パスファインダーRPGは勇壮なゲームとしてプレイされることが多く、そこで英雄たちは原野、モンスター、ダンジョン、その他の危険に挑んで経験と宝物を得る。都市と社会は単に背景として扱われることが多い。それは休息と買い物の場所であり、工房や研究所として使われ、場合によっては地下下水道にある迷宮にいる残酷なモンスターや危険なカルトを狩るための場所となる。しかし少し見方を変えれば、ゲーム・マスターは冒険の中に社会的衝突を持ち込むことができる。このような他にない遭遇は暴力的な力を含んだ衝突の中に見られるものとは異なる種類の利害関係や報酬、結末をプレイヤーに提供することで、君のゲームに刺激を与えられる。
例えば、都市で略奪品を売る際に、地元の伝手が港関係の企業から貢ぎ物を強要されていることにPCは気づくかもしれない。恐喝犯と対決して近所から追い出した後、その恐喝犯は合法的な商売とは別に犯罪者のネットワークを管理する「実業家」のために働いていたことをPCは発見する。そうした実務は彼を豊かにしており、都市の主要地域に対して多数の市民活動を寄与するのに十分な程の資金を彼に与え、その結果彼は市会議員の有力候補となっている。選挙妨害のためのささやかな運動を展開している間にPCは、市長に現在の議会を解散して新しい選挙を実施するよう圧力をかけようとする、政治改革者たちの組織を知る。この団体は一見無害なように見えるが、実際には外国のスパイ集団が街に大規模な攻撃を仕掛けるための隠れ家になっている。PCがすべきなのはなんだろうか?
上に述べたような社会的衝突は、必ずしも戦闘を伴わないというわけではない――多くの場合、戦闘に発展する。しかし、法の及ばない辺鄙な場所で起きる通常の戦闘とは異なり、社会的衝突は見せかけの平和の満ちた街で発生し、気まぐれな暴力が不安定を生み、一般市民を脅かす。社会的衝突は、もの、名声、権力を得るために必要な繊細さ、魅力、巧妙さを取り扱う。
以下の章では、ゲーム内に社会的衝突を作成し実行する方法についての助言を提供する。そこでは、プレイヤー・キャラクターを社会的衝突に巻き込む方法についても提案している。また、冒険のデザインのために用いる、新しいイベントに基づいた構成法もある。そこでは、PCの行動が結果につながるよう、社会的衝突の次のイベントを決定したり、将来のイベントに手を入れたりする。本章の最後では、社会的衝突イベントのデザインに関する助言を示す。ここでは、社会的衝突の冒険の連作や、キャンペーン全体を運営するのに必要なツールを全て提供している。
キャンペーンに社会的衝突をデザインする前に、君はペースを決めるべきだ。ゲームに社会的衝突を導入する際、ペースにはエピソード型と連続型の二種類がある。それぞれには、以下のような長所と欠点がある。
エピソード型ペースのゲームを運営していく場合、君は社会的衝突のちょっとした問題を冒険と探索における通常の流れに挿入する。これは通常、PCが街に入ったり他の社会的存在に連絡したりした際に、些細な社会的衝突を1~2つ差し挟むことを要求する。この種のペースは、こうした小規模の社会的衝突がより大きな社会的衝突の枠組みの中に散在しているときに最もうまく機能する。そしてその枠組みは、後述の連続型ペースを用いるキャンペーンにある、より大きな連続回の一部であるかもしれない。
エピソード型ペースの利点の一つは、一度に少しのイベントと結末を作るだけで良く、事件の長期的な結末を明らかにするのはしばしば後回しにすることができるということだ。これにより、君は後で導入したいと思っているかもしれない将来の計画の要点を考える時間を得られる。エピソード型ペースの欠点は、プレイヤーが後で結末に出会ったときに、ちょっとした事件のことを忘れていることがあり、思い出させる必要があることだ。エピソード型ペースを描くために、本章の導入にある例を詳しく見てみよう。いくつかの地元の遺跡のものをさらった後、PCは発見したものや戦利品を売るために町に戻る。様々な店と事業家をほとんど全て回ったところ、彼らは同じ話を耳にする。「無慈悲な無法者が、地元の事業から警備代を脅し取る」と。PCは地元の起業家の窮状を無視してもいいし、この恐喝屋と衝突しても良い。
この状況を無視すれば脅しはなすがままにされる。これによりPCが次に街に戻ったときに購入する消耗品の値段が上がることになる。彼らは帰路で1~2つの、店長が恐喝屋の不正行為によって閉め出され閉店したお店を見つけさえするかもしれない。犯罪との衝突を選べば、いくつかの偵察や襲撃、続いて路地裏を抜ける追撃が起こり、最終的には対決し、そこでPCはその不届き者を打ち据え、その悪人に近隣の商いは現在自分たちが保護していると警告することになるかもしれない。しかし勝利が続くのはPCが街にとどまっている間に過ぎない。PCが遺跡の調査に向かったり長期的な冒険に出向いたりするとすぐ、恐喝屋やその交代要員がより恐ろしい力を伴って戻ってきてパトロンの支援をする。パトロンとは、地元の盗賊ギルドだ。PCが街に帰ってくると、状況がよりひどくなっていることに気づくかもしれない。そして盗賊ギルドは冒険者にお灸を据える気になっている。
このような堂々巡りはPCの伝統的な冒険の間に行われたり、PCが町の仲間を蝕む問題に本気で対処しようとするまで続いたりする。その時点で、ペースは連続型に切り替わることもある。
連続型ペースでは、大量のイベントが素早く互いに流れ込む。あるときは、イベントの構造は過去のイベントの結末のためにすぐに変わってしまう。またあるときは、結末が次にPCの参加するイベントを決めることになる。社会的衝突がキャンペーンないし連作短編の主要な推進力である場合は、連続型ペースを使用すること。PCの行動によって頻繁にイベントを変更したりスキップしたりしないといけないので、連続型ペースで社会的衝突を運用することはずっと難しい。
