パスファインダー・ロールプレイング・ゲーム用の呪文をデザインするのは芸術と科学が入り混じった作業である。本章では君のキャンペーン用に、バランスのとれた実用に値する呪文をデザインする際に考える必要があることを述べる。
魔法のアイテムとは異なり、呪文には本ゲーム内における呪文レベルに合致する能力の基準(パワー・レベル)が前もって定義されている。君は呪文をデザインする際、新しい呪文と既存の呪文を比較することで、これらのパワー・レベルを考慮しなければならない――1つの呪文は9つの呪文レベルの内の1つ(および初級秘術呪文ないし初級信仰呪文)という狭い能力の範囲に落とし込まれなければならないのだ。対照的に魔法のアイテムの価格は非常に粒度が細かく、そのアイテムが有する機能の価格に基づくgpから計算される。言い換えれば、ある魔法のアイテムにより多くの力を加える場合、君は単にそれに合わせて価値を高めるだけでよい。しかしある呪文にはるかに強い力を加える場合、君はそれをより高いレベルの呪文にしなければならない。そしてそれは例示となる呪文の異なる組み合わせとそれを比較しなければならないことを意味する。
自作の呪文と似通った呪文を比較し、その想定されるレベルの他の呪文と比較すること。
魔法のアイテムの価値を計る場合とは異なり、ある呪文の「価値」を正確に計る計算式はない。その作業工程は全て、君の作成した新しい呪文と他の呪文を比較し、その呪文や呪文グループに対して弱いのか強いのかどう程度なのかを評価する方法である。呪文をデザインするには、呪文に関連したルールだけではなく、このゲームのルール全てをしっかりと理解している必要がある。その上、ゲームで仮定されている記載されていない事柄に対する理解も必要になる。そのような事柄のほとんどは、本項の中で述べられている。
例:呪文リストを見ると、[音波]ダメージを与える1レベルのウィザード呪文が存在しないことに気づくだろう。君はこの隙間を埋めるために、バーニング・ハンズと同様に機能するが、[火炎]ではなく[音波]ダメージを与えるような呪文をデザインすることにするかもしれない――その呪文を君がソニック・スクリーチと名付けたとしよう。しかしこのゲームには、[音波]呪文がそれほど多く存在しない理由がある。エネルギー種別としての「音波」はこのルールに後で追加されたものであり、[音波]ダメージに抵抗を持つモンスターは非常に少ない。というのも、ほとんどのモンスターは「音波」がエネルギー種別として定義される前にすでに存在していたからである。[音波]に対する抵抗を持つクリーチャーが[火炎]に対する抵抗を持つものより少ないため、ソニック・スクリーチはバーニング・ハンズよりもほとんどの状況で優れているのである。このようなわけで、もし君が自らのゲームにソニック・スクリーチを加えるならば、心得たプレイヤーがバーニング・ハンズの代わりにこの呪文を選択する姿を目にすることになるだろう。もし新しい呪文がほとんどの呪文の使い手の呪文表から既存の呪文を置き換えてしまうのであれば、それはおそらく他の選択できる項目よりも優れていることを意味している――そしてその呪文が非常に優れているために最適な呪文選択となるのであれば、おそらくその能力は強大にすぎるのだ。
ルール系統の全てを理解することで、君はこのような失敗を回避することができるだろう。
ある術者が新しい呪文を作成するためにしなければならないことに関するこのゲームのルールは非常に曖昧である(独自の研究を参照)。何故かというと、魔法のアイテムの作成方法の詳細のように、このような研究を術者が行うことの詳細は、キャンペーンの進行において重要ではないからだ。ちょうどウィザードがスクイッド(イカ)の墨を使用するのか珍しい植物のインクを使用するのかがバーニング・ハンズの巻物を作成する際に必要なことではないように、イルラークス・インカナブルム(イルラークスの初版本)に記載された身振りを修正するかどうかや、マーロスツ・グレート・グリモア(マーロストの偉大なる魔法書)に詳細が記載された単語の音を変えるかどうかを知ることも新しい1レベル攻撃呪文を作り出す際に必要なことではない。これらの要素をフレーバーとして含むのは(特に高い物語性を持つキャンペーンにおいては)良いことではあるが、このようなものはアイテム作成や呪文研究の結果に影響を及ぼすものではく、いずれもゲーム時間外でそのほとんどを費やされるものである。そのため、本章ではプレイヤーやGMが新しい呪文をデザインするゲーム技巧について述べており、あるキャラクターが新しい呪文を研究するためにゲーム内で必要な事柄については記載しない。
呪文やそれが生み出す効果を描写するためにこのゲームで使用される用語を理解することは、君にとって必要不可欠なことだ。新しい呪文をデザインする前に、魔法に慣れ親しむこと。特に数ある系統や副系統、それに呪文の詳細を説明する項目(構成要素、距離など)については必ず理解していなければならない。
以降の項ではバランスのとれた呪文を作成するために重要で妥当な順に、呪文のデザインの側面を述べていく。例えばある呪文の構成要素は、高価な焦点具や物質要素が含まれでもしない限り、そのパワー・レベルに及ぼす影響は極めて低い。そのため構成要素はダメージ、距離、持続時間、セーヴィング・スローよりも後に記載されている。
作成の前に、君には新しい呪文の全体的な想定能力のアイデアが大抵必要となる――多分君はそれを使わせたいと考えている特定のPCないしNPCを持っているだろうから、そのレベルがあまりにも低くて重要ではなくなったり、そのキャラクターにとってあまりにも高いために発動することができないということになっては、呪文をデザインする目的は満たされない。その呪文の一般的なレベル間の差はこの点において十分に近いということを知ってさえいれば、次の議論に進むことができるだろう。
呪文をデザインする際、想定される機能は考慮すべき最重要項目である。特に機能は、この呪文の具体的なゲーム的効果に言及する。ダメージを与える、不調状態のような状態を及ぼす、セーヴや攻撃ロールにボーナスを与えるといったように。それ以外のことはこの点においてはただの飾りに過ぎない――斬撃ダメージを与えるか[火炎]ダメージを与えるか、目標を不調状態にするか混乱状態にする、セーヴに洞察ボーナスを与えるのか攻撃ロールに強化ボーナスを与えるのか、ユニコーンのように見えるのかファイアー・デーモンに見えるのか、はいずれもどちらでもよい。機能の例には以下のようなものが含まれる。
ある呪文は一度に上記の項目の複数を行うこともできるし、術者が複数のオプションから選択することができるものもある。しかしそのような呪文は1つの効果を持つ同じ呪文レベルの呪文よりも、必ず弱い力しか持たないようにしなければならない。「状態もしくは効果」は上記の項目の中でももっとも広範に渡るものであることに注意すること。これらは不調状態や恐慌状態のような実際の状態も、瞬間移動のような効果も含んでいるのである。
攻撃呪文の力を測るもっとも簡単な方法の1つは、それがどれだけ多くのダメージを出すかを確認することだ。攻撃呪文はこのゲームで最も簡単にデザインすることができる呪文であり、その例は数多くある。一般的なダメージ呪文は、秘術呪文では術者レベル1ごとに1ダイス(通常はd6)のダメージ(例えばショッキング・グラスプやファイアーボール)を、信仰呪文では術者レベル2ごとに1ダイス(通常はd6だが、ときどきd8のものもある)のダメージ(例えばシアリング・ライト)を与える。
もっとも単純な呪文は目標1つ(クリーチャー1体か物体1つか、術者のみか)にのみ効果を及ぼす。厳密に言えば、術者にのみ効果を及ぼす(距離が“自身”で目標が“術者”の)呪文は“クリーチャー1体”を目標とするものよりもわずかながら弱い(訳注:以降の文意から、“弱い→強い”と思われる)。なぜなら誰かに効果を及ぼす呪文を発動することができるものは、それをより多目的に使うことができ、そのためにより強力だからである。しかし“術者にのみ”効果を及ぼす呪文を作ることでわずかに力を弱めることは、1レベル低い呪文としてデザインするために使用するべきではない。多くの場合、術者にのみ効果を及ぼす呪文は常に機能するか、そのクラスに利益を及ぼす独自のボーナスを提供する形でデザインされる。しかし君がこの呪文を発動することやこの呪文のポーションを飲むことで利益を得ることを許す場合に手に負えなくなることがある。このような呪文は術者にのみ効果を及ぼすままにしておくべきだが、この呪文を誰かに発動することができるかのようにそのパワー・レベルを分析したほうがよい。
