扱うための、いくつかのメモを掲載する。
手始めに、これはキャラクターが中間の階梯(第4~第7階梯)にある場合にのみ優れた選択肢である。英雄達がより低い階梯の場合、彼らは神話パワーを使用しないからといって物語上興味を引くほどに力を失わない。彼らがより高い階梯の場合、神話級の物語とその物語が現在話題に上がる間にある隔たりはあまりに大きく、物語を破壊してしまうかもしれない。
喪失物語は数回のセッションに留まるべきだ。一時的な力の喪失が永遠のもののように感じられてはならない。
PCの力の喪失の原因は説明できる必要がある――そしてキャラクターがあらかじめそのことについて知っているか、力を失った後に誰かがその理由を説明してくれる。それは世界の力の流れを阻害する、月蝕や大火山の噴火のような出来事によるものでも良い。あるいは敵が英雄の力を無力化する儀式を執り行っているのかもしれない。自分の力の喪失の原因はPC達本人にあってさえ良い、特に力を与えた神聖な存在が、PC達の最近の行いに不満を抱いた場合などは。
PC達の窮地に対する解決法は、物語の全体からそうと分かるものであるべきだ。イベントをくぐり抜けると、PC達の神話パワーは元に戻る(この場合、PC達はほとんど待つこともなく、それまで生き残るために戦うこともない)。敵の儀式は一時的に通常の状態となったPC達によって無力化される。あるいはPCにまだ価値があることを示すことで償いはなされる。
ドラマは原因と解決の間に生じる。敵が再び試練となる前であればそれは容易であるべきだし、怒りを得た英雄達はすぐに報復するだろう。それが恐ろしい敵であろうと、ないがしろにされた町人であろうと関係はない。この間に獲得した報酬は、PC達が直面した試練の難易度を反映しなければならない。
この街からそう遠くない場所に、強力な神格に捧げられた有名な聖地がある。神の祝福を受けるため、巡礼者が定期的にこの地を旅する。しかし最近、巡礼者達がこの道の脇で石になった姿で発見された。この地の聖職者は教区民の生活のため、この地の聖所のため危惧する。
試練:石化した巡礼者の魂はその肉体の周りで漂っている。怯え混乱したこの霊魂は(ゴースト、スペクター、ウィル・オ・ウィスプの姿となって)、近くを通るものを誰であれ攻撃する。霊魂を破壊しても彼らを殺すことはないが、その身体に戻り休眠状態となる。
聖地はこの神格の敵を崇める狂信者によって穢されていた。この場所はいつだって、近づくには危険な場所であった。天界にまで届こうかという高い山頂に位置しているのだ。しかし今では、いくつかの道が破壊されており、英雄達は山頂に到達するためにずっと危険な経路を通らなければならない。
敵対勢力:狂信者は神話級メドゥサに率いられている。敵対する神格の力を受けて呪われ拷問を受ける前は、この神格の信者だった。PC達はこの古代の戦いの駒として扱われている――しかし巡礼者のために、彼らはこの脅威とその狂信者に打ち勝たなければならない。
その後の冒険:巡礼者に命を戻すことは難しい課題である。PC達は遠くの国に旅し、石化を解除するために必要となる材料を集めてこなければならない。カルトは計画を破壊したものに復讐を企てているかもしれない。あるいは、教会がPC達に、このカルトを探し出し、完全に破壊するよう求めるかもしれない。
町には密かに神話の守護者――神話級フェニックス――がいた。この数十年の間この街を見張り、危険から遠ざけていた。エインシャント・レッド・ドラゴンが眠りから覚め一暴れしにやってくると、守護者にはただ行動するしかなかった。フェニックスは問題に対処するため空に舞い上がった。しかし戦いの後、双方が傷を負い大地に落下した。ドラゴンは傷つき巣へと逃げようとした。フェニックスは邪悪な竜による大火によって堕落させられた。今やそれは大地を徘徊し、目覚めるやいなや全てを焼かれ、痛みによって狂気に陥った。竜の魔法によって、その精神は混濁した。
試練:町の前で戦いが繰り広げられる間、フェニックスの涙はPCに降り注ぎ、神話パワーを与え、その純粋な魂の欠片を埋め込んだ。数日の内に、堕落した不死鳥はこの地の周り全てを大火で包み、PC達はこのクリーチャーを治療する手段を見つけるか、本当に最低でもフェニックスから惨めさを取り去らねばならないと気付く。
彼らはフェニックスの秘密の故郷まで旅し、フェニックスに関して彼らが知りうる全てを明らかにしなければならない。その間ずっと火事と闘い、共同体を護り、フェニックスの不浄なるエキスが注ぎ込まれた様々なモンスターを対処しなければならない。守護者の本当の姿を明らかにすると、彼らはフェニックスを見つけ出して治療するか、終焉を与えなければならない。