連続型ペースを描写するために、奇妙なトラブルメーカーが公爵領の境でオークの略奪を引き起こそうとしている、とPCが気づいたことを想像してみよう。その後PCたちはすぐ、襲撃の報復を企てていると誤解して地元のハーフオークのカップルを襲撃するつもりでいる群衆に遭遇する。介入して2人を助けたPCは、すぐに公爵の法廷で、口のうまい新しい高官の支持者たちと衝突することになる。彼らは公爵に人でない存在は面倒を引き起こすから排斥するよう助言するだけでなく、人間に優位な政策を提唱してきた。
周辺の状況を調べてみると、この新しい高官と公爵領の境界にいる奇妙なトラブルメーカーにはつながりがあり、ひょっとすると同一人物かもしれない。これにより、PCは高官に関するさらなる情報、来歴、現在の支援を得た手段を知るため、あらゆる種類のイベントや舞踏会、政治集会に向かうことになる。これらの調査の中で、彼らは高官の支援者の多くと衝突することになる。衝突と集めた情報から、PCは高官と略奪との関係とその目的を突き止める。高官は地元の貴族の評判を落とし、公爵領の支配力を集中させ、公爵領を支配しようとしている。最終的にPCは、最後の対決として高官の計画を大衆に公開する機会を得る――PCの証拠の信用を落とそうとする、高官との舌戦によって。
この連続型ペースの例では、物語のほぼ全体が社会的衝突の中にあり、それぞれのイベントは複雑な陰謀の網で互いに繋がっている。
冒険のペースを選択したなら、次のステップは社会的衝突の利害と競争相手を決定することだ。社会的衝突が始まるまでに、最低でもこれらは決めておこう。利害は社会的衝突の核心、すなわち競争相手が社会的衝突に勝利したときに得られる利益である。社会的衝突はしばしば経済、地位、政治権力が入り混じる。競争相手はこの利害を得るために蠢く個人もしくは集団である。
恐喝の例を考えてみよう。少なくとも1つの裕福な冒険者グループが新たな利益を街に広めており、地元企業は潤沢な資金を持っている。地元の盗賊ギルドはそのことに気づき、最もよく知られている方法、すなわち恐喝と窃盗の犠牲者とすることを決める。双方とも経済的利益をめぐって争っておりう。利害は本質的に経済的なもので、競争相手は事業家と強奪者である。
邪悪な高官の例では、利害は政治権力だ。公爵は世襲の地位であり、男爵に対して応じなければならないため、高官の計画は男爵の権力を解体し、公爵を催眠にかけ従わせることにある。高官とそのエージェント、公爵はみな、競争相手になる(知っているかどうかはともかくとして)。
利害が地位であれば、それは仲間が政治権力を得るために政治的地位の獲得を助けることにある。それは地元の博覧会での試合に勝利したり、宮廷でお気に入りの音楽家になることで名声を得たりすることなど、なんでもあり得る。
上記の例で分かるように、PCは利害上の競争相手と見なされているわけではない。社会的衝突では、PCは一方の競争相手(通常は倫理的な集団に基づいている)に与する外部の使者である。PCは社会的衝突の小キャンペーンの終わりまで利害の制御権を持たないだろうが、利害が適切な者の手中にあることを確かなものにする。
常にこのような状況になるというわけではない。君は政治に焦点を当てたキャンペーンを執り行うこともできる。そのような場合、PCは商人や貴族のために働くことになる。高レベルのキャンペーンでは、PCは人の国の境界で小さな要塞を引き継いだり建設したりして、木こりや鉱夫のように異議を唱える人と交渉したり、人間の地主やノールの部族の中心を確保することになるかもしれない。それぞれのパーティは自分の経済の権利、名誉、土地を守る方法を探しているだろう。ほとんどのキャンペーンでは、PCは自分の好む競争相手のエージェントとして行動し、所属している派閥が目的に向かうことを動機とし、その方法を操りさえする。連続型の社会的衝突が(場合によってはエピソード型であっても)成熟するにつれ、利害と競争相手も拡大していく。競争相手自身が利害となることさえある。
脅しの例に戻るとしよう。PCは恐喝屋を追い払った。恐喝屋――町の盗賊ギルドの1つの頭目――は波止場の至る所で起きる犯罪を操っていた。彼は用心棒と呼ばれる者たち――近隣の者が、恐らくは強盗からの「守護」を受ける為に金銭を支払わなくてはならないヤクザども――で他の魅力的な取引を補強する。その実行者たちが追い払われたことで、恐喝屋は組織がその経済力と政治力を取り戻す方法を探さなければならなくなる。それは他のギルドに対するメンツを守るだけでなく、儲かる縄張りでの犯罪活動を続けるためでもある。小さな脅しの縄張りはそれ自身が利害の一つとなり、厄介な犯罪組織の長がPCとの全面戦争を始める経済的な実現可能性を検討する一方でその揺すりを続けようとする相手とPCは戦うことになるかもしれない。
連続型ペースの社会的衝突はゲーム内に陰謀を加える良い方法だ。しかしすぐに利害と競争相手が入り組む迷宮に変わってしまう。そうなったなら、それぞれの詳細がまっすぐ繋がるように、様々な利害と競争相手を記録しておくと助けになるだろう。キャラクターと変化に富む課題の混じり合った中の暴れ回る関係それぞれを拾い上げる必要はない。しかし絶対的な脅威や過去数回のセッションから呼び起こされる関係を取り出すことができれば、全てを君が計画しているように見えるだろう。
衝突の利害が単なるプロット上のアイテムに過ぎないなら、幾分ぼんやりとしたものとしても良い。別の状況では利害はかっちりしたもので、それらを測定する細かな手段が欲しくなるだろう。この目的において、休息期間で不労所得を得るルールや組織に対する感化ルールを使うことができる。