例:シールドやトゥルー・ストライクはいずれも1レベル呪文であり、術者にのみ作用する。もしこの呪文を他者を目標に発動することができるとしても、この呪文は依然として1レベル呪文とするのが正しいパワー・レベルである――それらは術者にのみ作用する呪文として君がデザインしたが故にレベルを下げた2レベル呪文ではないからだ。シールドは常に術者にのみ効果を及ぼす呪文であり、このようにされているのにはゲーム・バランス上の理由がある。シールドは盾ボーナスを提供するため、この呪文の効果を受けたファイターのような近接戦闘キャラクターは実際の盾を落とすことができ、追加ダメージのために両手武器を装備しておくことができる。トゥルー・ストライクは意図的に術者にのみ作用する呪文としてデザインされており、そのためにソーサラーはファイターに毎ラウンドこの呪文を発動することができないのだ。そのようにされれば、ファイターは(追加アーマー・クラスのための)《攻防一体》や(追加ダメージのための)《強打》を使用してさえ、命中させることが難しいモンスターに攻撃を命中させることができるだろう。そのような術者にのみ効果を及ぼす呪文を作ることで、実際にその呪文を弱くすることはない。しかしそのようにすることで、遭遇を非常に簡単にしてしまうような組み合わせからプレイヤーを守っているのである。
複数のクリーチャーに効果を及ぼす呪文は1体のクリーチャーにのみ効果を及ぼす呪文よりも強力である。複数のクリーチャーに効果を及ぼす呪文は円錐形や球状のような範囲に効果を及ぼすもの(ファイアーボールなど)か、どの2体もある距離内にいる複数のクリーチャーを術者が選択できるもの(スローなど)のいずれかであることが多い。スローのように目標を術者が指定する呪文よりも、ファイアーボールのような爆発効果はその特性上多くの敵に効果を及ぼすことができるが、(スローを使用したときには術者の仲間を巻き込む危険はない。その呪文に最も適した種類がどちらなのか選択すること。ただし極めて低い術者レベルでない限り、複数を選択できる呪文の方が一般に強力である(低い術者レベルであれば、爆発が効果を及ぼす数に比べてずっと少ない目標にしか効果を及ぼすことができないからだ)。
低レベルのダメージ呪文は中レベルや高レベルのダメージ呪文と同程度によいものではない――このゲームでは時として、中レベルや高レベルの呪文が与えることのできる最大のダメージ量に低レベルの呪文が至ることがある。これは低レベル呪文が最大ダメージを与えることなく低レベル呪文が増え続けるなら、有用性の点においてより高いレベルの呪文と戦うことになり、かつて20レベルの術者が同じ呪文を使う場合に、1レベルの時のように楽しくなくなってしまうからだ。
最大ダメージは呪文レベルと、その呪文が秘術呪文か信仰呪文かとに依存する。これはすなわち、信仰呪文が治癒に優れているという事実に対するバランス上、秘術呪文はダメージを与える点において優れているようにデザインされているからだ。「単一目標」呪文は1体のクリーチャーにのみダメージを及ぼす(ショッキング・グラスプ)か、そのダメージをいくつかのクリーチャーに分割する(バーニング・ハンズやマジック・ミサイル)(訳注:バーニング・ハンズはダメージを分割する呪文ではない)。「複数目標」呪文は複数のクリーチャーにそのダメージ全てを及ぼす(ファイアーボール)。
例えば、ショッキング・グラスプのような1レベルの単体目標ウィザード呪文は最大で5ダイスのダメージ(この例示では5d6)を与えることができる。マジック・ミサイルは単一の目標にも使用することができるし、術者は複数のクリーチャーに効果を及ぼすためにミサイルを打ち分けることもできる。撃ち分けた場合、単一目標に向けてのダメージを複数の目標に分割することになる。バーニング・ハンズは複数のクリーチャーに複数ダイスのダメージを及ぼすため、下記のダメージ量について記載された表に従っていないように見える。しかしd6ではなくd4のみのダメージを与えること、そして極めて近い限られた効果範囲しか持たないことで補正されている。
最大ダメージの表を見る際、秘術呪文は通常ダメージにd6を使用するが信仰呪文は通常d8を使用することを心の片隅に止めておくこと。これらの表はd6を基準に記載されている。信仰呪文のダメージを考慮する際、d8を2d6として数える。そのため、シアリング・ライトは単一目標の3レベル・クレリック呪文であり、最大で5d8ポイントのダメージを与える。d8は2d6として扱うため、これは10d6となり、3レベル・クレリック呪文の範囲に収まる。(レベルごとに1d6、最大10d6のダメージをアンデッドに与えることもまた、この呪文レベルにおいては妥当であることに注意。光に脆弱なアンデッドに対してわずかに高いダメージを及ぼすことは、人造に対してダメージが削減されることと相殺される)。
ヒント:もし作成しようとする呪文がこの表に示される値よりも多いダメージを及ぼす場合、ダメージを減らすか術者レベルを上げなければならない。
ヒント:もし作成しようとする呪文がこの表に示される値よりも低いダメージしか及ぼさない場合、ダメージを増やすかこの呪文に他の効果を付与しなければならない。この例の1つにサウンド・バーストがある。この呪文は1d8ポイントのダメージしか及ぼさない(この値は増加することがない)が、範囲内の目標を朦朧状態にすることができる。
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呪文の距離は呪文の能力の特徴的な部分として機能する。害のある呪文で目標に接触することを術者に要求するということは、術者は近接戦闘の範囲かそのすぐ近くに行かなければならず、敵の報復を受けたり機会攻撃範囲に収めた敵から機会攻撃を受けるリスクを払うことになる。同様に、近距離呪文は術者に少し考える時間を与えてくれるが、敵対的な目標を1回の移動や突撃の距離の範囲に収めていることが多く、敵を近づけ術者を攻撃させることを許してしまう――術者レベルが14に達してさえ、近距離呪文はほんの60フィートしか届かないのだ。
屋内にいる状況であれば、ほとんどの中距離の戦闘呪文は無限遠の間合いを持つようなものだ。なぜなら術者はこの呪文を獲得するレベルにおいて150フィート以上の距離を持つことができ、このような遠い間合いを取り扱う遭遇はほとんどない。術者は見ることのできるものならなんにでも命中させることができるだろう。
屋外でさえ、150フィートの間合いを持つ呪文はPaizo GameMastery Flip-Mat(24インチ×30インチの大きさで、120フィート×150フィートを表す)のような一般的なゲーム・マット上であれば、なんでも視界に収めることができる。長距離であればあらゆるものを範囲に収めているようなもので、最低でも400フィートの間合いを持つ。この距離はゲーム・マット上で大抵7フィートの長さになり、ゲームに使用される多くの机よりも長い。大草原を横切って敵にファイアーボールを放ったり、ダンジョン内の少し手前の安全な場所に戻るためにディメンジョン・ドアを使用したりといった抽象的な状況でのみ、長距離はゲーム内で意味を持つ。
当然、接触呪文はこの呪文項目において最も弱く、近距離呪文はまだましだが並外れて良いものではなく、中距離呪文や遠距離呪文はほとんどの目的において同じ程度に良い。《呪文距離延長》は+1呪文レベルを代償に呪文の距離を2倍にすることができ、《呪文射程伸長》は+1呪文レベルを代償に間合いを1段階増加させる(接触から近距離、近距離から中距離、中距離から長距離)ことを考えれば、ある呪文において距離段階を1つ増加させることはレベルを+1することでうまくバランスを取ることができるだろう。例えば、キュア・ライト・ウーンズ(通常1レベル)を接触ではなく近距離にする場合、2レベル呪文とするのが適切だろう。
