比類なきまやかしの実行家、マスター・スパイは腕力と呪文を超えるものとして偽りとペテンを信頼している。マスター・スパイは魔法であれそうでないものであれ、即興で機転を利かし探知を回避する手段の達人である。マスター・スパイには長期的な忠誠心で国または個人の利益に従うものもいれば、長期間に渡る忠誠心など持たず最も金を払うものに自らの技術を提供するものもいる。
バードとローグは広い範囲の技能を修得しているために、スパイ活動に要求される条件に極めてよく合致している。ローグは容易にほとんどの魔法を伴わない職業のメンバーになりすますことが可能である(とはいえ鎧をまとった戦士のふりをすることは生来の能力を妨げてしまう)。一方ではったりを使うバードは偶然見ていたものを騙す際に、他の多様な呪文の使い手にうまく変装することができる。多様性と適応性はスパイ活動のためのモットーであり、成功を収めたマスター・スパイは他者を巧妙に引き入れて、目標とする陰謀を成功させる。
役割:何かに装った形でもなければ、マスター・スパイはめったに他人とともに働くことはない。野外でも同程度に役立つ特別な技能によって、皮肉にもマスター・スパイは並外れたリーダーになることができる。しかしマスター・スパイの生まれつき持った秘密主義の傾向によって、マスター・スパイは脚光を浴びる場所から離れてしまう。冒険者の中にいるマスター・スパイが彼らを裏切ろうとすることはないということに注意すること。仲間たちがスパイの本心を知っているかどうかに拘わらず、武装したヒーローはマスター・スパイの真実の使命に素晴らしい隠れ場を提供するのだから。
属性:スパイ活動の実践は訓練が必要であり、道徳や倫理面での柔軟性も求められる。マスター・スパイは秩序や混沌であるより、中立であることが多い。
ヒット・ダイス:d8。
マスター・スパイになるためには、キャラクターは以下の条件をすべて満たさなければならない。
技能:〈真意看破〉5ランク、〈知覚〉5ランク、〈はったり〉7ランク、〈変装〉7ランク。
マスター・スパイのクラス技能(と各技能の対応能力)は以下の通りである。〈隠密〉【敏】、〈言語学〉【知】、〈交渉〉【魅】、〈真意看破〉【判】、〈装置無力化〉【敏】、〈脱出術〉【敏】、〈知覚〉【判】、〈知識:全て〉【知】、〈手先の早業〉【敏】、〈はったり〉【魅】、〈変装〉【魅】、〈魔法装置使用〉【魅】。
レベルごとの技能ランク:6+【知力】修正値。
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急所攻撃 +3d6 |
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武器と防具の習熟:マスター・スパイになったからといって、それで新たに武器や防具に習熟することはない。
芸術的詐欺(変則)/Art of Deception:マスター・スパイは自身のクラス・レベルを〈はったり〉、〈変装〉、〈真意看破〉判定に加える。
変装の達人(変則)/Master of Disguise:マスター・スパイは通常の半分の時間で変装することができる。加えて違う性別、種族、年齢、あるいはサイズに変装する際のペナルティが1減少する。
急所攻撃(変則)/Sneak Attack:この能力は同名のローグ能力と同様に扱う。3レベル毎に、(1、4、7、および10レベル)ダメージは1d6ずつ増加する。マスター・スパイが別の単一のクラスから急所攻撃の利益を得るならば、ダメージへのボーナスは累積する。
口達者な嘘(超常)/Glib Lie:2レベル以上のマスター・スパイは真実を見抜く類の魔法を欺くことができる。スパイに対してこの種の魔法を使用するクリーチャーは、(マスター・スパイがグリブネス呪文の効果の下にいるかのように)15+マスター・スパイのクラス・レベルを難易度とした術者レベル判定に成功しなければならない。失敗すればその魔法は嘘を検出することはできず、マスター・スパイに真実だけを話すことを強制することもできない。この能力でマスター・スパイの行なう〈はったり〉判定に対してグリブネス呪文のボーナスを得ることはない。
属性の仮面(超常)/Mask Alignment:2レベル以降、マスター・スパイは(ディテクト・イーヴルなどの)属性を認識する呪文を騙すために、属性のオーラを変更することができる。マスター・スパイは特定の属性として識別されることを選択することもできるし、いかなる属性としても識別されないことを選択することもできる。属性に従い不利益を与える呪文や効果から、この能力がマスター・スパイを保護することはない。属性のオーラを覆い隠すのは標準アクションであり、マスター・スパイが再びそれを変更するか、効果を終了するまで持続する。
非魔法的オーラ(擬呪)/Nonmagical Aura:3レベル時、マスター・スパイは1日2回マジック・オーラ呪文を使用できるが、物体を非魔法的のように見せるためだけに効果は限定される。
表面的な知識(変則)/Superficial Knowledge:マスター・スパイは自身が実際よりも多くのことを知っているように見せかける。3レベル以降、マスター・スパイは自らを覆い隠した姿やある固有の人物に相応しい〈知識〉と〈職能〉の判定を、未修得であっても修得しているかのように行なうことができる。また、これらの判定にはレベルの半分に等しいボーナスを得る。例えば貴婦人に変装しているマスター・スパイは、王国についての〈知識:歴史〉判定とその貴族と王室についての〈知識:貴族〉判定を未修得にも拘わらず、自身が修得済みであるかのように行なうことができる。しかしこの姿でいるならば、マスター・スパイは薬草を識別するために未修得の〈知識:自然〉技能判定を行なうことはできない。
