狂気とは並外れた肉体的、精神的、あるいは霊的な苦痛と試練によって苦しめられた者に降りかかる苦難である。また、精神が耐えることができないような、錯乱させるほどの恐怖、狂気、異質な存在の源泉の特に強力な物にさらされることも狂気の原因となる。狂気は[精神作用]効果である。
ゲーム上、ある者がその精神的能力値(【知力】、【判断力】、【魅力】)に恐ろしい衝撃を受けたときこそ、狂気に陥る機会である。クリーチャーがこれらの能力値の1つが0にまで減少した際が狂気に陥る可能性がある(注:【判断力】能力値が0になれば全ての意志セーヴに-5のペナルティを被るため、【判断力】ダメージは特に狂気を起こしやすい)。このページの表に従ってダイスを振るか、犠牲者の能力値を0にまで減らした原因に適当な狂気を選択すること。君は犠牲者のセーヴィング・スローを密かに行う――犠牲者はその結果や、彼に降りかかった狂気の種類を知るべきではない。これらの効果は自然にプレイで明らかにされるべきである。一部の狂気(恐怖症のような)は発症したり効果をあらわすのに数日あるいは数ヶ月かかるが、他のもの(偏執病のような)は即座に明らかになる。
選択ルールとして、極端に異常な状況下では、クリーチャーは精神的能力値にダメージを受けなくても狂気に陥る危険がありうる。長い間閉じこめられたキャラクターは、広場恐怖症や閉所恐怖症になることに対するセーヴを行わなければならないかもしれない。味方に繰り返し裏切られた者は偏執病になることに対するセーヴをしなければならないかもしれない。強力なデーモンに憑依された哀れな魂は、悪魔祓いの際にサイコシスにならないかセーヴを行わなければならないかもしれない。このような狂気の発生はGMの決定による。
また、狂気は魔法によっても引き起こされうる。インサニティ呪文は、犠牲者に永続的なコンフュージョンを発生させる代わりに、5術者レベル毎に1つのランダムに決定された狂気を与えることもできる。ビストウ・カースも敵に1種類の狂気を引き起こすことができるが、この場合狂気は呪いでもある。
複数の種類の狂気に苦しめられることもありうる。すでに苦しめられている種類の狂気がまた引き起こされた場合は、狂気の現在の難易度は+5上昇する。
全ての狂気はその狂気の強度を表す難易度を有する。狂気の難易度は最初にそれにさらされた時に狂気に陥るのに抵抗するための意志セーヴだけではなく、回復するために行う難易度も示す。狂気から自然に回復するのは長い過程を必要とする。1週間に1回、狂気の現在の難易度に対する意志セーヴを行う。このセーヴに成功すれば、狂気の難易度は君の【魅力】修正値に等しい数(最低1)だけ減少する。難易度が0まで減少するまで狂気の完全な効果を受け続けるが、0になると治癒され、狂気は完全に消えてしまう。
レッサー・レストレーションは狂気に対して何の効果もないが、レストレーションは目標に効果を及ぼしている狂気の1つの現在の難易度を術者レベルに等しい数減少させる。グレーター・レストレーション、ヒール、リミテッド・ウィッシュ、ミラクル、ウィッシュは目標の全ての狂気を即座に治癒する。
クリーチャーが狂気に陥った場合、狂気の種類を決定するために以下の表をロールすること。あるいは、原因にふさわしい狂気を割り当てること。
種別 狂気; セーヴ 意志 難易度20
潜伏期間 即時
効果 意志セーヴと全ての技能判定に-4のペナルティ; 記憶喪失(下記参照)
記憶喪失症にかかったキャラクターは物事を思い出すことができない。その名前、技能、過去の全ては等しく謎である。新しい記憶を積み上げることはできるが、記憶喪失症になる前にあったいかなる記憶も抑圧されている。
さらに悪いことに、すべてのクラス能力、特技、技能ランクが記憶喪失症が続く限り失われる。保持されるのは基本攻撃ボーナス、基本セーヴィング・スロー、戦技ボーナス、戦技防御値、総経験点、ヒット・ダイス(ヒット・ポイント)であるが、その他の全ては記憶喪失症が治癒するまで失われる。記憶喪失症にかかっている間にクラス・レベルを得た場合は、そのクラス・レベルで得た全ての能力を通常通り使用できる。得たクラス・レベルがすでに有しているクラスのものであった場合は、システム上はそのクラスのより高いレベルであるが、そのクラスの1レベル・キャラクターとしての能力を得る。記憶喪失症が後に治癒した場合、記憶喪失症にかかっている間に得たレベルも含め、このクラスの完全な能力を取り戻す。
