冒険者としての経歴の中で、プレイヤー・キャラクターは多くの障害や敵に直面する。しかし、PCを常に試し、あらゆる局面で失敗させようとつけ狙うのは真の宿敵だけだ。それが、街に秩序をもたらそうとするPCの努力を妨害する腐敗した判事であろうとも、王の歓心を買おうとするPCを妨害する同じ冒険者であろうとも、PCの最も記憶に残る敵であることは間違いない。特に、それが自らの選択で生み出した敵であればなおさらだ。本章では記憶に残り通常の敵を超えた資産を備えた、繰り返し登場する宿敵をGMが作り出すのに役立つ、詳細な指針を提供する。宿敵の策略をエスカレートさせるルールは、複数のやり取りを経て戦いを激化させる役に立つだろう。また、相対した敵をより危険にし、同時に報酬を増やす際の対処方法や、経験点報酬を増やす際の調整方法の指針も示している。失敗した作戦ではそれぞれ敵に反撃する機会をPCに与えるべきであり、PCの計画に沿った新たな冒険を引き起こすこともあるだろう。こういった新しい冒険は、キャラクターとその宿敵との間の怨恨を深めるのは間違いない。
キャラクターと宿敵との物語は、常に優位に立とうとする双方向のやり取りである。これは、一方が他方を決定的に打ち破る(多くの場合、敵を殺したり別の形で破滅させたりして)まで、その激しさを増す計略を計画する強迫観念につながっている。同様に、敵は策略(実行する計画と保有する資源を示すもの)を採用することで、PCを打ちのめしたり、妨害したり、混乱させたりすることに積極的に取り組んでいる。
それぞれの策略は宿敵がPCに対して行動を起こすイベント、遭遇、冒険である。状況に社会的な側面がある場合、PCと宿敵との間の闘争を社会的な衝突にすることを検討してほしい。それぞれの策略が展開されると、PCはその潮目を読んで敵に反撃することができる。この切り返しは、長期的なキャンペーンの期間で何度も行われる可能性がある。
PCに対する敵意の強さを示すため、すべての宿敵は宿敵値を持っている。この値はPCが宿敵に与えた反撃の度合い(潮目をうまく利用することなどによって。潮目項を参照)を示し、PCに対する宿敵の策略の重要度を決定する。PCが宿敵からの最初の敵意を受けた理由を認識していなかったとしても、宿敵値は常に1以上から始まる。宿敵がPCの行動に動揺する理由がなければ、PCに対する策略に資源を浪費することはないだろうから。特に目を見張るような反撃があれば、宿敵値は2倍に上昇する可能性もある。PCには複数の宿敵が存在することがあるが、PCと宿敵毎の継続的な争いには、それぞれ別の宿敵値が設定される。
宿敵との関係が成熟してくると、PCの敵が持つ宿敵レベルが上昇する。PCに対する宿敵の敵意は、次の3段階で進行していく。
手始め/Simmering:PCが宿敵の注意をひくようになり、宿敵はPCを重要ではないが解決する必要のある脅威とみなしている。敵はPCの情報を収集し、策略を使い始めるが、まだこの敵対関係に強く投資しない。
着手/Engaged:PCたちは宿敵と頻繁に衝突しており、宿敵は彼らを重要な問題と捉えている。敵はPCの能力を知っており、自分の計画がPCの計画と衝突するような場合には、特に邪魔をするように作戦を調整しさえする。
本腰/Intense:PCと宿敵は互いの作戦を失敗させ合っているため、宿敵はPCの能力を詳細に把握している。宿敵は今ではPCの干渉を終わらせるために必要となるあらゆる手段をすべて使おうとしている。このことは、PCの敗北が宿敵の最も主要な目標の1つになっていることを意味しており、PCが失敗し続けるという主要な目的の次に重要になっているかもしれない。
