偉大な国は選ばれし少数が動かしており、その少数はまた小さな事に動かされている:気まぐれ、欲望、恐怖、病、愛、あるいは適切な背中に突き立てられた適切な刃物に。ウォー・フォー・ザ・クラウン・アドベンチャー・パスはプレイヤーをタルドールの北へ南へ、そして更にその先へ導き、タルドールの英雄たちはモンスターを刃で貫き、邪悪なカルティストにファイアーボールを放つだけでなく、タルドールで最も危険な競技、即ち政治に参加することになる。魔獣と戦い、議員と知恵比べをし、内海地域で最も卓越したスパイ達を相手に騙し合いをすることになる。これら全てはタルドールの内戦を阻止するためだ。この国の六千年の歴史の終焉を阻止することができれば、彼らはこの頑固に伝統を守る国を未来へ導けるかもしれない。
このアドベンチャー・パスの傾向はアクション、スパイ活動、そして陰謀だ。PCはある晩はフォーマルな服で上品な酒を飲み、またある晩は泥の中を這いずり回り敵を切り伏せる勇ましい悪漢である。最終目標はユートロピア皇女を正当な権利に基づき獅子の王座に付かせることと、可能ならばその闘いの中で彼女の善意と前向きさを失わせないことだ。キャラクター達自身は政治的な力を殆ど持たない状態から始まる。彼らは下級貴族や商人、そして平民ですらあるかもしれないが、彼らの冒険や人脈、そして女帝の感謝は彼らをタルドールで最も重要な人物へと押し上げてくれるかもしれない。
アドベンチャー・パスはタルドールの輝かしい首都、オパーラで、大王が特別な平民に貴族の位を与える祝日である称揚の日に始まる。オパーラは極端な街である。アヴィスタン全土において最も裕福な居住地であるにも拘わらず、貧困な浮浪者の人口も最も大きい。同じ街で暮らしているにも拘わらず、富と伝統は二種類の人々を石壁以上に分け隔てている。
100,000人以上の市民が住む都市において、PCは友人や家族、学友、あるいは完全に見知らぬ人間であるかもしれない。ヒーロー達の繋がりに拘わらず、ウォー・フォー・ザ・クラウン・アドベンチャー・パスは一行の一員それぞれがタルドールとその未来に関して何らかの思い入れがあることを前提としている。彼らは借地人を探そうとしている資産持ちの紳士階級かもしれないし、明日をより良くしたいと願う改革家かもしれないし、立身出世の階段を登ろうとする利己的な策士かもしれないが、その動機に拘わらず、ひとたび混乱が始まったなら、彼らは後退しないだろう。キャンペーン特徴の多くはキャラクターの過去と未来をタルドール政府に結びつける方法を提供している。Pathfinder Campaign Setting:Taldor, The First Empireではタルドールの文化、歴史、そして地理の多くを論じており、国家の精神構造についての若干の洞察を提供し、それをプレイヤーとGMどちらにとっても非常に貴重な資源にする。
「昇栄の日」はもし彼らがタルドールの辺境やそれより遠くから旅をしなければならないとしても、オパーラに集まる動機を提供することになる。無名の貴族、一般市民、そして小作農ですら最も賑わっている状態の首都を人生に少なくとも一度は見るために旅をする。アンドーラン、シェリアックス、ガルト、イスガー、そしてラストウォール――タルドールがいまだ強情な植民地と見なしている国――の若干の市民達は花火、パレード、ごちそう、そして昇栄の日の前の週を埋め尽くす競技の催しを楽しむために国境を越える。内海地域中のエンターテイナー達が、安い食べ物と催し物が促進する寛容さをフルに利用するため、タルドールへと旅をする。
タルドールの元植民地よりも遠い国々の住民達さえ、貿易の集約地点であるこの国際都市を訪問する理由を持つ。旅行者と通りすがりは昇栄の日の光景の内に同一の魅力を見つけることが出来るが、その一週間は一年中続く貿易の流れと同じ貿易が行われている。オパーラの港町ではアブサロム、ラハドゥーム、ドルーマ、ヴァリシア、そしてタルドールの元敵であるカディーラからすら、貿易船が終わりなく行き来するのが見られる――しかしケレッシュ人達は下船する時、敵意と厚意を等しく見出すかもしれない。
この週は重要な条約に署名がされ、葡萄酒、音楽、そして騒々しい色彩を背景として商取引が交渉される。そして、オパーラは政治家と異邦人達を惹きつけるのと同じように、互いを利用することを狙っている策士と犯罪者を惹きつける。
この都市の興奮に付け加えられているのは、タルドールの元老院がついに男系相続制度について投票を行うという噂である。タルドールの古代の法律は男性相続人だけが家族の称号、土地、それらに付随する権力を受け継ぐことが出来ると命じているのである。その廃止は全てのタルドール人女性と全ての人々にとって大いなる前進となるだろう。更に、それによってタルドールは20年前の若きカリウス皇子の事故死以来、初めての公式の相続人を得るだろう。即ち、ユートロピア皇女である。どちら側をサポートしているかに拘わらず、ほとんど全てのタルドール人は投票について情熱的であり、息を殺して結果を待っているのである。
君のキャラクターがどこの出身であるにせよ、2つの事が君と君の同僚冒険者を束縛している。タルドールそのものを救いたいという前述の欲望と、レディ・マーテラ・ロシードという名前の女性である。大衆の関心の中へと君を連れてきたものが何であるにせよ――君自身の政治的な野心にせよ、競技での勝利にせよ、抗議行動にせよ――、それによって君は、レディ自身の大きくなりつつある陰謀の蜘蛛の糸に利用できる新鮮な才能を探していた、かの若き女策士の注意を引くことにもなった。君の忠義と引き換えに、彼女は金、新しい衣服、そして一年で最も高名なる社会的なイベントの1つへの招待を与えた。即ち、昇栄祭である。それは元老院の建物で開催される。タルドールで厚意、傾聴する耳、あるいは後援を求めるものは、誰もがこの一年に一度のイベントでそれを見つけることが出来るだろう。何故なら、元老院達と貴族達が等しく食べ物、葡萄酒、音楽の数時間の為に、そして皇帝が正式に市民を昇格させるために到着する前の公的な元老院の仕事の為に、集まるのだから。君が、レディ・マーテラ・ロシードが心に思い描いている時間がかかるだけの仕事についてどんな感情を抱いているかに拘わらず、そうした招待は上流社会への、そして人生のやり方を変えるかもしれない人脈を得る機会への端緒を拓く稀な手段を与えるのである。
ウォー・フォー・ザ・クラウンは一人のプレイヤー・キャラクターがタルドールの皇帝になるのを援助するためのアドベンチャー・パスではない。君は確かにこれをそのように遊ぶことはできるが、PC1人を最も重要な人物であると宣言するのは滅多に上手く行くものではなく、そしてそのような試みは容易にプレイヤー間の内紛を招く(そういうものが正に君が政治的なゲームとして設定したい、議論と裏切りの部類であるのかもしれないが)。これは、君がどの政治的に出馬している政治家の後ろにつくべきかを決定するためのAPではない(我々がそれを考慮しなかったわけではないが、最終的にはそれだと各々の冒険に更なる文章を必要とし、自分が使わないキャンペーンの内容が書かれているページに誰も金を払いたくはないだろう)。舞台設定の観点では、ウォー・フォー・ザ・クラウンはタルドールの時系列を6年前に出版された大元のInner Sea World Guideで確立された基本設定から前進させる助けとなる; 結局のところ、スタヴィアンは老体であり、残されたアドベンチャー・パスはそう多くない。
導入以来、タルドールはしばしば冗談のオチであった:停滞している、腐っている、接触を断っているなど。これらは不正確な説明ではないが、この舞台を楽しい冒険の背景のように聞こえるようにはしておらず、国全土が荒廃しているかのように思わせる。結局のところ、冒険とは変化とドラマである。タルドールの停滞は紛争の機を熟させており、「我々はこの路線に留まるのか、変化していく世界に向かって前進するのか」――改革派のユートロピアなのか、伝統主義のピタレウスなのか――という問題に帰結する紛争は、タルドールに悲劇を与える存在の中枢に衝撃を与え、PCに国家と国民に希望をもたらす機会を与える。
ウォー・フォー・ザ・クラウンではどのようなキャラクターが活躍できるだろう? 改革の推進派か? 自身の富と権力を求める大臣か? 帝国中の美女を口説こうとする放蕩者か? 頑丈な剣を持つ軍人か? 答えは、これらの全て、そしてそれ以外もだ。ウォー・フォー・ザ・クラウンにはそれなりの密やかな仕事や社交の場面があるが、倒すべきモンスターや潜るべきダンジョンもそれなりにある。キャラクターがタルドールの政治に関わる動機が何であれ、機会は十分にあるに違いない。