敵対勢力:神話級フェニックスは敵ではあるが、それはよくいる悪役ではない。PC達は火を汚染した悪を浄化することで、フェニックスを救いたいと思うかもしれない。そのようにするなら、PC達は近づく方法を見つけ、滅ぼすことなく治療する方法を探さなければならない。フェニックスがあまりにも遠くに行ってしまったと考えるのであれば、代わりにその命を終わらせ、守護者の外套を手に取る(そしてフェニックスの死後も自分たちの神話パワーが残り続けることを願う)ことを選択するかもしれない。
その後の冒険:邪悪な竜は未だ存在している。その傷を癒やし、再度の攻撃の時を待ち続けている。英雄達がフェニックスを癒やしたのならば、フェニックスはこの竜のことをPC達に告げ、倒す助けとなる情報を与えてくれるだろう。フェニックスはこの竜が数えきれぬほどの昔に仇敵であったこと、最終的な死を与えたいと願うならば伝説の武器一揃いが必要になることを明らかにするかもしれない。
逆に、PC達がフェニックスを殺した場合、再生したフェニックスと再度出会うというのはあり得る話だ。解放してくれたとPC達に感謝しているか怒りを向けるかは、誰にも分からないことだが……
王と王妃の世継ぎに対する命名の儀は、楽しい出来事となるはずだった。しかしそれは、あっというまに恐怖の場面へと変わってしまった。大会議場の扉が開き、老婆が古びた銀製のパイプを弄びながら入ってくる。参加者はその場で凍りつき、このパイプの音色に逆らうこともできない。老婆は玉座へと進んでいく。王と王妃の影が立ち上がり、王族の新生児を取り上げる。王子は運ばれたまま、老婆の後ろに続いて扉を通り抜けていく。その場に残されたのは世界の底にある大武闘大会に最も優れたチャンピオンを送るよう指示した走り書きであり、「我々の武闘大会を生き残ることがあれば、この王国も生き残るでしょう」とのことだ。
試練:PC達は武闘大会に参加し、どのような手段をもってしても失われた王子を取り戻すように命じられる。到着すると同時に、PC達はこの武闘大会が信じられないほど強力なデヴィルによって運営されており、ゲームに加わることだけが唯一の成功への道だと気付く。神話クリーチャーはこの協議会に最適である。マンティコア、巨人、ヒュドラ――運営者に手の届かないものはない。武闘場は対決毎に作り替えられ、英雄が挑むクリーチャーにとって普通の環境を反映する。ある戦いでは、環境がヒュドラの最適なねぐらである沼地に。次の戦いでは、熟達した死霊術士に新鮮な肉体をいっぱい提供してくれる墓地に。別の戦いではミイラが生きとし生けるものに復讐する手段を探すのに最適なように、武闘場が流砂に覆われていることもあり得る。
しかし勝つこと以外の手段もある。英雄達が他の参加者と手を組むことができれば、デヴィルを屈服させ、囚われた王子を救って故郷に帰ることもできるだろう。
敵対勢力:強力なデヴィルの一団がこのゲームを運営している。表向きはフィーンド達の娯楽のために、定命のものに戦いを強いるという拷問をして時を過ごしている。しかしデヴィル達は密かに計略を進めている。英雄達が自分達の大いなる脅威となると、強力な占いに教えられたのだ。そのため彼らは、英雄達をこの地に誘い出すために王子をさらったのである。王子やその王国には実のところ興味はなく、英雄達が脅威になる前に殺すことだけがその望みなのだ。PC達はデヴィルと直接戦うことはないかもしれないが、武闘大会で勝利することは、フィーンドの計画を台無しにすることになる。
その後の冒険:デヴィルの中には武闘場で貴重な所有物が負ける姿を見て、不満を抱いたものもいる。彼らはその後しばらくして英雄達に報復する手段を探すかも知れないし、同じことを繰り返すために彼らを捉えようとするかもしれない。英雄とその運命の間にはまだ問題があり、武闘場に誘いこむことがデヴィルを打ち倒す経路に英雄達を据えることだと判明するかもしれない。
何百年もの間、肥沃な大地の拡張が、ハーフリングの農民達が営む小さな村によって進められてきた。これらのハーフリングは大地と不思議なつながりを作り出し、世代を超えて引き継がれる管理の継承権を生み出した。つい最近、このつながりが見知らぬ力によって突然切り離された。大地は荒れ、作物は枯れ、畑では作物が育たなくなった。