潮目とはPCが宿敵に反撃する機会である。GMは策略を選択するたびに、反撃の機会の種類を、策略の弱点の種類を、あるいはPCが策略を失敗させるかその被害を蒙った結果として発見できる手がかりの種類を、決定すること。次項の策略の詳細には、策略毎に明らかになる可能性のある潮目の種類が含まれる。これらの計略の糸口の選択肢は、冒険の種類に対して、PCがより大きな影響力を与えることを意図している。それにより、宿敵の計略に対する反応に基づいて、PCがキャンペーンの物語を誘導しているように感じるのを助けることができる。潮目はプレイヤーが考案した対抗戦略を引き出し、単一の遭遇や冒険全体の形を取ることもある(強奪と侵入を参照)。策略項には多くの選択肢がある。しかし、戦略に併記されている潮目は、単なる可能性の一部に過ぎない。PCは自分の宿敵にあった別の潮目を考えて自由に誘導し、それがキャンペーンとうまく噛み合うようにすべきだ。もちろん、PCが潮目で行動するたびに、宿敵はその反抗心を維持し、敵意を保ち続け、場合によっては高めることさえあるだろう。
このPCと宿敵との間でのやりとりは、劇的な最後の遭遇やキャンペーンの終わりのような、自然で計画的な結末で最高潮に達するべきだ。このような相互作用が最も効果を発揮するのは、このクライマックスに至るまで、宿敵とPCが戦闘で対峙したことがない理由がある場合だ。PCは、最もしくじりようがないように見える脱出計画からでも敵を殺す方法を見つける傾向があり、物語上のいかさまを使って宿敵を救おうとすると、プレイヤーに恨みを抱かれる可能性がある。それにもかかわらず、ある敵が何故か早く死んでしまっても、まだ十分な資源をもっていれば、その宿敵は、PCが戦いの中で死んだときのように、リザレクションされる可能性がある。特別な出来事が(あるいは意図的な戦略によって)示されない限り、宿敵が死ぬか、あるいは何らかの方法で敵と和解しない限り、宿敵はPCと敵対し続ける。
宿敵は通常、一度に1つの策略しか用いない。PCが継続的に宿敵に大きな停滞をもたらす場合にのみ、宿敵は2つの策略を同時に使用する。宿敵は概して現在の宿敵レベルに相応しい策略を採用し、それはその敵役用に選んだ典型と手口と結びついている(宿敵の人格を参照)。ときには、より小規模な頓挫を耐え忍んだ後の宿敵にとっては小規模な策略が妥当かもしれないが、自分より高い宿敵レベルのための策略を使用すべきではない。
PCは宿敵の策略に巻き込まれると、その勝敗に拘わらず経験点報酬を受け取る。PCがこの経験点を手に入れるタイミングはGMが決定する。この経験点を遭遇の最後に与えるというのは妥当だろう、その遭遇は単一の遭遇であっても、敵の代理人との対話であっても良いし、あるいその策略の利益や主題の影響を受けた、より大きな冒険の終わりに齎しても良い。策略を無視したりそもそも遭遇しなかった場合には、PCは経験点を獲得できない。経験点報酬は策略の展開中にPCが遭遇し、克服したときに得る経験点に追加される。策略による経験点報酬は、PCの平均パーティ・レベル(APL)に基づいて決まる。宿敵の策略に巻き込まれた後、PCが得る報酬は脅威度1の遭遇を突破したときに得る報酬の量を下回るべきではない。
低/Low:PCはAPL-3に等しい脅威度の遭遇を突破したかのように経験点を得る。
中/Medium:PCはAPL-2に等しい脅威度の遭遇を突破したかのように経験点を得る。
高/High:PCはAPL-1に等しい脅威度の遭遇を突破したかのように経験点を得る。
これらの策略は、単純であるばかりでなく、費用も悪意も少ない。これらはPCに膨大な資産を費やしたり、個人的な思いを持つだけの十分な理由がまだない、駆け出しの宿敵にはちょうどよいだろう。
