棒や石は骨を折るかもしれないが、言葉は心を砕くことができる。舌戦とは剣城ではなく言葉の戦いであり、熟練した弁士が事実、言葉選びと修辞的な技巧を駆使して議論を勝ち取ったり群衆を煽動したりする。この種の決闘は通常、聴衆の前で行われる。しかし、以下のルールは個人的な議論や、複数の視点が議論の場で対立する大規模な議論にも使用できる。
以下のルールの多くは、舌戦が主要な対戦相手2人の間で行われ、弁士の心が揺らぐ姿を見る観客の前で行われることを前提としている。実際、弁士とその仲間は群衆の偏見を見抜き、それに合わせて行動することで勝算を高めることができる。舌戦での聴衆は怒った暴徒、当地評議会や上院議員、法廷で審理中の陪審員、パーティでの社交界の人々である。それがどこであれ、キャラクター2人が機知に富んだ辛辣な発言をすることで、互いに最高の地位を得られるかもしれない。
舌戦の舞台設定で重要なことは、参加するPCに問題点を認識できるようにすることだ。ある状況では、この種の対立は弁士が相手の意見を黙らせようとする、単純な2人の争いだ。弁士2人がオペラ競技やフェンシングの防御の利点について議論し、負けた方がその夜の飲み物を奢るというのは、面白くて奇抜なことかもしれない。平和と戦争の功罪について軍司令官会議における討論のように、舌戦は参加者がなんらかの重大な問題について議論する、神経をすり減らすような争いになることもある。
また、舌戦が相手を動揺させられるかを判断することも重要だ。例えば、見張りの部隊長とPCの1人の間で舌戦が発生した場合、PCは暴徒に不正を働く高僧の塔を攻撃させようとするが、部隊長は暴徒を解散させようと説得を試みる。観衆はしばしば自身の動機と思考を持っており、舌戦中のある種の戦術は、そのメンバーに大なり小なり影響を与え、その結果を変えることもある。このような観衆の態度の特性と、そこにどのように影響を当てるかを決定することは、ときに強力な優位を与えることができる。
弁士とその仲間に舌戦の開始までに10分以上時間があれば、聴衆の偏見(後述)を調べようと試みることができる。難易度15の〈真意看破〉判定に成功すると、弁士とその仲間は観衆の偏見1つを知ることができる。観衆の評価を行う際、観衆の心持ちが特に堅いと感じる場合や偏見が目立たないとGMが判断するなら、難易度がより高くなる可能性もある。キャラクターが観衆の偏見を評価するために〈真意看破〉判定を試みたなら、観衆を評価することができるだけの十分な時間が残っていたとしても、そのキャラクターはこの判定を再挑戦できない。
舌戦が心を動かしうる観衆を取り込んだものである場合、GMは監修が好む、あるいは嫌う戦術の種別を好きな数だけ決定する。観衆が特定の戦術に対して負の偏見を持つ場合、弁士はその戦術を使用する際、関連する技能判定に-2のペナルティを受ける。観衆が戦術に対して正の偏見を持つ場合、弁士はその戦術を使用する際、関連する技能判定で+2のボーナスを得る。-5~+5の範囲のペナルティとボーナスを与える、より強い偏見を持つ観衆も存在しうる。
GMは好きなように偏見を設定できるが、それぞれの偏見が合理的で、観衆の態度に合うものでなければならない。頑固なウィザード集団は寓話に負の偏見を持つが論理を喜んで迎え入れ、やんちゃな酒飲み集団は嘲りには強い正の偏見を持つが論理にはブーイングを始めるだろう。GMは全ての戦術に偏見を設定する必要はない。しかし少量の偏見を設定することで、舌戦の面白さや雰囲気がまし、弁士の仲間が観衆を評価し、先入観を植え付けることで舌戦に影響を与えることができる。
観衆の偏見を1つでも知ってしまえば、キャラクターは観衆に先入観を植え付け、舌戦で利益を得ようとすることができる。GMは観衆への先入観の植え付けは不可能、あるいは非常に難しいと判断するかもしれない。例えば、法に厳しい社会で陪審員に先入観を植え付けることは非常に困難で、違法であるかそもそも不可能かもしれない。先入観を植え付けられる慣習に対して、各弁士の仲間は別の方向に議論を向かわせることができる。