試練:さらにまずいことに、獰猛な食肉植物がかつては植物の生い茂った田畑に繁茂した。好戦的な神話級の植物クリーチャーが群れをなしてさまよい歩き、黄色いジャコウのような臭いを放つツル植物は、不自然なほどに強力で無慈悲なゾンビを産み落とす。ハーフリング達は英雄達に、この問題の根幹を探し出し生態系のバランスを元に戻すよう要請される。
敵対勢力:破壊をもたらす植物は邪悪な神話級ドルイドによって組織されている。このドルイドは巨大でねばねばした根で強化された地下の洞窟群に住んでいる。ダイア・ラットやダイア・バジャー、バット・スウォーム、毒を持つスネーク・スウォームがドルイドを守るだろう。出会うやいなや、ドルイドは邪悪なフェイ・クリーチャー――フォーラーレンに姿を変える。倒したからといって大地は浄化されるわけではない。洞窟はさらに深くまで広がっており、恐ろしい脅威の住む奇妙な巣に続いている。神話級マイシロイドに率いられたマイシロイドの一族、あるいはさらにまずいサードかもしれない。これらの有毒クリーチャーを倒すことで、この地の継承権はハーフリング達に返ってくる。
その後の冒険:最後の邪悪なクリーチャーを退治し終えると、英雄達はハーフリングとこの地を繋げている不思議な絆と同種のものを作り出す能力を得る。彼らはこの秘密を他人に教えることもできるし、この知識を異なる地域の農村に伝える責任があると考えるかもしれない。地下の洞窟にある痕跡は、この世界の他の場所にある邪悪な植民地の居場所をさらに指し示すかもしれない。
英雄達はまだ未完成のままにされた世界の一部にやってくる。創造主の過ちか、世界の自然な力か、独自の秘術的事象によってこの区域が原始の物質が渦巻く危険な場所であるとわかる。混沌とした荒ぶるクリーチャーはこの変化しやすい深みに漂っており、とても立派とはいえない考えを持つ強力な個体が、賢者が“原始の星”と名付けたものの制御方法を探す。英雄達は邪悪な意図を持つ軍勢を押し留めたまま、原始の物体のことを理解し整形することを学ばねばならない。英雄達が“原始の星”の制御を失ったならば、神話級の悪役がこの世界の表面に、文字通りの地獄を作り出すべく足を踏み出すかもしれない。
試練:“原始の星”は純粋なる混沌と創造の場だ。そこに住む神話級の存在はサヴィッジ・テンプレートを持つ混沌の獣、ハウラー、エレメンタルが含まれる。強力なケケターに率いられたプロティアンの共同体は“原始の星”に住み、その領土を主張する。しかし英雄達に即座に敵対するわけではない。プロティアンは邪悪な侵略者から“原始の星”を守れるほど強力な存在ではない。侵略者の中には、恐ろしいデモダンドの一団もいる。強力なアザータの使者(ひょっとしたらブリジディーンかもしれない)が到着する。彼女は英雄達に疑念を抱き、ちょうどデモダンドにそうしたように差し押さえを命じて事態をややこしくする。
敵対勢力:英雄達が“原始の星”の危険の中を進み、デモダンドを倒し、プロティアンやアザータを倒すかその助力を得ると、ついに“原始の星”の中心部に到達する。そこで彼らは“原始の星”を作り出した力の源と最後の守護者――神話級ヘカトンケイル・ティタンを発見する。ヘカトンケイル・ティタンははるか昔に定命の者の世界から放逐され、どうにか自由になろうとしていたのだ。
その後の冒険:“原始の星”の形を英雄達が決めたなら、永遠にその形を保つ。しかし、妨害されたデモダンドは過程をひっくり返すことで、この世界全てを煮えたぎる混沌に戻すことができると信じている。デモダンドの暗殺者は影に潜み、英雄達が疑いもしないタイミングで攻撃する準備ができている。英雄の新しい故郷が混沌に秩序をもたらす鍵を握ると信じたアルコンが天界ヘブンより訪れ、奈落界アビスの領土に対する武器とするかもしれない。アルコンは自分たちの研究に執心し、この聖なる訪問者に故郷を貸し与えることを英雄がわずかでも渋ろうものなら疑い始める。土地と仕事を探して農民と傭兵が英雄達の新しい故郷に押し寄せる。英雄達が市民として雇い入れるなら、彼らは急に国の支配者であることと、隣接国の支配者による望まぬ侵害に気付くかもしれない。(王国の構築に関しては、Pathfinder RPG Ultimate Campaignに詳細が記載されている。)
かつて、古代文明がある谷を支配していた。しかし市民らはその凶暴性により衰退した。今もなお、文明の痕跡が残っている。大量の財宝と古代の魔法がこの谷を囲む3つの山の頂きにあるという噂は、英雄達にまで届く。