宿敵はPCに対して追加の資産を費やす。宿敵との戦闘、あるいは宿敵の支援する集団との戦闘において、宿敵あるいは集団はレベル当たりの資産を25%だけ増加させる。これは通常、敵が能力を強化するために戦いの前に使用する、消耗品に割り当てられる。戦闘によらない遭遇では、富裕の策略はPCを打ち負かそうとする作業において、宿敵や宿敵から支援を受けた集団に有利な状況を与える。例えば、PCと宿敵が舌戦を行った場合、宿敵は優勢を3つ得る(優れた訓練、聴衆の中の替え玉、賄賂などを表現している)。
宿敵は、偶然にも自身の経歴や資産がどこから来たのか、誰がその資産を管理しているのか、あるいは資産が不正な出所によるものかについて、なにか個人的な情報を明らかにする。
宿敵はPCが気に入ることを期待して、偽の魔法のアイテムを店に忍ばせる。PCが購入するアイテムは実際は呪われている。すべての判定で正常に機能しているように見えるが、GMは表15-27:呪われたアイテムの一般的な呪いで呪いを選択するかダイスを振って決定する。
呪われたアイテムを店に戻すと、宿敵の協力者あるいは宿敵に買収された人物が明らかになる。また、他の魔法のアイテム(呪われているか、そうでないか)の隠し場所も明らかになる。
宿敵は直接、あるいは偽の証人を出すために操った代理人を通じて、いくつかの軽犯罪やその他の不正行為でPCを告発する。PCは刑事組織を避けるかある種の社交的な試練を通して、または法廷で舌戦を繰り広げることで、無実の証明に時間を費やさなければならない。刑事組織を避けたり汚名を晴らしたりすることは、厳しい罰金、投獄、影響力の低下、何らかの肉体的な罰則のように、より劇的な効果をもたらす可能性もある。
宿敵がもたらした目撃者は、自分の話を正確に続けることができないか、自分が知らないはずのことを知っていることを明らかにしてしまう。これは目撃者の嘘を顕にするだけでなく、なにかの悪事に関与している宿敵を指し示すことになる可能性が高い。
宿敵は他のNPCグループがPCと関係を絶ち、仕事を一緒に行わないように強制する(PCはしばしば莫大な金銭を交換するため、小売業者はこの策略で特に効果的な集団である)。このNPCグループに属しているものは、PCが〈威圧〉あるいは〈交渉〉に成功しない限り、PCへの支援や会話を拒絶する。判定の難易度は20+グループのAPLに等しい。
宿敵の計画が明らかになると、強制されたグループは自分たちはもう脅されてはいないと分かる。おそらく、彼らは敵への援助を拒絶するか、PCに10%割引を提供するだろう。
宿敵はPCの評判を落とす噂を広める活動を展開している。このような噂は広まり切ってはいないが、PCに対して疑念を抱く理由を人に持たせるには十分なものだ。この策略は、キャラクターの統率力値、伝手の信頼、名声、栄誉ポイント、組織への合計感化値を1だけ減少させる。あるいは、宿敵はキャラクター1人だけを目標とし、減少幅を2倍にすることもできる。
その噂を辿って宿敵に辿り着けば、その嘘に反撃し、PCが被った損失を打ち消せる可能性がある。今後、宿敵が噂を広めた地域では、住人は宿敵の主張を信じなくなるだろう。
宿敵は工作員を送り、遠くからPCを追跡する。この追跡者は1体のNPCもしくはクリーチャーである、脅威度はPCのAPL-3に等しい。PCが追跡者を伴っている間、PCの活動と一般的な計画は宿敵に伝えられる。追跡者は都市部や荒野ではPCの後を追うが、危険な場所(ダンジョンや墓所など)には入らない。追跡者はPCの活動を毎日報告する。PCが別れた場合、追跡者はPC1人の後についていく(なにか面白いことをしているように見えるPCか、最も簡単に追跡できるPCを選ぶ)。追跡者は自身の〈隠密〉と〈知覚〉を持ち、隠れたままでいようとする。その存在を隠すために遮蔽や群衆の中に紛れて存在を隠し、距離をとって気づくための〈知覚〉難易度を増加させる。追跡者が発見されたり捕まったりすると、常に逃げようとする。
PCが追跡者を発見した場合、宿敵に誤った情報を報告するように仕向けられるかもしれない。あるいは、PCたちは追跡者を捕えたり、逮捕させたりすることでPCたちの敵は有用な味方であることを否定できるかもしれない。