イベントは社会的衝突の各段階における舞台だ。イベントは多くの点で遭遇に似ているが、場所と住人の詳細を述べる代わりに、社会的衝突の側面や社会的衝突の試練の枠組みを明らかにする手法を提供する。社会的衝突はPCの行動によってずっと複雑になることもよくあるが。その行動は将来のイベントを引き起こしたり、作用したりする。社会的衝突のイベントには大きく2種類ある。開示イベントは社会的衝突の本質や特徴についてより多くの情報を得る機会をPCに与える。試練イベントではPCは社会的衝突に関連するいくつかの試練に直面しなければならない。開示イベントと試練イベントを分けて考えることは通常助けになるが、ときには社会的衝突のイベントが両方の性質を持つこともある。このような混在したイベントは、極めて複雑な社会的衝突では特にありふれたものだ。
イベントは多くの形を取り得るため、以降の各項では本書や他の出典に掲載される追加ルールを用いて開示イベントと試練イベントを用いる方法も併せて示す。
開示イベントは社会的衝突に関する情報をPCが学ぶきっかけを与えることで、社会的衝突の物語に巻き込んだり、物語を進展させるために用いられることが多い。このようなイベントの成功で手がかりを見つけたり明らかにしたりできるかは、PCの能力次第である。
開示イベントを達成することは、宿にある暖炉のそばで座っている古顔から波止場での奇妙な失踪事件に関連する話を聞くとか、投票権を得ようとする活動への助力をPCに求めるハーフリングの一団と話すというように、簡単なものであることもある。通常、開示イベントはPCが衝突の本質に(少なくとも本質の一部に)ついて知ることのできる演出的な遭遇であり巻き込まれるかどうかの決定を行う場でもある。別の状況では、開示される本質や深度によっては、技能やその他の能力を使用するようPCに求められるかもしれない。
開示イベントは通常〈威圧〉、〈交渉〉、〈真意看破〉、そして様々な〈知識〉技能を使用することに強く偏りがちだ。開示イベントの概要を決める際、イベントが印象的になるような知識を根底に置いておくのが最良の手段である。こうすることで、その結末の一つの引き金になるためのイベントからPCが理解する必要のある要素を最小限にすることができる。この知識にはある種のデマや誤解が含まれることもある。それらは社会的衝突をより面白く、より劇的なものにするために、物語を後で動かす要素となる。
例えば、投票権を得る助けをPCに嘆願するハーフリングを考えてみよう。PCがハーフリングの言葉を額面通りに受け取ったなら、単にあからさまな不正に過ぎないと考えるかもしれない。しかし困難な〈真意看破〉判定に成功すれば、PCは話にはもう少し考慮すべき点があるのかと疑うことになる。その後、困難な〈知識:地域〉判定にさらに成功すれば、ハーフリングが投票権を持っていない理由の1つは、彼らは彼ら独自の王国の国民であると見做されており、国民税を支払う必要がないからだということが明らかになる。ハーフリングを問いただすことでハーフリングが投票したいことだけでなく、国民税を支払わない方法を考えているのだと分かる。
ときに、開示イベントには情報を得るための試練が含まれることもある。その試練は調査ルールを用いてあやふやな知識を深掘りするかもしれないし、追跡ルールを用いて情報を持つものを追跡するかもしれない。あるいは社交的な会合でPathfinder RPG Social Combat Deckや試練へのロールプレイや本章の後で示す試練の一つを用いるなどして、PCがどれだけの数の情報を明らかにできるかを試す場合さえあるだろう。開示を強調する混じり合ったイベントもしばしば存在する。滅多にないことだが、この種のイベントが戦闘を引き起こすこともある。例えば、地元の売春婦が運んでいた公文書を奪取する使命をPCが帯びており、彼女が単に自分の手で公文書を守る能力があるだけでなく、かつてPCに追い出された傭兵を数名雇った場合、面倒を引き起こすだろう。舌戦は社会的衝突に完璧に噛み合う。その一方で、状況に応じて呪文決闘、決闘、念術決闘を使って開示イベントに幾らかの行動を加えることも検討してみよう。呪文決闘や決闘は秘密のメッセージやウィットに富んだ会話から情報を炙り出すことができる。念術決闘はそのようなわずかな期間の二層の心象風景から決闘者が相手の精神の一部に触れることができるため、(少々不可解ではあるだろうが)より直接的に情報を手にすることができる。相手の精神覆面を読み取ったり、相手の攻撃様式から奇妙なメタファーを見抜いたりすることで、決闘者は相手についてより多くのことを知ることができる。
開示イベントを作成するにあたり、重要なことは君がPCと競争相手がイベントでできることを予想することだ。うまく使用される占術呪文程に、イベントがどう進んでいくかという予想を無駄にするものはない。陰謀の呪文章に掲載された指針と助言は、このような問題解決の助けとなるだろう。
結局のところ、開示イベントの結末はどれだけのことをPCが見つけられたか、知識にどのように反応したかによって決まるべきだ。これらの結末は利害関係と、PCが巻き込まれたり嗅ぎ回ってしているという知識に対し競争相手がどう反応するかを考慮すべきである。開示イベントにおける試練でのずば抜けた成功は、試練イベントを良い方向にもたらすPCの能力に影響を与えるべきだし、逆に酷い失敗は試練の範囲をPCが誤解したり、ある側面のみに注視したり、間違った手がかりを追ったりすることになるかもしれない。
試練イベントは社会的衝突の力の均衡にPCが影響を及ぼしたり妨害したりする機会を与える。目的が社会的情勢のある特定の要素を調べることとなることが多い開示イベントとは異なり、試練遭遇に於いてPCはその要素を変えるために一撃を入れる。