種別 狂気; セーヴ 意志 難易度14
潜伏期間 1日
効果 依存症あるいは恐怖症の源泉が明らかにある限り、目標は不調状態(依存症の場合)あるいは怯え状態となる(恐怖症の場合)。恍惚状態または恐れ状態になる可能性がある(下記参照)。
依存症は特定の事物または状況(通常は不適切なもの)に対する非理性的な執着であり、恐怖症は事物または状況(通常は普通に見られるもの)に対する非理性的な恐怖である。それに加えて、依存症または恐怖症のキャラクターがその執着の対象と向かい合った場合(標準アクションが必要)、狂気に対抗する意志セーヴを行わなければならず、失敗すれば1d6ラウンドの間その事物によって恍惚状態(依存症の場合)または恐れ状態(恐怖症の場合)になる。
種別 狂気; セーヴ 意志 難易度19
潜伏期間 2d6日
効果 意志セーヴと【判断力】を基にする技能判定に-6ペナルティ; 多重人格(下記参照)。
これは同じ心と体の中に1つ以上のはっきりと異なった人格が生まれるという複雑な精神障害である。犠牲者に増える人格の数は、狂気の難易度を10で割った数(端数切捨て、最低1人格追加)に等しい。何らかの理由(セーヴ難易度の上昇など)で狂気が悪化した場合、追加人格の数も同様に増加する。同様に被害者が回復し狂気の難易度が減少するにつれ、追加人格の数も減少する。GMはこれら追加人格の詳細を決めるべきである。毎朝、また罹患しているキャラクターが気絶状態になった場合、狂気の難易度に対して意志セーヴを行わなければならない。失敗した場合、別人格が引き継ぐことになる。キャラクターの記憶と技能は変わらないが、それぞれの人格はお互いのことを知らず、他の人格が存在することを、多くの場合激しく否定する。
種別 狂気; セーヴ 意志 難易度17
潜伏期間 2d6日
効果 意志セーヴと【魅力】を基とする技能判定に-4のペナルティ; 援護アクションの利益を受けたり援護アクションを行うことができない; 自分の狂気の難易度に対する意志セーヴに成功しない限り、他のクリーチャーの助け(治療を含む)を自発的に受けることができない。
偏執病のキャラクターは世界とそこに住む全ての者が自分を苦しめようとしていると確信している。典型的な偏執病のキャラクターは議論好きか内向的である。
種別 狂気; セーヴ 意志 難易度20
潜伏期間 3d6日
効果 キャラクターは混沌にして悪になる; 狂気を隠すための〈はったり〉判定に+10の技量ボーナスを得る。
この複合的な狂気により、犠牲者は世界に対する憎悪で満たされている。狂気の難易度に対する意志セーヴに成功することで精神異常を1日の間抑えることができるが、失敗した場合は友と敵に等しく死と破壊をもたらそうとする陰謀と計画を企むことを抑えることができない。ほとんどの場合、精神異常の衝撃はロールプレイによってあらわされるが、すべてのプレイヤーが仲間を破滅させようとする狂人のロールプレイをすることを楽しめるわけではない。そのような場合、精神異常の支配下にある時にはGMがそのキャラクターのコントロールをするべきである。
種別 狂気; セーヴ 意志 難易度16
潜伏期間 1d6日
効果 全ての【判断力】と【魅力】を基とする技能判定に-4のペナルティ; 出目10と出目20を行うことができない; 混乱状態になる可能性(下記参照)。
統合失調症のキャラクターは現実を把握する力を失い、現実であることとそうでないことの区別がもはやつけられなくなる。このような恒常的な妄想により、統合失調症の患者は突飛で混沌で他者には予測できない者となる。統合失調症のキャラクターがストレスを感じる状況(戦闘のような)におかれた場合は、自らの狂気の難易度に対して意志セーヴを行わなければならない。失敗した場合はキャラクターは1d6ラウンドの間混乱状態になる。