着手における策略は、手始めにおける策略よりも個人的で高コストだ。これはすなわち宿敵の興味と高まる悪意の結実を示している。
宿敵はPCが離れていたり別のことに対処している間に、その仲間を人質に取る。その仲間を排除することは宿敵にとって有益であり、PCにとっては不利益であると判明する。PCはその味方の居場所を突き止めて救助しようという努力に時間を費やすか、宿敵の目的に対抗するかを決めなければならなくなるかもしれない。
捕らえられた仲間は、捕まっている間に宿敵の本拠地の位置、内部構造、警備兵の動きのようなかなりの情報を把握する。
宿敵はフィーンドや他の闇の力と契約し、PCを妨害する。宿敵は強力な悪の来訪者(脅威度はパーティのAPL+3を超えない)から一時的な助力を得る。しかし、その過程で重要なものを失う。これには、そのクリーチャーが助力を与えている間、宿敵が能力値にペナルティを受けることも含まれるかもしれない。あるいは、知性のあるクリーチャーを(通常、悪の来訪者のヒット・ダイスに等しい数だけ)毎月生贄にしなければならないかもしれない。
PCは、敵が闇の力を呼び出すために払った対価を発見し、おそらく何らかの形の地獄の契約を明らかにする。他の組織も、宿敵の闇とのやり取りを批難するかもしれない。
宿敵はPCの介入になれており、不慮の事態に備えた計画を作っている。PCが宿敵の現在の計画を潰そうとしているとき、宿敵は1~4レベルの呪文の効果から即座にコンティンジェンシィの利益を得る。あるいは、天井を崩したり、水門を開けたりといった、魔法ではない対応策を解き放つかもしれない。
急いで行動した結果、宿敵は隠れ家の場所や人に見られては困る秘密の痕跡を残していく。また、彼の大掛かりな逃亡によって他の人々が被害を受け、彼らがPCを支援するようになるかもしれない。
PCが引き起こした最近の停滞を受けて、宿敵は目標を達成するために一層尽力する。宿敵は現在進行中の計画1つ(儀式、調査、干渉、建築、その他の作業)を、通常の半分の時間で完了する。その代わりに、PCが次の潮目を利用する際、宿敵は疲労状態になる。あるいは、戦闘ではない状況でPCが宿敵に出会った場合、宿敵の作業は粗悪であることが明らかで、それによってPCは宿敵に対してわずかながら有利になる。
PCは、宿敵がこの計画や他の計画でどのように手間を省いたかに注目することで、宿敵の新しい兵器、魔法の防御、隠れ家の弱点を明らかにする。
宿敵は密偵や占術などでPCを調べている間に、PCの最終的な目的を見つけ、先んじる。目的地にいる人々に警告を発し、PCの長所と短所を説明し(これによって逃亡したり待ち伏せする時間を与え)、護衛を殺してPCへの罠だけを残して略奪したり、といったことがあり得る。
宿敵が目的地を奪おうとする試みは、より素晴らしい宝に満ちた、探索されていない場所を明らかにする。あるいは、宿敵がPCではなく自分を標的とした呪いや防御を起動するかもしれない。
宿敵はPCの移動中や休憩中に、PCの前に工作員を1人以上送り、PCの進行速度を遅らせるために人工的な障害となるように命じる。工作員が考案する単純で経験点報酬が低の危険には、橋を破壊してPCの移動を阻害したり、PCの乗騎を盗んだり、PCのキャンプに普通の動物を誘い込んで面倒を引き起こすことなどが挙げられる。経験点報酬が中となるより危険な障害には、建物の中にPCを誘い込んで火を点ける、雪崩を引き起こす、危険なクリーチャーにPCを攻撃させる、といったことが挙げられる。この策略を使用するには、敵はPCに対して最低でも1回は追跡者の策略を使用したことがなければならない(あるいは別の方法、例えばPCが宿敵の場所を追跡するように宿敵がPCの向かう先を調べることもあり得る。追跡を参照)。