観衆に先入観を植え付けるために、キャラクターは舌戦が始まる前に観衆に加わる人と少なくとも10分を過ごす必要がある。その上で、自分が知っている観衆の偏見 1つを選択し、最低でも難易度15の〈威圧〉、〈交渉〉、〈はったり〉のいずれかの判定に成功しなければならない。特に困難な状況では、仲間が観衆やそのほかの情報に精通していないという理由で、GMは難易度をより高く設定するかもしれない。極めて難易度の高い状況では、弁士のレベル+15~20にもなる。
キャラクターが正の偏見を選択して判定に成功したなら、選択した弁士は舌戦においてその正の偏見に関連する戦術を使用する際に使用できる優勢(177ページ参照)を1つ得る。キャラクターが判定に失敗したなら、同じ観衆に再度植え付けを行うことはできない。キャラクターが5以上の差で判定に失敗したなら、弁士の力添えとしてその正の偏見に植え付けを試みることはできなくなる。
キャラクターが負の偏見を選択して判定に成功したなら、選択した弁士は舌戦においてその負の偏見に関連する戦術を使用する際に使用できる優勢を1つ得る。キャラクターが判定に失敗したなら、同じ観衆に再度植え付けを行うことはできない。キャラクターが5以上の差で判定に失敗したなら、弁士の力添えとしてその負の偏見に植え付けを試みることはできなくなる。
どちらの弁士の側も、舌戦が始まる前に観客への植え付けを試みることができる。同じ偏見に植え付けを行うこともできるが、弁士は特定の偏見への植え付けへの利益は1回しか得られない。
先入観への植え付け、舌戦の戦術の技の使用、相手が論議の終了を決定する、その他の効果などで、優勢は与えられる。弁士は優勢を1つ消費することで、舌戦の戦術に関連した技能判定1つで再ロールできる。例えば、正の偏見の植え付けで得られた優勢は、その偏見に関連した戦略を使用する際にのみ使用できる。
技能修正能力による優勢の獲得/Gaining Edges From Skill-Modifying Abilities:能力値を修正するか、技能ランクを修正する、あるいは戦術に影響を与える効果と能力のみが、舌戦における関連技能判定に直接適用される。ただし、特定の状況における技能の仕様ではなく、関連技能全体の修正を増加させる効果は、代わりに優勢を与える。例えば、グリブネスの呪文は関連した技能判定に適用されないだけでなく、優勢も与えない。これは、〈はったり〉の通常の修正値自体を増加させるのではなく、特定の状況で〈はったり〉が使用される場合にのみボーナスを与えるためだ。
サークレット・オヴ・パースエイジョンや《技能熟練》のように、舌戦に適用される呪文や効果は、技能判定に通常の修正を与える代わりに、それが与えるボーナスの合計値の1/3に等しい数の優勢を与える。例えば、《技能熟練:交渉》を持ち、〈交渉〉に10ランクを割り振っているキャラクターは、+6のボーナスを得ないが、その代わりに優勢を2つ得る。これらのボーナスを全て合計した後に3で割ること。この形で与えられる全ての優勢は、その技能に関連する特定の戦術にのみ使用できる。
多くの場合、魔法を使って舌戦の技能を強化することは無様な行為とみなされ、ルール違反であると考えられることさえある。舌戦が公のものになればなること、魔法を使う機会が制限されたり魔法そのものが禁止される可能性が高くなる。これは、法的な状況での舌戦ではよく見られることだ。
舌戦がどのように始まり、どの参加者が最初に行動するかは、場面の詳細な状況によって決まることが多い。例えば、法廷で争うPCが被告であれば、検察側が舌戦を開始し、最初の論議で対抗することになり、守勢に立たされるかもしれない。公爵の助力を得ようとしているPCは舌戦を開始し、好意を求め、助力を与えることが公爵にとっての最大の利益になるかを論証するかもしれない。夕食会では司会者が最初の論議を始めるゲストを選ぶ時に遊び心のある知恵比べが始まるかもしれない。
