水は文明を可能にした偉大な物であり、また文明の偉大な破壊者でもある。水なしで生命は存在し得ない。交易も旅行も水の存在によってはるかに容易な物となる。しかし水はまた個人レベルで人を溺れさせたり集団を洪水や津波で殺すこともできる。陸上の生命は水に依存しているが、同時にそれを恐れている。それは陸が見えないところまで漕ぎ出そうとする旅人を待つ怪物や恐ろしい運命の話が海そのものと同じほど古くからあることで明らかだ。冒険を行うのに、曲がりくねった川や外洋の海上、深い海の底の世界よりもよい場所があるのか?
水界の冒険は水が主たる地域の特徴となっている場所ならどこでも起こる。これは沼地、湖沼、海、水の次元界などを含む。水界の冒険はもちろんPCたちが水中で呼吸できる能力を持つことを要しない。低レベルの冒険者にとって水の障害地域を解決することは冒険に適度のサスペンスと危険を加味する。
Pathfinder RPG Core Rulebookに示されている水中戦闘のルールは、ほとんどのPCのようにこの危険な環境に生来適応していないクリーチャーに適応される。さらなる水界環境の冒険や深海探査にはPCが冒険を続けるためには疑う余地なく魔法の使用が必要である。ウォーター・ブリージングは明らかに有用であり、またエンデュア・エレメンツも温度の面で助けになる。圧力ダメージはフリーダム・オヴ・ムーヴメントのような効果で完全に回避できる。しかしポリモーフ呪文で取る姿が水棲のものであれば、水中では最も有用となるだろう。
生来的適応:(水棲)の副種別を有するクリーチャーは水中で呼吸することができ、クリーチャーの典型的な生息環境で見られる水温から影響を受けない。水棲のクリーチャーと息こらえの能力を持つクリーチャーは圧力のダメージにより大きな抵抗力を持つ。ある深度から瞬間的に別の深度に移動させられない限り圧力から来るダメージを受けることはない(このような場合、圧力効果に対する頑健セーヴを5回連続で成功した後に圧力の変化に適応する)。
水界はまた独特のゲーム体験のための舞台を提供することができる。そのようなシナリオでは、水中の冒険の効果と危険は水面の障害によって置き換わる。PCやその敵はその範囲を航海するために船やボートのような乗り物を使用しているからである。ほとんどの部分、船での冒険は通常通り解決され、船の甲板上で起こる戦闘は陸上で起こるものとほとんど同一である。戦闘が嵐や時化の間に起こった場合は船の甲板は移動困難な地形として扱う。術者の精神集中判定の天候や甲板の動きによる効果を計算に入れるのを忘れないこと(Pathfinder RPG Core Rulebook 206~207)。
船自体が戦闘の一方となる場合は、物事はもっと通常とは違ってくる。以下のルールは船舶戦闘の複雑さの全てを正確にシミュレートしているわけではないが、それが船対船の戦いであっても船と海のモンスターとの戦いであっても、船での冒険の間にこのような状況が不可避的に発生した場合に解決するための迅速かつ簡単なルールを提供する。
準備:どのようなタイプの船が戦闘に巻き込まれているかを決定すること(表7‐49:船舶データを参照)。戦闘が起こった水域を表すために、空白の大きな戦闘マットを使用する。1マスは30フィートの距離に対応する。各船をあらわすために適切なマス目を選んでマーカーを置く(ミニチュアのおもちゃの船は素晴らしいマーカーとなる。ほとんどのホビーショップで入手できる)。
戦闘開始:戦闘が始まった場合PC(そして重要なNPCの仲間)は通常通りイニシアチブ判定をすることができる。船自体は船長のイニシアチブの結果移動と攻撃を行う。戦闘している船のいずれかが移動を搬送に頼っている場合は風が吹いている方向を1d8を振り、外れた飛散武器のガイドライン(Core Rulebook 202)に従って決定する。
移動:キャプテンのイニシアチブ値の時点で、船は最小限の乗組員を満たしている限り、船長の移動相等アクションとして1ラウンドの間現在の速度で移動することができる(あるいは全ラウンド・アクションとして移動速度の2倍で移動できる)。船はその最高速度まで1ラウンドに30フィートまで加速または減速できる。それ以外に、船長は1回の標準アクションとして方向を変えることができる(一度に90度まで)。船はターンの開始時にのみ方向を変えることができる。