特定のレベルにおいて呪文の持続時間をどの程度長くするかを決めるための厳密で素早いルールは存在しない。弱い呪文は数時間持続する一方、強力なものが数ラウンドや1アクションの間しか持続しないようなこともある。最も良い方法は呪文の効果と持続時間を想定レベルが同じ呪文、1レベル低い呪文、1レベル高い呪文と比較することだ。「瞬間」呪文と「永続」呪文との間にある違いにはよくよく注意しなければならない(呪文の持続時間を参照)。
魔法的な効果として直接クリーチャーに効果を及ぼす呪文のほとんどはセーヴィング・スローを行わせるようにするべきだ。(アイス・ストームやスリート・ストームのように)非魔法的な攻撃や妨害をクリーチャーに及ぼす呪文は通常セーヴィング・スローは不要である。
命中させるために術者に攻撃ロールを要求する呪文は、(それが遠隔接触攻撃であっても)セーヴィング・スローを行わせてもよいし行わせなくても良い(エナヴェイションやシアリング・ライトは行わせないが、ディスインテグレイトは行わせる)。ダメージをロールする必要のない攻撃効果は、効果を削減したり無効化するためにセーヴィング・スローを常に行わせるべきだ。そうでなければその呪文を発動することのできるレベルの誰もが、その呪文を選択するのは明白である。
ヒント:呪文がセーヴィング・スローを行わせるかそうでないかを決める際には、その呪文を君のお気に入りのPCに使用されたときに君がどう思うかを考えること。もしPCがセーヴや攻撃ロールの失敗による回避によって抵抗する機会が一切得られないならば、君はいらいらするだろうか、当惑するだろうか、それとも怒るだろうか? もしそうなら、その呪文に何らかのセーヴや攻撃ロールを付加するべきだ。ただもちろん、この方法は常に有効な策ではない。
頑健セーヴ:頑健セーヴを要求する呪文は通常目標を物理的に変化させるか、通常頑健セーヴで抵抗する効果(病気や毒など)を与えるか、抵抗するのに純粋に物理的抵抗力がもっとも有効な攻撃形態であるかのいずれかである。通常、頑健セーヴに成功してもその効果は命中するが、ちょうどスカンクが噴射する卑劣なジャコウを受け流す熊のように、目標が抗するに十分なほど頑丈なのである。この呪文は(物質ではなく)クリーチャーにのみ効果を及ぼすことに注意すること。人造やアンデッドといった生きていないクリーチャーはこの種の呪文に完全耐性を持つ。例えば、このことによってこの種のクリーチャーはクリーチャー起源の(ポリモーフ)呪文に完全耐性を持つことになる。しかしその他の呪文(ディスインテグレイトのような)はそうではなく、物体を攻撃することができる。
反応セーヴ:反応セーヴを要求する呪文は通常爆弾の破裂のような、物理的な爆発や噴射を範囲内に作り出す。目標はセーヴィング・スローに成功することで、このような効果を回避することができる。一般に、反応セーヴに成功することは目標が効果を避けたか、その効果が本来より弱い効果で目標の周囲で空転したことを意味する。術者が攻撃ロールを行い目標が反応セーヴィング・スローを行うような呪文を作るべきではないことを気に留めておくこと。そのようにすれば同じ呪文に対し【敏捷力】が(目標のアーマー・クラスで1回、目標の反応セーヴの修正値で1回の)2回も適用されてしまうからだ。
意志セーヴ:意志セーヴを伴う呪文は心理的な、精神に作用する攻撃である。純粋な精神の力の有効性を否定する呪文の攻撃に、ごまかしの考えや欠陥への気づきを使うことによって目標は抵抗する。意志セーヴは頑健セーヴの精神版のようなものだ。この効果は目標に「命中」するもので、命中するかどうかは目標の意志力にかかっている。意志セーヴを伴う直接攻撃呪文のほとんど(スリープやファンタズマル・キラーなど)は[精神作用]効果である(後述の“詳細”を参照)。
物体に発動することのできる呪文もある。物体は魔法のアイテムであるかクリーチャーが所持している場合にのみセーヴィング・スローを行う。このような呪文はセーヴィング・スローの種別の後に「(物体)」と記載されなければならない(シュリンク・アイテムを参照)。
助力を与える呪文やいかなる場合でも目標に害を及ぼさない呪文はセーヴィング・スローを伴うべきではなく、セーヴィング・スローを伴う場合でもセーヴィング・スローの種別の後に「(無害)」と記載しなければならない(フライを参照)。
術者にのみ効果を及ぼす呪文には決してセーヴィング・スローは必要とならない(自分自身に発動した利益をもたらす呪文に抵抗しようとすることなどない)。そのため君はこれらの呪文にセーヴィング・スローについて記載する必要はない(トゥルー・ストライクを参照)。
ある呪文に呪文抵抗が適用されるかそうでないかは、瞬間のものか持続する魔法効果であるかにほとんど依存する。呪文抵抗は(ファイアーボールのような)瞬間の魔法効果や(ウォール・オヴ・ファイアーのような)持続する魔法効果に適用されるが、非魔法の効果や非魔法の効果を作り出す呪文には、それが瞬間のものであれ持続するものであれ適用されない。例えば、ウォール・オヴ・ストーンは解除することのできない石の壁を瞬間で作り出す。城のモルタル壁を通り抜けようと試みるように、呪文抵抗はこの呪文でできた壁を通過する手助けにはならない。いずれの壁も魔法のものではなく、いずれの壁もディスペル・マジックやアンティマジック・フィールドを使用してさえその場にあり続ける。
一般的なルールで言えば、ほとんどの呪文は呪文抵抗可能である。クリーチャーが魔法的でない物体や非魔法的な効果を作り出すように呪文を意図的にデザインした場合にのみ、呪文抵抗は意味のないものとなる。ムーヴ・アース(持続時間は瞬間)を使用して丘を作ることができる。呪文抵抗はこの丘を通り抜ける手助けにはならない。なぜならこの呪文は地面を動かしたのであり、魔法的な効果はその後終わってしまったからだ。同様に、ムーヴ・アースを使用して落とし穴を作り出すことができる。呪文抵抗はこの落とし穴を無効化する手助けにはならない。なぜなら単なる非魔法の落とし穴であり、単にシャベルを使って作り出したものと同様であるからだ。マジック・ストーンは石に魔法の力を付与するが、呪文抵抗はこの石が命中することに対して、呪文抵抗が+1アローに対して提供する防護以上には、防護の手助けにはならない。なぜならこの魔法は石にその力を注ぎ込んでおり、呪文抵抗を持つクリーチャーにその力を向けているわけではないからだ。
呪文抵抗を持つクリーチャーに対して使うことができるように、呪文抵抗を許可しない呪文をデザインするというのは一般的な芸当である。多くの場合、このデザインの裏にある考えは単に愚かなものである。例えば燃える油の球を作り出し、炎の爆発の飛びかう指定場所に放り投げるような呪文である。これは明らかに、呪文抵抗を通過する非魔法のファイアーボールを作り出すための想定である。特定のゴーレムはしばしばこのような呪文デザインの想定される標的となる。というのはその魔法能力に対する完全耐性は呪文抵抗を許可するあらゆる効果に対しても完璧な耐性を与えるからである。君のキャンペーンの中にこのようなイカサマ呪文の類を加えることのないように。遭遇のバランスをぞんざいに扱うようなものなのだから(モンスターの中には近接攻撃を行うキャラクターが苦戦するようにデザインされているものもいるし、呪文の使い手が苦戦するようにデザインされているものもいる。そしていかなる面においても困難であると想定されるものもいる)。
ある呪文が呪文抵抗可能かそうでないかは呪文の能力の目安にはならない。ほとんどの遭遇では、呪文抵抗は要因にはならない。
セーヴィング・スローに「(無害)」や「(物体)」と記載する場合、呪文抵抗にも同様に記載しなければならない。