試練イベントをデザインする際、全競争相手の利害、巻き込まれたパーティの現在の競争の本質、PCが協力するグループの全てについて検討すること。試練イベントの終了によって、PCには衝突の利害を変えたり価値を高めたりする機会が与えられるべきだ。一般に、PCが成功すれば、協力している競争相手は利害の制御権を得たり大きな分前を得たりする。逆にPCが失敗したなら、敵は利害の制御権を保持し、利害の獲得に向けた地歩を獲得する。
このようなイベントでは、PCは一連の試練に直面し、その成否が将来の社会的衝突のイベントを引き起こしたりその内容を変えてしまったりする。パスファインダー・ロールプレイング・ゲームは、君が「社会に基づく遭遇で使用すべき、非戦闘のあるいは戦闘の軽微な挑戦」を作成する助けとなるよう設計された、副システムと小道具を多く持つ。加えて、より自由な形式の社会的試練の作成方法については、本章の後半に示されている。
例として、街のハーフリングに投票権を与える際の揉め事について話を続けよう。ハーフリングは投票によって政治権力をより多く手にしたいが、免税措置は引き続き受けておきたい。ハーフリングの投票者の流入が政治情勢に与える変動を恐れるため、他の競争相手――地域の政治を現在牛耳っている評議会議員――は現状を保とうとするだろう。ハーフリングに協力するPCは、ハーフリングのために活動するよう地元の政治家を説得したり無理強いしたりする計画を立てることになる。Social Combat Deck、個人への感化ルール、舌戦、本章の後半に示される自由形式のイベントを使うことで、ハーフリングが免税を保ったまま投票権を得られる支援を政治家にしてもらうようPCが活動する際の試練イベントを作ることができる。それは特定の候補者を後押しすることになるかもしれない。
それからPCは街の様々な政治家を説得して回る。この試練の結末は様々な政治家に対する成功数の合計に基づいて決まる。また、それぞれの政治家には異なる個性があるため、成功の鍵はそれぞれに対して異なっている。肉体的な脅威や威圧によってすぐに大人しくなるものもいれば、腐敗していて賄賂ですぐに転ぶ政治家もいるかもしれない。頑固で立場をすぐには変えない政治家もいて、そのようなものは汚れた方法や恐喝に手を染めたり、政治家の愛する人を脅すとPCが決めなければ動かない。この特定の例では、個人への感化ルールを使用する良い機会だが、やりとりそれぞれをSocial Combat Deckを使った異なる試練に変えたり、自由形式のイベントとして作ることもできる。
社会的な試練は技能判定やアクションに満ち満ちたものよりも行動的で興味をそそるものであるべきだということは心に留めておこう。社会的な試練を追撃(追撃ルールを用いたり、Pathfinder Cards:Chase Cardsやその続編Chase Cards 2:Hot Pursuitを使う)、追跡、強奪を用いて強調し、より興味を引くものとすることを考えてみよう。高レベルのゲームでは、試練イベントはPCが建国ルールを使ったり、外交が失敗したときに大規模戦闘ルールを使ったりすることで、より複雑なものとなる。
最後に、社会的衝突は物理的な衝突や対立を避けようとする試みである一方で、時には社会的衝突を解決するためにPCが戦闘に巻き込まれることもある。反乱軍との調停に失敗した後には、おそらくPCはその共同体に暴力で訴えることで鎮圧して止めようとしなければならない。頭に血の昇った貴族家の一族からの援助を得ようとする間に、PCたちは自分たちは彼らを侮辱し、うっかり若いアリストクラートの怒りに火をつけたことに気付かないかもしれない。後者の状況では、命に関わらない程度に打ち据えることでこの向こう見ずでお喋りな自慢屋からの敬意を回復させられるかもしれない。一般的な指針として、社会的衝突における成功を得るために戦闘に頼ることは最後の手段であり、イベントの連鎖の中での失敗をある時点より早く塞き止めることになる。このような場合でさえ、戦場に優雅な様式を持ち込む機会を示す努力をしよう。それは屋根上での戦闘や夕暮れの決闘のような劇的な状況を準備することかもしれないし、バードの風刺に満ちた朗唱やスワッシュバックラーの心意気のような派手な能力を持つ敵かもしれないし、不安定に下がったシャンデリアや今にも倒れそうな柱のように戦闘全体を変えてしまうような災害であったりする。
開示イベントや試練イベントのどちらを執り行うにせよ、PCがどれだけ試練を解決したかに応じて、成功と失敗の両方の結末を作るために骨を折るべきだ。試練イベントや容易な開示イベントの中には直接的で明確な結末を持つものもあるが、より複雑な試練は成否の度合いに応じた結末を持つこともある。
PCが試練を突破したなら、成功もしくは大成功を成し遂げたのだろう。試練イベントで焦点を当てた舌戦に勝利することは成功であるかもしれないが、大成功の成立を決定するような不測の事態を追加しても良い。舌戦に巻き込まれたPCが勝利し、その仲間が好む偏見を全て植え付けることができたなら、大成功となるのかもしれない。例えば、PCがハーフリングの選挙権に反対する政治家の一人と公開討論で舌戦したなら、大成功はその政治家がハーフリングの大義について異見を差し挟まなかっただけでなく、決定的な部分でその議論の世論を変えもし、それによって将来PCたちが揺るがそうとしているものに対する挑戦の難易度を下げることができるかもしれない。
