冒険は恐怖の傑作かもしれないが、快晴の日に人々の笑い声を背にしてプレイしている場合、プレイヤーはまだ雰囲気を感じることができないかもしれない。周囲の環境は本当に効果的なホラーのストーリーを語る上でGMの最大の味方になることができるが、完全に不利に働くこともある。ゲーム・スペースを舞台として考えること。この節では、GMがその御座敷を操作して、ホラー冒険に適切な雰囲気を作り出せるようにする方法を紹介している。
パスファインダーを遊ぶにはかなりの面積が必要であり、その広さは多くの実際の制約によって制限されることが多いため、ゲーム・スペースは影響を与えるのが最も難しい環境要因の一つである。しかしGMに選択の余地があれば、中断がほとんどない静かな場所を探すことができる――交通量やバックグラウンド・ノイズは生み出している雰囲気に悪影響を与える可能性がある。スペースを共有しなければならない場合、自分はゲームを遊んでおり、干渉しないで欲しいとプレイヤー以外に伝えたり、妨害が制限される時間帯を予定することはGMの助けになるかもしれない。GMはゲームを野外や、地下室や森の中のキャビンなどの不気味な環境で遊ぶことを検討するかもしれないが、そのような場所ではそれ自体が気が散ってしまう可能性があることを念頭に置くこと。
照明を暗くすることは、より陰鬱な環境を作成するのに大いに役立つ。影は未知の世界の雰囲気を醸し出し日常的なものへの気を散らす。ただしプレイヤーが見えるようにすること――パスファインダーにはGMがやっつけ仕事にしたくない沢山の読み物や参照物がある。薄暗い光量にした部屋は、頭上の明かりを消してつまみ1つの電灯を室内に持ってくるのと同じくうまく機能する。ろうそくや電気を使わないランプは危険ではないにしても、一般的に気が散って厄介なものである。自然光が入る部屋は日中は問題があるが、夜間は暗いためゲーム・スペースとしては最適である。
音楽はうまく使えば、雰囲気を作るための強力なツールになる。扱いが悪いと取り返しがつかないほどゲームのムードを歪めたり、完全に台無しにするほど大きく気を散らしてしまう。GMがホラー・ゲームで音楽を使用する場合の目的は、設定やイベントの説明を補強するために、微妙ではあるが常に存在する聴覚的な暗流を作り出すことである。音楽は物語の雰囲気を支える内容を伴うアクションとアクション間の隙間を埋める。多くの場合、プレイの休憩時間は気晴らしで満たされるが、効果的な音楽の選択はそれに対抗できる。ホラー冒険に含める音楽を選択する際は以下のヒントを考慮せよ。
身近なものは避ける/Avoid the Familiar:音楽はテーマを呼び起こすべきであるが、特定のシーンやキャラクターを想起させるべきではない。したがって、すぐ認識できる曲を使用することには注意せよ。特定のテーマを特定するプレイヤーはゲームを源のイベントに自然と関連付ける。
できるだけ簡単に/Keep It Simple:オーディオ機器を弄ったり、ゲームに最適な歌曲を探したりしないこと。ゲームの前にプレイリストを組んでおくこと。主要なNPCとの重要なイベントのテーマ、目立つ場所のテーマ、戦闘用を1つ2つ、最終戦闘を1つ選んでおくこと。GMがコンピュータまたは電話から音楽を流すことができれば、できればワイヤレス・スピーカーに接続しておけば、ゲームテーブルから離れることなく、簡単に曲を切り替えることができる。
繰り返せる曲/Repetition:RPGのシーンは通常一般的な音楽トラックよりも長く続く。ゲーム内のすべてのイベントや場所ごとに何重もの音楽を組み立てるのではなく、繰り返し使える曲を見つけること。ビデオ・ゲームの音楽は繰り返し聞くことを念頭に置いてデザインされている事が多いので適している。音楽プレイヤーに1曲を繰り返すよう設定をして、場面や物語の求めるものに従ってその1曲を変更すること。著しく劇的な最高潮といった要素が明らかな歌曲は避けること――プレイヤーたちが同じくだりに毎回気が付くことのないようにする為にだ。最良なら、プレイヤーはゲームに注意が戻るまでの数瞬のみの間にその音楽に気付くだろう。
しっかりとした雰囲気で、歌詞はない曲/Steady Mood, No Lyrics:GMはプレイヤーの注目を音楽と奪い合わなければならない事態にはすべきではない。ゲームの音楽を選ぶ際に背景に消えていくようなインストゥルメンタルな音楽が理想的である。言葉が発言の邪魔になり、繰り返すとより容易にそれに気付くため、歌詞のある曲は避けること。同様にGMには一貫した雰囲気にさせる曲が必要だ。一部が陰鬱から強拍へと跳び上がる場合には、どちらか一方が必要になる時に役に立たないだろう。
音量の操作/Volume Manipulation:ほとんどの場合、GMはプレイヤーがゲームに集中できるようにBGMを小さく僅かなものにしたいと考える。つまり、音量を操作することで、いくつかの特殊効果が作成できる。音楽の音量を使ってプレイヤーの注意を操作してみること。プレイヤーの注意がそれてしまったら自分に注意が戻るまでゆっくりと音量を上げる。プレイヤーが自分が待っていることか自分が話し始めたことに気がついたのであれば、音量を下げて構わない。これは休憩時間を終え、プレイの再開を合図するための素晴らしい方法である。
全体の音量の調和/Volume Matching:アクション満載のシーンでは、GMはエネルギッシュなトラックの音量を上げ、自らの声をそれに重ねることで、自身の演説のテンポを早め緊張感を演出することができる。全員が音楽に合わせて大声で話さなければならない場合は、そのシーンの慌ただしさや危険な様子を想像しやすくなる。あらゆる話法的な特殊効果と同様に、このテクニックは稀に使う時に最高の働きをする。
携帯ゲーム、ソーシャル・メディア、その他の趣味は皆の注目を集めている。しかし、ゲームの書籍に載っているルールであっても、自分のハウス・ルールであっても、GMがルールの調停者である。簡単なハウス・ルールの設定を検討すること:ゲームのテーブルに居る時、グループはパスファインダーを遊んでいる――他にはなにもない。電話は離れたところにあり、コンピュータの電源は切っていて、他の趣味や気晴らしは脇においておく――ミニチュアのようなRPG関連のものでさえもだ。GMはこれをほとんどの飲食物に拡大するかもしれない。それは食事や食品の容器の存在によって没入感が損なわれるためである。
このようなルールを採用する理由はいくつかある。1つ目は単純なエンゲージメントである。一部のプレイヤーは一度に2つのことができると言いはるが、ゲームに集中していなければ、ストーリーを想像したり、キャラクターで考えたり、雰囲気に気がついたりできない。2つ目は臨場感の問題である。キャラクターはおそらく電子機器を持っていない。ゲームの世界で可能なことに反する活動に従事していないほうが、誰もが仲間のプレイヤーをキャラクターとしてイメージしやすい。最後の理由はあくまでも礼儀の問題である。GMは思考と時間に冒険を組み込み、他のプレイヤーは自分のキャラクターを開発するために同じ程度の配慮を投資している。観客が他のストーリーテリングのメディアで行うのと同じようにプレイヤーはそのような努力に敬意を払って報いるべきである。
ゲームのテーブル上で何が許可されていて、何が許可されていないのかのルールを含める場合、GMはゲームが始まる前にそれを明確にし、理由を説明するか、このテキストの説を理由にプレイヤーに示す必要がある。個々での目標は可能な限りの雰囲気と没入感のある体験を作ることであり、暴君になることではない。