戦闘中に発動するようになっているほとんど全ての呪文は「1標準アクション」の発動時間を持つべきだ。「1移動アクション」「1即行アクション」「1割り込みアクション」の呪文をでっち上げるという誘惑には打ち勝たねばならない。術者が1ラウンドに2つの呪文を発動するための安っぽいやり方になるし、すでに《呪文高速化》という手段があるのだから。発動時間のより短い戦闘呪文の作成は《呪文高速化》の価値を下げてしまう。《呪文高速化》と同様にレベルを+4増やすことで呪文を作成したとしても、実際にこの特技を使用している術者の価値を奪ってしまうし、その呪文はそのレベルで追加呪文を発動できる高レベルの術者にとっては一般的な組み合わせになるだろう。例えば君が《呪文高速化》されたマジック・ミサイルと同様に機能する5レベルのクイックンド・マジック・ミサイル呪文を作った場合、14レベルのウィザード(少なくとも5レベル呪文を3回使用できる)はこの呪文を覚えるのを基本の型として使用するだろう。なぜならこのウィザードが発動するいかなる高レベルの戦闘呪文にも5d4+5の追加ダメージを加えることができ、これで呪文のダメージ量上限を上回ることができるのだから。その上、1ラウンドに2つの呪文を発動することをルーチンワークとする呪文の使い手を認めることは、彼らがより早く呪文を使い尽くすことになる。そうなれば彼らは冒険を続けるよりもキャンプを行ったり休息を取ることを仲間たちに提案するだろう。
戦闘の手助けになるようにクリーチャーを招来する呪文の発動時間は「1ラウンド」とすべきだ。あるキャラクターがこの手の呪文を発動することに、合理的なアクションのコストを与えることになる。もし術者が1回の標準アクションでモンスターを招来し同じラウンドで動作させることができるなら、この種の呪文は術者に一切コストを支払わせなかったことになる。
数ラウンドよりも長い間使役するために来訪者を呼び出す呪文(プレイナー・アライやプレイナー・バインディング)は発動時間を10分とすべきだ。より強力な呪文であればもっと長い発動時間であってもよい。ゲートはクリーチャーを呼び出すことができるにもかかわらず発動時間が1標準アクションであることに気をつけること。しかしこの用法で使用する際には10,000gpの物質要素が必要であり、このようにして容易により早い発動時間を手に入れることはできない。
高価な焦点具や物質要素が必要であるか全く構成要素が必要でない場合を除いては、呪文の構成要素はほとんどの場合においてパワー・レベル全体にほとんど影響を与えない。音声要素と動作要素を持つ呪文がほとんどであり、新しい呪文もこの傾向に従うべきだ。
音声要素を必要としない呪文の利点は、サイレンスの効果範囲でも発動することができる点である。そのため一般的な戦闘呪文の音声不要版を作成したい欲望にかられる。しかしそのようにすれば、《呪文音声省略》の価値を下げてしまう。これはちょうど即行アクションにすることで《呪文高速化》の価値を下げることと同様だが、そこまで大きいものではない(1ラウンドに2つの呪文を発動することは予期せぬサイレンスに対抗するための予備の呪文を準備することよりもより深刻な問題なのだ)。術者がアシッド・アローの代わりに音声省略マジック・ミサイルを、ファイアーボールの代わりに音声省略アシッド・アローを準備しようとするなら、彼らは明らかにより弱い選択を行なっているのであり、良いことである。
動作要素を必要としない呪文の利点は、拘束状態、組みつき状態、両手がふさがれていたり何かに占められている場合でも発動できること、それに秘術呪文失敗確率が適用されないことである。ある呪文の音声要素のないものを作ることが《呪文音声省略》の価値を下げることとちょうど同様に、動作要素のない呪文を作ることは《呪文動作省略》の価値を下げる。このゲームの前提として、呪文のほとんどは言葉と身振りを必要とする点がある。そのため新しい呪文もその呪文の主題が動作要素を必要としないことを示唆していたり拘束や組みつきから逃れるために特別に準備された場合でもなければ、この前提を堅持するべきだ。
物質要素を必要としない呪文の利点は、呪文構成要素ポーチを必要としない点だ(組みつかれているような稀な状況においては、呪文を発動するために物質要素を手に持つ必要はない)。ほとんどの物質要素はルールの条件を満たすためというよりも、フレーバーとして呪文の要素となっている。ファイアーボールの物質要素である鳥糞石と硫黄は、初期の火薬(黒色火薬)が鳥糞石と硫黄から作られていたことに由来する。ライトニング・ボルトの物質要素である羽毛とガラスの棒は、羽毛とガラスの棒をこすり合わせることで静電気の蓄積を生み出す能力があるからだ。このゲームはこのような呪文の物質要素の全くないものを存在させることもでき、それによってゲームのプレイに及ぼす影響はわずかである(「必要なときに何でも入っている」呪文構成要素ポーチによって。また、ソーサラー・クラスをボーナス特技として得る)――物質要素はその呪文を面白くするだけなのだ。作成する呪文のバランスにおいて物質要素がないか無料の物質要素があるかを天秤にかけ、フレーバーが適する場合に加えればよい。
高価な物質要素は熱心なプレイヤーが望む回数だけこの呪文を発動することを抑止する。なぜならそのような呪文はパーティが皆その呪文の効果を受けているなら冒険を非常に簡単にしてしまったり(ストーンスキンなど)、探索や調査といったPCにとっての冒険体験の鍵を飛ばしてしまったり(オーギュリイ、コミューン、ディヴィネーションなど)、PCにとってのある種の脅威を平凡なものにしてしまうからだ(レイズ・デッドやレストレーションなど)。想定レベルよりも優れた呪文ならばその呪文レベルを上げるといった方法で、できるなら高価な物質要素を使用することなく呪文のバランスを取ること。ときには呪文のパワー・レベルが目標に合致することもある(例えばオーギュリイは、クレリックにとって低レベルディヴィネーションとして価値があるように)。しかしもしコストがなければ、プレイヤーは何度も何度もそれを使用するのに十分なほどその呪文は価値のあるものである。そのためPCがどのくらいこの呪文を使用するかの加減をするためにgpコストを設定しなければならない。グリフ・オヴ・ウォーディングのような長く続く防御用の呪文もこのカテゴリに合致する。もしこの種の呪文にコストがかからなければ、呪文の使い手はみな、PCの到来を待つNPCは週に1回ないし月に1回、自らのねぐらにこの呪文をかけるだろう。グリフ・オヴ・ウォーディングにgpコストを与えることで、より伝統的な冒険を行うことができるのである――そうでなければ、PCが歩く全てのマスには罠がある可能性があり、PCたちがグリフを見つけるためにゆっくり注意深く捜索することでゆっくりとしたゲームになってしまうだろう(5レベルのローグは一般に〈知覚〉に+14の修正値を持ち、難易度28のグリフに対しては出目20を選択したとしても判定に失敗することを意味する)。
焦点具要素は物質要素と同じルールで扱われる――ほとんどの場合それは単なるフレーバーであり、単に関連があるだけだ。高価な焦点具は高価な物質要素に似ているが、何度も支払いを繰り返すわけではなく一度だけコストを支払えばよく、敷居を越えれば無視することのできる障壁だという点が異なる。高価な焦点具はPCがその呪文を使えるようになる時期を遅らせる方法としては優れているが、一度その要素を入手すると、実質的に高価な焦点具のない他の呪文と同じになってしまう。物質要素を持つように、そのレベルに応じた呪文としてバランスを取ること。そしてもしその呪文があまりによいものだが修得を遅らせることで効果を抑えられるのであれば、高価な焦点具要素を加えることを考慮しよう。
呪文の能力のバランスを取るという点においては、呪文の系統はさほど重要ではない――6レベルの召喚術に属する攻撃呪文は6レベルの力術に属する攻撃呪文と同程度の力を持つべきである。その呪文の系統を決定することは、まさにその呪文の方向性と効果に最も合うものを選択することと言える。ある範囲にエネルギー・ダメージを与える呪文は、通常召喚術や力術呪文である。通常、実体のある物質やクリーチャーを召喚、招来、創造する呪文は召喚術呪文である。しかしエネルギーや力場で作られたものを作り出す呪文は、一般に力術呪文である。精神に作用する呪文は心術呪文である。しかし恐怖を与えたりアンデッドに作用するものは心術呪文には該当せず、それらは死霊術となる。