他方、失敗は利害を獲得する際の一時的な後退を意味する。そして大失敗はPCが劇的な損失を被り、将来においてもPCの傷となりうるものとなる。上述の同じ例を用いると、ハーフリングの投票権に関する舌戦で政治家と群衆の説得にPCが失敗したなら、ハーフリングの主張を擁護する別の政治家を説得する羽目になるだけかもしれない。しかし政治家が討論するPCを劇的に打ち負かしたなら、他の1~2名の政治家をPCの側から引き剥がし、PCは他の政治家を取り込むための判定にペナルティを受けるかもしれない。これはPCにとって大失敗と言えるだろう。
本章のほとんどはGMが自分の社会的衝突のイベントを作る助けになる道具と提案を掲載している。しかし、PCが全く予想できない方向にイベントを向かわせることができる場合もある。行動と結論がかっちり決まっている戦闘遭遇とは異なる点だ。素晴らしいロールプレイに訴えかけるのではなく、技能、特技、呪文、魔法のアイテムを興味深い形で使用することは、しばしば君が予想もしていない状況を引き起こすことがある。このような事態になったなら、プレイヤーのやる気を削ぐのではなく、その創意工夫に報いるのが良いだろう。
Social Combat Deckや他のパスファインダーRPGにある多くの既存のツールを使って社会的衝突を運用することもできるが、ときにPCが関わったかつての行動の結末や自作の物語に併せて遭遇を作っていきたいと思うかもしれない。そのような遭遇を計画する際、継続する物語を作る際にプレイヤーがより行動的になる、自由形式のイベントを作りたいと思うだろう。社会的衝突のイベントは戦闘遭遇よりも予測のつかないものだ。だから以下のツールや指針はプレイヤーが想定外の行動をとったときに、君がアドリブで進める際の助けになるだろう。
君が作った自由形式のイベントそれぞれは、PCが目標を達成するまでに行うアクション数を持つ。常に君が必要と思うよりも多くのアクションと目標を作るのが良い。そして多様なものが含まれるのが良い。そうすれば、多くのキャラクターがイベントに参加できる。それらの目標は判定や特定のアクションを行うことで展開していく。
機知や魅了において効率よりも素早い反応が求められる自由形式の遭遇を運用する際、異なるキャラクター(PCとNPCの両方)がその行動を行う順番を決めることが重要になるかもしれない。そのような状況では、それぞれのキャラクターに社会的イニシアチブ判定を行わせるのも良いアイデアだ。社会的イニシアチブ判定は、【敏捷力】基準ではなく【魅力】基準である。しかしイニシアチブ値を上げる他の標準的な要素(《イニシアチブ強化》など)は通常通り適用される。
プレイヤーはパスファインダーRPGのルールで見られる様々な技能判定に標準的な難易度を使用するだろうが、ときに君はルールに定義されていない形で技能判定を行わせたいと思うだろう。それは特に、PCが巻き込まれる試練イベントの範囲に見事に噛み合う。そのような場合、表4-1:レベル毎の自由形式の判定の難易度がこのような自由形式の判定の指針を提供してくれる。
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上述の表の低い値は、掲載されているレベルのPCが達成するのが比較的容易な判定の目標難易度としてデザインされている。複数のパーティ・メンバーが成功を構成する判定に全て成功しなければいけない場合や、参加している役割を満たすことを強いられた、達人でないキャラクターがいる場合にも、低い値は適しているだろう。この難易度は通常、技能を訓練したキャラクターが厳しい条件の仕事や他の有利な要素(道具、呪文、魔法など)をもたない場合か、その逆(ほとんど訓練を受けていないキャラクターが、大量の有利な要素を持つ)の場合に、50%の確率で成功するものだ。真ん中の値は一人のかなり熟練した冒険者が支援なしに突破できるはずのものだが、失敗する危険がないわけではない。困難な値はその技能の達人か、その技能に対するいくつもの有利な要素を持つか、さほど熟達していないキャラクターを支援するために大量のキャラクターが支援してくれるかのいずれかの場合に適したものとなっている。
PCが特定の技能判定にボーナスを得るために高価な呪文や魔法のアイテムを頼りにするのが常ならば、表4-1の難易度はキャンペーンにおいて簡単すぎるかもしれない。君はその理由によってここに示した値を変更したいと検討して良い(そのような呪文や魔法のアイテムを重く用いるキャラクターが一方の側にいるキャンペーンなら、その相手側も同様にそのようなアイテムを使用するのだから)。
PCが特定の技能や役割で成功確率を最大化するように振る舞うなら、その選択が良いものであると感じさせるべきだということは心に留めておこう。有利な選択肢を選んだときにあまりに簡単になるからと言って単に難易度を増加させるのではなく(それはPCを手ひどく罰することになる)、より高い難易度を持つ仕事を作り、より良い報酬を作ると良い。そうすれば、プレイヤーの選択は新しく興奮する結果につながり、他のキャラクターではその利益を勝ち取ることができない(そしてもちろん、プレイヤーが困難な難易度に挑むのを避けるようなら、経験を失うことはないが追加の報酬を諦めることになる)。
社会的衝突の試練と目的をデザインする際、君はPCの成功を測定する手段を決める必要に迫られるだろう。以下に、社会的衝突のイベントにおける成功を計測する3つの異なる手法をまとめた。どの成功の測定方法を使用したかに拘らず、目的すべてを達成するためにPCがどれだけの成功を積み重ねる必要があるかを決定する必要があるだろう。