宿敵の工作員が仕掛けた罠は、帰路にいる宿敵に対して使用できるかもしれない脅威を明らかにする。クリーチャーをPCのキャンプに誘い込んだことで、その獣に宿敵と工作員の臭いを覚えさせ、意図しない結果を招く可能性もある。
宿敵は他の集団と一時的な合意に達する。この結果、宿敵はPCの数に等しい仲間の援助を受け取る。その仲間それぞれの脅威度は、通常はパーティのAPL-1を超えるべきではない。これらの仲間は、PCと直接対峙するか、援助と資産で宿敵を支援するかに拘わらず、宿敵が必要とするもので支援する。この協力関係は、宿敵のヒット・ダイスと同じ日数だけ続く。
PCは宿敵と新たな仲間との間にある争いの種を見出し、その知識を使って互いを仲違いさせるかもしれない。また、PCは、自分の駒を部外者が操るのをよしとしない、より大規模で危険な集団や個人の注意を宿敵に向けさせるかもしれない。
宿敵はPCから価値あるものを盗もうとする。PCが特定の場所に貴重品を保管している場合、宿敵やその部下は強奪を試み、通常はその場所に保管している総価値の10~100%の間のものを盗んでいく。PCがすべての財産を持ち運んでいる場合、敵はスリを送り込み、〈隠密〉と〈手先の早業〉を使ってできる範囲のものを盗んで退散する。
PCは宿敵を示す証拠を見つけ、強奪をし返して奪われたものを取り戻す機会が与えられる。
宿敵はPCの都合の悪いときに奇襲を仕掛ける。宿敵はすでに戦闘中のPCや、その日のリソースの多くを使って休息しているPCに対して、強力な工作員(1人あるいはチーム)を送り出す。あるいは、PCが求めている計画や作戦が予想以上に妨害される可能性もある。
敵の工作員は事前準備をしていないPCを圧倒するために、通常よりも価値のあるものを持っていたり、宿敵の役に立つ魔法のアイテムを持っていたりする。敵を倒すことで、それらはPCにとって価値ある財宝となる。
本腰における策略は絶望的か高コスト、あるいは極めて個人的なものだ。その3つすべてであるかもしれない。このような極端なことができるのは、PCが与えた数々の停滞に復讐する必要性が非常に高い宿敵だけだ。
宿敵は資産を売却し、借金をすることで、レベルごとの通常の資産に等しい追加の資産を得る。宿敵はこの財宝を自分の好きな資源のために使ったり、PCと直接競合している出来事で大きな優位性を得ることができる。宿敵の清算は短期的には富をもたらすかもしれないが、長期的な支払い能力に悪影響を及ぼすだろう。
宿敵は自分の資産を使い果たし、その資産が通常提供する魔法的な、そして一般的な防護の多くを失っている。あるいは、PCの仲間の1人が宿敵に追加の財産を与えたものが誰かを自分で確認する。仲間は、宿敵の支援者を怒らせるような誤りや嘘を見出し、宿敵との関係を断ち切るか、自分の借金を戻すように仕向けることができる。
宿敵は冷酷にもPCの近しい仲間を殺す。その仲間はPCに多大な支援を提供する人か、PCと密接な関係を持つ人であるべきである。この策略が成功すると、PCは報復を考えるであろうから、宿敵に反撃する確実な機会となるだろう。
宿敵が殺人に訴えたのは、これが初めてではないかもしれない。公にさらされた死は、宿敵の他の敵を明らかにし、その同情によって、PCと手を結ぶかもしれない。
この策略は嘘の目撃者のより厳しいものと言える。宿敵はPCが反逆罪を犯していることを地元の政府に訴える。PCは宿敵の行動に対抗するだけではなく、国家当局の追跡や刑事告発の可能性から逃れなければならない。この状況においてもPCは無実を証明しようとすることができるが、それは非常に困難で、PCの時間と資産に負担がかかる。また、PCの無実を証明するだけでは十分ではないかもしれないし、PCは他の目的を達成する為に社会のはみ出し者として行動しなければならないかもしれない。