舌戦が始まると、それぞれの弁士は決断力プールを得る。決断力は個人的な人を惹きつける力、生得的な知性、相手の戦術を判断して対応する能力、舌戦に関する他のあらゆる要因を組み合わせたものである。舌戦が進むにつれ、論議が行われ、この値が増減する。弁士は論議で譲歩するか立場を失うたびに、論議の価値に等しい決断力を失う。それ以外の要因も弁士の決断力を減少させる場合がある。弁士の決断力が0以下になると、舌戦に敗北する。
決断力/Determination:弁士の基本決断力は、弁士の【知力】修正値と【判断力】修正値と【魅力】修正値の平均(最低0)+合計ヒット・ダイスに等しい。
決断力の調整/Adjusting Determination:GMの裁量により、状況と効果によって、決断力プールが増加する場合もある。例えば、特定の種類の舌戦では、平均ではなく能力値1つの修正値を使用する方が理にかなっている場合もある。長時間にわたる舌戦、特に低レベルにおけるものでは、3つの精神能力値修正のうち最も高いものを用いたり、精神能力値修正から2つ(あるいは3つ全て)を合計したりすることが理に叶っているかもしれない。
決断力を調整する主な方法の1つは、キャラクターの1人が社会的に有利な地位か不利な地位かを考慮することだ。GMはある状況におけるキャラクターの社会的優位性や不利益の詳細を自由に決定できる。しかし基準となる分類は4つあり、極めて有利、有利、不利、極めて不利である。極めて有利なキャラクターは決断力を2倍し、優勢を5つ得る。有利なキャラクターは決断力を1.5倍し、優勢を3つ得る。不利なキャラクターは決断力を3/4にする。極めて不利なキャラクターは決断力を1/2にして、&link_achorを3つ失う(最低0)。
作戦は舌戦における武器だ。舌戦の開始時に、それぞれの弁士は関連する技能を持つ作戦に自分の技能を割り振ることができる。弁士は技能ごとに1つの作戦しか割り当てることができない。そのため、弁士が寓話に〈芸能:朗唱〉を割り当てた場合、感情的な訴えに割り当てることはできない。キャラクターは舌戦において、技能ランク(その技能がクラス技能の場合、ランクを持つことによる+3ボーナスを含む)と【魅力】修正値を加えた修正値を計算する。選択した技能にかかわらず【魅力】修正値を使用するが、《論理武装》(85ページ参照)を修得している場合は例外である。バードの多様なる芸により、〈芸能〉ボーナスを使用する技能2つを使用できるようになる。これにより、この能力を持つキャラクターは、〈芸能〉1つにしかランクを割り振っていない場合でも、処理上
3つの技能を異なる作戦に割り当てることができる。
弁士は観衆の偏見と以下の要素によって、作戦に関連する技能判定にボーナスやペナルティを受ける場合がある。
直前の作戦/Last Tactic:自分に対して使用された直前の作戦と同じ作戦を使って対抗するのは、まずいやり方だと思われがちだ。そうする場合、その戦術に関連する技能判定に-2のペナルティを受ける。例えば、相手が君に嘲りを使用した場合、反撃として嘲りの作戦を使用できはするが、その場合、関連する技能判定に-2のペナルティを受ける。
作戦の繰り返し/Repetition of Tactics:同じ作戦を何度も何度も使用することは、舌戦に勝つための有効な方法ではない。舌戦の中で特定の作戦との論議に勝つたび、以降同じ作戦を使用する際に関連する技能判定に-2のペナルティを受ける。このペナルティは累積する。その時点で、観衆も相手も、君がその作戦で提供する最良のものをいくらか見たことがあるからだ。