隠された考え(超常)/Concealed Thoughts:4レベルのマスター・スパイは心を読み取る魔法から自らの策謀を隠蔽することができる。あるクリーチャーがマスター・スパイの精神を読むためにディテクト・ソウツや類似した魔法を使用する際、マスター・スパイは相手が読みとる表面的な思考を決定し、実際のものは隠しておくことができる。表面的な思考より深く掘り下げる精神的な攻撃や読心を、この能力によって防御することはできない。
迅速な変化(変則)/Quick Change:4レベル以降、マスター・スパイは、〈変装〉判定に-10ペナルティを受けることによって、2d4ラウンドで変装をすることができる。このペナルティは8レベルの時点で-5に軽減される。
検出の回避(擬呪)/Elude Detection:5レベルにおいて、マスター・スパイは自らに対して発動された占術を混乱させることができる。これはマスター・スパイのキャラクター・レベルに等しい術者レベルのノンディテクション呪文の効果を受けているかのように扱う。マスター・スパイは標準アクションとして、この保護を抑制もしくは再開することができる。解呪されたならば、マスター・スパイは1d4ラウンドの間このノンディテクションを再開することができない。
心術破り(超常)/Slippery Mind:5レベルにおいて、マスター・スパイは精神的な制御からこっそり立ち去ることができる。この能力は同名のローグの上級の技のように機能する。マスター・スパイが心術破りの能力を別のクラスから得ているならば、これらの修正は累積する。しかし1ラウンドあたり1回しか心術破りを使うことはできない。
属性変化(超常)/Shift Alignment:6レベル以降、マスター・スパイが自らのオーラを制御する能力は更なる高みに至る。マスター・スパイが偽りの属性を決める際、自身が実際にその属性であるかのように、全ての呪文と魔法のアイテムを影響させることを選択してもよい。これは利益を与える効果と害を与える効果の両方に影響する。例えば秩序にして悪ではないクリーチャーに衝撃を与える出入口を通り抜けるために、中立にして善のマスター・スパイは自身のオーラを秩序にして悪に変更することができる。ホーリィ・スマイトがこの変更したオーラを持つマスター・スパイに命中したなら、マスター・スパイが悪であるかのようにダメージを受ける。マスター・スパイは標準アクションとして自らの属性のオーラを“属性の仮面”(マスター・スパイの2レベル・クラスの特徴。この効果は依然として、実際の属性を基に機能する)のものから、変更した属性(この能力に従ったもの。効果はマスター・スパイの仮の属性を基に機能する)に変えることができる。属性のオーラの変更は標準アクションであり、再び変更するか効果を終えるまでこの効果は持続する。
愚者の発動(超常)/Fool Casting:8レベル以降のマスター・スパイは相手を騙すことで、自らが魅了もしくは支配されていると信じ込ませることができる。(チャーム・パースン、ドミネイト・パースン、ヴァンパイアの“支配”能力などの)持続する支配を及ぼす魔法的効果に対するセーヴィング・スローに成功したならば、マスター・スパイは呪文の効果の一部が発揮されることを受け入れてもよい。術者はマスター・スパイがセーヴィング・スローに失敗したと感じるが、マスター・スパイは術者の制御下にない。呪文がテレパシーによるつながりを提供する場合、それは正常に機能する。しかしマスター・スパイは術者の命令に従う必要はない。マスター・スパイは標準アクションとして、欺いていた呪文を自らの体から追い出すことができる。マスター・スパイは持続している効果に対して、心術破りによって与えられたその後のセーヴィング・スローで成功した際に“愚者の発動”を使うことができる。
致死攻撃(変則)/Death Attack:8レベルにおいて、マスター・スパイは慎重な打撃によって敵を殺したり麻痺させる術を身に付ける。この能力はアサシンの致死攻撃能力として機能する。マスター・スパイが致死攻撃能力を与える別のクラス・レベルを持っているならば、マスター・スパイが8レベルに達していなくても、致死攻撃の難易度を決定するためにマスター・スパイ・レベルを累積させる。
隠れた精神(擬呪)/Hidden Mind:9レベルにおいて、マスター・スパイは自身のキャラクター・レベルと等しい術者レベルのマインド・ブランク呪文の恩恵を常に得る。スパイは標準アクションとしてこの保護を抑制ないし再開することができる。解呪されると、マスター・スパイは1d4ラウンドの間マインド・ブランクを再開することができない。
なりすまし(超常)/Assumption:マスター・スパイのこの究極の能力は、別の個性を完全に引き継ぎ、それを自らのものにするものだ。全ラウンド・アクションとして、マスター・スパイは無防備状態のクリーチャーに触れて自らのオーラを目標のそれへと移すことができる。これにより占術効果と呪文(ディサーン・ロケーションなどの強力なものであっても)を混乱させ、それらはマスター・スパイをマスター・スパイが触れたクリーチャーとして認識するようになる。この能力は神格や同様に強力な存在の行為を妨げることはできない。マスター・スパイが標準アクションでそれを終えるか彼女が別のクリーチャーに能力を使うまで、個性のなりすましは続く。