このゲームには多岐に渡るボーナス種別がある。ボーナスの一覧を見ると、あるボーナス種別を持たない呪文の穴を見つけたり、君のお気に入りの値やロールに使用されていないボーナス種別の1つを加える新しい呪文を作り出したりという誘惑に駆られる。その誘惑に負けないように。この呪文ではすべてのボーナス種別が等価ではない。また多くのボーナス種別は特定の者にのみ適用される。表:ボーナス種別と効果を参照すること。
この表でダッシュ(-)の記載された項は、この種のボーナスを与えるアイテムや呪文の一般的な例が存在しないことを意味する。もし君がアイテムや呪文をデザインしていて特定の能力や値にある種類のボーナスを与えようと考えているなら、この表をまず確認すること。もしそのボーナス種別がその能力や値に効果を及ぼすと記載されていないなら、記載されているものを代わりに使用すること。この表の第一の理由は、いくつかのボーナスは他のものよりも優れていることである(反発ボーナスは非実体クリーチャーにも機能し、立ちすくみであっても外皮ボーナスは失われない)。第二の理由はあらゆるロールや値にあらゆるボーナスを適用することを許せば、多くの小さなボーナスを累積させることのほうが大きいボーナスを1つ得るよりもほんとうに簡単になってしまい、リング・オヴ・プロテクション+5のような強力な魔法のアイテムに対する興味が薄れてしまうことである。第三の理由はボーナスと値の組み合わせのいくつか(反発ボーナスと【筋力】や盾ボーナスと〈知識〉判定のような)は意味をなさないということである。
アイテム例 |
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回避 |
決して存在しない※ |
決して存在しない※ | |
外皮 |
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技量 |
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― |
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士気 |
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状況 |
― | ||
清浄 |
― |
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体得 |
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洞察 |
アイウーン・ストーン(くすんだ薔薇色、三角柱) |
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― | |||
不浄 |
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鎧 |
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― |
※呪文や魔法のアイテムは決して回避ボーナスを与えてはならない。というのは、回避ボーナスは常に累積するからである。複数の回避ボーナスを与えるパワーの少ないアイテムや呪文を累積させることで、このゲームにおける鎧ボーナス、反発ボーナス、外皮ボーナスを使用して得られるアーマー・クラスよりもずっと簡単に恐るべきアーマー・クラスを得ることができてしまう。
詳細は呪文の本質であり、ここに記すことこそがなにより最も重要である。
その呪文の詳細は、必ず明快で簡潔なものにすること。プレイヤーが戦闘における自分のターンの間に急いで呪文の詳細を参照しようとする場合を考えてみよう。もし詳細を解明するために華美な言語を通してそれらと格闘しなければならないなら、結果として生じる遅延はプレイヤーとGMをいらいらさせるだろう。その呪文がいくつかの効果の組み合わせであれば、各段落にそれぞれの効果を記述すること。その呪文がいくつかのオプションから術者に選択させるのであれば、各文章にそれぞれの名前をイタリック体で記載して記載すること(例としてバインディングを参照すること)。
その呪文の項目ブロックに記載されているものを、呪文の詳細に再び記載する必要はない――それは冗長だ。例えば、ファイアーボールの詳細には「この呪文は400フィート+術者レベルごとに40フィートまで届く」とは記載されていない。このような項目ブロックと無関係な文章は、戦闘の最中に呪文の効果を調べる際にふるいをかけるプレイヤーにとって頭を煩わすものにだけ記載する。
このゲームの呪文システムに裏付けされたものが暗示される言葉を使用するのは避けること。例えばこの呪文が実際に邪悪な効果を持つか[悪]の補足説明を持たないのであれば、呪文の詳細には「死霊術の汚らわしい力を使用して」と記載すべきではない。この種の失敗は死霊術の呪文でもっとも一般的なものだ。死霊術には明らかに邪悪な呪文が含まれているが、公平に救いを分け与えるもの(アストラル・プロジェクション、アンデス・トゥ・デス、ジェントル・リポウズなど)もあるのだから。君の作った呪文の詳細を読む人々は君の意図を知らない。そしてフレーバーの文章を使用することは、はっきりと詳細に記載されていない追加の効果を持っていると読み手を誤解させることもある。
想定した特定のキャラクターやクラスに向けた呪文をデザインしているとはいえ、ほとんどの呪文はより広い利用価値があることを思い出すこと。その呪文が優秀なパワー・ゲーマーの手に収められること、そしてデザインした対象と全然異なるキャラクターが使用することを考えなければならない。単純なウィザード/ソーサラー呪文でさえ、2種類の異なる術者が存在する。多くの呪文を学ぶが1日にわずかな数しか使用できないウィザードと、わずかな呪文しか知らないが1日に多くの呪文を発動できるソーサラーである。ソーサラーは1日に多くの回数呪文を使用できるため、ウィザードにとってよい呪文はソーサラーが使用するとよすぎるものになるかもしれない。同様に、PCがポーションや巻物の形でその呪文を使用した場合に何が起こるのかについても考えること――君はその呪文が珍しくほとんどの場合にPCたちが所持できないと想定するかもしれない。しかしウィザードはほとんど使用されない呪文の巻物を作り、適した機会に向けその呪文を保持することができる。
呪文の詳細を書き終えたなら、他の人に一読してもらうこと。君のミスに気づき、その呪文が対処すべき質問を思いつき、その呪文を悪用する方法を見出してくれるだろう。その呪文を修正するためにそのフィードバックを使用するのだ。
消耗値とはクリーチャーや物体のデータ・ブロックにある値のうち、その値がある低い値(通常は0)になるとその攻撃回数が減ったり、そのクリーチャーや物体が中和されたり、殺されたり、破壊されたりするものである。ヒット・ポイント、能力値、レベルは全て消耗値である――クリーチャーは0ヒット・ポイントを下回ると気絶し、死亡することさえある。物体、アンデッド、人造は0ヒット・ポイントで破壊される。クリーチャーは能力値が0に陥ると瀕死状態となるか死亡する。クリーチャーは負のレベルがヒット・ダイスに等しくなると死亡する。多くの魔法的な攻撃やほとんどの非魔法的な攻撃は、結局のところ目標を打ち負かそうとして目標の消耗値をなんとかして減少させる。しかし攻撃ボーナス、セーヴィング・スロー・ボーナス、アーマー・クラス、硬度、戦技ボーナス、戦技防御値、イニシアチブ、移動速度、技能修正値、その他のほとんどの値は、消耗値ではない。なぜなら、それらの値がどれだけ低いかに関係なく、クリーチャーや物体は依然としてアクションを取ることができるからである。例えば、目標の攻撃に-10のペナルティを与える呪文はソーサラーがファイアーボールを発動する際にはほとんど効果がない。これはセーヴィング・スローにおいて【判断力】に-10のペナルティを与える呪文も同様である。貧弱な攻撃ロールとぼろぼろの意志セーヴにも関わらず、例えペナルティが-10でも-100でも、ソーサラーは依然として自身の敵を木っ端微塵にする十分な能力を持つ。同じように、頑健セーヴィング・スローに-10のペナルティを被ったファイターは変わらず剣を振り回すことができる。これはアーマー・クラスに-10のペナルティを受けた場合も同様だ。これらのペナルティにかかわらず、ファイターは攻撃する能力を保持し続ける。「消耗値」は公式なゲーム用語ではないが、呪文のパワー・レベルを比較する際に助けとなる概念である――消耗値を攻撃することは目標を摩滅させることさえある消耗戦である。対して非消耗値にペナルティを与えるものは、目標がそのペナルティを無視することのできる他の攻撃を持つならば何も効果がないかもしれない。
