ドルーマ は、アヴィスタン亜大陸中央部のエンカーサン湖 Lake Encarthan の南岸に位置する、禁欲的に商業と富の集積に励むことが魂の価値を高めることであるとするカリストレードの予言 the Prophecies of Kalistrade の倫理と資本主義の精神を持つ、富裕な国である。
ドルーマの地は、宝石と貴金属の大鉱脈で知られ、かつては東南部の五王山脈にドワーフの王国が林立し、お互いに支配権を争いあう場所だった。
2332 AR、この地に住むカリストレードの予言を奉じる人間たちの交渉能力によってその争いは静まり、ケルスの和約 Accord of Kerse が成った。その功によって、人間はこの地の自治権と鉱山の採掘権を得た。その後、ドワーフの王国はオークとの戦争で次々と滅んで行き、ドルーマは独立国家となった。
その経済力のおかげで、エイローデンの死による影響も最低限に留めることができ、ドルーマは有限の神よりも永遠に存続する商業の方が優れていることが証明されたと意気軒昂である。
ドルーマは光輝ある官僚機構 the Resplendent Bureaucracy によって運営されている。カリストレードの予言の信奉者でなければ出世することはできない。しかし信奉者のほとんどは小役人として安定した収入を得ることに興味はなく、8~10年で機会と人脈をつかんで職を辞し、実業に乗り出すのが常である。官僚機構の頂点に立つ High Prophet Kelldor は、官界のみならず実業界でも頂点に立つ人物であり、内海地域で最も影響力のある人間の1人である。
ドルーマの防衛を司るのは“傭兵連盟” the Mercenary League である。黒い制服に身を包んだ彼らは、高度に訓練され、十分に装備をし、ゴーレムのように忠実に容赦なく命令を実行する。ドルーマ国内の街道と河川を安全に通過できるように警備し、対象を護衛し、彼らの主の命令を果たすため国外にも派遣される。
カリストレードの予言は“戴冠の時代”の初期に夢の記録を読み解く神秘主義者によって作られた、ドルーマの国教である。信奉者は禁欲を旨とし、性交と美食を慎み、白い衣服をまとい、肉体的接触を忌むため長い手袋をはめる。彼らは商業を尊び、個人の稼いだ財こそが聖なる秩序における地位を証明することであると信じている。禁欲を受け入れ、事業に励むことができる人間ならば、その性別、人種、前歴に関わらず受け入れる開放性があり、その故にドルーマは逃亡奴隷やシェリアックスやイズガーからの亡命者も多く集まる。
ドルーマ国内にはドワーフも多く、ほとんどはカリストレードの教義を支持している。しかし、公式にはカリストレードの信奉者になれるのは人間だけであり、トラグの信者となる者が多い。
ケルス Kerse:Profit's Flow の河口にあるドルーマの首都。エンカーサン湖に面した港湾都市で、富を誇示するようにけばけばしく飾り立てられている。傭兵連盟の監視と魔法による防護を潜り抜けてここで窃盗を行うのは極めて困難である。
デトマー Detmer:エンカーサン湖の岸辺にある商用の平底舟も軍用のフリゲートやスループも生み出す造船都市。水軍の建造と補修に集中しているため、この都市で行われる取引はほとんどない。
マクリディ Macridi:the Great Goldpan River と Profit's Flow の合流点にある林業町。ここの木こりたちは近隣の木を根こそぎ切り倒すようなことはせず、1日に数本の高価な木だけを“収穫”し、ドルイドや森のフェイとの関係も良好である。この方が資源の保持の観点からカリストレードの教えに叶うのだ。
パラカー森林 Palakar Forest:マクリディの周囲にある大森林。フェイとの取り決めから木こりたちは森の奥深くに立ち入ることはせず、そのため内部はほとんど知られていない。川によって3つの地域に区分されており、それぞれドライアド、サテュロス、ニンフが支配する。地区同士の揉め事はかなりよくあることで、しばしばマクリディの近くにも予想の付かない形で表れることがある。
ペドルゲイト Peddlegate:古代の露天掘りの遺跡の周りに作られた、五王山脈のドワーフたちの大使館のある都市。彼らは山に住む同胞よりもさらに頑固で、その考えを変えさせるには何年もかかると言われる。キョーニンのエルフたちとの交易も行おうと試みているが、ドルーマとエルフたちの歴史的な緊張関係から難航している。しかし彼らは諦めると言うことを知らない。
Prophet's Home:傭兵連盟の新兵たちが訓練を受ける都市。the martial district とthe support district に二分されている。その間には Thousand Shields として知られる純白の石でできた印象的な要塞があり、傭兵連盟の本部であり、最初の訓練を行う場所である。そこの最も小さな塔は the School of the Arcane、地元民には the Scar として知られており、ほとんどいつも魔法のエネルギーの嵐が渦巻いている。地元民たちはそこで何が行われているか確信を持ってはいないが、傭兵同盟に問うことはなく、塔が存在しないかのようにふるまっている。
ツインゲート Twingate:2本の塔の周囲にあるテント村。ドルーマに移住しようとする者が集まり、カリストレードの予言を学び、それに忠誠を誓う。最低でも500人のドルーマ人がその10倍の新来者を教えている。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 72. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] Jason Bulmahn et al.(2010). NPC Guide, p. 40. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-219-7
[3] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 62. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
カテゴリー:内海地域