アブサロムは、内海中央部に位置するコルトス島 the Isle of Kortos にある巨大な都市国家である。内海地域で最大、あるいは世界でも最大であるかもしれないこの都市は、交易上ならびに軍事上において絶好の場所にあるだけのみならず、定命の者を神格へと上げる力を持つスターストーンがあることでも重要である。
1AR、エイローデンは海底から今の位置にスターストーンを引き上げた。エイローデンはスターストーンを守るために近隣の諸国、特にアンドーラン、シェリアックス、オシーリオン、カディーラ、タルドール、スーヴィアから勇者、賢者を募り、アブサロムの街が生まれた。これが内海地域で最も一般的な暦、アブサロム暦(AR/Absalom Reckoning)元年である。現在でもこれらの国々の文化的影響は強く、貴族の家系の多くもこれらの国々からの要素をその基としている。その戦略的位置、またはスターストーンを狙って多くの国による侵略が行われてきたが、アブサロムは全てを跳ね返して独立を守り、“世界の中心の都市”として繁栄を続けている。
アブサロムは大議会 Grand Council によって支配されている。現在の議長である Primarch and Defender of Kortos はLord Gyr of House Gixx。彼自身のものも含め、Council には12の高位の席と、場合によって数が変動する低位の席がある。高位の席はCornucopiasと呼ばれ、エイローデンがスターストーンから作り出したものだと信じられている。これはアブサロムが海上封鎖された場合のみ、1つにつき数千の人々を養うに足る食料を生み出すことができ、アブサロムが不落を誇る大きな理由の1つとなっている。
高位の席は高僧、名家の当主、大商人が占め、下位の席は1年に1回高位の席の者の投票によって選出された者が座る。隠者や海賊、冒険者などが短い期間その席を占めることもある。高位の席のものは港湾管理、徴税、裁判所長官などの重大な行政上の業務を、下位の席のものはネズミ捕りや看守長などそれほど重要ではない業務を担当する。軍事に関しては常に議長の職務である。
全ての議題は投票によって決されるが、重大な事項は高位の席のもののみによって行われる。何が重大な事項かを決定するのも重大な事項である。議長は全ての政治的懸案に関して拒否権を持ち、大議会を召集する権利を持つ唯一の者である。終身の地位だが、後継者を指名することができず、それは高位の席の者の投票による。また、議長は伝統的にアブサロム海軍長官となるが、Lord Gyr はそのかわりに First Spell Lord となり、アブサロムの魔法組織に権威を及ぼすことを選んだ。
市の各区には区議会 District Council があり、日常の業務を執り行う。
また、術者が多数存在するこの都市の特性上、魔法に関連する事件を扱う司法機関 Varlokkur が置かれている。
ケルンランド Cairnlands:かつての包囲戦の名残である、アブサロムを取り囲む軍船や攻城兵器の残骸で埋め尽くされた浅瀬。その中でも最大の物がかつて大魔導師ネックスが作った高さ1マイルに及ぶネックスの尖塔 Spire of Nex である。内部に数十の小次元界を収め、多くの次元界から集められたクリーチャーの軍団を繰り出してきたという。外見上はっきりした入り口はないが、中に入ることができた者、あるいは中から出てきたモノの話は数多い。
コルトス山脈 Kortos mounts:コルトス島の中心にある高い山々。火山もいくつかある。山頂近くは氷のデーモンを崇拝するハーピーが、中腹はミノタウロスの部族が、麓はケンタウロスの部族が存在する。
アブサロム市は以下の街区に分かれている。それぞれの街区には地区議会とその代表者である nomarch が置かれる。
アセンダント・コート Ascendant Court:アブサロム中央に位置し、他の街区のハブとなる。多くの神々の神殿があり、スターストーンも底知れぬ穴の中にある岩の柱の上にある大聖堂に安置されている。毎年数百人が大聖堂に入るが、神性を得ることができたのは4人のみ、生きて帰ることができただけでも(時として財宝を得ることもあるが)数人しかいない。彼らの証言によると、大聖堂の中では魔法は常に正しく働かず、次元界を使った移動は不可能で、大聖堂の形、試練、守護者はいつも変更されるということである。
アズラント砦 Azlanti Keep:アブサロム軍の精鋭である the First Guard の拠点。この地域全体が陸上からの侵攻に備えている石造りの砦となっており、アブサロムでも最古の建造物の1つである。
貨幣区 The Coins:アブサロムで最もにぎわう商業地区。麻薬、奴隷、禁制品でも売られていないものはないと言われる。しばしば商売上の口論が流血沙汰に発展する。
港湾区 The Docks:アブサロムの表玄関である港湾地区。荒っぽく治安が悪く物価も安い水夫の町。
東門区 Eastgate:東門の近くにある割安な住宅地。
フロットサム墓地 Flotsam Graveyard:水先案内人と航海士のギルドがある。公的には港湾区の一部だが、市の城壁の外にあり、大議会の下位の席を得ている。
外国人区 Foreign Quarter:外国人の居住区。パスファインダー協会の本部 Grand Lodge が Skyreach と呼ばれる巨大な建造物の中にある。
緑畝区 Green Ridge:植物が多く植えられた地区。公園と小農場からなる。
木蔦区 Ivy District:文化と芸術の中心。劇場やギャラリー、内海地域最大のバード学校 White Grotto がある。麻薬や売春のような“ソフト”な犯罪は大目に見られるが、“ハード”な犯罪や貧しい路上生活者は排除される。
商人区 Merchants' Quarter:商人同士の巨額の取引が行われている商業地区。
花弁区 The Petal District:豪商と大貴族たちの住む最も富裕な地区。ほとんど全ての街路の中心によく手入れされた花壇の列が走っている。圧倒的な美の裏側では、アブサロムの容赦なき上流階級の政治問題を解決するために、交渉や停戦と同様に毒と暗殺が横行している。
絶壁区 Precipice Quarter:アブサロムの波止場を見下ろす崖の上の地区。4698ARの大地震で壊滅的な被害を被り、現在はアンデッドと無法者のうろつく廃棄された地区。
櫓櫂区 Puddles:大地震で沈下し、しばしば洪水の被害を受ける海沿いの地区。犯罪者と他に行き場所のない貧者が集まる。
西門区 Westgate:中産階級の住む住宅地。
賢人区 Wise Quarter:学校の立ち並ぶ文教地区。ネックスによって創立された魔法学校 The Arcanamirium が有名。大議会と議長の邸宅もここにある。
アブサロムの外にも2つの領地がある。
ディオベルDiobel:コルトス島西岸にある漁村。魚と牡蠣が豊富に取れる。禁制品を密輸する窓口にもなる。
エスカダールEscadar:コルトス島の北にあるエラン島 Isle of Erran にある軍港都市。アブサロムが海上封鎖されたときに備えて軍船が待機している。水夫相手の享楽が充実している別名悪徳都市。アズラント時代の遺跡に取り囲まれており、ギルマンの唯一の陸上の居住地がある。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 54. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] Owen K.C. Stephens(2009). Guide to Absalom, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-141-1
[3] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 38. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
カテゴリー:内海地域