攻撃呪文においては、他の呪文に比べてその効果の種類に明らかな格差がある。最も優れた効果から最も劣ったものまで、攻撃効果について本項に述べる。尚、他の要素(特別な完全抵抗、効果を及ぼす目標の数など)は等しいものと仮定している。
支配:支配呪文は目標を術者の支配下に置く。彼を仲間に変えてしまうのか、少なくともしばらくの間活動的な敵ではない状態にするのである。これは最良の攻撃呪文といえよう。なぜなら(殺害呪文や無力化呪文と同様に)敵を無力化するだけではなく、術者が他の敵に差し向けることのできる新しい仲間を作り出すのだから。強力な心術呪文の多くは支配呪文だが、欠点として失敗すると無駄になってしまうことが多い点(クリーチャーがセーヴに成功すると、その呪文は全く効果を及ぼさない)がある。支配呪文の例としてコンフュージョン、チャーム・パースン、チャーム・モンスター、ドミネイト・パースン、ドミネイト・モンスターが挙げられる。
殺害:殺害呪文は無条件に目標を殺すか破壊する。目標の消耗値(補足記事を参照…訳注:原文ではコラムとして消耗値の記載があったためこのような記述になっている)は無視され、通常は頑健セーヴィング・スローを伴う。殺害呪文は無力化呪文よりも優れている。なぜなら目標が時間をかけて消耗していくわけではなく、この呪文を(ディスペル・マジックを使用するなどして)容易に打ち消す機会を持たないからだ。最良の殺害呪文は目標がセーヴに成功した場合でもダメージ呪文として扱われるもので、これならば術者はこの効果を保証することができるというわけだ。殺害呪文の例として、ウェイル・オヴ・ザ・バンシー、スレイ・リヴィング、ディスインテグレイト、パワー・ワード・キル、ファンタズマル・キラー、フィンガー・オヴ・デスが挙げられる。
無力化:無力化呪文は目標が術者に仇なすことができないようにする。うまくすれば戦闘の終わりまで(可能なら永遠に)戦闘から目標を排除できる。しかし他の敵によって、無力化呪文の目標が受けた状態を解除する危険がある。敵を逃亡させる呪文も無力化呪文として扱う。無力化呪文はダメージ呪文よりも優れている。なぜならこれらの呪文は術者に目標の消耗値を無視させ、ときには目標を呪文1つで無力化することができるからだ。無力化呪文の例として、スリープ、パワー・ワード・スタン、フィアー、フレッシュ・トゥ・ストーン、ホールド・パースン、ホールド・モンスターが挙げられる。
ダメージ:ダメージ呪文は目標の消耗値を減らし、目標が無力化する値に消耗値を近づける。ダメージ呪文は確実な呪文である。なぜならすべてのクリーチャーは何かしらの消耗値を持ち、ほとんどの魔法によらない攻撃は消耗値に効果を及ぼすからだ(つまり、術者のファイターとローグの仲間は敵を打ち倒すために互いに助け合うことができるというわけだ)。ダメージ呪文はペナルティ呪文よりも優れている。なぜならダメージは常に累積する(ペナルティはそうではないこともある)上、仲間が充分にダメージを与えていたなら、ダメージ呪文は結局のところ目標を無力化するからだ。対してペナルティの付与は延々と行うことができるが、まだ何らかの対応ができる敵と相対し続けることになる。ダメージ呪文の例として、コーン・オヴ・コールド、サウンド・バースト、ファイアーボール、ポイズン、マジック・ミサイル、ライトニング・ボルトが挙げられる。
ペナルティ:ペナルティ呪文は目標に消耗値とは関係のないペナルティ(攻撃へのペナルティ、アーマー・クラスへのペナルティ、目標が取ることのできる行動種類の制限、などの)を与える。ペナルティ呪文はもっとも弱い呪文の種類である。なぜならほとんどの場合、術者はペナルティで敵を殺すことはできず、ペナルティはそれ自身と累積しないからだ。だから術者とその仲間はペナルティを与えた目標を、別の方法(通常ダメージ呪文や魔法によらない攻撃)で撃退しなければならない。ペナルティ呪文の例として、スロー、ブラインドネス/デフネス、ベイン、レイ・オヴ・エンフィーブルメントが挙げられる。
これらの項目の順位には例外もある。例えば、多くのヒット・ポイントを持ち十分なダメージを与える能力を持つが術者の仲間を害する機会がほとんどないようなモンスターと対峙する場合、術者は目標に攻撃ペナルティを与えること(モンスターの攻撃が命中する機会を減らすため)の方がそのヒット・ポイントを減らすことよりも最も良いだろう(というのは、ヒット・ポイントを減らしている間に術者の仲間が多くのダメージを受ける可能性があるからだ)。このような場合には、攻撃ボーナスを減らすペナルティ呪文の方がダメージ呪文よりも優れている。他の例として、撃退した敵にPCたちが質問をする必要がある場合、無力化呪文は殺害呪文よりも良い選択だろう(PCがスピーク・ウィズ・デッドのように、死体に質問できる便利な呪文を使えるのでもない限りは)。
様々な効果を持つ呪文は単一の効果しかない呪文よりも、結果として高い階層に位置する。モンスターに支離滅裂な意味のないことを言わせるコンフュージョン呪文は無力化呪文だが、この呪文がモンスターの仲間を攻撃させようとする場合には、この呪文は支配呪文となる。同様に、フィーンディッシュ・コンストリクター・スネークを1体招来するサモン・モンスターIII呪文は、このスネークが敵に組みついた場合には無力化呪文である。しかしフィーンディッシュ・ボアを1体招来した場合、フィーンディッシュ・ボアは単にダメージを与え特殊攻撃を持たないため、単なるダメージ呪文となる。このような呪文のバランスを取るのは面倒な事だ。個々の用法について考えなければならない。
新しい呪文をデザインする際、その呪文が該当するレベルにおいて強いのか弱いのかに気づく能力を得るために、すでに存在している呪文と常に比較するべきだ。呪文がみんなが納得できバランスがとれているものとしてぎりぎりのラインにある場合、例えそれがわずかであれその呪文を境界の向こう側に押しやることのほうが簡単なことだ。そうやってひとりでに、新しい呪文は既存の呪文と比較して段々と強力なものになっていく。
既存の呪文と同じくらいの強さの呪文を作るからこそ、みんなが受け入れられるのだということを忘れないように。そのレベルにおける最良の呪文でなければ、冒険において使用されないというわけではないのだから。実際、これは巻物作成はゲームの重要な一部なのか、という疑問の答えでもある――通常は学んだり準備したりしないがある状況では役に立つかもしれない呪文を、パーティが準備できるようにするためである。
術者が複数のオプションから効果を選択する呪文は単一の目的にしか使用できない呪文よりも弱くするべきである。まず、2つの用法がある呪文のほうが1つの用法しかない呪文よりも便利なものだ。だから2つの呪文の力を等しくするために、前者の呪文の能力を弱くするべきである。次にオラクル、ソーサラー、バードは限られた数の呪文のみしか修得できない。そのため、複数の用法がある呪文の方が(複数の呪文を修得したようなものだから)彼らにとってしばしば良い選択となる。
不適切にデザインされた、複数の異なる用法を持つ呪文の例は以下の通り。
術者に火の爆発を投げる能力を与えるか、[火炎]ダメージを追加で与えられるように複数の矢じりに火をつけるか、防御用の火の盾を作らせるかを選択する[火炎]呪文。
ブルズ・ストレンクスのように機能するが、術者は効果を及ぼす能力値を選択することができる呪文。