ウォー・フォー・ザ・クラウンの本質は、崩れてしまった体制を立て直すことであり、自分のためにそれを乗っ取ることや、血まみれの反乱で全てを破壊することではない。この茨の道は、君たちが陥れたい者たちの世界をひっくり返し、一から始めることではなく、その者たちの中に紛れ込むこと意味する。様々な卑劣な輩を陥れるために水面下で動きつつも、彼らに対する忠誠を偽装するような、妥協とごまかしを意味する。しかしこれらを通して、君たちは君たちの後援者と同様に権威と権力を獲得し、君たちの行動はユートロピアが王座にたどり着いた時(もしも辿り着くのならば、だが)彼女の統治を形作る手助けとなるだろう。
ウォー・フォー・ザ・クラウンのキャラクター達は中立にして善の候補者のために闘い、彼らの存在意義は彼女の代わりに手を汚すことだが、困難を攻略し、目標を達成するには善や中立属性のキャラクターの方が適しているだろう。王位継承の法律はウォー・フォー・ザ・クラウンの開始時に未踏の領域に突入するため、秩序のキャラクターは伝統に縛られる必要はなく、ユートロピアの長期的な目標が腐敗した不公正な体制を全体のために転覆させることであるということに、混沌のキャラクターは安心できるだろう。金目当てのキャラクターはマルテラ・ロシードの下で働くことで富と名声を得られる充分な機会があるだろう。悪属性のキャラクターも、仲間から自らの後ろ暗い衝動を隠し、他人と協力することができるのならば、これらの機会を利用することができるだろう。
ウォー・フォー・ザ・クラウンで遭遇する困難では鋭い刃と同じくらい、冷静な言葉と愛嬌のある笑顔が重要となり、戦闘は自ずとやってくるが、社交の場面に馴染んだり、不思議な出来事を調査することができるキャラクターは輝く機会が増えるだろう。殆どのキャラクタークラスはウォー・フォー・ザ・クラウンに適しているが、険しい自然をテーマとしたキャラクターや戦闘外での仕事が少ないキャラクターは物語の多くの部分でできることが少なくなる可能性がある。多様な能力を持ったキャラクター、特にバード、インクィジター、インヴェスティゲーター、ミーディアム、ローグ、スワッシュバックラー、そしてヴィジランテは、遭遇する様々な困難に上手く対応できるだろう。戦闘に傾倒するプレイヤーは殆どのファイターやレンジャーよりもブローラー、キャヴァリアー、そしてパラディンの方に有用さを見出すだろう。呪文使いに関しては、研究と制御に基づいた術者(アルケミスト、アーケイニスト、クレリック、メイガス、そしてウィザード)は、その魔法が、出処が不明な遺伝子、偶然、あるいは未知なる力に基づいている者たちよりも上流社会で受け入れられやすいだろう。オラクル、ソーサラー、サモナー、そしてウィッチはタルドール社会では一般的に見下されている。タルドールの大部分において、自然で活躍するクラス(バーバリアン、ブラッドレイジャー、ハンター、レンジャー、そしてスカルド)は都市部で活躍できる者たちよりも能力が有効に使いづらく、また受け入れられにくいだろう。多くのタルドール人は特にドルイドに不信感を持ち、その理由として何世紀にも渡るヴァーデュラン森のワイルドウッド・ロッジとの敵対を挙げるだろう。
ウォー・フォー・ザ・クラウンの大部分は歴史や遺産、そして時代精神と共に、陰謀や不思議な力に焦点を置いているため、様々な心霊クラスはこのアドベンチャー・パスに特に適している。
いくつかの有用なアーキタイプを以下に記す:
Court foolのバード(Pathfinder Player Companion:Heroes of the High Court)
Guerrillaのローグ(Pathfinder Campaign Setting:Inner Sea Intrigue)
Hidden priestのクレリック(Pathfinder Campaign Setting:Inner Sea Magic)
High guardianのファイター(Heroes of the High Court)
Monk of the seven forms(Pathfinder Campaign Setting:Inner Sea Combat)
Provocateurのバード(Inner Sea Intrigue)
Virtuous bravoのパラディン(Heroes of the High Court)
ソーサラーやブラッドレイジャーのキャラクターはタルドールでの冒険での最適な選択肢ではない一方で、彼らは依然有効である。以下の提案はこのキャンペーンのテーマに合っていたり、このキャンペーンにおいて有用な能力を提供するだろう:運命の子、竜、皇族の血脈ARG 、 巨匠UM 、 そして星の魂APG。このアドベンチャー・パスのテーマに最も強い関連のあるオラクルの神秘やシャーマンの霊は祖霊UM、生命、伝承、金属UM、そして時UMである。ウォー・フォー・ザ・クラウンに適したウィッチの守護者は祖霊UM、欺瞞、時UM、技巧、そして判断である。勿論、これらの選択肢はあくまで提案であり、プレイヤーはこれらの選択肢に縛られる必要はない。
エキゾチックなペットはタルドールの貴族の間では珍しくなく、この国の多種多様な環境は国境内で様々な動物が見つかることを保証している。特に使い魔は上流階級では一般的に見られる。より裕福な家は海の向こう側からのエキゾチックな獣のために大金を出せるかもしれないが、タルドール現住の使い魔にはキャット、フライング・フォックスB5、フライング・スクワールB3、フォックスB3、グリーンスティング・スコーピオンUM、ホーク、ヘッジホッグUM、ハウス・センチピードUM、リザード、モンキー、オッターB3、アウル、ピーファウルpeafowlUW、ラビットUW、ラット、レイヴン、スクワールUW、スラッシュUM、トード、そしてウィーゼルなどがいる。以下の動物はタルドールとヴァーデュラン森で発見でき、簡単に入手できる動物の相棒だ:アンテロープB3、バブーンB2、バジャーB2、ベア、バード、キャメル、ビッグ・キャット、スモール・キャット、クロコダイル、ディグモールB5、ドッグ、ホース、ハイエナB1、モニター・リザードB1、ポニー、ラムB2、ジャイアント・レイヴンB6、ロックB1、ヴェノマス・スネーク、スタッグB4、スワンB4、ジャイアント・ヴァルチャーB3、そしてウルフ。しかし、これらの内、上流階級の会合で適切とされるのは、バード、スモール・キャット、ドッグ、ホース、ポニー、そしてスワンのみである。
プレイヤーはウォー・フォー・ザ・クラウン・アドベンチャー・パスを通して広がる都市、古のダンジョン、悪臭を放つ水路、そしてうだるような平原を旅する中で様々な敵に遭遇するだろう。得意な地形の最適な選択肢は都市、続いて平地と地下だ。冒険中、敵対する人型生物、特に人間、続いて動物、魔獣、そして悪の来訪者がPCの最も良く遭遇する敵となるだろう。
キャンペーンの性質上、キャラクター達は恐らくタルドール出身の中流または上流階級だろうが、ロシード婦人は特殊な状況下で発見した下流階級のPCにも声をかけたかもしれない。若い、あるいは経験の少ない貴族や、商人の弟子、駆け出しの有名人、学生、改革者、ギルドメンバー、ジャーナリスト、そしてスパイを目指す者達は皆オパーラの危険な政治に手を出す理由があろうだろう。ユートロピアは更に、権力を持つ者はそれを賢く慎重に使用しなければいけないと信じる秘密組織、君主府の支持を得ており、アヴィスタンやガルーンド中のパスファインダー達も彼女に手を貸すためにタルドールへやってくるかもしれない。
共通語はタルドール発祥なため、定義上共通語がタルドールの公用語である。学者や教養のある者はアズラント語、天界語、あるいはエルフ語をステータスの証として学ぶことが多い。この国はカディーラの近くに位置するため、多くの商人、兵士、そして旅人はケレッシュ語を話す。ケーリド人の領地の大半を覆う歴史的なタルドール国境地帯によって、多数の下層階級の市民、就中ヴァーデュラン森内外で暮らす者たちは、少しハリト語を話す。一方、タルドールの多数のドワーフやハーフリングは自分たちのコミュニティの外で人間以外の言語を使用することは少ないため、ドワーフ語やハーフリング語にそれらのグループの外で遭遇することは珍しい。
オパーラでは特に使用される言語の幅が広い。ウールフェン・ガードの存在のため、スカルド語は兵士や召使いの間で一般的であり、タルドールのオシーリオンやジャールメレイとの貿易関係はそれなりの数の商人や会計士がオシーリオン語やヴードラ語を覚えることに繋がっている。
