神への信仰や秘術系統の研究を超越したところに、精神の奇妙な領域が広がっている。そこに触れるのが念術魔法である。念術魔法を扱うクラスは先天的な精神能力でその領域に触れ、直接魔法を発動したり、元素効果を生み出したり、物体に念術エネルギーを集めたりする。これら心霊クラスに属するもの達は、奇妙で隠されたものにいつの間にか惹かれていく; それは、時間の概念を持たないアストラル界、エーテル界の霊的な荒野、そして場所や物に念術的な印象として記録された物質界の歴史と結びつきを持つ。
念術魔法は第三の魔法種別であり、秘術魔法や信仰魔法とは異なった形で機能する。念術呪文の発動に関するルールは念術魔法の項に記載されている。心霊クラスの呪文リストにはOccult Adventuresから多くの新しい呪文が掲載されており、精神の力を見事に活かしてくれる。他のルール要素同様、これらの新呪文にはアスタリスク(*)が付記されている。
本章では6つの新しいクラスが掲載されている。その全てが念術魔法を用いる。ほとんどの場合においてそれは、彼らは念術呪文を発動するという事を意味する。新しいクラスは以下の通り。
オカルティスト:その力を使うために、オカルティストは物語において名高い過去を伴う古美術品や遺品といった様々な収集品に念術エネルギーを込める。装具の種類に応じて、オカルティストは異なる魔法系統を用いることができる。
キネティシスト:元素とつながることで、キネティシストは念動力爆発という形でエネルギーを解き放つ。念術呪文を発動するのではなく、キネティシストは元力と呼ばれる独特の念術擬似呪文能力を用いて、元素エネルギーを操り、体得する。
サイキック:信じられないほどの潜在力を備えた精神により、サイキックは他の心霊クラスよりもずっと強力な呪文を発動することができる。サイキックは特定の修養に基づいて呪文を扱い、発動する際に念術呪文を加工し、強化することができる。
スピリチュアリスト:スピリチュアリストは死者の霊と波長が合った存在であり、守護霊――やり残したことがあるがアンデッドにはなっていない、舞い戻った霊――との絆を結ぶ。この霊の仲間はスピリチュアリストの精神という安全地帯から出てきて、非実体形態あるいは心霊体へと姿を変えることができる。
ミーディアム:力ある場所で霊とつながることで、ミーディアムは伝説の英雄その人の力を借りて、自分自身と大きく異なる能力と呪文を手に入れる。ミーディアムは自分と仲間に利益を与えるため、降霊会を開く。
メスメリスト:メスメリストの鋭い視線は、自分を他人の心に植え付ける。メスメリストは心術と幻術の達人であり、他人を操り行動に影響を与える。
以下に示すルールは、Pathfinder RPG Core Rulebookに掲載された種族に、本書に掲載されたクラスを適性クラスとして選択してレベルを得た際に代替的な利益を得る事を許可する。
利益のそれぞれは、適性クラスのレベルを得ることで得られる通常の利益(追加で1ヒット・ポイントもしくは1技能ランクを得ること)を置き換える。通常の利益とは異なり、この置き換えられた適性クラス・オプションは特定のクラス特徴と、様々な種族が持つ一般的な傾向に直接言及している。
適性クラスのレベルを得るたび、どの適性クラス・オプションを選択するかを選択することができる。特記無い限り、それぞれの利益は互いに累積する。
代替クラスの多くはそのオプションを選択するたびに(1ではなく)ほんの1/2、1/3、1/4、1/6しかロールに加えなかったり、クラス能力(メスメリストの技の1日の使用回数や、サイキックの心的蓄積の総数など)に1/2、1/3、1/4、1/6を加えたりする。ダイス・ロールやクラス能力に及ぼすこれらの利益は常に切り捨てられる(最低0)。そのため、君は利益を実際に得るまでに、何度もこのようなオプションを選択する必要がある。代替適性クラス・オプションがクラス特徴や能力を修正する場合、キャラクターがそのクラス特徴や能力を手に入れるまではそれらの適性クラス・オプションを選択することはできない。例えば、あるクラスがあるクラス特徴を6レベルの時点で得るなら、その種族適性クラス・オプションは6レベルになってそのクラス特徴が適用されるまで選択することはできない(例え、後のレベルになるまで実際にボーナスを得られないとしても)。