宿敵の嘘はそれ自体が犯罪であり、それを暴くと、PCは法の目を宿敵に向けさせる。
PCは宿敵を殺した。しかしその執着心が、PCを倒すという未完の事業とともに、ゴーストとして宿敵を立ち上がらせる。死後1~4日の後にその魂は蘇り、ゴーストは生前の所有物と結びついている。これらの物品を見つけるために、宿敵はロケート・オブジェクトを回数無制限の擬似呪文能力として使用でき、1日1回グレーター・スクライングを使用して、これらの物体を運んでいるクリーチャーを、そのクリーチャーと親しいかのように盗み見ることができる。これは、たとえそのクリーチャーが別次元界にいる場合であっても作用する。いずれかの効果で物体の位置を特定することに成功したなら、宿敵は1日に1回、ワード・オヴ・リコールのようにその場所に瞬間移動し、その非実体の体をその物体に溶け込ませ、一緒に移動することができる。その物体の中にいる間、宿敵はその悪意のある能力を使って近くのクリーチャーに憑依することができる。宿敵のゴーストのかつての所有物の1つを所持しているか身につけているかするクリーチャーは、この悪意に対するセーヴィング・スローに-4のペナルティを受ける。ゴーストになることは宿敵にも制限を与え、PCが反撃する新たな機会にもなる。
宿敵が死を拒むことが、ナイト・ハグやサイコポンプといった危険なクリーチャーの興味を引く。それは宿敵の魂を奪おうとするだけでなく、PCを新たな異世界の冒険へと引き込もうとする。
PCは宿敵の狂信的な従者を殺し、宿敵はその従者をリヴェナントとして蘇らせる。高レベルのパーティに対しては、複数の死亡したリヴェナント、あるいはより強力なアンデッドが報復に来る可能性もある。これらの不浄で忌まわしい存在はPCを絶え間なく追い詰め、復讐を企む。多くの策略と異なり、宿敵は自分だけでこれを引き起こすことはない。
宿敵は通常、アンデッドを仲間として扱うことはないだろうが、この場合、死者は宿敵の作戦に組み込まれている。このことは、現在では宿敵が聖者の敵であると信じられるだけの理由になり、善属性の信仰からの監査を招くことになる。
宿敵はクローン、シミュレイクラム、ドッペルゲンガー、他の偽者を使い、自分が別の場所にいるかのように見せかける。GMは、PCが宿敵と遭遇する前に「この策略を実行することで、PCに本物と戦わせる代わりに偽者用の性能を使用する」と決定するべきである。PCが偽者を殺した後に、GMはそれが偽者だったことを明らかにすべきだ。
PCは敵のエージェントの多くに自分の主人が死んだことを納得させ、騙して持ち場を離れさせたり、今では無意味と感じられる秘密を明かさせたりできるかもしれない。
宿敵はちょうどいい瞬間にまで控えていた切り札――恐ろしい仲間や強力な魔法のアイテム――を明らかにする。この切り札の使用を厳しく制限したり、使用を控えていた理由があるはずだ。例えば使用後にエネルギーが切れ、その充足が非常に難しいもののように。あるいは、同盟を知られたならその名声は地に落ちてしまうかもしれない。それが何であれ、宿敵が切り札を隠す理由は、PCにとって特に有益な潮目に繋がる可能性がある。
宿敵が切り札を使用することは、おそらく法律、切り札の元の持ち主、この切り札自体を欲しがるより危険なクリーチャーの注目を集める。PCは一時的にこのクリーチャーと協力したり、敵対関係を利用して利益を得たりする可能性がある。
ただ敵対関係にあることよりも、宿敵を持つことのほうがずっと個人的な要素である。そのため、何が宿敵を動かすのかを考えることは重要だ。以下に示す典型的な宿敵の人格は、フィクションの世界では一般的で、記憶に残る敵を作る役に立つ。