タルドールの帝国と貿易の歴史はその人々に反映されている。数世紀もの間、タルドールは可能な限りの土地を侵略し、可能でなかったものとは貿易を行った。近代のタルドール人には、貴族も平民も、ほとんど全ての人種が見られる。更に、この国では幅広い種類のその他の人型生物も暮らしている。タルドール出身のドワーフはマヒートや臨空要塞クラヴェンカスで暮らしている。ヴァーデュラン森には大勢のノームがウィスピル周辺に住んでいる。タルドールの田舎ではハーフリングの村や農場が、点々としており、都市部の者たちはパン屋、料理人、芸人、そして召使いとして働いている。ハーフエルフからジニーキンまで、半人もタルドールの国民に数えられる。タルドールを故郷と呼ぶ他の珍しい種族もいる。大都市の影にはフェッチリングの家族が隠れて暮らしており、西海岸ではギルマンが見かけられる。ヴァーデュラン森のライカンスロープは北の田舎に住んでいる。テングやヴィシュカニャまでもがゴラリオンを渡り歩き、タルドールへやってきている。五王山脈からのドワーフやキョーニンからのエルフを代表とした、人間でない者たちも頻繁に来訪する。
しかし、表面上は世界的なタルドールは、依然として頑迷に古臭い、人間を中心とした、人間以外には配慮しない帝国である。ハーフオーク、ハーフエルフ、そしてジニーキンなどの半人は特に広く差別されており、一部の人間は公にそのような者たちを「雑種」やより酷い名で呼んでいる。タルドール貴族の血を引くハーフエルフは一般的には快適な生活をするための資源を持ち合わせているが、引き換えに生涯孤立している。ハーフリング、ノーム、そしてハーフオークは召使いにのみ適していると考えられている。ドワーフやエルフはこの差別の例外であるが、それはタルドールの人間にとって利益があると見なされているというだけの理由だ。エルフ達はその美しさと賢さによって、そしてドワーフ達はタルドールの経済的な恵みへの貢献によって。この時代遅れな態度への特筆すべき例外は、アアシマールの許容である。タルドール人達は天使の血を引く者たちは彼らのエイローデンとの永い関係によるものだと信じており、彼らをタルドール自体の文化的、そして道徳的な啓蒙の体現だと考えている。
エイローデンの信仰は依然としてある程度はタルドールの日常であるが、教会が存在している一方でその資産は尽きかけており、それ故に政治的な権力も殆ど持たない。タルドールの実質的な信仰はアバダル、カイデン・カイリーエン、ノルゴーバー、そしてシェリン(所謂「タルドールの神々」)であり、カリストリア、アイオメデイ、そしてクージェスもそれなりの信仰者がいる。多くの忠実なタルドールの伝統主義者達は未だサーレンレイの信仰をタブーと考えているが、現在では違法ではなくなったため、この信仰は貧しい者の間では広まりつつある。より邪悪な神の信仰は社会階級によって大きく異なり、自堕落な貴族はウルガソーアの大食と贅沢の女神としての側面を信仰しており、貧民はノルゴーバー、特に灰色の主としての側面に頼っている。新緑崇拝はヴァーデュラン森の主要な信仰であり、驚くべきことに、この帝国はシェリアックスからいくらかの悪魔信仰をも取り入れている。
ウォー・フォー・ザ・クラウンの多くの場面で、様々な社交と知識の技能が味方を増やしたり、手がかりを発見するのに必須となるだろう。戦闘や物理的な困難も現れるだろうが、プレイヤー達は少なくとも以下の内1つも技能を持っていなければ仲間はずれになったと感じてしまう恐れがある:〈はったり〉、〈交渉〉、〈威圧〉、または〈真意看破〉。そこまで必須ではないが頻繁に出現する技能は〈知識:歴史〉、〈知識:貴族〉、〈芸能〉、〈職能〉、そして〈隠密〉である。社交の遭遇や操作で役立つ多くの特技はPathfinder Roleplaying Game:Ultimate Intrigueに収載されている。
特にテーマに合った特技はPathfinder Campaign Setting:The Inner Sea World Guide収載の《国際派》、《Flagbearer》、《Noble Scion》、《Secret Signs》、《Stoic》、そして《Taldan Duelist》の特技や、キャラクターの血統に関わる物語特技だ。人間でない者はタルドールの保守的な権力者と関わる時にAPGの《人間の振り》特技が役に立つかもしれない。また、タルドールはデュエリストの国でもあり、《素人スワッシュバックラー》ACGや、《攻防一体》、《迎え討ち》、《武器落とし強化》、《踏み込み》、《一撃離脱》、そして《武器の妙技》は全てテーマに合っている。多様なサービスを利用できるPCに、作成特技の必要性は薄いだろう。
以下のキャンペーン特徴に加えて、Pathfinder Roleplaying Game:Advanced Player’s Guideは特にウォー・フォー・ザ・クラウンのテーマに合っているか、重要な技能を与えてくれる。これらは〔養子〕、〔鎧の熟練者〕、〔荒くれ者〕、〔古典の学習者〕、〔信仰の寛容性〕、〔都市の目と耳〕、〔饒舌〕、〔剣客〕、〔集中する精神〕、〔魔法の才能〕、〔サバンナの子〕、〔疑念を持つ者〕、〔博識〕、そして〔世界を旅する者〕。これら以外では、Pathfinder Player Companion:Spymaster’s Handbookがこのキャンペーンに適切な特徴を収載してる。中でも特に適している物は〔Criminal Roots〕、〔Deep Cover〕、〔Hidden Faith〕、〔Official Ties〕、そして〔Persuasive Insight〕である。
ウォー・フォー・ザ・クラウン・アドベンチャー・パスはタルドールの政治に関心を持っているが比較的どうでもいい人物であるプレイヤー達をこの国の舞台での主要な仕手へと導くだろう。キャンペーンはこの帝国の輝かしい首都オパーラで開始され、それぞれのキャラクターはちょっとした行為によって一部の貴族の目に留まり、マルテラ・ロシードに協力を仰がれることになる。背景に拘わらず、それぞれのキャラクターはタルドールを国として守る意思があるべきであり、その大きな目的のために他人と協力する意思があるべきである。それぞれのキャラクターはキャラクター作成時に得る二つの特徴の内、一つは以下のキャンペーン特徴から選ぶ。
〔競技の勝者〕/Athletic Champion:君の体格と技は大衆の注目を集め、君の笑顔はその注目を掴んで離さない。タルドールは優れた競技の選手を高く評価し、彼らを文化的な英雄として祭り上げる。君がグラディエーター、ランナー、レスラー、あるいはその他の競争者であるかに拘わらず、君の最近の勝利は権力者の目に留まった。君は政治的な経歴を掲げたことはないかもしれないが、今の所は君の名声は少し多くの金を得ることに役立っており、それで十分かもしれない。以下の技能から二つを選択する:〈登攀〉、〈交渉〉、〈知覚〉、〈水泳〉。君はそれらの技能に+1の特徴ボーナスを得、それらは君にとって常にクラス技能となる。更に、君は人混みの中を移動することに慣れており、人混みの中を移動するための判定や、呪文や押しやり、引きずり、位置ずらしなどの自分の意思に反して移動させられる効果に対し、+2の特徴ボーナスを得る。
〔オパーラの子〕/Child of Oppara:君はタルドールで有力な貴族の家系に生まれたが、物語の開始時、君は親族と仲が良いかもしれないし悪いかもしれない。君の育ちの良さは上流階級での知識において君にとって有利に働き、君はそれなりの資産を持ってゲームを開始する。ユートロピア皇女の、タルドールの平民達に恵みを与え、何年もの伝統をひっくり返そうとする動きによって、いくつもの引き返せない変化が静かに起こり始めており、君はそのつもりがあろうとなかろうと、それらの陰謀に巻き込まれていく。
この特徴は君が下級貴族の家系に所属していることを想定している(家名は自分で決めて良い)。この場合、君の家族はエイローデンズ・ビューまたはセネーツ・ヒルに小さな屋敷を持っている。もし君がオパーラの大きな貴族の家系に属したいのであれば、1レベル時に《Noble Scion》特技を取得しなければならない。
君は〈鑑定〉と〈知識:貴族〉の判定に+1の特徴ボーナスを得、そのうちの一つは君にとって常にクラス技能となる。《Noble Scion》特技(補足参照)は君にとって【魅力】の前提条件がなくなる。加えて、君は貴族の服、印章指輪、そして200GP以下の価値の魔法でないアイテムを一つ持って開始する。
