恐怖の豊富さは人を傷つけることがある。傷や疲労は肉体を破壊する可能性がある。毒は体内からクリーチャーを腐敗させる可能性がある。呪いと呪術は超常的な手段で身体と魂を攻撃することができる。しかし、英雄たちが直面する可能性がある全ての恐怖のうち、正気を攻撃するものほど、衰弱させたり陰湿であったりするものはほとんどない。
パスファインダー・ロールプレイング・ゲームにはキャラクターの正気を損なう恐れのある多くの脅威が既にある。インサニティ呪文はその効果が取り除かれるまでキャラクターを混乱状態にする。狂気の霧は【判断力】ダメージを与える吸引型毒である。アリップは、魂が狂気に囚われた時に生まれるアンデッド・クリーチャーであり、いくつかの狂気をテーマにした能力を備えている。
一部のゲームでは、正気の弱化や狂気の始まりを、【判断力】値への攻撃または混乱状態のランダム性として提示するだけで十分な場合もある。しかし、ホラーをテーマにしたゲームを遊ぶには、より頑丈でより繊細なシステムが必要になることがあるだろう。以下のシステムでは、クリーチャーの精神的な抵抗力はその精神の弱さではなく精神のあり方や精神的な強さの全体に依存し、これは彼女の正気への脅威に対抗し、勝利を収める可能性を強化する。
各クリーチャーには、正気度と、正気修正値と正気の閾値がある。これらの値はクリーチャーの現在能力値と能力値ダメージに依存する。能力値の増加とペナルティ(一時的な増加と一時的なペナルティでさえも)がこれらの数値を調整する。クリーチャーが1ポイント以上の正気度ダメージを受ける個々の実例は、正気度ダメージの原因に関係なく正気度攻撃と呼ばれる。
正気度ダメージを与える効果は常に[精神作用]効果であるため、精神を持たないクリーチャーは完全耐性を持ち、正気度、正気修正値、正気の閾値はない。
正気度/Sanity Score:正気度は精神能力値(【知力】、【判断力】、【魅力】)の合計から、それらの能力値に与えられた能力値ダメージを引いたものに等しい。
正気の閾値/Sanity Threshold:君の正気の閾値は最も高い精神的能力値の修正値からその能力値に受けているダメージを引いたものである(最低0)。君が正気度攻撃を受けたとき、その攻撃からの正気度ダメージが正気の閾値以上であった場合、現在正気度ダメージと正気修正値に基づく軽度または重度の狂気を得る。
君の正気の閾値が0の場合、1ポイント以上の正気度ダメージを受けたときは常に狂気を得る。
正気修正値/Sanity Edge:君の正気修正値は君の正気度の1/2である。狂気を引き起こすほどの正気度攻撃受けた時(上記正気の閾値を参照)、狂気の程度を決定するために君の合計正気度ダメージと正気修正値を比較すること。君が現在の正気度ダメージが正気修正値未満であるならば、軽度の狂気を発現する。君の現在の正気度ダメージが正気修正値以上であるならば、重度の狂気を発現する。軽度と重度両方の狂気に関する情報がその節にある。また君の正気修正値以上の合計正気度ダメージを受けた場合、君の持つ休眠状態の軽度の狂気が再び発現する。
君は潜在的な正気度攻撃を受けた時、典型的にはその攻撃の正気度ダメージを振り払うか軽減するため、意志セーヴィング・スローを行わなければならない。このセーヴィング・スローに成功したかどうかにかかわらず、1回の正気度攻撃からの正気度ダメージが君の正気の閾値以上であるならば、蓄積した正気度ダメージと正気修正値によって決定される程度(ダメージが正気修正値を下回るならば軽度、それ以外ならば重度)の狂気を得る。ほとんどの場合、GMは表をロールするよりも君が直面している恐怖や深く内在的な精神的破壊点を反映した狂気を選択すべきである。たとえば、君がミイラや他の恐怖能力を持つアンデッドとの遭遇により軽度の狂気を発現した場合、恐怖症の狂気を発現するのがよいのかもしれない。君が既に譫妄であり、重度の狂気を得たのならば、その狂気が統合失調症へと進行するかもしれない。しかし、ランダムな狂気が適切であるならば、GMは表5-1(軽度の狂気)や表5-2(重度の狂気)をロールして決定してもよい。
