通常のPathifinderのゲームでは、800ヒット・ポイントのドラゴンが798ポイントのダメージを受けたとしても、完全な能力を備えて戦い続ける。しかし801ポイントのダメージを受けると、ドラゴンは完全に気絶してしまう。傷ついたキャラクターが有益で機能し続けるのも確かだが、非現実的だと感じることもあるだろう。また、治癒の価値は下がってしまう。以下の選択ルールを使うことで、緊張感を加え治癒の戦略的価値を増加させてはどうだろう。しかし気をつけなければならない。既に劣勢であればより厳しくなりうるのだ。そして傷ついたパーティ同士が最後まで戦う以上、戦闘の速度は遅くまで引き伸ばされるだろう。負傷段階はより高い脅威度の敵に立ち向かうパーティにとって、特に危険なものとなる。
負傷段階選択ルールにおいて、キャラクターはヒット・ポイントを1/4ずつの4つに分ける。ヒット・ポイントが最初の1/4(最大値~最大値の3/4)でないキャラクターは、常にペナルティを受ける。ヒット・ポイントが最大値の3/4のキャラクターはヒット・ポイントが最大のキャラクターよりも劣った力しか発揮できず、ヒット・ポイントが1/2になると3/4のときよりも劣っている、というように。
その場で分割する必要が無いよう、ゲーム開始時に最大ヒット・ポイントの3/4、1/2、1/4を予め計算しておき、それをキャラクター・シートに「軽傷(-1)」、「中傷(-2)」、「重傷(-3)」として記載しておく。【耐久力】ボーナスが+1以上なら、「気絶」の後に【耐久力】ボーナスに-1をかけた値を書き込んでおく。これらの用語はヒット・ポイントが減少したときにキャラクターが受ける状態を示している。例えば、最大ヒット・ポイントが71の7レベル・ソーサラーは53ヒット・ポイントで軽傷状態に、35ヒット・ポイントで中傷状態に、17ヒット・ポイントで重症状態になる。【耐久力】が12なら、0~-1で満身創痍状態になり、-2から瀕死状態になる。通常通り、このキャラクターはヒット・ポイントが-12以下になると死亡する。
この選択ルールはキャラクターがキャラクターが対応する負傷段階に到達すると自動的に適用される3つの特別な状態、軽傷状態、中傷状態、重傷状態を使用する。これらの状態は累積しない――その時点で最も厳しいもの1つだけが適用される。満身創痍状態とよろめき状態は基本ルールと同じ効果だが、以下に示すように、ヒット・ポイントの値で取りうる範囲が広くなる。軽傷状態、中傷状態、重傷状態とは異なり、満身創痍状態とよろめき状態は累積する。そのため満身創痍状態あるいはよろめき状態のキャラクターは同時に重傷状態でもある。
軽傷段階の上限値(最大ヒット・ポイントの3/4)よりもヒット・ポイントの高いキャラクターは無傷であり、特別な修正を受けない。この状況では、キャラクターは状態を受けない。
ヒット・ポイントが中傷段階の上限値(最大ヒット・ポイントの1/2)よりも高いが最大ヒット・ポイントの3/4以下のキャラクターは軽傷状態である。このキャラクターは全ての攻撃ロール、セーヴィング・スロー、技能判定、能力値判定、アーマー・クラス、術者レベルに-1のペナルティを受ける。
ヒット・ポイントが重傷段階の上限値(最大ヒット・ポイントの1/4)よりも高いが最大ヒット・ポイントの1/2以下のキャラクターは中傷状態である。このキャラクターは全ての攻撃ロール、セーヴィング・スロー、技能判定、能力値判定、アーマー・クラス、術者レベルに-2のペナルティを受ける。
ヒット・ポイントが最大ヒット・ポイントの1/4以下のキャラクターは軽傷状態である。このキャラクターは全ての攻撃ロール、セーヴィング・スロー、技能判定、能力値判定、アーマー・クラス、術者レベルに-3のペナルティを受ける。