〔没落貴族〕/Disgraced Noble:君の貴族の家系は一時期は有力だった……君の父がタルドールの将軍、マクシラー・ピタレウスに反抗するまでは。ピタレウスによる君の家系に対する告発は、真実であろうとなかろうと、君の評判を地に落とし、君を社会から孤立させた。今、君にとって唯一重要なのは、自分の快適な暮らしのため、あるいは自分の家の汚名を晴らすために、社会階級を再び登ることだ。君はタルドールの社会的な集団に入り込むために欺瞞を身につけた。君は自分の正体を隠すための〈はったり〉判定に+2の特徴ボーナスと偽造書類を発見するための〈言語学〉判定に+2のボーナスを得、この内の一つの技能は君にとって常にクラス技能となる。一日一回、君は君の家を破壊する陰謀に関わっていたと信じている人型生物を一人選択して良い。君はそのNPCに対する攻撃とダメージ・ロールに君のキャラクター・レベルに等しいラウンド数の間、+1の士気ボーナスを得る。10レベル時、このボーナスは+2に増加する。
〔駆け出しのスター〕/Rising Star:優れた頭脳はその技巧のために苦難を強いられることが多いが、君は幸運な者の一人だ。君の技能は君の食住や道具のために金を出してくれる貴族の目に留まった。君はパトロンに他の文化的なエリートに紹介されながら、上流階級の危険な水域を航行することをゆっくりと学んでいるが、君はまだ食事を得ることが一苦労だった頃を覚えている。君は〈真意看破〉と〈生存〉、そして君の選択した一つの〈製作〉か〈芸能〉を用いた判定に+1の特徴ボーナスを得る。これらの技能の一つは君にとって常にクラス技能となる。一日一回、君は君のパトロンの名を出すか、自身の代表作の名を上げることで一度の〈はったり〉、〈交渉〉、または〈威圧〉の判定に+2の状況ボーナスを得ることができる。君はパトロンからの贈り物として、高品質な楽器か、君の選択した〈製作〉か〈芸能〉技能に適した道具を持ってゲームを開始する。
〔将来の議員〕/Senatorial Hopeful:君は貴族である一方で、辺境の土地出身なため、君はオパーラの社交シーンのスターと親睦を深めるための魅力や富が不足している。君の人生は流行の音や大衆文化から孤立した静かなものであったが、君はこの経験が洞察力の源になると考えており、いつの日か議員となり、人々を助けることを目標としている。長い旅になるだろうが、君は既にどの手を握り、どのように人の望みを注意深く聞くかを学び始めている。君は〈交渉〉と〈知識:地域〉の判定に+1のボーナスを得、これらの技能は君にとって常にクラス技能となる。毎週一回、君は家族のコネを利用して君のキャラクター・レベル×25GPの価値を持つ一つの装備品や消耗品の魔法のアイテム(ポーションやスクロール等)を得ることができる。君が依頼した品物の配達には1d4日かかる。10レベル時、君の依頼できる魔法のアイテムの価値はキャラクター・レベル×50GPに上昇し、君は依頼で呪文サービスやワンドを選択することができる。
〔タルドールの愛国者〕/Taldan Patriot:君は君の国を、その歴史を、そしてその人々を愛している……彼らは君を愛さないかもしれないが。君が官僚であろうが、下級貴族であろうが、兵士であろうが、君は君のコミュニティが可能な限り良いものであってほしく、君はその愛国心をタルドールの人々に役立つ地位に注いでいる。君は全ての〈真意看破〉と〈知識:歴史〉判定に+1のボーナスを得る。更に、一日一回、君は一人のタルドールの貴族の人柄について社交戦における発見判定で知ることのできる情報を含む、一つの詳細な事実(趣味や嫌いなもの)を思い出すことができる。
〔若き改革派〕/Young Reformer:君はタルドールの下流階級として生まれ、友人や家族が生活の改善の希望なしに終わりなき苦労を強いられていることに嫌気が差したのかもしれないし、君の特権階級としての態度は同情心や悲劇によって砕かれたのかもしれない。いずれにせよ、君は今の体制が壊れているということを理解しており、君はそれを直すことに人生を捧げてきた。しかしタルドールは大王と同じくらい伝統に支配されており、改革には君が持っている以上の影響力が必要だ……今の所は。君は僅かな友人や味方、そして十分な意思の強さを持っているが、国を変える力を得るためには、君はより密かな手段で間違いを正し、上流階級の悪行を食い止める必要がある。君は〈装置無力化〉と〈知識:地域〉の判定に+1の特徴ボーナスを得、この内の一つの技能は君にとって常にクラス技能となる。一日一回、君は君の仲間が君のために手を回しておいたことにより、一度の〈はったり〉、〈装置無力化〉、〈威圧〉、または〈手先の早業〉の代わりに〈知識:地域〉の判定を行っても良い。この〈知識:地域〉判定の難易度は置換する技能の難易度に等しい。手を回してもらう内容(扉の鍵を空けておく、衛兵を排除しておく、盗んだ鍵を置いておく等)は事前に予期して準備することが現実的なものでなければならない。例えば、君は変装して旅行している極めて重要な外交官であると、貴族に納得させるよう手配できるが、戦闘中に君のネットワークに代わりにフェイントをしてもらうことはできない。この能力は事前に使用する必要はない。ある困難に遭遇した時に宣言することで、君はこの状況を予期し、事前に手を回してもらっていたことになる。
君は家族に好かれているかどうかに拘わらず、オパーラの重要な貴族の家系のうちの1つである。多くの場合、これらの家族はマキシラール・ピタレウスに忠実な帝国主義者であり、そういったものとして君ははみ出し者であるか、君の家族は完全に君を絶縁している。
前提条件:【魅力】13あるいは〔オパーラの子〕の特徴、取得時は1レベルでなければならない。
利益:君は全ての〈知識:貴族〉に+2ボーナスを得て、〈知識:貴族〉は常に君のクラス技能である。君はまた、どの家系に属しているかによって追加の利益を得る。
バスリ/Basri:バスリ:君はバスリを構成する大使、外交官、旅行者の長い家系の出身であり、君の家族はどのタルドールの人間達よりもエルフの国家キョーニンと強い結びつきを維持している。以下のうちから1つの開始時ボーナス言語を選択すること:天上語、エルフ語、ノーム語、森語。君は以下のうちの1つの武器に習熟を得る:ロングボウ(コンポジットを含む)、ロングソード、レイピア、あるいはショートボウ(コンポジットを含む)。もし君が1レベル時点で全ての軍用武器に習熟しているのなら、代わりにエルヴン・カーヴ・ブレイドを選択可能である。
クレメント/Clement:君のガルーンドと大ムワンギの祖先は第6回調査軍の間、タルドールに誇らしげに仕え、その功績のために称号を与えられた。今日まで貴族の称号を維持してきた君の家系は鋭い洞察と刺すような観察能力によって知られている。君は〈交渉〉を試みる際に【魅力】修正値の代わりに【判断力】修正値を加えてよい。
コルキナ/Corcina:君の家系は第2回調査軍の間、傑出することになり、探検家と船乗りとしてその遺産を維持している。君は 〈登攀〉と〈脱出術〉に+1ボーナスを得、道に迷わないための〈生存〉に+2ボーナスを得る。
カルティス/Karthis:君の家系は著名な退役軍人、カリスマ的な扇動家、そして外国人嫌いの熱狂者の家系である。家族の残りが帝国主義者になるにつれ、君は彼らから親切を持たれ続けられるよう努力しなくなっていったが、子供時代の厳しい教習の間に彼らが君に教えた技能を維持している。君はイニシアチブ判定に【敏捷】修正値の代わりに【魅力】修正値を適用することができる。
カストナー/Kastner:君の信念が硬い家系は、君の悪魔崇拝のシェリアックスの従兄弟達――タルドールの最も偉大な治療者、司祭、そして交渉人の一部を触発した悪意――に対立することによって身をもってそれを示している。君は1日1回、追加のエネルギー放出、癒しの手、あるいはメスメリストの技巧を得るか、あるいは3ラウンドのバードの呪芸を得る。たとえもし、君が後に記載された別のクラス特徴のうちの1つを与える2番目のクラスを獲得したとしても、君はこれらの利益のうちの1つだけを得る。
ロシード/Lotheed:君の家系の階級はタルドールで最も偉大な魔術士と秘術の学徒を含んでおり、内海地域で最も包括的な秘術の図書館のうちの幾つかでの教育は君にとっては生得権であった。もし君の【知力】が11以上であるなら、君は下記の擬似呪文能力を得る:1/日―ダンシング・ライツ、プレスティディジテイション、リード・マジック、アンシーン・サーヴァント。これらの効果の術者レベルは君のクラス・レベルの半分に等しい。
メロセット/Merosett:長い間、オパーラの官僚制に付き物であった、君の大きな家系の狡猾な一員達は、家系を追跡することと、お役所仕事を回避することに特化している。君は秘密のメッセージを送る〈はったり〉と秘密のメッセージを見破る〈真意看破〉に+5ボーナスを得る。君は記録文書の保管所を探す、政府の事務室を通り抜ける、契約を再検討する、あるいは何世代にも渡って君の家系がマスターしてきた複雑な官僚制度に働きかけるそれ以外のものに必要な時間を半分にする。
