戦闘とは単に自分を斬ることなく剣を振り回す方法を知るということ以上のものである。ある者にとっては、それは最後の手段であり、他のあらゆる選択肢が潰えた場合の悲しむべき緊急避難であり、全く必要でない時には下げるべき道具である。別の者にとっては、それは万能薬であり生きる術――あらゆる問題を解決し、自分の仲間と冷淡な宇宙の過酷な住人に対して立ち向かう事で自らの価値を証明するための手段である。熟練したウォリアーの手にかかれば、剣はもはや単なる先の尖った長い鋼ではなく、クラブでさえ折れた枝以上のものである。これらの物体は厳粛な、そしてときには残忍な芸術の道具となり、その実践者は最も偉大なバードと全く同じように自身の手腕に卓越する。そのような戦いの従者たちの多くは、自分の武器は追求する価値を持つ唯一の芸術である、それによって自分という芸術家は尊敬の念を起こさせるだけではなく敬意を勝ち取れる、唯一のものであるのだから、と言うだろう。戦闘は文明の最古の取引であり、表現の一形態であり、そして我々が石と棒を手にした最初の日よりどれほど遠ざかったかに関係なく、我々を定義する出来事を形成し続けてきた。文明社会は流血を忌み嫌っていると主張するかもしれないが、しかしその同じ流血が――あるいはその脅威が――我々を監視し、そうした理想を維持するための自由を与えている。
Pathfinder Roleplaying Game はヨーロッパの影響をうけたファンタジーの設定の多くに共通する武器と防具の種類の幅広い選択肢とともに、ほとんどの戦闘をシミュレートできる堅牢なシステムを提示しているが、このセクションは中世ヨーロッパの住人には奇妙で異国風に見えたであろう土地に歴史的に関係している新しい武器を豊富に紹介するだけでなく、標準的な戦闘ルールに奥行きを加えるために GM とプレイヤーの双方に新たな選択肢を提供する。
以下に含まれる主要な項目とサブシステムはこのセクションにまとめられている。
ほとんどのファンタジー・ロールプレイング・ゲームのプレイヤーにとって、中国、日本、韓国、インド、およびフィリピンのようなアジアの武器は長い間強力な魅力と神秘性を持ち続けてきた。それ以外では主に中世ヨーロッパに似通った設定を使用している場合でさえ、東洋の防具と武器――と場合によってはその使い手の強力な伝統と規律――の優雅さと特殊性にはあらゆる背景を持つプレイヤーとキャラクターに呼び掛ける何かがある。
このセクションは東洋の鎧の説明から始まる。伝統的なオオヨロイに身を包んだサムライが戦場を横切って突撃し、彼の冠っている強烈なカブト・ヘルメットがその相貌を伝説からあるいは悪夢から出て来たクリーチャーのそれにしているのと並ぶ程に因習的となっている戦闘の図画は数少ない。しかし東洋の鎧はサムライの簡素なラメラーよりもはるかに多く存在する。儀礼的なシルケン・アーマーからフォーミラー・アーマーや重たいストーン・コートまで、このセクションは分類の広範な説明を提供する。
次にこのセクションは、上記で参照された文化から引き出され、その多くはモンクに完璧に適しているが全てが様々なキャラクター・クラスにとって有用である、新しい武器の一群を提供する。このセクションで紹介される武器は名誉あるサムライの伝説的なカタナとワキザシから宮中の工作員やアサシンのファイティング・ファンとポイズンド・サンド・チューブまで、単純でありながら電光石火のトンファからベルトとして巻いて着用できるほど柔軟に形成した金属リボンである奇怪なウルミ・ウィップソードにまで及ぶ。
キャラクターはこれらの拡張された選択肢を活用するにあたり、東洋を彷彿とさせるクラス――ニンジャやサムライのような――であったり、あるいはアジア風ファンタジーに影響を受けた国の背景を持つことを常に必要とするわけではない。英雄の冒険の過程で標準的ではないか特殊な武器を獲得するか、あるいは親類や謎めいた過去を持つ導師から継承するのが、その他のヨーロッパ風のキャラクターがその背景を拡張して群衆から際立つための簡単な方法である。色々な意味で、何の変哲もないクサリガマで戦うキャラクターは敵や崇拝者から魔法のロングソードで戦う者ほどに奇異に見られるかもしれないし、観衆の目には奇抜に映る武器は剣闘士やその他の演武者が舞台において自身を際立たせるのに大いに役立つ――これらの戦士がその戦いのためにしばしば奇妙で独特の武器や防具を選ぶ事がある主な理由の1つである。
この特殊性はまた戦闘に用いる際に非常に現実的な利点も提供する:ある特定の武器を以前に見たことがない場合、その敵はこれに対して効果的に防御することが極めて難しく、そしてこのセクションで紹介される新しい武器のほとんどは相手にすぐにそれと明らかにはならない独特であるか特殊な用途と戦術を持っている。
銃はファンタジーのゲーム中に最も物議をかもす話題の1つである。GM とプレイヤーの意見はクロスボウよりも複雑ないかなる武器の使用も拒否する伝統主義者から、激怒するオークの族長を制止するための最善の方法は信頼のおけるリヴォルヴァーの輪胴から6つの装弾すべてを灰緑色の皮に撃ちこむことであると信じているゲーム・グループにまで多岐に渡る。