作戦の相互作用/Tactic Interaction:作戦の中には他の作戦に対抗するのにそれほど有効でないものもある。その一方で、特定の作成んに効果的に作用するものもある。例えば、論理を生かした意見に嘲りで対抗するのは難しく、ほとんどの作戦は釣り餌により仕掛けられた言葉の罠を失敗させるのは難しい。ほとんどの作戦の説明には、その作戦の衝突と相乗効果を示した「相互作用」という項目がある。
誰もがキャラクターのデータが示すほど言葉のやり取りが上手というわけではない。しかしプレイヤーは舌戦の際に自分の作戦をロールプレイしたがるものだ。特に興奮させる、あるいは心を動かすロールプレイに対して、GMは作戦の関連技能で+2までの修正を与えても良い。舌戦の間の見事なロールプレイでは、GMは優勢を1つ与えても良い。その優勢は何に対しても使用できるものでも良いし、特定の作戦向けのものでも良い。
個人的な攻撃や中傷、創造的な侮辱により、相手を貶す。嘲りは相手が評判の良くない戦術を使用するときに最も効果的だ。
関連技能:〈威圧〉、〈芸能:お笑い〉、〈はったり〉。
相互作用:機知あるいは論理に対抗するために嘲りを使用すると、関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。
特殊:観衆が負の偏見を持つ作戦に対抗するために嘲りを使用すると、関連技能の判定に+2のボーナスを得る。また、このような作戦に対して嘲りを使用して論議に勝利したなら、アンティを1増加する。観衆が正の偏見を持つ作戦に対抗するために嘲りを使用すると、関連技能の判定に-2のボーナスを得る。また、このような作戦に対して嘲りを使用して論議に勝利したなら、アンティを1減少させる。
相手に気に入られることで、油断させたり、何か他の利益を得たりする。通常は欺瞞的で心を操ろうとするものだが、純粋に好印象で友好的なキャラクターの行動も含まれる。
関連技能:〈交渉〉、〈知識:貴族〉、〈はったり〉。
相互作用:嘲りに対抗するためにお世辞を使用すると、関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。存在感に対抗するためにお世辞を使用すると、関連技能の判定に+2のボーナスを得る。
特殊:お世辞による論議に勝利したなら、論議のアンティを2減少させ(最低0)、舌戦における任意の技能判定に使用できる優勢を1つ得る。
この戦術は相手や観衆を議論の中心から逸らし、現在の論議の危機を避けるために使用される。おとりは口火を切るために使用することはできないが、継続するにはあまりに危険になってしまった論議を、速やかに終了するために使用できる。
関連技能:〈芸能:朗誦〉、〈はったり〉。
特殊:口火を切るためにおとりを使用することはできない。おとりを対抗として使用する際、関連技能の判定で+4のボーナスを得ることを選択できる。ボーナスを得ることにして判定に成功したなら、通常通り論議を続けてエスカレートさせるのではなく、アンティを0に減らして自動的に論議に勝利する。通常とは異なり、君は次の論議を開始する。
君は相手や観客の感情的な欲求に訴えるような議論をする。この作戦は、地位や知識で優位に立つ相手に対して特に有効だ。感情的なアンティの増加は報われることもあるが、危険を孕む。
関連技能:〈芸能:朗誦〉、〈真意看破〉、〈はったり〉。
相互作用:存在感、美辞麗句、論理に対抗するために感情的な訴えを使用すると、君は関連技能の判定に+2のボーナスを得る。
特殊:感情的な訴えを用いて対抗に成功したなら、論議のアンティを追加で1増加させる。
ユーモアや知性を用いて相手より優位に立つが、冗談やからかいがうまくいかないと、この作戦は裏目に出てしまう。
関連技能:〈芸能:お笑い〉、〈言語学〉。