5章で説明されている方法で狂気が治療されるまで、君は狂気を持ったままである。ただし、常にその狂気が発現しているとは限らない。君が狂気の影響を受けた後に、全ての正気度ダメージが回復された場合、君の全ての狂気は更に正気度ダメージを受けるまで休眠状態となる。通常、休眠状態の狂気は全く影響しないが、一部の狂気は休眠状態の時だけ現れる効果を持っている。休眠状態となった軽度の狂気は、君が正気修正値以上の正気度ダメージを受けるまで再発生しない。休眠状態となった重度の狂気は、君の正気度ダメージが0である限りは再発生しない。程度にかかわらず、休眠状態の狂気を取り除くことができるのは、ミラクルかウィッシュのみである。
もし君の合計正気度ダメージが君の正気度以上となった場合、全ての正気度ダメージと狂気が回復されるまで、インサニティと同様の狂気状態となる(セーヴィング・スローなし)。
Pathfinder RPG Horror Adventuresは正気度ダメージを与えるいくつもの呪文、特技、モンスター、その他の効果を紹介しているが、GMは自分のホラー・ゲームで自分で正気度ダメージを与える効果を作ることが推奨される。以下の表はキャラクターが正気度ダメージを受ける可能性がある状況の一覧である。
正気度ダメージを減少させる方法はいくつかある。一つは時間をかけて休息をとることである。7日間連続した休息を取る毎、君は受けた正気度ダメージを君の【魅力】修正値(最小1)分だけ減少させることができる。正気度ダメージの効果を減少させるために、自分の性格の強さに頼る代わりに、君は一人の腹心、メンター、神官またはその他の相談相手の助けを求めることができる。君は7日間の休息の間、定期的に(少なくとも1日8時間)その相手と会い、相談に乗ってもらわなければならない。休息期間の終了時に、その味方は君の正気度ダメージが正気修正値よりも低い場合は難易度15の、それ以外の場合は難易度20の【判断力】または【知力】判定(どちらか高い方)を行うことができる。この判定で味方が成功した場合、味方の【判断力】修正値もしくは【知力】修正値(のどちらか高い方)を取り除く正気度ダメージの量に加えることができる。
正気度ダメージは魔法で取り除くこともできる。1回のレッサー・レストレーションの発動で、正気度ダメージが1日1回まで1d2ポイントを取り除くことができる; レストレーションは1日1回まで正気度ダメージを2d4ポイント取り除くことができる; ヒールは1日1回まで正気度ダメージを3d4ポイント取り除くことができる。グレーター・レストレーション、サイキック・サージェリー、リミテッド・ウィッシュは君の正気度ダメージが既に正気修正値を下回っている場合、君の合計正気度ダメージを0まで減少させる; それ以外の場合、これらの呪文は君の合計正気度ダメージを正気修正値より1ポイント少ない値まで減少させる。ミラクルやウィッシュは君の合計正気度ダメージが正気修正値より低いか否かに拘らず、即座に正気度ダメージを0に減少させる。
状況 |
失敗 |
成功 | |
10 |
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12 |
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キャラクターがグレート・オールド・ワンに遭遇した時 |
正気度ダメージと狂気を与える効果は常に[精神作用]効果であり、特定のクリーチャー種別は完全耐性を持つ。ホラー・ゲームでGMはこれに例外を作りたいと考え、少なくとも正気度ダメージや狂気の場合は、アンデッドやある種の植物や人造クリーチャーさえもインサニティの影響を感じさせたいと思うかもしれない。GMは[精神作用]効果に対するクリーチャーの完全耐性が、極度に脆弱な意志セーヴを行うかどうか、潜在的にそのようなクリーチャーの正気度ダメージに対する意志セーヴにボーナスを与えるかを慎重に判断するべきである。