スタヴィアン/Stavian:皇帝の近しい親類として、君の家系は絶え間のない脅迫と直接的な影響によって彩られた物質的な豊かさと道楽の人生を送ってきた。君は毒に対する頑健セーヴ、(魅惑)と(強制)の副系統を持つ心術呪文に対する意志セーヴに+2ボーナスを得る。
タルボット/Talbot:君の殺風景で保守的な家系は一義的には商人兼起業家であり、第二に貴族である。彼らは代わりに富を得ることが出来るのなら、義務を諦めることを厭わないのである。彼らは将来の冒険家を非難し、容易にそれらを家族の階級から追放し、君を宿無しにした。君は君の選んだ〈職能〉に+2ボーナスを得る。1日に1回、君はこの〈職能〉を1回の〈知識〉の代わりに使うことができる。
ヴァリマ/Varima:君の家系はヴードラから何百年も前にタルドールへと移民してきた。高尚なルーツ、大規模な貿易のコネ、そして交渉における比類ない技能のおかげですぐにオパーラの社交シーンにおいて断固とした欠かせないものへと発展したのである。君が群衆あるいは部屋にいる人々(個人ではなく)に影響を与えるために〈交渉〉をする時、いつでも、君は2回ロールしてより良い結果を選ぶ。
ヴェルニサント/Vernisant:君の家系は大将軍アルニサントの子孫である。彼は輝かしき十字軍の間、タルドール軍を指揮していたのであり、誰もがそれを忘れることはないだろう。熱心な帝国主義者の支援と国家主義者の熱情は今、君の親戚から君を疎外されたままにしているのだが、それにも拘わらず彼らの学問を重く見る姿勢は君の心に印を残している。君は少なくとも1ランク持っている全ての〈知識〉に+1ボーナスを得る。
ヴィンマルク/Vinmark:新入りにして部外者である君のウールフェン人の家系は19年前、スタヴィアン3世がウールフェン・ガードとして従事したことへの褒章として君の家長をオパーラ男爵に叙任した時、貴族に列せられた。確立された上流階級人は君の家系を粗野であると見なしており、君の家系を利用すれば大公のご機嫌を取れると考えない限り君の家系をタルドールの政治の枠外に置くことを選んでいるが、苦労して勝ち取った実用性と新入りらしい冷笑的な態度が、ほとんどのタルドール人貴族に欠けている洞察を君に齎している。1日に1回、〈真意看破〉をロールする時、君は2回ダイスを振って良い方の結果を利用してよい。
ゼスパイア/Zespire:君の家系は慈善団体を運営し、社会の改革について重点的にロビー活動をし、オパーラ人の貴族の間にはほとんど友達はいないのだが、一般庶民とあまり有力でない貴族からの心からの支援を受けている。
君は一般市民と称号がロード、レディ、ナイト、ダァムの貴族達とやりとりをする場合の〈交渉〉と〈芸能〉に+2のボーナスを得る。
特殊:これはPathfinder Campaign Setting:The Inner Sea World Guideに示されている《Noble Scion》特技のヴァリアントである。もし君がこのバージョンの特技を取得するのなら、君は上記の本にあるバージョンの特技を取得することはできなくなる。
いくつかの他の本は君のウォー・フォー・ザ・クラウン・アドベンチャー・パスに多くの視点と知識を提供する。必要でなくても、このキャンペーンを通じて遊ぶ体験を大いに強化することができる源が以下に記載されている。
Pathfinder Campaign Setting:Inner Sea Intrigue
Pathfinder Campaign Setting:Taldor, The First Empire
Pathfinder Campaign Setting:Inner Sea Races(additional details on the Taldan people)
Pathfinder Campaign Setting:Inner Sea Intrigue
Pathfinder Player Companion:Heroes of the High Court
Pathfinder Player Companion:Spymaster’s Handbook
自分達の帝国が燃えている時にお茶をすすっているような生粋の洒落者の国、という一般的なタルドールの偏見は完全に根拠のないものというわけではないが、国全体がただそれだけだと軽んじるのは、その市民と影響力に迷惑というものだ。アヴィスタンの文化と言語のほとんどは、タルドールから生じたものであり、この帝国は3つの大陸の歴史に影響を与えたのである。しかし、国家そのものの健全さよりも贅沢に興味がもっと興味がある君主に統治されてきており、大公スタヴィアン3世がその最も直近の君主なのであるが、この国は今やかつてそうであった帝国の影というべきものとなっている。
タルドールは長い歴史と根深い不和を持つ国家である。スターストーン落下と暗黒の時代に続いて、自らを立て直すための最初のアヴィスタンにおける入植地があり、異なった都市国家群と同盟が結ばれ1つの帝国になった。伝説的な始皇帝タルダリスによって達成されたこの神話級の事業は、国家の誕生をもたらしただけではなく、国家主義の情熱をも生み出した。タルドール人の愛国心は勤労と規律を称賛した。発生して間もない頃の帝国は騎兵隊を揃え、そしてその大陸のそこ以外に点在するケーリドの都市国家群では及びもつかない規模の、オパーラからアルカディア海への街道を建造することによって、これらの価値観を継承した。タルドールの軍隊は帝国の経済力を作ったかもしれない。タルドール人達は自分達の征服を「後進的な」人々とその劣った国々に啓発をもたらしたと見なしており、帝国そのものを、自分たちにはその壮大な植民地から流れ出す膨大な富を受けるに足る価値があることの証拠であると思っていた。
それらの支配の日々は過ぎ去って久しい。タルドール人達がそれらを未だなお「植民地」と呼ぶのにも拘わらず、アンドーラン、シェリアックス、ガルト、イズガー、そしてラストウォールは全て独立国家であり、その国民と資源はもはやタルドール政府あるいはタルドール人の利用の対象とはなっていない。タルドールは軍隊と経済的な強大さを残しているものの、巨大だが常に減少していく富、他の国とは隔絶した貴族制度、そして国家主義的なノスタルジア以外に過去の栄光を覗かせるものなどほとんどない。タルドールの文化はなおも努力と規律を称賛しているが、一般大衆はそれらの美徳を実践しているにも拘わらず、認識され、報酬を受ける者はほとんどない。貴族は、彼らの帝国の前任者と同様、自分達自身のために自らは国家の誇りであると称しているが、自分達の継続する富こそが自分達が正しいことをしていると証明するのだと確信している。その間中ずっと、タルドールのかつては伝説的であった水道橋、橋、運河、そして街道といった社会基盤は崩れていっており、人口の孤立地帯は完璧に国家から切り離され、郊外の農業の崩壊に伴って、その地域は人が住めないものになっていっている。腐敗した複雑な官僚制度は、このシステムを改良させようと望む――あるいは単に自国を維持しようとしているだけの――貴族達を妨害する。
タルドールの人々は古のアズラントの子孫であるが、彼らが主張するほどに直系の子孫というわけではない。彼らの祖先はスターストーン落下後にゆっくりと内海地域中をさまよい、オークと攻撃的なケーリド種族によってだんだんと東へと押し出されていった。長い間に、彼らがケーリド人、ガルーンド人、そしてケレッシュ人と血と言語が混じり合うにつれ、タルドール人の祖先は全く異なる人々となっていった。ほとんどの現代のタルドール人は自分の祖先を少なくとも2つの大陸まで遡ることが出来るが、その文化の鍵となる特徴、即ち信頼、頑固さ、強い仲間意識と歴史と芸術への愛を共有している。
激しい伝統主義は、タルドール文化が多くの国々が数十年前かけて次第に捨ててきた性的差別と人種的差別主義に未だに踏みとどまっていることを意味している。どんなタルドール人でも自分の不動産を所有できる、若しくは昇進、結婚、あるいは契約を通じて称号を保有できる一方で、男系相続の法は男子だけが相続できると明言しており、これはタルドールの不公平性をはっきりと示し、また、永続化させている。多くの改革者達――皇帝の娘であるユートロピア皇女を含む――がこうした姿勢を覆そうとしているが、タルドールは全体として、それが良くする為のものであってすら、原則的問題であるとして変化に抵抗している。結局のところ、古い方法こそが帝国を生み出し、敵対的な世界を征服した。それが今は機能しない理由はあるだろうか?