どちらも誤りではない。火器は極めて慎重に導入されているが、それ自体は決してゲームを破綻させるものではない。どちらも必ずしも時代錯誤とは限らない――多くの科学的発見は確率に基づいており、君のファンタジー世界における技術革新は地球上で起こったのと同一の歴史上の時点で発生するべきだ、あるいは世界全体で同時に発生するべきだ、と言うことはない。地球上においては、中国は完全に機能する大砲、火炎放射器、および地雷を、ヨーロッパにおいてすら火薬が発見されていない時代でも保有していた。近隣諸国、あるいは同一国内でさえ、弓や剣と同時に存在している銃の所持は完全に可能である。君の火器が火を噴く割合にもよるが、単純な武器で武装したウォリアーが勝利を勝ち取る状況は間違いなく多く存在する。
本章の提示する火器のセクションはキャンペーンに火器を導入するために知る必要のあるすべてを網羅している。火器は黎明期の火器と発展した火器の種別に分かれ、同様に片手武器と両手武器に分かれる。散弾銃のようにペレットを散布するように発射するスキャッターガン、単一のブリットを発射する単純なスラッグスロウアー、そしてその両方を可能とするいくつかの武器が存在する。ルールには不発と修理、装填と矢弾、隠蔽あるいは不適切なサイズの武器、魔法の武器の特殊能力と火器に特化した矢弾、そしてそれ以上のものが含まれている。おそらく最も重要なことは、銃の技術とそれらが社会に登場する様々な段階についての説明が、各段階に適した武器の示唆とともに存在することである。
古代ローマ以降からの流血のスポーツに触発された、これらの標準的ではない、時には奇怪な武器は賭け格闘試合の戦士やあらゆる種類の演武者に最適である。王の宮廷のために命知らずの武道特技を実行するにせよ、みすぼらしいスラム街の喧嘩小屋で自らの人生のために戦うにせよ、これらの武器が観衆の息を飲ませるのは確実である。インドのマドゥ――鋭く削ったレイヨウの角を組み合わせた特殊な盾――から刃の拳であるシゾールや、どんな人型生物の腕よりも遠く真っ直ぐにジャヴェリンを飛ばす単純なアメントゥムまで、これらの武器はすべてを見たつもりになって飽き飽きしているファイターに異国趣味の爆発と発見のスリルを容易に与えることができる。
誰もが自らの武器と防具を鋼鉄から作り出すことを選択する――あるいは許されているわけではない。このセクションでは原始的な武器と防具を極めて詳細に紹介しており、壊れやすい武器特性の導入から始まり、石、骨、青銅、黄金、および黒曜石で作られた従来の武器と防具のためのルールの紹介へと続く。それから、多くの確立された文明よりも原始的な文化においてより一般的である多数の武器を紹介する。アトラトルと呼ばれる投擲兵器はジャヴェリン大のダーツを飛ばすし、グレート・テルビーチェと呼ばれるサメの歯が並んだ長いクラブは鎧と肉を突き破るのに驚くほど効果的である。未開の土地に向かうウォリアーにはいわゆる“原始的な”武器を過小評価する余裕はない――そしてプレイヤーは原始的な背景に由来するかより近代的な社会の装束を能動的に拒絶する、勇敢なウォリアーにぴったりの決定を行うことができる。
名誉の競技は多くの文化において時代を超えた伝統であり、学生や裕福な貴族の気軽な小競り合いから、単一の戦闘を通じて序列を確立し戦い全体を鎮める経験豊富なウォリアーたちの致命的で深刻な挑戦まで幅広い。このセクションでは様々な儀式と名誉とほとんどの決闘に内在する得点化のルールを探るとともに、競技の特別な仕組みとして決闘受け流し、決闘回避、決闘相殺、および決闘不屈といった新しい動作を含んでいる。
すべての戦いが何をしてでも勝利するものであるというわけではない。時には決着の一撃を決めたかどうかではなくどのように見えたかがより問題になる。このセクションはすべての賭け格闘試合の戦士と剣闘士――あるいは戦場において支配者たる女王に印象づけることを望む地元のチャンピオンや生まれの卑しい英雄――のための、流血よりも賞賛のための戦闘をシミュレートするために設計された新しいサブシステムのルールを提供する。ここでは様々な種類の演武――最も上品な展覧会から無慈悲な流血のスポーツまで、奥部屋の賭け試合から暗黒街の通過儀礼的な戦いまで――のみならず、群衆の反応に関するルール、および状況に関わりなく自分の陣営に見物人を引き込む方法を網羅する。
あらゆる攻城戦における最悪の――あるいは最善の――瞬間の1つは、恐怖に襲われた城の守備兵がその城壁から外を眺めると、こちらに向かってのたりのたりと容赦無く迫り来る攻城兵器の様子が見えてしまったときである。このセクションではバリスタやその同類のような直射武器と、カタパルトのような弧をなす曲射武器を含め、戦争用の巨大で恐るべき兵器によって要塞攻撃を実行するために知る必要のあるすべてを提供する『Core Rulebook』で紹介されている仕組みを拡張する。これらの厳密な中世の機械的構造物に加えて、このセクションはまたこれらのより高度な後継機である巨大な恐るべき攻城火器と火炎放射器を網羅している。このセクションに追加されるのは、直接の要塞攻撃に有用な装備(攻城櫓、ブリッジ、および架け梯子など)のためのルール、攻城兵器用の特殊な矢弾、および門や壁のような要塞の特定の箇所への攻撃のためのルールである。