仲違いした弟子/Embittered Protege:もしかすると、宿敵はかつてPCの従者の1人だったり、近しい仲間の1人であったかもしれないし、同じ指導者に見いだされたのかもしれない。弟子は才能不足や重要な試験での落第、何らかの違反によって訓練から外された。弟子はPCの1人以上を自分の失敗のことで非難している。弟子は自分を出し抜いた後にえこひいきされたとか、PCが何らかの理由で訓練を妨害したのだと主張する。
堕ちた偶像/Fallen Idol:宿敵はかつて大きな名声を持ち、その英雄的行為を讃えられ、PCの師として崇められていた。その以前の名声が何であれ、この偶像は苦境に陥っている。それは公に知られていることではないかもしれないし、堕ちた偶像との初期の出会いは、物事が順調に進んでいると見せかけたものかもしれない。しかし、PCは知らず識らずのうちにその堕ちた偶像が元の地位を取り戻す(もしかしたら不正な)計画を妨害しており、その堕ちた偶像を更なる絶望へと陥らせている。宿敵は以前の名声を取り戻すことに執着するようになり、威厳を取り戻すための戦いに負けるたびに、かつてないほどいかがわしい方法、非道な計画に手を染めるようになる。すなわち、堕ちた偶像はかつて自分が相対した存在になったのだ。PCは最後の対決の後、堕ちた偶像に贖罪させるか殺すかを決めなければならないその時に至るまで、かつての師と新しい宿敵が同じ存在であることに気づかないかもしれない。
未来の語り部/Herald of the Future:宿敵は進歩という大義に心を奪われ、古いやり方を廃止し、輝かしい未来を導くことに専心する。この新しい未来は科学、政治的な激変、狂信する神の復活、異世界の知性の出現によってもたらされるものかもしれない。その主義主張が何であれ、宿敵はそれがすべてを変えると約束する。その目標と教義は奇妙なもので、PCはその未来感に反対するかもしれないし、単に同じ資産を求めて宿敵と争うことになるのかもしれない。例えば、奇妙なアーティファクトを集めるという目的のために、PCと異世界の遺物を巡って競争することになるかもしれない。都会的で洗練されている一方で、その未来の語り部は意見の相違を視野の狭い者の無知であると受け入れない。最初、宿敵は怒りよりも相手の近視眼的な姿勢に悲しみを抱くかもしれないが、宿敵はPCが進歩の道に立ちはだかるままにはしておかないだろう。
妨害を好む役人/Obstructive Official:宿敵は方の執行者、道徳にうるさい裁判官、野心的な貴族、傲慢な貴族など、政治的な権力者または著名人だ。その役割が何であれ、また出自、資産、個人的な権力によってその地位を維持しているかどうかに拘わらず、宿敵はPCが冒険活動の中で一定の頻度で侵害する、特定の規則に従っている。妨害を好む役人は、PCの動機や正当性には興味がない。宿敵にとっては、寝起きに面倒事をもたらす危険な自称自警団だ。いわゆる「英雄」は、管理されるべきであって、そうでなければ除去する必要のある脅威である。この種の宿敵は、そのコネを利用してPCの生活を困難にするが、常に法的手段を通じたものだ。最終的には、PCを刑務所に入れたり、追放したり、その他の方法で排除したいと考えているが、それもルールに基づく訴訟を起こした後だけだ。
トリックスター/Trickster:宿敵は混乱の原因であり、悪意や純粋な気まぐれから行動するトラブルメーカーだ。トリックスターは法律、権利、管理ルールを全く尊重しない。気分が乗れば事前行為をする場合だってあり得る。宿敵は一部の人にとっては英雄である場合さえある。宿敵は自分を支持する人にすぐに報いることもあれば、完全に新しい計画のために彼らを見捨てるかもしれない。トリックスターがPCに敵対するのは、PCの行動原理を弱体化させたり、PCを取り巻く世界を混乱させたりするための、ひねくれた社会実験なのかもしれない。あるいは、宿敵にとっては単なるゲームかも知れない。PCは、無視するにはあまりにも面白すぎるのだ。