タルドールは内海の東海岸周辺まで領土を伸ばしており、北は温和なヴァーデュラン森 、南はジャルルーン川を囲む温かな平地、そして東は世界の果て山脈とその先に広がるサバンナへと到達している。その領地は山麓の丘、原生林、広い岩だらけの平野、青々とした原野、沼地、砂漠を取り囲んでおり、巨大な道路網と運河によって分断されている。タルドール人の多くは内海の海岸と力強きポースモス川の堤防の周辺に住んでいるが、大きな開拓地が世界の果て山脈と、争いの絶えない南の土地にも存在する。
タルドールは12の県と数十の小さい、主として無人の州によって構成されている。それぞれの県はより小さな公爵領に分かれており、公爵領は伯爵領に、伯爵領は最終的に男爵領に分割されている。国家の継続的な繁栄は、輸出することの出来る地域の生産物の純然たる多様性に依存している。世界の果て山脈には深いところに豊かな鉄、金、銀、銅、スズの鉱脈がある。海岸では魚、貝が取れ、強い風が地域の風車に力を与えている。ヴァーデュラン森は豊富な木材と様々な、価値ある植物――薬草、フルーツ、独特なスパイスを含む――を産出している。国の東と北の国境沿いに火山が存在していることによって、肥沃な土地が大量のリンゴ、イチジク、種子、ブドウ、西洋ナシ、ザクロ、米、オリーブをもたらしていて、それら全てがタルドール料理では食材に使われている。
何世紀も放っておかれたせいで、世界の羨望の的であったこともある土木工学の驚異は、今やゆっくりと崩壊しており、顕著な遺棄された風景という景色を作り出している。運河は泥とアシでつまっており、荒れ果てた水道橋は原野のさなかに美しい滝を作っており、数マイルして再開するまで道路は単に途切れている。これにも拘わらず、タルドールは田舎の共同体としてはまだアヴィスタンで最も高い生活水準の1つを保っており、景気の悪い年ですら、ほとんどの農民達は次の食事をどうするのか心配する必要がない。
タルドールは世襲君主制であって、帝国の法令を機能する法律に具体化し、皇帝の注意を引かない必要な問題についての投票を行う大きな元老院がある。不規則に広がった官僚制度が今日の政府の課題を管理している。大公スタヴィアン3世は玉座に座っているが、彼は歳をとった無関心な皇帝で、多大なる富を享受し、あまり公衆の前に姿を現さない。国家の222人の元老院達も同じくこの統治に対し手際の良い試みをしており、この国の政府の大半を惰性のまま走らせている。帝国の官僚制度は機能を維持――収穫と報道と災害援助の管理、そして税金徴収と法律上の論争の調停――している一方で、官僚の勤勉と努力は、しばしば部署を資金不足にしたり、冗長にしたり、完全に人手不足にしたり、紙面上でしか存在しないような状態にしたりしている、千年単位でつぎはぎされた尽力によって妨げられている。
国家の規則の多くは地域の貴族の手にあり、生活の質は地元の貴族の気まぐれによって大きく異なっている。全てのタルドール人が自由に移住する自由を持っている一方で、実際には新しい領地へ移動するにはしばしば金がかかりすぎて実行不可能であり、若干の貴族達は法律に背いて借家人達の人質を持っていることすらある。
タルドールは伝統に固執している一方で、十分な数の元老院、貴族、そして一般市民達は改革運動の始まりを作るほど、現状にうんざりしている。彼らは自分達を忠誠主義者と呼び、どんな個人よりも――皇帝その人ですらも――よりも歴史、偉大なる行い、そしてタルドールの人々への忠誠を宣言する。彼女は忠誠主義者ではないが、ユートロピア皇女もまた、タルドールの古の習慣の多くを改革し、体制を破壊することに取り組んでいる。彼女は特に貧困と性別の不平等に注力しており、忠誠主義者の中では多くの人々が彼女の、男系相続を廃止し、誰でも家族の土地と称号を受け継げるようにするという努力を支援している。
忠誠主義者の反対に位置するのが増大する帝国主義者の動きである。彼らは男系相続の王冠こそがタルドール唯一の権力であり、元老院と貴族達は皇帝の意志を実行するためだけにいると見なしているのである。この異なる集団は、タルドールの偉大さはその最古の伝統に根ざしており、新たな考えを取り入れ得ることによってタルドールはその帝国としての強さを失ってしまうのだという堅固な信念を共有している。彼らの内の最も過激なメンバーは中立的立場というものは存在出来ないのだと強く主張している:タルドールはガルトやアンドーランのような前の植民地を再征服しなければならないか、そうでなければ帝国は無の中に崩壊していくように定められているのだ、と。
全てのタルドール人が派閥に属しているわけではない一方で、タルドール社会の増大する二極化は全国的な緊張を引き起こしている。その他の対立――増大するスーヴィアでの政治的不安定さ、アンドーラン政府を七名家が陥れようとしているという噂、シェリアックスでの押しつぶされた反乱、そしてラヴォウネルの脱退――はただ混乱を増幅させるばかりである。最近までちょっとした私的な同好会程度のものでしかなかった、タルドールの貴族階級の長期間続く鎹だった秘密結社と友愛会は、大公スタヴィアン3世の崩御が痛々しい長引く継承に纏わる対立を導くであろうという予測から、今や権力と財産を得る動きを始めている。
ウォー・フォー・ザ・クラウンにおいて、サロンと舞踏会で起こる全ての争いは失われた地下墓所や秘密のねぐらで行われる大胆な剣の戦いと同じくらい現実のものであり、致命的なものでもある。PCは強い腕と同じ程に、機知と狡猾さを必要とすることになるだろう。このルールには、PCが携わるであろう社交のやり取りの最もよくあるタイプを記載する。これらのルールはPathfinder RPG Ultimate Intrigueの第3章に示されている個人へ影響を与えるルールの単純化したバージョンである。
登場人物/Dramatis Personae:社交的衝突のために、NPCは登場人物セクションの中で社交データと共に記載されている。社交データは若干の基本的な描写を提供しており、それにはNPCの背景、外見、人格、そして目標が含まれる。それにはまた、適切な技能ボーナスとNPCの偏見、土性骨、弱点、PCへの開始時の態度、それを変えるために必要な段階、そしてNPCの態度を改善させた時にPCが受ける利益といったルール上の要素が書かれている。
技能/Skills:この項目は社交のやり取りに適切なNPCの技能ボーナスを記載している。大抵の場合、〈はったり〉、〈交渉〉、〈威圧〉、〈真意看破〉を含んでいるが、これに限らない。
偏見/Biases:偏見はNPCが、自分が持っているということを知らないかもしれない潜在意識の好みであるが、誰の話に耳を傾けるか、どの情報を却下するか、いつやり取りを歓迎するか、外部からの話を何が彼らに拒否させるかといったことを形作る。NPCが好意的な偏見を持っている人々や状況は彼らに影響を与えようとする全ての判定に+2ボーナスを与えるが、否定的な偏見を持っている場合はこのような判定に-2のペナルティを受ける。ある偏見からの修正値は別の偏見からのものと累積するので、エルフを好む(+2)が女性を嫌う(-2)NPCに影響を与えようとするエルフの女性は相殺してゼロになる。
土性骨/Strengths:土性骨はNPCが特に強情になるような特定の信念、話題、価値観だ。土性骨を利用してNPCに影響を与えようとする試みは-4のペナルティを受ける。非常にけちな政治家は貧困の苦境に対して土性骨を持っているかもしれない。だから、もし寄付や困窮している人間の苦しみについて議論しながらPCが彼に対して〈交渉〉、〈威圧〉、その他の技能を使うのなら、PCは-4のペナルティを受ける。
弱点/Weaknesses:弱点はNPCが揺り動かされる可能性が高いアプローチ、画策、そしてアイデアであり、彼らに影響を与えるのにより有用であり、使われた場合、影響判定に+4のボーナスを与える。例えば、もし技能判定を試みているPCが選挙献金を提供することに決めるなら、非常にけちな政治家に対する影響判定には+4ボーナスがつくかもしれない。