攻撃:船の最小限の乗組員を越える乗組員は攻城兵器の要員として割り当てることができる。攻城兵器は船長のイニシアチブ値で攻撃する。
また船は最小乗組員数を満たしている場合、目標に衝角戦闘を試みることができる。衝角戦闘のためには、船は最低30フィートの速度で移動し、目標に隣接したマス目にその舳先をおいて移動終了しなければならない。そして船の船長は〈職能:船乗り〉判定を行う。この判定が目標のアーマー・クラス以上だった場合、目標に命中し、船舶データ表に記されているようにダメージを与え、同時に衝角攻撃を行った船も最小ダメージを受ける。実際に攻城兵器の攻城槌を装備している場合は目標に3d6ポイントの追加ダメージを与える(衝角攻撃を行った船は何ら追加ダメージを負わない)。
ヒット・ポイントが0以下になった船は沈没状態になる。沈没状態の船は移動も攻撃もできず、沈没状態となった10ラウンド後に完全に沈んでしまう。沈没状態の船に命中した攻撃は25ポイントのダメージにつき1ラウンド、それが沈むまでに残されたラウンドを短縮する。魔法(メイク・ホウルのような)は、船のヒット・ポイントを0より上に回復できた場合、その時点で沈没状態を除去できる。一般的に、非魔法的な修理は一旦沈没し始めた場合、船を救うには長くかかりすぎる。
現実世界には小さな筏からロングボート、威圧的なガレオンや素早いガレーまでさまざまな船が存在する。水上を行く乗り物に存在する無数の形態や大きさを表すために、表7‐49では用順的な船のサイズとその比較的なデータを7個のカテゴリーに分けた。現実世界の文明が数百の異なった型の水上航行する乗り物を作り出し適用したように、ファンタジー世界の種族もそれぞれの奇妙な船を作り出したかもしれない。GMは以下のデータを創造の必要に応じて使用または改変し、そのような乗り物を好きなように記述することができる。全ての船は以下の特徴を有する。
船のタイプ:これは船の基本的なタイプをあらわす一般的なカテゴリーである。
アーマー・クラス:船の基本アーマー・クラス。船の実際のアーマー・クラスを算出するためには、船長の〈職能:船乗り〉修正値を船の基本アーマー・クラスに加算する。船への接触攻撃は船長の修正値を無視する。船は決して立ちすくみ状態とみなされることはない。
ヒット・ポイント:船の総ヒット・ポイント。それに加えて、全ての船はその構造材を基とする硬度を有する(ほとんどの木造船舶では硬度5)。ヒット・ポイントが0以下になった場合、船は上記の沈没状態になる。
基本セーヴ値:船の基本セーヴ修正値。全ての船のセーヴィング・スロー(頑健・反応・意志)は同じ値を用いる。船の実際のセーヴィング・スロー修正値を算出するためには、船長の〈職能:船乗り〉修正値を船の基本セーヴ値に加算する。
最高速度:戦闘時の船の最高戦術移動速度。アスタリスク(*)は船が帆を有していることを示し、風と同じ方向に移動する場合は2倍の速度で移動できる。船が帆走しかできない場合はいくらかの風がある場合にのみ移動できる。
武装:船に設置できる攻城兵器(Core Rulebook 434~436)の数。攻城槌はこのスロットを1つ使い、船は1個の攻城槌のみを設置できる。
衝角:衝角攻撃を命中させた場合の船が与えるダメージの量(攻城槌がない場合)。
マス目:船が戦闘マップで占めるマス目の数。船の幅は常に1マスとみなされる。
乗組員:最初の数は、船の兵器を使用するのに必要な数を除いた、船が通常に機能を発揮するために必要な最小限の乗組員の数を表す。2つ目の値は船の最大乗組員数+兵士・乗客の数である。最小乗組員の数を満たしていない船は、移動、移動速度の変更、方向の変更、衝角攻撃のみを船長が難易度20の〈職能:船乗り〉判定に成功した場合に行うことができる。最小限の乗員数を越えた人数は移動には何の効果もないが、落伍した乗組員の代わりをすることができ、あるいは追加の兵器の要員となる。