特殊:機知を使用する際、関連技能の判定に+2のボーナスを得ることを選択できる。選択したが関連技能の判定に失敗した場合、自分の決断力を1だけ減少させる。5以上の差で失敗したなら、この舌戦の間、機知における関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。
君は討論を構成するために基礎となるメッセージを含んだ、寓話やことわざを使う。論議の熱意の中で寓話を使うことは特に難しいが、非常に効果的なきっかけを作ることができる。
関連技能:〈芸能:演芸〉、〈芸能:朗誦〉、〈知識:宗教〉、〈知識:歴史〉。
相互作用:寓話を対抗として使用する場合、関連する技能判定に-2のペナルティを受ける。
特殊:論議の開始に寓話を使用し、相手が論議を試みることなく終了することを選択した場合、君は優勢を得るのではなく、論議の現在のレートを(敵の決断力が減少する前に)2だけ増加させる。
自信や本当の高貴さを示したり、単に気取ってみせる。相手の主張がずれていたり相手に飛び火しても、君は傷つくことはない。この作戦は嘲りや釣り餌を逸らすことができるが、他の作戦にはあまり効果がない。
関連技能:〈威圧〉、〈知識:貴族〉。
Interaction:嘲りあるいは釣り餌に対抗するために存在感を使用すると、関連技能の判定に+2のボーナスを得る。おとり、感情的な訴え、寓話に対抗するために存在感を使用すると、関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。
特殊:存在感を使用して論議に勝利したなら、決断力を1ポイント回復する(最大で開始時の決断力まで)。
脅しと辛辣な言葉を投げかけたり、偽りの二者対立を突きつけたりすることで相手を罠にはめる。すでにアンティが十分高いときに釣り餌は有効だ。このような場合、君の罠にはまる方が後退するよりもダメージが少なくて済むからである。
関連技能:〈威圧〉、〈芸能:お笑い〉、〈真意看破〉、〈はったり〉。
相互作用:存在感以外の作戦を使う弁士は、釣り餌に対抗する際に関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。
特殊:釣り餌で論議を開始することはできない。敵が釣り餌に対抗することなく論議を終了することにしたなら、釣り餌は論議に勝利したことによって以降の関連技能判定に通常なら受けるはずだった-2のペナルティを受けない。
有利な修辞的手段を用いて相手の議論を押しつぶす、多様なことに使える討論術を用いる。この作戦に含まれる弁論術の大部分は、単純で率直な言語手段である。欺瞞的な討論術には、しばしば嘲り、おとり、感情的な訴え、釣り餌といった異なる作戦の一部にも含まれている。美辞麗句は他の作戦が持つ危険性の一部を取り除いた、様々なことに使用できる作戦ではあるが、大きな見返りもない。
関連技能:〈芸能:演芸〉、〈芸能:朗誦〉、〈言語学〉、〈交渉〉。
特殊:美辞麗句はほとんどの観衆が意識的に気づかない、微妙な言葉の選択を伴う。そのため、観衆が美辞麗句に対して負の偏見を持つことは非常に珍しい。
論理を使用する場合、事実や数値、専門家の証言を示す。論理を使って相手や観衆を誤解させることもできるが、他のほとんどの作戦とは異なり、そのためには議題についての深い理解が必要となる。
関連技能:〈知識:関連するもの〉; 時折、他の技能が適用できる場合もある。例えば〈鑑定〉(交易や値段交渉に関する舌戦の場合)や〈職能〉(〈職能〉の技能に関連する知識や実務を含む舌戦の場合。例えば、裁判における〈職能:法律家〉など)が挙げられる。
相互作用:論理を論議の口火を切るために使用すると、関連技能の判定に+2のボーナスを得る。嘲り、おとり、感情的な訴え、機知、釣り餌に対抗するために論理を使用すると、関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。
特殊:論理を使用した論議に勝利すると、優勢を1つ得る。この優勢は論理にのみ使用できる。