開始時の態度/Starting Attitude:この項目はNPCが最初にPCに感じることを記載しており、〈交渉〉技能の下に記載されている態度に言及している。(Pathfinder RPG Core Rulebook 95ページ)。
影響判定/Influence Checks:この項目はNPCに影響を与えるためにPCが使うことの出来る様々な技能と、それぞれの技能についての難易度を記載している。ほとんどのNPCは単純な〈交渉〉よりも、仕事や趣味について話した時により影響されやすい。太字で記載された技能と難易度は、そのNPCに対して影響を与えるのにどの技能を使用できるかを知る為の発見判定のものだ。
必要な成功数/Successes Needed:この項目は短い期間でNPCの好意を勝ち取るか、長期間において態度を1段階協力的側へと遷移する為に必要な影響判定の成功数を記載している。冒険と遭遇はPCが達成しなければならない調整が何かを記載しているだろう。
特殊/Special:この項目はこのNPCに影響を与えるのに適用されるかもしれない特殊な状況、制限された利用、そしてその他の修正について書かれている。
利益/Benefit:この項目はこのNPCの態度を改善したことに対してPCがどんな報酬を受け取るか記載している。
ストーリー報酬/Story Award:この項目はこのNPCに影響を与えたことによってPCが受け取る経験点を記載している。
PCは難易度20の〈真意看破〉によって偏見を明らかにすることが出来て、NPCの土性骨と弱点については発見判定の成功によって知ることが出来る。これらのデータはまた、それぞれのNPCの一般的な社交技能に関するボーナスを記載している。これはPCが取るかもしれない一般的でないどんな行動にも対応するためのものである。
冒険それぞれは、その冒険の社交に焦点を置いた物語用の時系列を提供する。社交戦闘におけるそれぞれの出来事あるいは状況が、それと結び付けられる社交ラウンドの数と共に記載されている。これらの社交ラウンドの間、PCはNPCに影響を与えるためか、一般的に、その場所の特定のエリアでNPCと関わりを持つための技能判定を試みることが出来る。PCはそれぞれのラウンドに1回のメジャー・アクションを試みることが出来る。メジャー・アクションにはエリアに影響を与える、特定のNPCに影響を与える、あるいは任務に関する目的に関連した技能判定を数回、試みることが出来る。PCはまた、食べる、飲む、あるイベントの別のエリアへとさまよう、そして他のPCと交流をするといった単純な行動を何回でもすることが出来る。
時折、PCはたった1人の個人を相手にするよりも1つの部屋にいる群衆に影響を与えようとするかもしれない。部屋の説明には適切な技能とそれぞれの難易度を記載している。それぞれのエリアは影響レベルを表すための2つの閾値を持っている。これらの技能判定が難易度を越える1回ごとに、1ポイントがそのエリアに付け加えられ、貯蔵されていく。ひとたびパーティ全体として稼いだポイントの数がエリアの閾値を上回ったなら、GMはPCに、それに関連した情報とストーリー報酬を与える。
それぞれの社交ラウンドで、PCはイベントにおいてどの場所に移動することも可能であり、影響を与える標的として、そのエリアにいる1人のNPCを選ぶことが出来る。PCはそれから発見判定あるいは影響判定を試みるのである。
発見判定/Discovery Checks:発見判定によってPCは自分が標的に影響を与えるのに使うことの出来る1つの技能か、標的の偏見、土性骨、弱点のうちの1つを知ることが出来る。発見判定に必要な正確な技能と難易度は変動する。影響判定に使うことの出来る技能を知るための発見判定は通常、〈真意看破〉か、〈知識:貴族〉の成功が必要である。その難易度は標的のNPCの社交データにある括弧の中に記載されている。標的の弱点あるいは土性骨を知るには、適切なデータの項目の括弧の中にある難易度と技能を使う必要があり、偏見を知るには難易度20の〈真意看破〉が必要である。GMはこれらのステータスを知るために必要な技能を、別個の発見判定なしで明かしてよい。
影響判定/Influence Checks:影響判定は標的に良い印象を与えるか、尊敬を得るための試みである。PCは標的の影響の項目にある技能のうちの1つを用いて技能判定をしなければならない。彼らは、その技能が何であるかについて発見判定の成功か、あるいは標的の評判に基づいて推測することが可能である。記載されている難易度に対して技能判定に成功すれば、それは1回の成功として数えられ、PCへの愛情あるいは敬意が増したことを示唆している。それぞれの標的の項目には望ましい結果を達成するために必要な成功の総計数が書かれている(直下の好意を得ると態度を変えるを参照すること)。GMの裁量によって、PCはNPCのデータには記載されていないが、記載されている技能に関連する技能を判定に使おうと試みることが出来る。しかしながら、そうすることによって影響判定の難易度は5上昇する。
特記していない限り、失敗した発見あるいは影響判定は次のラウンドにペナルティなしで再度試みることが出来る。
好意を得る/Winning Favor:社交界でちょっとしたお喋りをするといった場合には、PCは単にNPCの好意を得ることだけを求められていることがある。この意図は、最初の印象を良いものにして、将来、覚えてもらうということである。このような状況において、PCはNPCが提供すると書かれているどんな利益を得るにしても、特定の成功数を蓄積するだけでよいのだが、その利益は問題となっている社交イベントを越えて持続することは滅多にない。
態度を変える/Changing Attitudes:NPCの態度を長期的に変えることはより難しく、時間がかかる。一夜かけて良い印象を与えようと望むだけの「好意を得る」とは違って、PCは今やその人物と友人になり味方になり、心と精神を射止め、そのNPCの前途に長期的な調整を引き起こすように望むことになる。PCがNPCの態度を変えようとしている社交遭遇において、それぞれのNPCの開始時のそのPCへの態度は影響セクションに記載されており、そしてそのPCが記載された成功数を累積させるたびに、NPCの態度は1段階協力的へと遷移する。累積された成功はそうするとゼロになり、再びその過程が始まる。一般的に、社交ラウンドは態度を変えている時ずっと長くなり、あるイベントでは時間が少なく限られているかもしれないが、将来PCはそうしたNPCに影響を与える更なる機会を持つことだろう。この拡張された時間の枠はPCにとって不利にも作用するかもしれない。PCたちが態度を変えようとしているNPCとやり取りをしないまま過ごす1週間ごとに、彼らはそのNPCを得るために累積していた1回の成功を失うだろう。特別なイベントではそうならないこともあるかもしれないが、時間の経過と成功を失うことはNPCの態度を悪化させる。
皇帝スタヴィアン3世の娘であり、唯一の子どもであり、そして常に苛立たせる源であるユートロピア皇女は優雅さと大いなるエネルギー、感謝と軽蔑、深慮と即興をかけ合わせたかのような人物であり、完全に彼女の国家の次の指導者となろうとしている。
経験点 19,200
人間、7レベル・アリストクラート/6レベル・スワッシュバッククラー(Pathfinder RPG Advanced Class Guide 56)
中立にして善/中型サイズの人型生物(人間)
イニシアチブ +8; 感覚 〈知覚〉+2
アーマー・クラス 24、接触17、立ちすくみ20(+4鎧、+2反発、+2【敏】、+2回避)
ヒット・ポイント 110(13 ヒット・ダイス; 7d8+6d10+46)
頑健 +9、反応 +12、意志 +14
防御的能力 不死身 4/日、軽快 +1
移動速度 30フィート
近接 +2レイピア=+6/+11/+6(1d6+3/15~20 +6精密)
特殊攻撃 発露(武勇伝、回避の心意気、跳ね起き、威圧剣舞、野送り、精密打撃、スワッシュバックラーのイニシアチブ)、心意気(3)、スワッシュバックラー武器訓練+1