【耐久力】が12以上のキャラクターがヒット・ポイントが0以下になると、そのヒット・ポイントが【耐久力】修正値に-1をかけた値を下回るまで満身創痍状態となる。例えば、【耐久力】18のキャラクターはヒット・ポイントが0~-4の間では満身創痍状態であり、-5になると気絶状態になる。【耐久力】が11以下のキャラクターは、ヒット・ポイントがちょうど0になったときのみ満身創痍状態となる。
この選択ルールを使用すると、非致傷ダメージが現在のヒット・ポイントに等しくなったときにのみよろめき状態になるのではなく、現在のヒット・ポイントよりも【耐久力】ボーナスだけ多い非致傷ダメージを受けるまではよろめき状態であり、現在のヒット・ポイント+【耐久力】ボーナスに等しい非致傷ダメージを受けると気絶状態になる。【耐久力】が11以下のキャラクターは、非致傷ダメージが現在のヒット・ポイントとちょうど等しくなった場合にのみよろめき状態となる。
軽傷状態、中傷状態、重傷状態による術者レベルへのペナルティにより、傷ついた呪文の使い手は、本来なら発動できた高レベルの呪文を発動できなくなる。しかし、このことによって呪文の使い手が準備した呪文や呪文スロットを失うことはない。術者レベルへのペナルティは、精神集中判定へのボーナスを減少させ、呪文の有効距離、持続時間、効果も弱めてしまう。このペナルティによって、有効術者レベルが1を下回ることはない。
モンスターの大群に負傷段階を適用するのは、極めて膨大な処理となるだろう。処理を簡単にするため、GMは中傷状態のみを用い、満身創痍状態の範囲は変更しないことにしてもよい。これにより、GMは各モンスターのヒット・ポイントが1/2になったかどうかを管理し、-2のペナルティを付与するだけですむ。GMはこの処理をモンスターの大群にのみ使うようにすべきだろう。突出したNPCや敵には全ての負傷段階を用いるべきだ。
以下に示す特技は新しいものもあり、負傷段階ルールでうまく機能するように調整したCore Rulebookの特技もある。これらは本ルールに必須というわけではないが、ゲームにおける負傷段階ルールの役割を拡大させる良い手段となる。
傷を受けた敵にとって、君は極めて危険な存在だ。
利益:君は軽傷状態、中傷状態、重傷状態の敵に対する攻撃ロールとダメージ・ロールに+1のボーナスを得る。
例え過酷な環境と長時間にわたる仕事であっても、君を疲労させることはそうそうない。
利益:軽傷状態、中傷状態、重傷状態によるペナルティを1だけ軽減する(それぞれ-0、-1、-2)。
加えて、君は以下の判定とセーヴに+4のボーナスを得る:非致傷ダメージに抵抗する際の〈水泳〉判定、疾走を続けるための【耐久力】判定、強行軍による非致傷ダメージを受けないための【耐久力】判定、息を止める際の【耐久力】判定、飢えや渇きによる非致傷ダメージを受けないための【耐久力】判定、熱気や冷気環境から非致傷ダメージを受けないための頑健セーヴ、および、窒息によるダメージに抵抗するための頑健セーヴ。
通常:中装以上の鎧を着て眠ったキャラクターは、翌日疲労状態になる。
患者がひどい傷なら、君の治療はより効果的だ。
利益:君が召喚術(治癒)呪文を発動する際、治癒の目標が軽傷状態、中傷状態、重傷状態のいずれかであれば、1ヒット・ポイントを追加で回復する。6レベルの時点と以降6レベル毎に、この追加の回復量は1ポイントずつ増加する。
傷がより大きな影響を与える気骨のあるゲームをお好みなら、軽傷状態、中傷状態、重傷状態によるペナルティを2倍にしよう。このモードは注意深く扱うこと。というのも、深刻な死のスパイラルの原因となるからだ――言い換えれば、負け始めると激しい不利益が生じ、簡単に死亡したり逃げる必要が生じたりする。この調整は負傷段階が1段階下に落ちると呪文を1レベル分失うということも意味する。そのため、呪文発動における負傷段階の効果はずっと予測不可能なものとなり、キャラクターが奇数レベルか偶数レベルかにかかわらず一貫性のあるものになる。