競争相手との対決/Contest Against Competitors:恐らく敵対派閥は社会的衝突においてPCの計画と対立している。このようなイベントにおいては、PCは他の派閥に勝つように行動する。PCは相手の評判に傷をつけてその活動が続けられないようにしたり、対戦相手が目標を達成する障害になるもの(対立する派閥よりもずっと危険な連合を組ませるなど)を探し出さなければならなかったりする。競争相手との対決は人間の対抗心を引き出すため高い満足感を得られる可能性がある。しかしそれを社会的衝突で執り行うのは極めて難しい。それは、特に複数の派閥が存在する場合に顕著である。このような対決では、利害と複数の派閥の頑強さを決め、どれだけ成功すればそれぞれの派閥が活動できないようにするかを決める必要があるだろう。その数は社会的衝突の規模とペースに合うものであるべきだ。速いペースの連続型衝突や長い期間続くと予想される衝突では、より多い相手に呼びかけをする。それにより成功を得る機会がより多くなる。ゆっくりとしたエピソード型ペースや短期間の小キャンペーンではその逆になる。
目的の収集/Goal Collection:この種のイベントでは、PCが目的をどれだけ達成できたかが全体の成功を決める。しかし、合計する前に、キャラクターは社会的衝突を成功させるために取り去らなければならない面倒な状況を取り去ることができなければならない。
時間との競争/Race Against Time:この種のイベントでは、PCは一定時間が過ぎる前に可能な限り目的を達成するという競争を行わねばならない。時間制限はプレイヤーにとってイベントをより興奮させるものにしてくれる。時間制限がある理由を作ることはPCに興味をもたらせ、物語を作ることも面白くしてくれる。時間制限にゲーム内の理由がある場合、それは次の投票や差し迫った侵略、目的の核心事項への一般の関心が薄れることだったりする。時間に厳しい衝突の全体の目的を決定する際、複数の勝利段階を設定しておき、最高と最低の間に有り得る結末を整理し、より良い結末それぞれ用の最低成功数を一覧化しておくと良いだろう。
どんな種類の社会的衝突のイベントをデザインするにせよ、致命的な失敗に直面した場合であっても、とにかくPCが前進するようにするのが良い。もちろん、失敗による結末があって然るべきなのだが、それによって物語が終わってしまうべきではない。言い換えれば、成功はPCを勝利に導き、失敗は競争相手を勝利に導くのではあるが、その結果が手詰まりを引き起こしたり行動の流れを止めるように計画してはならない。敗北がパーティ全体の死を招くものではない以上、様々な予期せぬ影響をもたらしてワクワクさせるのもよいだろう。ときには成功したときよりも面白いものになるかもしれない。PCの敗北を新しい計画や将来のよりよい成功の出発点として自由に用いよう。
社会的衝突のイベントは、いつPCに経験点と宝物を与えればよいのだろうか? 短い回答は君が選ぶタイミングで良い、ということだ。パスファインダー・ロールプレイング・ゲームの一般的な経験点の増加は、英雄的な経験がプレイヤー・キャラクターの個人能力を高め財産を増やすことを根底に置いている。戦闘で起こされるキャンペーンは戦闘用リソースを一通りPCが持つことを仮定してバランスをとっている。そして目的を達成する際にリソースがゆっくり削り取られていき、時が過ぎれば成功の価値が下がっていく。この成長の基本にたてば、社会的衝突が与える経験点や宝物は少なくなる。この種のプレイ形式はPCのリソースを削るかもしれないが、戦闘遭遇が頻繁に起きるのに比べればそうでもない。そのため、社会的衝突のイベントに成功したことによる報酬はその場しのぎのものか、小キャンペーンの筋書きに味付けするような数回の戦闘遭遇に基づくものになる。しかし社会的衝突に重きを置いたキャンペーンを運営する場合、この基本思想は捨て去る方が賢明だ。そしてその代わりに、より一般的な基本のもとに経験点と宝物をPCに与えよう。
社会的衝突のイベントの中でPCが得る宝物の一部は、敵に紐づいていたり社会的状況での冒険の間に見つかったものとなる。しかしほとんどは同盟関係にある競争相手からの贈り物、経済的利益から流れてきた報酬、究極的には賄賂や贈り物、税金として街から得られたものなどである。
社会的衝突の範囲とペースに基づいて、PCにどれだけの報酬を与えるかについていくつかの提案を以下に示す。
開示イベント:ほとんどの場合、開示イベントでPCが経験点と宝物を得ることはない。大抵、PCが将来出会うことになる試練についての情報を得る機会をPCに与えることになる。しかしときには、開示イベントが試練に焦点を当てていることもある。そのような場合、君はイベントに脅威度を設定できる。社会的衝突がエピソード型ならば、イベントの脅威度はPCの平均パーティ・レベル(APL)よりも2~4低いものとすべきである。その値はキャンペーンにおいてその社会的試練がどれだけ酷いものかによって決まる。APLが低い場合、脅威度を適切な分数にずらすこと。同様の方法で宝物も取り扱う。表12-5:遭遇ごとの宝物の価値には脅威度ではなくAPLに基づく宝物の値が示されている。もし低い脅威度の開示イベント用に報酬を準備したくなったなら、表4-2:低い脅威度の遭遇における宝物の価値の適切な場所を参照すること。
遅い |
中程度 |
速い | |
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試練イベント:試練イベントはほとんど常に経験点と宝物を与えるべきだ。君が連続型の社会的衝突キャンペーンを運営している場合は特にそうである。社会的衝突がキャンペーンの主要な推進力である場合、ほとんどの試練イベントはPCのAPLに近い脅威度を持つべきだ。戦闘遭遇と同様に、特に厄介な試練イベントを処理する場合は(それがPCのリソースを消費しうるものや利害の大きな変化を伴うものなら)、脅威度はAPLより高くすべきだ。しかし、APLより4以上高くしてはならない。PCが戦闘遭遇に巻き込まれた場合は、試練イベントに通常の経験点と報酬を用いること。