舌戦は論議の繰り返しの中で争われる。それぞれの論議は論争であり、その中でそれぞれの弁士は相手より優位に立ち、相手が議論を続ける決断力を減退させようとする。論議の終了は舌戦の終了であることもあれば、討論の会話の流れの変化を示すこともある。
論議の開始時に、弁士の一人は口火を切る作戦を1つ選択し、その作戦の関連技能の判定を行う。そして論議のアンティを0から1に増やし、判定の結果を現在の論議の難易度として設定する。論議のアンティは、論議の中で絶えず変化する値で、
通常は増加していく。論議で敗北するか論議を終了させることを選択した弁士は、論議のアンティに等しい値だけその決断力を減少させる。
この時点で、相手はこの口火に対抗するか、論議を終了するかを選択しなければならない。相手の決断力が1以上残っているなら、新しく論議の口火を切るか、舌戦から降りるかを選択することができる。口火に対抗することにしたなら、まずアンティを1だけ増やし、戦術を選び、関連技能の判定を試みる。この技能判定が論議の現在の難易度を超える(訳注:原文通り。他の難易度同様なら以上か)なら、論議は継続する。論議を終了させることを選ばないなら、この判定の結果は元の弁士が対抗するための新しい論議の難易度として設定される。相手の判定が論議の現在の難易度を超えない(訳注:原文通り)場合、相手は論議に敗北し、必要なら決断力を減少させる。しかし、その優勢を1つ以上消費して関連技能の判定を再ロールすることもできる。相手が論議を終了することにしたなら、論議のアンティの値だけ決断力を減少させ、相手は優勢を1つ得る。
弁士はこの一連の流れを、論議を終了することにするか、弁士が相手の作戦への対抗に失敗するか、舌戦が終了するまで繰り返す。弁士が論議を終了することにしたか戦術に対抗できなかった場合、その決断力は現在のアンティに等しい値だけ減少する。論議を終了したか相手の作戦に対抗できなかった場合、まだ決断力が残っているならば、新しく論議を開始するか舌戦から降りるかを選択できる。
論議が終了した時点で、いずれの弁士も舌戦の終了を呼びかけ、舌戦を終わらせる条件を設定できる。その場合、双方が合意すれば引き分けとみなすこともできるし、一方が譲歩を要求することもできる。弁士の1人の決断力が0以下になると、舌戦は即座に終了する。この場合、もう一方の弁士が勝利する。いずれの場合も、勝利した弁士は、舌戦のシーンで定義されている通りに、成功から社会的な利益を獲得する。舌戦の勝利や敗北が予想外の事態を招く可能性がある。例えば、弁士は自分のライバルである腐敗したアドバイザーとの舌戦を始めるかもしれない。成功した後、弁士はアドバイザーが背後で陰謀を企てていることを講釈に納得させるだけでなく、密かに秘密の試練に誘う公爵夫人の目を引くかもしれない。
例外的な状況ではあるが、舌戦に3人以上の独立した弁士が参加することがある。この場合、以下の変更によってルールを同じように機能させることができる。まず、弁士が論議を開始したなら、他の弁士から1人を選び、2人の間で論議を進める。その論議の勝者が決まるか論議が終了すると、勝者は別の弁士との論議を開始しなければならない。これを弁士が1人だけ残るまで繰り返す。
チームでの舌戦は多様性のある選択肢で、議論の一方を代表する人が数名、あるいは多数いるような、様々な状況を表現できる。例えば、怒りに満ちた農民の集団を説得しようとする冒険者のチームや、新しい法案を審議しようとする立法機関が挙げられる。チームでの舌戦は社交的な技能に最も優れたキャラクターだけではなく、チーム全体を巻き込むため、冒険では特に役に立つ。
一般に、チームでの舌戦は、双方に3人以上の参加者がいる場合に最も効果的だ。ただし、冒険者と農民の集団のように、人数の少ない側が相手に対して技術的に大きな優位性を持つ場合はこの限りではない。多方向の舌戦とチームでの舌戦を組み合わせることもできるが、推奨しない。チームでの舌戦は観客が2つのチームのどちらかとして参加することが多いため、観客がいないことが多い。