試練:この文明の直系の子孫はこの地に存在する。しかし彼らは残忍で異邦人を嫌う。アハッハ、ヒル・ジャイアント、あるいはラミアが彼らと敵対しているかもしれない。彼らは群れをなし、より低い山の頂きで目に見える侵入者を攻撃する。落とし穴の罠や落石の罠も作り出す。より高い山の頂にはジャイアント・イーグル、神話級レウクロッタ、神話級ロック、アーサックなどがねぐらにしている。
それぞれの山の頂きには異なる試練が待ち構えている。1つ目の山頂には神話級クラッグ・リノームの巣がある。その財宝の中には古代文明における黄金の冠が眠っている。2つ目の山頂には深い洞窟があり、恐ろしい神話級ネオセリッドが住んでいる。その財宝の中には、古代の言語で書かれた一冊の分厚い本がある。そこには困難な試練を生き残った遥か昔の為政者が集めた知恵や、その考えや決定の記録が記されている。英雄達が二つ目の山頂から降りると、ガーディアンの階梯を得た残忍なバーバリアンに率いられた、谷の住人の大半と出会うかもしれない。3つ目の山頂は常に発生している嵐のために雲に覆われ、神話級サンダーバードの巣となっている。サンダーバードが倒されると、雲は晴れ、石の玉座が彫り込まれた山頂が露わになる。
敵対勢力:この場所における本当の脅威は退化した種族である。PC達がその粗暴なやり方を止めるよう説得した場合にのみ、彼らはその偉大さを取り戻すだろう。英雄達は石の玉座に指導者を連れて行き、そこで本を膝に、王冠を頭に備えて腰掛けさせることができれば、啓蒙の火花が彼と人々の内に輝く。英雄達は偉大さを取り戻す中で競争を始める。達成するには、戦闘で指導者、もしくは指導者とその護衛を打ち負かさねばならないかもしれない。
その後の冒険:英雄達が3つの山頂の秘密全てを暴く前に谷の住人達を全滅させた場合、玉座に腰掛けさせるため、この種族の他の一員を探す旅に出るかもしれない。英雄達が文明を取り戻させた場合、彼らは後の冒険を提供するであろう価値ある仲間となる。
木の洞の中で夜を過ごした後、英雄達は不安な感覚の中で目覚める。この木が夜の間に移動したことに気付く。道は失われ、キャンプにさまよい込んだヒル・ジャイアントは、英雄達が子供の頃の物語からやってきた英雄のように思っているようだ。ここでは、人間、ドワーフ、エルフ、ハーフリング、その他全ての一般的な種族は、遥か昔にこの地から消え去っている。PC達もこの奇妙な地で新しい力を手にしたことに気付く。神秘的なアーティファクトの近くでキャンプしたことなど、彼らは知るよしもなかった。このアーティファクトが偶然正しく動作する見知らぬ条件を満たし、彼らを新しい世界に運んだのだということも。
試練:元に戻るために、英雄達は特定のアーティファクト――最初の場所から彼らを転送したものの双子――か、戻るためのポータルを作る別の手段を探さなければならない。住人の多くはPC達に帰ることができる手段を教えてくれるかもしれない賢い女性のことを教えてくれる。しかし残念なことに、この女王は遥か昔に捕らえられている。
英雄達にとって伝説と考えられていた土地で生き残る、絶滅したクリーチャー達は興味深いやりとりの機会を与えてくれる。彼らは英雄達により価値のある情報を提供する前に、1~2個お願いを叶えて欲しいかもしれない。通常であれば敵対的な集団は新参者を崇拝するかもしれない。特に新参者がもたらす情報と明察が勢力バランスとこの国の脆い平和に対する脅威となってからは、かつて家に戻す協力をすると言った者達が彼らを脅威と見なすかもしれない。
英雄達は女王の巨大な要塞に向かうなら、彼らはそこに至るまでに新しい試練を見出すだろう。そこに住むものは皆、彼らの2倍以上は大きいのである。女王の使い魔である巨大な黒猫は、新しい獲物で遊ぼうとすると本当に恐ろしい獣となる。
敵対勢力:PC達が賢い女性を救うために、彼らは女王(神話級ジャイアントの一種を基にしているだろう)を倒さなければならない。彼女としては、PC達にすぐに死んで欲しいというわけではないが、彼らにその領域を超えることのできる世界について多くのことを知りたいと欲するだろう。
その後の冒険:他のクリーチャーが英雄達の故郷世界を探し出すかもしれない。この世界は、今や存在することが明らかなのだ。PC達がこの世界の女王を殺さなかった場合、彼女は復讐を図るかもしれない。女王が他の世界にこのアーティファクトを送ったことを知り、PCの助けが必要な多くの捕虜を女王が手にしていることを知る。ひょっとしたら、神話パワーはPC達が故郷に帰っても留まり続けるかもしれない。世界の向こうで長い間眠り続けていた神話パワーを呼び覚ましたということに気付くだろう。そして、多くの苦難が解き放たれる。