以下に示す連続型の社会的衝突は、本章で紹介した指針を用いた満足の行く一連の遭遇と冒険を構築する方法の一例として役に立つだろう。社会的衝突はPCの行動に応じて時間とともに進んでいくため、この例では衝突の初期段階を段階を追って説明している――このあとは君が合うと思う通りに発展してよい。これらの要素は他の冒険の背景や、本格的なキャンペーンの基盤になるかもしれない。
PC以外にも、この社会的衝突には革命派と王国派という2つの明らかな競争相手が関わっている。しかし、フェイの里子という隠れた競争相手もいる。
革命派は、王国の貴族は退廃的で、庶民の苦しみとは無縁であると考えている一般市民だ。彼らは最近の問題を貴族の怠慢のせいにしている。この競争相手は基本的には王国派の基盤を揺るがし、政治権力を奪おうとしている。しかし彼らは統率されているわけではなく、調整できることはほとんどない。彼らは政府を変えたい、転覆させたいと思っている。しかしその後に何が起きるべきかについて団結することはない。革命派の中でさえ、どのようにして賞金を増やすべきかについて見解は一致しないのだ。革命派の中には、貴族というものを全て滅ぼしたいと思うものもいる。それ以外のものは、君主テオバード王の手前で足を止めたいと考えている。後者は国王を完全に追放するのではなく、国王の関心を向けて問題に取り組ませられれば十分だと考えている。国王を批難し、国王の退位を求める人々の中でも、大半の人々は未だにアニカ王女を支持しており、王をテオバードからその娘へと交代させたいと考えている。極少数の者は、全く異なる、より平等な政府形態の設立を夢見るものもいる。
王党派は王に忠実な上記以外の市民と、貴族の両方で構成されている。革命派とは異なり、彼らは一人の指導者、テオバード王に従っている。王党派は、革命派がその政治信条のために最近の問題を生み出しているか、あるいは少なくとも誇張していると信じており、王党派の多くは、彼らは現状を破壊して王国の富を略奪しようとする血に飢えた無政府主義者に過ぎないと信じている。王党派は革命派よりも権力があり組織化されている。しかし少なくとも最初のうちは、民衆は一握りの扇動者に引っ張られた、混乱した羊の群れとして扱うため反応が鈍い。国王や多くの貴族は、対応するのに費用がかかりすぎると考えており、高圧的な対応がどこかで混乱を引き起こすかもしれない。
フェイの里子は最後の競争相手である。表面的には、彼らが糸を引いているように見える。フェイの里子はゆりかごの中で人間の子供と入れ替えられたフェイの子供だ。彼らは完全に人間のように見え、魔法によっても人間であると識別される。フェイの里子は王国じゅうに広がっており、アニマル・メッセンジャーのような効果で密かに連絡を取り合う。彼女たちの最大の政治的資産は、アニカ王女が里子であり、派閥の主たるまとめ役であるという事実だ。どれだけ革命派の統制が取れていなかろうと、彼らの中にフェイの里子が入り込めたのは簡単な行いであったし、アニカ王女と貴族の子供の少数の手によって、簡単に王党派を操ることもできる。しかし、アニカ王女とその仲間は、派閥の背後にいる本当の権力者ではない。ある強力なノルンは、命運はこの王国との確固とした関係を求めていると確信しており、実のところ彼女が糸を引く者である――そして必要に応じて糸を断ち切る。
PCは、革命派と王党派のバランスを崩したり、真犯人を明らかにすることのできる、第四の派閥としてこの状況に加わることになる。
この衝突は政治闘争の一つだ。王党派は権力を持ち、革命派はそれを望み、フェイの里子は誰が権力を握ろうと、最終的にそれを支配しようとする。社会的衝突の過程で、PCはおそらく派閥のエージェントになり、最終的には王国の本当の政治権力の背後にある力に気付き、革命派と王党派が力を合わせて、王国の政治的な未来に対する真の脅威に立ち向かうように動機づけることさえできるだろう。
衝突の火種は、王国の郊外にある町で、PCのいるところで始まる。この町はフェイのすみかとして知られる森の端にある。迷信深い住民はフェイから家を守るために護符を購入したが、村に住むフェイの里子がフェイの魔法に護符を晒し続けていたため、通常より早く傷んでしまった。護符がだめになったことで、クイックリングはなんとか人望の厚い木こりの家に侵入して赤ん坊を持ち去ることができ、その親はそれに気付くことはなかった。木こりと革命派の友人は、赤ん坊がさらわれたのは貴族のせいだと非難している。なぜかと言うと、国から任命された町長は荒唐無稽な迷信だと考えて砕けた護符の交換のための支払いを断ったからだ。
PCは、町長の家の周りに怒った群衆が集まっていることに気付く。これら革命派は赤ん坊の誘拐に町長が関わっていると考え、町長を処罰しようとしている。町長が雇った警備兵が、問題が起きる前に暴徒を抑えようとする。警備兵は数で勝っているが、町民が手心を加えることはなさそうなので、町民を撃退するには殺傷力のある武器を使う必要があるだろう。現時点では、PCはどちら側からも攻撃される可能性がある。一方の派閥に加わって戦闘に参加するか、(場合によっては舌戦によって)暴徒を黙らせようとするかのどちらかとなる。
結末:PCが革命派の指導者との舌戦に勝つことができれば、暴徒は自分たちが町長に対する証拠をほとんど持っていないこと、そして解決しなければならない本当の謎があることに気付く。大成功(3回以下の論議で指導者を言い負かす)に至れば群衆は落ち着き、町長は貴族のために働いているが、自分の地位よりも住民のことを気にかけており、今の所敵ではないことを理解する。