チームでの舌戦では、チーム内の最高の決断力に基づいて決定される決断力を、全てのメンバーで共有する。これは強力な弁士を1人持つチームでは有利に働くため、GMは共通の信念や意見を持つ特に大きな集団の決断力を、その規模に応じて2倍以上にし、統一した決意を揺り動かすことの困難さを表現できる。
一人での舌戦では、弁士が与えられた作戦での論議に勝利すると、その作戦は以降の舌戦において、累積する-2のペナルティを受ける。チームの舌戦では、弁士が論議に勝利すると、その人物は全ての作戦における関連技能の判定に-2のペナルティを受ける。似たような意見を持っていても、様々な意見を聞くことで、チームの意見に信頼を与えるのだ。
レムはメリガスターが貴族グループを操っていることに気づき、その兄が持つ邪悪な計画を暴露したいと考えている。メリガスターは兄を呼び、貴族の前で舌戦を行わせる。メリガスターは自分に大きな強みがあることを知っており、貴族のこともよく理解しているので舌戦を喜んで受け入れると、貴族が持つお世辞と機知に対する正の偏見を植え付ける。メリガスターは極めて高い優位性を持つため決断力を12持ち、それに対してレムの決断力は8だ。メリガスターはその優位性から優勢を3つ持ち、お世辞と機知のそれぞれに使用できる優勢も持っている。
レムは論理を用いて舌戦の口火を切る。関連技能の判定で結果は20だった。アンティは1から始まる。彼は、メリガスターが不正な利益のために貴族たちを操っていたいくつかの方法を、合理的かつ事実に基づいて説明する。
これに対してメリガスターは、貴族たちの誇りと名誉に感情的な訴えを行い、アンティを2に引き上げる。28を出して成功することで(感情的な訴えで論理に対抗することによるボーナスを含む)、事実から話題を逸らすことに成功した。
レムは論議の継続を決め、アンティを3に引き上げる。彼は美辞麗句を用いてメリガスターのいかさまを暴こうとしたが、ダイス目が振るわず最初の結果は18だった。彼はサークレット・オヴ・パースウェイジョンから得た優勢を消費して再ロールし、その結果は30。なんとかメリガスターに対抗するのに十分な値となった。
メリガスターは30という値に勝つのは難しいことを理解している。アンティを4に上げることを決め、作戦にお世辞を使用して貴族を賛美する。貴族はそれに正の偏見を持ち、そこに先入観を植え付けたことから優勢を得ている。お世辞の関連技能から〈はったり〉を使うことにしたため、彼は見事な嘘クラス特徴からさらに優勢を得た。メリガスターはこの2つの優勢を両方とも使用しなければならなかったが、3回目のロールは出目20であり、結果は36となったので、レムに対抗できた。
レムはその結果に勝利するのは難しいだろうと理解している。そして、論議に敗亡するだろうことも。しかし、どうやって敗北するかを決めなければならない。メリガスターはお世辞を使ったため、レムが負けた時にアンティは2減少し、メリガスターは優勢を1つ得る。つまり、レムは単純に論議を終了するか、メリガスターに優勢を2つ与えて決断力を2ポイント失うか、あるいはアンティを5に上げて技能判定を試み、失敗した場合には(メリガスターの兄のお世辞のおかげで)決断力を3ポイント失うがメリガスターが得る優勢を1つに抑えるかを決定しなければならない。結局、レムの決断力は8しかないため、3ポイントを一度に失う危険は冒せないと考えている。彼は強く落胆しながらも、メリガスターとの論議を終了させる。
現在、レムは決断力を6だけ残している。彼はメリガスターとの新たな論議の口火を切り再挑戦できる。少なくとも、メリガスターは以降に使用するお世辞で-2のペナルティを受けるので、レムがさらに36の結果で敗北する心配はない。