取得回数に固定の上限があるオプションもあり、そのような適性クラス・オプションを以降取得しても何の効果もない。その場合、君は常に標準の報酬(追加で1ヒット・ポイントもしくは1技能ランクを得ること)を選択することになるだろう。
適性クラス・オプションによる能力が特定の呪文の持続時間を決定する際にキャラクターの術者レベルを増加させる場合、《呪文持続時間延長》のような呪文の持続時間を変化させる他の効果が適用した後に、この増加は適用される。
鋭い知性を持ち入念な研究を行うエルフは、秘術の技を発展させるのと同様に、心霊や念術魔法の研究にもその力を振り向ける。自分の精神の深淵を探るエルフは、通常念術による現象を通して精神の調査に乗り出す。彼らは自分の精神を丹念に調べ、精神の内外で経験したことを詳細な書物としてまとめる。記載された適性クラスを持つエルフ全員は以下のオプションを使用することができる。
オカルティスト:オカルティストの念集積が1/2ポイントだけ増加する。
キネティシスト:キネティシストの元素飽和を適用するダメージ・ロールに+1/4のボーナスを得る。
スピリチュアリスト:3レベルの時点で得られる心霊体発現の絆能力により与えられる盾ボーナスに1/6を加える。
ミーディアム:心霊技能解放による全ての技能判定に1/3のボーナスを得る。
メスメリスト:敵の接敵面を通過するために行う〈軽業〉判定に+1/2のボーナスと、フェイントにおける〈はったり〉判定に+1/2のボーナスを得る。
奴隷を扱う同族、ドゥエルガルが念術能力を扱うため、このような能力を社会的な汚名と位置づけるドワーフの共同体も存在する。オカルティストはドワーフの歴史にある伝承の祭具と絆を結ぶことで、このような汚名を避ける。ドワーフのスピリチュアリストが戦場に倒れたドワーフの霊と絆を結ぶこともあれば、ドワーフのミーディアムがドワーフの伝承に語られる偉大なる英雄とやり取りできる技術に磨きをかけることもあるだろう。現状、念術を用いるドワーフの最も一般的な生き方は、地と金属の元力に注力するキネティシストである。記載された適性クラスを持つドワーフ全員は以下のオプションを使用することができる。
オカルティスト:石と金属の物体に関する〈鑑定〉および〈魔法装置使用〉判定に+1/3のボーナスを得る。
キネティシスト:ダメージを与える、元素が地の念動力爆発に、1/3ポイントのダメージを追加する。
サイキック:防御術に属するサイキック呪文を発動する際、その呪文の有効術者レベルに1/2を加える。この増加は、呪文の持続時間にのみ効果がある。
スピリチュアリスト:3レベルの時点で得られる心霊体発現の絆能力により与えられる盾ボーナスに1/6を加える。
ミーディアム:憑依に対するセーヴィング・スローに+1/2のボーナスと、霊障との交信、土地との交信、広大なる魂を終了させる際のセーヴィング・スローに+1/2のボーナスを得る。
メスメリスト:痛みの視線のダメージが1/4ポイントだけ増加する。
心霊を理解する基本となる伝統を失っているため、サイキックの人間はしばしば自分の精神能力を成長させるために奇妙なカルトに加わる。独自の研究に励むものもおり、心霊に関する話題の書かれた疑わしい情報でさえ集めてしまう。人間の大多数は、自分達が念術作用に鈍感であっても心霊に関わる話題に魅了される。彼らは念術魔法のわずかな能力を示すものにさえ、すぐに従おうとするだろう。記載された適性クラスを持つ人間全員は以下のオプションを使用することができる。
サイキック:サイキック呪文リストから修得呪文を1つ追加する。この呪文はサイキックが発動できる最高の呪文レベルよりも、少なくとも1レベル低いものでなければならない。
スピリチュアリスト:スピリチュアリストの守護霊に1技能ランクあるいは1ヒット・ポイントを加える。
ミーディアム:禁忌を1つ得る際、ミーディアムは1日に追加で1/4回、影響力を与えることなく霊の活性を使用することができる。
メスメリスト:メスメリストの圧倒的な自我によるボーナスが1/3ポイントだけ増加する(最大で+2)。
心を騙すのは、ノームにとって自然なことだ。その特殊性と行動を妨げる特性から、彼らは念術魔法を好むことが多い。キネティシストの先天的な魔法への感受性からオカルティストの物へのこだわりまで、心霊クラスそれぞれがノームに独自の興味を持たせる。記載された適性クラスを持つノーム全員は以下のオプションを使用することができる。