失敗すると、PCは物理的に町長を守るか、暴徒に思うままにやらせるかを選ばなければならない。大失敗(3回以下の論議で革命派の指導者との舌戦に敗れる)では、本意がどこにあるにせよ、PCは王党派の協力者としてのレッテルを貼られる。
この出来事への対処が理性によるものか暴力によるものかに拘らず、PCは1つ以上の開示イベントに進む可能性が高い。赤ん坊の失踪を調査するか、王国の政治的混乱について調べるかのどちらかだが、両方行うというのがありそうなことだ。
開示イベント:事件現場:「怒れる暴徒」イベントがどういう結果になったにせよ、PCは暴徒のきっかけとなった赤ん坊の失踪を調査したいと思うだろう。“目的の収集”の自由形式の試練という形で、ちょっとした探偵の仕事をすることになるかもしれない。
結末:PCが十分な手がかりを集めると、赤ん坊が森のクリーチャーに連れ去られた証拠が見つかった。十分な成功数を得られれば、誘拐犯がフェイだと判断し、フェイの関与を疑って森を捜索することもできる。これにより、PCはこの衝突の隠れた競争相手を突き止めることができるかもしれない。しかし、フェイの動機を見抜くのはかなり難しいだろう。これは、“丘の下の回廊”の試練イベントに直接つながる。
この発見が失敗した場合、少なくとも現状では失踪は謎のままということになる。しかしPCは後になって、この社会的衝突に関連する手かがりを他に見つけられるかもしれない。これによって、PCを革命派と貴族との対立を中心に展開するイベントに招き入れることになるだろう。
森の中のなにか、あるいは誰かが赤ん坊を誘拐したという手がかりを追って、PCは苔むした丘の下にある奇妙な大広間へとたどり着く。そこには、森の近くの様々な集落から赤ん坊たちを誘拐してきた略奪者の一団がいる。このクイックリングはノルンの全体的な計画に精通しているというわけではなく、石が立ち並ぶ場所で満月のときに出会ったフェイの商人のために赤ん坊を捕らえているに過ぎない。そして彼らは古銭で支払われる追加の料金に従って、赤ん坊を奇妙な里子に取り替えていく。
結末:クイックリングは誰が料金を支払うかを知らない(し、興味もない)。しかし、クイックリングを倒すか騙すか賄賂で情報を買うかすることで、PCは革命派も王党派も、この異常な誘拐事件と何の関わりもないと知ることができる。
この時点では、PCには探索経路について多くの選択肢がある。木こりの赤ん坊を返せば、町の住人から感謝してもらえ、町にいる協力的な伝手の1人に、町へ援助金を求める手紙(町長と協力している場合)を、あるいは大規模な抗議運動を手助けするという手紙(革命派と協力している場合)を運んでくれるよう都市へと向かってくれと依頼される。PCがそれらと異なる道を選んでいたとしても、大規模な抗議行動の可能性があるとわかれば都に向かいたいと思うかもしれない。あるいは、前回のイベントの結果次第では、PCはクイックリングから買い付けた存在を追いかけようとしたり、クイックリングの持つリストに乗っている他の項目を調べようとするかもしれない。
社会的衝突は急速に枝分かれし、PCの選択に対応する。そのため、多くの緊急事態に急速に対応しない限り、1~2件を超える仕事を計画することは難しい。社会的衝突をPCがどのように進めるかにもよるが、最終的には、PCは王国の宝物庫を強奪したり(118~129ページの強奪ルールを用いる)、上級貴族の影響力を得るための祝賀会に参加したり(102~109ページの感化ルールを用いる)、密かに里子計画を進めようとするアニカ王女と協力して平和的な解決策を模索したり、フェイの誘拐団を追いかけて買い手の行方を突き止めたり(追跡ルールを用いる)、君主制を転覆せんとする行為の妨害を行ったり(調査ルールを用いる)、革命派の創立者の一人とその取り巻きの前で口論をしたり(舌戦ルールを用いる)、その他諸々の行為を取ることになる。PCが何をしようと、フェイの里子は利益を得ようとし続け、PCがフェイの里子の存在を明らかにして裏で戦いを仕掛けるなら、フェイの里子はPCを殺しその評判を台無しにするために、なるべく他の派閥を使ってあらゆる努力を傾ける。
PCの行動に応じて、この衝突は様々な結末に行き着く可能性がある。しかし一般的には、各派閥は敗北に近づくにつれて、ある決まった行動を取る。
王党派が敗北に近づくと、彼らは社会的衝突を降りる。王は退位してアニカ王女にその座を譲ることに同意し、それは革命派の中の本当に急進的な人々の大多数が残る支持のほぼ全てを失うには十分な出来事だ。残された急進的な革命派は、君主制を打倒しようと試み続けるものの、その効果は遥かに小さくなり、その将来の行動はPCの援助がなければ実りのないものとなる可能性が高い。
革命派が敗北に近づくと、彼らは社会的衝突を続けることを諦める。不安は残るものの、少なくとも今のところは落ち着きを取り戻す。王党派はこの譲歩を受け入れ、政府全体を転覆し、貴族達を火炙りにしようとする過激な首謀者を除き、他の革命派に恩赦を与える。首謀者は恩赦を拒否したために革命の指導者という名を着せられ、処刑される。
フェイの里子は完全に破滅するまで、社会的衝突から降りない。アニカ王女は自分の部下達がひっそりとやめていくことを許し、里子との関係を立つことを望む。その一方で、全ての里子を指揮するノルンは、最後まで戦い続けることを要求する。完全に敗北すると、フェイの里子は明らかになり、その存在は王党派と革命派の双方に明らかになり、アニカ王女も彼らとともに暴かれることになる。PCが王女と個人的なつながりを持つなら、彼女は主のノルンから自分を守って欲しいと依頼される。ノルンが倒されれば、王女とフェイの里子は新しく住む場所を必要とするかもしれない。その時点になれば、かつての侵略者を忠実な国民にすることの利点を、国民に納得させることができるかもしれない。