術者が選択できる効果の「買い物リスト」を提示する複数の用法がある呪文を作るよりも、一点集中かせめて2つの似たオプションに焦点をあてた呪文に留めること。似たオプションを複数持つ呪文と根本的に異なるオプションを1つだけ持つ呪文には違いがあることに注意。複数の用法がある呪文の好例はアラーム(音声によるアラームと精神的なアラームはいずれも警告音を発する)、ビースト・シェイプI(小型か中型の動物になるが、個々の利益は簡単な表になっている)、サモン・モンスター呪文(非常に多様性があるが、限られた持続時間しかもたない。同レベルの他の呪文と比べると、パワー・レベルの低いモンスターしか招来できない)などがある。
呪文の補足説明はしばしば見過ごされるものだが、呪文の構造上は重要な役割を果たす。正確な補足説明を割り当てることは呪文作成を完了するための鍵といえる。以下に述べるものはパスファインダー・ロールプレイング・ゲームに存在する全ての補足説明の一覧である。ここには本書(Ultimate Magic)で新しく追加されたものも含まれている。
[悪]:悪の力を引き出したり悪に属する次元界のクリーチャーや(悪)の副種別を持つクリーチャーを召喚する呪文は[悪]の補足説明を持つべきである。
[音波]:[音波]効果は大気、水、地面を通過する、連続した圧力の振動を通して目標にエネルギーを送る。音は人型生物の耳にとってはあまりにも高いか低いため、気づくことはできない。しかしこの音は目標を傷つけるのに十分なエネルギーを伝達することができる。そのため[音波]効果は、聴覚喪失状態のクリーチャーに対してでさえ効果を及ぼす。[音波]効果はヒット・ポイントへのダメージ、聴覚喪失状態、目が眩んだ状態、吐き気がする状態、苦痛、息切れ、一時的な盲目状態を及ぼし、コウモリのような反響定位を使用するクリーチャーに気づくことができる。
[影]:[影]は本書で追加された新しい呪文の補足説明である。[影]呪文は影界の中身や影界のエネルギーを操ったり、影界を行き来させたりする。
[風]:空気によって作られたり、空気を操作したり、風属性が優勢の次元界に住むクリーチャーや(風)の副種別を持つクリーチャーを召喚したりする呪文は[風]の補足説明を持つべきである。
[感情]:これは本書で追加された呪文の補足説明である。この補足説明を持つ呪文は感情を生み出したり目標が現在持つ感情を操ったりする。ほとんどの[感情]呪文は心術だが、[恐怖]呪文は例外で通常は死霊術である。
[恐怖]:[恐怖]の補足説明を持つ呪文は恐怖を生み出し、強化し、制御する。[恐怖]呪文のほとんどは死霊術呪文だが、心術呪文に属するものもある。
[苦痛]:[苦痛]は本書で追加された新しい補足説明である。[苦痛]効果は永続する肉体的なダメージを及ぼすことなく不快な感覚を及ぼす(しかしその感覚を抱いた目標は長い間痛みにさらされることで、精神的な影響を被るかもしれない)。頑健セーヴに完全抵抗を持つクリーチャー(人造やアンデッドなど)は[苦痛]効果に完全耐性を持つ。
[言語依存]:[言語依存]呪文は半ばコミュニケーションのように明瞭な言語を使用する。術者が[言語依存]呪文を通して伝えることを目標が理解できなかったり聞き取れなかったりすると、たとえ目標がセーヴィング・スローに失敗したとしても、この呪文は効果を及ぼさない。
[混沌]:真なる混沌の力を引き出したり、混沌属性の次元界に住むクリーチャーや(混沌)の副種別を持つクリーチャーを召喚したりする呪文は[混沌]の補足説明を持つべきである。
[強酸]:[強酸]効果は冷たさ、電気、熱、振動ではなく、化学反応によるダメージを及ぼす。この補足説明は実際の酸と、塩基やアルカリと呼ばれる化学的に反対の物質(アンモニアや灰汁)を含んでいる。
[善]:真なる善の力を引き出したり、善属性の次元界のクリーチャーや(善)の副種別を持つクリーチャーを召喚する呪文は(善)の副系統を持つべきである。
[即死]:[即死]の補足説明を持つ呪文は、直接クリーチャーの命を即座に殺す原因となる攻撃を行うか、死亡していたり瀕死状態にあるクリーチャーから力を抜き取る。デス・ウォード呪文は[即死]効果に対する防護となり、クリーチャー種別の中には[即死]効果に完全耐性を持つものもいる。
[精神作用]:精神を持たない(つまり【知力】が“-”となっている)クリーチャーやアンデッドは[精神作用]効果に完全耐性を持つ。
[地]:地面を操作したり地属性が優勢の次元界に住むクリーチャーや(地)の副種別を持つクリーチャーを召喚する呪文は[地]の補足説明を持つべきである。
[秩序]:真なる秩序の力を引き出したり、秩序に属する次元界に住むクリーチャーや(秩序)の副種別を持つクリーチャーを召喚する呪文は[秩序]の補足説明を持つべきである。
[雷撃]:[雷撃]効果は電力を発生して流すものが含まれる。それが電位によるものか電流によるものかは関係ない。[雷撃]は生体系をバラバラにすることでクリーチャーにダメージを与える。この呪文は電気を通して熱することで物体にも(クリーチャー同様に)ダメージを与える。加えて専門的な内容になるが、多くの[雷撃]呪文は[火炎]呪文としても扱われる。しかしゲームを簡単にするために、電気依存の呪文は[雷撃]ダメージを及ぼすのが良いだろう。[雷撃]効果は朦朧状態と麻痺状態を及ぼし、場合によっては殺すこともある。
[毒]:[毒]は本書で追加された新しい呪文の補足説明である。[毒]効果は化学反応を通して生きているクリーチャーを妨害したりダメージを及ぼすために、毒や薬、同種の有毒な物質を使用する。専門的な内容になるが、[強酸]と[毒]はどちらも化学反応だが、パスファインダー・ロールプレイング・ゲームにおいてはこれらは異なる効果に割り当てられている。[強酸]はヒット・ポイントへのダメージを及ぼし、[毒]は能力値ダメージ、能力値吸収、出血、混乱状態、痙攣、吐き気がする状態、麻痺状態、回復力の減少、窒息、気絶状態、死をもたらす。毒に対する抵抗を持つクリーチャー(ドワーフなど)は、[毒]呪文の効果に対するセーヴィング・スローや効果そのものに対してこの抵抗を適用することができる。毒への完全耐性を持つクリーチャーは[毒]呪文の毒による効果は無視できるが、この呪文のすべての効果を無視できるわけではない(例えば、液体の毒で満たされた落とし穴を作り出す呪文は依然として罠として働き、毒に完全抵抗を持つクリーチャーであっても溺れる可能性がある)。
[呪い]:[呪い]は本書で追加された新しい呪文の補足説明である。[呪い]は通常永続的な効果である。通常は解呪できないが、ウィッシュ、ブレイク・エンチャントメント、ミラクル、リミテッド・ウィッシュ、リムーヴ・カースにより解除される。[呪い]呪文の一覧は用語一覧を参照。
[火炎]:[火炎]効果は火を作り出すか、魔法や摩擦により直接熱を与えることで目標を熱する。溶岩、蒸気、沸騰した水は全て[火炎]ダメージを与える。[火炎]効果は混乱状態、目が眩んだ状態、過労状態、疲労状態、吐き気がする状態、気絶状態、即死などを与えることもある。火を操る呪文や、火属性が優勢な次元界のクリーチャーや(火)の副種別を持つクリーチャーを召喚する呪文は[火炎]の補足説明を持つべきである。
[光]:かなりの量の光を作り出したり、[闇]効果に攻撃する呪文は[光]の補足説明を持つべきである。[光]の補足説明を呪文に与えることにより、十分に高いレベルであればダークネスのような呪文を相殺し解呪することも表すようになる。
[病気]:これは本書で作られた呪文の補足説明だ。[病気]効果は目標を病気にする。この病気はバクテリアやウィルスのような生命体の侵攻、体内状態の異常(ガンや精神疾患)や、それらの1つを魔法的な効果によって再発させるものが挙げられる。病気に対する抵抗や完全抵抗を持つクリーチャーはセーヴィング・スローと[病気]呪文の効果に、その抵抗を適用することができる。[病気]呪文の一覧は用語一覧を参照。
[水]:水を操ったり、水属性が優勢の次元界に住むクリーチャーや(水)の副種別を持つクリーチャーを召喚する呪文は、[水]の補足説明を持つべきである。
[闇]:闇を作り出し、光の総量を抑える呪文は[闇]の補足説明を持つべきである。[闇]の補足説明を呪文に与えることにより、十分に高いレベルであればデイライトのような呪文を相殺し解呪することも表すようになる。