オカルティスト:オカルティストの下級虚像の持続時間を1分間増加させ、オカルティストの歪曲共鳴能力による失敗確率を2%だけ増加させる。これにより失敗確率の上限は増加しない。
キネティシスト:キネティシストの主要元素に合致する元素の副種別を持つクリーチャーに対して行う、〈威圧〉、〈交渉〉、〈真意看破〉、〈はったり〉判定に+1/2のボーナスを得る。
スピリチュアリスト:スピリチュアリストが霊的妨害及び上級霊的妨害の効果を受けている間に、スピリチュアリストが得ている盾ボーナスに1/6を加える。
ミーディアム:霊、アンデッド、守護霊、アストラル界に原住するクリーチャーに対する〈威圧〉、〈交渉〉、〈真意看破〉、〈はったり〉技能判定に+1/2のボーナスを得る。
メスメリスト:メスメリストの技の1日の使用回数を1/3だけ増加する。
多くのハーフエルフは社会的つながりを作り強める才能を持つ。そして念術を使うハーフエルフは他のクリーチャーとの精神的なつながりを使えば、社会とのつながりをより簡単に作ることができることに気付く。彼らは特にミーディアム・クラスに求められる霊的なやりとりに熟達している。エルフの血統により近しいハーフエルフはしばしばサイキックになり、人の血をより強く受けたものはキネティシストやメスメリストになる。記載された適性クラスを持つハーフエルフ全員は以下のオプションを使用することができる。
オカルティスト:魔法のアイテムの能力を識別するために行う〈呪文学〉判定に+1/2のボーナスと、種族を模倣するための〈魔法装置使用〉判定に+1/2のボーナスを得る。
キネティシスト:キネティシストの元素飽和を適用するダメージ・ロールに+1/4のボーナスを得る。
スピリチュアリスト:スピリチュアリストの守護霊に1技能ランクを加える。
ミーディアム:心霊技能解放による全ての技能判定に1/3のボーナスを得る。
メスメリスト:心術に属するメスメリスト呪文を発動する際、その呪文の有効術者レベルに1/2を加える。この増加は呪文の持続時間を決定する場合にのみ作用する。
精神に強く根ざした能力はハーフオークにはうまく噛み合わないように思えるかもしれない――少なくとも、ハーフオークの通常の外見を見る限りにおいては。しかし念術能力はときに、通常は人間の親から引き継がれることがある。オークの血が念術の才に寄与する場合、通常はキネティシスト能力として発現する。記載された適性クラスを持つハーフオーク全員は以下のオプションを使用することができる。
オカルティスト:念能力によるダメージは追加で1/2ポイントのダメージを与える。
キネティシスト:火の元素に属する[火炎]ダメージを与える念動力爆発は、追加で1/3ポイントの[火炎]ダメージを与える。
サイキック:サイキック・クラスの呪文を発動する際、ダメージを受けたことで行う精神集中判定に+1のボーナスを得る。
スピリチュアリスト:スピリチュアリストの守護霊に1ヒット・ポイントを加える。
ミーディアム:禁忌を1つ得る際、ミーディアムは1日に追加で1/4回、影響力を与えることなく霊の活性を使用することができる。
メスメリスト:痛みの視線の自分が与えるダメージを増加させる場合のダメージが1/2ポイントだけ増加する。
よく信じられているのは、ハーフリングがその幸運により困難な状況をくぐり抜けるということだ。しかしときには「ハーフリングの幸運」は実は念術能力によるものであることもある。多くはこの能力をその小さな体躯を補うように強力に成長させる。彼らは特に、人に影響を与えその意を操ることに熟達するようになる。記載された適性クラスを持つハーフリング全員は以下のオプションを使用することができる。
オカルティスト:1日に使用できる念集積に1/2ポイントを加える。
キネティシスト:キネティシストの内部緩衝の容量が1/6ポイントだけ増加する。
サイキック:サイキックは念術修養の1日の使用回数やラウンド数を決定する目的において、自分の【魅力】ボーナスが1/3ポイント高いものとして扱う。
スピリチュアリスト:スピリチュアリストの非実体形態の守護霊が視界と効果線の外に出て、エーテル界に送還されるまでのラウンド数に1/4を加える。
ミーディアム:ミーディアムが降霊会の恩恵から得られるボーナスを1/3ポイントだけ増加する。この増加は共有降霊会から仲間が得るボーナスには適用されない。