戦闘中 ユートロピアは最近戦闘を避け、通常は衛兵と一緒に移動しているが、彼女はまだ時折の決闘には参加している。彼女は《攻防一体》を使い、武器落としをする前に防御で相手を疲れさせる。怒っていたり自衛していたりする時彼女は汚い戦い方をするのを躊躇わず、時には敵を殴ったり相手の目に唾を吐き、素早く頭突きを加えるかもしれない。
士気 ユートロピアは概して武装解除させるために決闘するが、負けず嫌いで、20ヒット・ポイントを下回るまで降伏はしない。
【筋】10、【敏】14、【耐】14、【知】13、【判】14、【魅】16
基本攻撃 +11; 戦技ボーナス +11; 戦技防御値 28
特技 《攻防一体》、《クリティカル熟練》、《回避》、《裏技強化》、《武器落とし強化》、《イニシアチブ強化》、《鋼の意志強化》、《鋼の意志》、《説得力》、《追加HP》
技能 〈軽業〉+8、〈はったり〉+11、〈交渉〉+20、〈威圧〉+10、〈知識:神秘学、工学、地理、自然、次元界、宗教〉+5、〈知識:歴史〉+7、〈知識:地域、貴族〉+13、〈知覚〉+15、〈真意看破〉+13、〈隠密〉+15
言語 共通語、ケレッシュ語
その他の特殊能力) スワッシュバックラーの妙技
装備 +3ミスラル製チェイン・シャツ、+2 レイピア、ベルト・オヴ・マイティ・コンスティチューション+4、ライディング・ジャケット・オヴ・レジスタンス+3(クローク・オヴ・レジスタンス+3と同等品)、リング・オヴ・プロテクション+3、スタヴィアンの認印付き指輪、急須、580GP
裕福/Affluent:ユーロトピアは通常、多くのタルドール特有の宝を含む、かなりの財産を所持しているが、現在彼女はこれらにアクセスすることができない。彼女は標準的なレベルのNPCよりも良い装備を持っているが、脅威度に影響するには十分な物ではない。
ユートロピア・スタヴィアン皇女は大公スタヴィアン3世の長女であり、彼の唯一の存命の子どもである。彼女の母親であるエトロフェはカリウス2世の誕生後、すぐに死亡しており、ユートロピアは母親に関するはっきりとした思い出を持たない。そうであったとしても、彼女の子供時代の多くで、ユートロピア、その父親、そして弟は満ち足りた人生を送っているようだった。スタヴィアンは若かりし彼の子らを溺愛し、他の貴族が乳母に任せるところを、彼らと遊び、外へと連れて行ったのである。ユートロピアは幸せで快適で、決してその幸せの代償が何であるかを考えることはなかった。カリウスの死は彼女の庇護された目を世界についての偉大なる多くの真実へと開かせた――何よりもまず第一に喪失の痛みへと目を向け、そしてそこから彼女はタルドールでいかに多くの人々が、自分の祝福された人生を支えるために毎日犠牲になってきたかを急速に理解したのである。
学校に通う期間とその後、ユートロピアは問題を起こし、タルドールの社交界を憤慨させ、もう疎遠になっていた父親を激怒させるような、反抗的な年月を過ごした。求婚者――若きゼルヴィンギアン公爵――との決闘をセッティングした後、彼女は「頭突き皇女」というニックネームを非常に不適当なやり方で得ることになった。そして、彼女が短い間、冒険家と共に世界の果て山脈の内外を旅したという噂すら出回った。とうとう彼女はその反抗によって、様々な慈善事業と改革グループを支援し、後には導くようになった。それと同時に、彼女は立派な気高い娘(反抗的であるとしても)の役割を再開したが、滅多に表に出ることはないにしても、彼女の決闘者としての評判は常につきまとった。
彼女のトラブルメーカーとしての、そして扇動家――少なくとも、ある特定の関係者によれば――としてすらの評判にも拘わらず、ユートロピアは誇り高きタルドールの愛国者である。彼女は過去にタルドールが極めた信じがたい栄光の極みを理解しているが、彼女はまた、そうした偉大なる高みには堅固な基礎が――人々を支援し、守り、全ての市民を輝かせる社会的な連絡網が――必要だということも理解している。彼女は貴族達がかなりの高い基準にある限り、君主制を信じている。彼女は数回の外交訪問をして、民主主義のアンドーラン様式がいかにたやすく堕落してしまったかを知りすぎたのである。この哲学は自身に直接権力を与えてしまうという事実はいつも彼女をしつこく悩ませる考えであって、自分の政治的な念願を推進するべきか否かに関して、彼女は長らく優柔不断さを持ち合わせている。
彼女の父親は、ユートロピアを大将軍マキシラール・ピタレウスと結婚させ、その将軍を自らの公的な継承者に任命しようと試みた際、ユートロピアの為の決断をした。ユートロピアは彼女の夫となるべき人間が、感情的にも政治的にも不快であることに気付いて、自分自身で王位を求めることを決意した。しかし15年間、彼女は男系相続を破壊することに重点のほとんどを置いていたので、もし実際に戴冠した時何をするかについては殆ど注意を払っていない。彼女の一部はこのような問題を考えるためには自分には十年かそれ以上の年月が必要ではないかと疑っていたのだが、今やタルドールは混沌の中に溶けゆこうとしていて、彼女は帝の役割を担う準備が自分にはまだまだ出来ていないと今までよりも強く感じている。
自分の国を誇りに思う一方で、ユートロピアはタルドールが過去にしてきた残虐な行いを認識している。原住のケーリド人達の大量虐殺、厳しい性別的役割の無理強い、サーレンレイ信者の排除。彼女はこうした過去から続いてきた罪について正すことが出来るか、償いをすることが出来るのかすら定かではないのだが、少なくとも、彼女はタルドールを将来同じ間違いを犯さない国家にしたいと思っている。この条件付きの愛と歴史的な自覚が彼女のパスファインダー協会との長きにわたる友誼と組み合わさって、多くの批評家に、彼女は自国よりも外国を優先していると非難させ、あるいはユートロピアは玉座を得てすぐに王国の重要なものをアブサロムに渡してしまうだろう、と主張させることになっている。
ユートロピアは表向きは自信家で、自制心がある力強い女性で、スタヴィアンから特色のある頬骨を、母親から痛烈に表情豊かな目を受け継いでいる。内部においては、彼女は自分がしていることについて確信をそれほど持っておらず、自分の想定と動機について自問自答を繰り返している。彼女の不安は頻繁な不眠症を引き起こしており、見つけられるあらゆる話題に関しての読書をしている時間や夜遅くに、彼女はまさにそうした考えが父親の精神的な健康を損なう切っ掛けになったのではないかと懸念している。彼女は心から友人、伝手、そして同盟者を愛しているが、自分の犬のタルドギスよりも心を寄せ信頼している者は僅かだ。王冠のための戦争が激化していくにつれ、ユートロピアは弟と自分が知っていた幸福な父をただ懐かしく思う自分に何よりも気付いていく。
ユートロピアはこのアドベンチャー・パス全体を通じて顕著な役割を果たすが、彼女は一般的には距離を置いたところにいる。彼女は実際のキャラクターであるのと同時に表看板であり、概念であるため、君はPCにとって重要な目標を反映させる為に彼女の正確な人格と優先順位を調整して良い。君自身の独自のこの皇女の解釈によって、通常、彼女に帰される性別の平等以外にも彼女は追加の社会改革を優先付けることになるかもしれない。宗教的な寛容さから移民改革、人種の包括性まで。PCが等しく重要であり、動機になると見なすどんな話題でもよい。
君は好きなように、そのキャンペーンの中でユートロピアは身近な存在であるか、遠い存在であるかを決めてよい。後援者のことを可能な限り、あまり考えたくないというグループもいるし、より密接な関係を望むグループもいるだろう。ユートロピアはアドベンチャー・パスにおいてマーテラの役割の多くを代替することも可能である。PCに任務を直接割り当てたり、イベントが進行する時に彼らに助言を与えたり、PCにもっと直接的にタルドールの政治に関わっていると感じさせ、もしかするとその潜在的な新しい指導者により影響を与えていると感じさせることも出来るだろう。より混沌とした、対立志向の、あるいは民主主義的な精神のPCは、たとえ公益に向けて取り組んでいようとも、ユートロピアをライバルと見なすかもしれない。