[力場]:[力場]の補足説明を持つ呪文は魔法的な力場を創り出し、操作する。[力場]呪文は非実体クリーチャーに通常通り(それが実体を持つクリーチャーであるかのように)効果を及ぼす。
[氷雪]:[氷雪]効果は目標を凍えさせることによってダメージを及ぼす。一般的には、異常なほどに冷たい物質やエネルギーを撒き散らす。[氷雪]効果には何も無いところから氷、みぞれ、雪を作り出す呪文も含まれる。この種の呪文は凍傷、しびれ、協調問題、移動速度や反応の低下、昏睡、死をもたらすことができる。
その呪文レベルに最適な呪文というものは確かにある。そのレベルで呪文ができることや行えたほうがよいことの完璧な例もある。これらは「ベンチマーク」呪文である。新しい呪文をデザインする際には、その呪文とベンチマーク呪文を常に比較するべきだ。作成した呪文がベンチマーク呪文よりも優れているならば、その能力を落とすか、呪文レベルをあげたほうがいい。以降にウィザード/ソーサラー呪文レベルごとのベンチマーク呪文の一覧を、それがベンチマークである理由と共に掲載する。呪文を作成したときにベンチマーク呪文と比べて優れているのであれば、作成した呪文は強力すぎるのだ。
バーニング・ハンズ:これは1レベルの範囲攻撃呪文のベンチマークである。この呪文はスリープよりも優れている。その理由として、6マスまで効果を及ぼすこと(スリープは4ヒット・ダイスにしか効果を及ぼさないため、最大で4体のクリーチャーにしか効果を及ぼさない)、精神のないクリーチャーやアンデッドに効果を及ぼすことが挙げられる。
マジック・ミサイル:おそらくこのゲームで最高の1レベル呪文であるマジック・ミサイルは、多くのダメージを与えるわけではない。しかし攻撃ロールを必要とせず、中距離の間合いを持ち、セーヴィング・スローを要求せず、非実体クリーチャーにも効果を及ぼす。たとえマジック・ミサイルが2レベルであったとしても、頭のよい術者はこの呪文を修得するだろう。
インヴィジビリティ:この呪文は本ゲームにおける最高の呪文の1つだ。そして攻撃すると解除される点を取り除いただけでグレーター・インヴィジビリティとして強化されている。この呪文は偵察、戦闘における攻撃の準備、回復役に最適である(回復はこの呪文を終了させないため)。
ウェブ:強力で傷つけることのないこの呪文は、高レベルにおいても有効である(ウェブに対するセーヴに成功するリッチでさえその移動困難な地形の影響を受け、移動しようとしたときに動けなくなってしまう可能性から逃れられない)。この呪文は遮蔽も提供し、範囲内の目標にダメージを与えるために火をつけることもできる。
レジスト・エナジー:この防御用の呪文はモンスターのエネルギーへの抵抗のように機能する。そのため、この種の呪文のパワー・レベルの例として最適である。この呪文は術者レベルが上がるにつれ強力になるため、このゲームにおける高レベル帯でも有効な呪文のままだ。
サジェスチョン:この呪文は術者が目標に行動を強制させることのできる最低レベルの呪文である。しかしこの呪文の制御は「理由のある行動」に制限される。
スティンキング・クラウド:良好な間合いから多くの敵を無力化しうる能力を持つ、スティンキング・クラウドはこのレベルにおける複数を目標に取る非致死性の呪文として最適なものだ。
ディスペル・マジック:この呪文は特定の相殺呪文なしに他の魔法を無力化する、標準として扱われる。
ディスプレイスメント:この持続時間の短い戦闘用の呪文は、持続時間の間攻撃を50%の確率で失敗させる。この呪文は目標が単体の防御用呪文の標準として扱われる。
ファイアーボール:この呪文は信頼のおける低レベル範囲攻撃呪文だ。この呪文の修得はゲームのパラダイムを変える。呪文の使い手はこの呪文を使用することで、彼らが見ることのできる場所であれば、複数の目標に大ダメージを与えることができるのである。
フライ:この呪文はもっとも重要な移動呪文である。戦闘において素晴らしい効果を持ち、戦場における機動性能を向上させる。
ライトニング・ボルト:この呪文は、呪文の届く距離までの直線が半径20フィートの爆発と同じパワー・レベルであることを示している。
エナヴェイション:この呪文は目標に負のレベルを与えるもっとも低いレベルの呪文である。
ディメンジョン・ドア:この呪文は術者を瞬間移動させるもっとも低いレベルの呪文である。距離は制限され、次のターンまで方向感覚を失わせてしまう。
ファンタズマル・キラー:この呪文はクリーチャーを直接殺害するもっとも低いレベルの呪文である。抵抗するために2回のセーヴを行える。
ウォール・オヴ・ストーン:この呪文は何も無いところに大規模で永続的な物体を(瞬間的に)作り出す、もっとも低いレベルの呪文である(素材から完成品に永続的に形を変える、ファブリケイトと比較すること)。
クラウドキル:この呪文は大切なものだ。なぜならこの呪文は弱いクリーチャーを自動的に殺してしまい、範囲内の強力なクリーチャーに毎ラウンド毒によるダメージを与え、数ラウンド持続し、移動するためだ。
コーン・オヴ・コールド:この呪文は興味深いベンチマークである。というのは、この呪文は実のところそのレベルにおいて弱い呪文だからである。この呪文を獲得するレベルにおいて、ファイアーボールは同様のダメージを与え、より広い間合いを持ち、コーン・オヴ・コールドのダメージ最大量はファイアーボールに比べ5ダイスしか高くないのだ。5レベルの攻撃呪文がこのレベルよりも弱いのであれば、その能力を強化するか、4レベル呪文に設定するか、どちらかを行うべきだ。
ドミネイト・パースン:この呪文は術者に敵対する知性のあるクリーチャーを完全に制御する、もっとも低いレベルの呪文である(ただし自己破壊的な命令は除く)。
ガーズ・アンド・ウォーズ:PC達が終の棲家を持つことは通常ないため、この呪文はあまりPCに使用されることはない。しかしこの呪文は、広い範囲に効果を及ぼす防御用呪文は、家を守り侵入者を混乱させるために複数の効果を使用することができるという点で重要である。
コンティンジェンシィ:この呪文は術者に他の呪文効果(防御用の呪文か瞬間移動して逃亡するような被害妄想気味のものかのいずれか)の引き金を与える。多くの点でこの呪文は、どのような割り込みアクションが《呪文高速化》特技と同じものとなるか、というモデルになっている。この呪文はレベルごとに1日持続するため、術者はこのコンティンジェンシィを毎日準備しておき、次の日に呪文をすべて持った状態で冒険に出ることができる。
リミテッド・ウィッシュ:この強力な呪文を使用することで、術者は無数の低レベル呪文から発動時に効果を選択することができる。異なるクラスの呪文リストから効果を選択することさえできる。
イレジスティブル・ダンス:この呪文は目標を直接殺すことはできないが、目標がアクションを行うことを阻害し、目標に大きなペナルティを与え、(見方によっては)セーヴィング・スローを行うこともできない(この呪文は正確にはセーヴを行うことはできるが、セーヴに成功してさえ1ラウンドの間この効果を受ける)。
クローン:この呪文は秘術による不死を考える際に鍵となる――この呪文はコンティンジェンシィとレイズ・デッドを組み合わせた代わりにいくらかのgpが必要になったかのように機能する。例え思いがけなくパーティ全員が死亡するようなことがあっても、キャラクターを保持することができる。
マインド・ブランク:この呪文は目標に効果を及ぼそうとする、これより高いレベルの呪文でさえ阻害することのできる、極めて狭い範囲に限定された防御的呪文の例である。
ウィッシュ/ミラクル:呪文発動の頂点であるこれらの呪文はより弱い呪文のほとんどを複製し、有害な効果のほとんどを取り除き、死から蘇らせ、時を戻すことさえできる。もし作成した呪文がウィッシュより優れているのであれば、君は神になろうとしているようなものだ。
ゲート:この強力な呪文はプレイナー・アライ/プレイナー・バインディングの効果の全てを組み合わせたものであり、次元界の間で多くのクリーチャーを瞬間移動させることもできる。
タイム・ストップ:この呪文は術者に複数ラウンド分のアクションを与えるとともに、術者が行うことを他のものが一切妨害できないようにする、このゲームで唯一の呪文である。