ファンタジー世界を冒険するプレイヤー・キャラクターのために、何百人もいないとすれば何十人ものノンプレイヤー・キャラクターが存在し、それぞれのNPCはキャラクターに不可欠なサービスを提供し、物語の本筋を進捗させ、あるいは単に英雄譚の合間に彩りを加える。地元の農民から酒場の語り部まで、さらには高貴な国王からみすぼらしい浮浪児まで、すべてのキャラクターはGMの繰り出す世界と物語の住人である。彼らは協力者であり邪魔者であり、雇い主であり犠牲者であり、喝采を送る人だかりであり非難を浴びせる群衆である。PCが助力を求める時、取引を行う時、あるいは過酷な冒険に向かう時、このキャラクターたちは活力を宿す備えができてる。
けれども、一国の君主や商売の旦那、いつも危険にさらされている庶民の重要性にもかかわらず、ほとんどの冒険の本質は見慣れた街角から離れたモンスターや悪漢、そして危険に焦点を当てている。そのため、地元の酒場で何かが必然的に失敗するとき、宮廷で交渉が決裂するとき、あるいは無数の不測の事態が頻発するときに、多くのGMはダイスを振る真似をしたり、必要なデータを求めてページにざっと目を通したりする事になる。この章は、予測できないデータや、いくつもの緊急用の遭遇、プレイヤーの突然の寄り道に応えなければならないときに必要となるものを、GMに提供するために存在している。
後述の表にはパスファインダーRPGでありふれている80を超えるNPCを掲載している。大多数はベテラン冒険者の一団と直接戦闘を行うことは意図されておらず、むしろパーティの無数にあるあまり冒険的ではないやりとりを支えるための一般的なデータである。平均的な店主の〈鑑定〉技能や、ある船員が実際にはどの程度1隻の船を操舵する能力を持つかをGMが知る必要がある場合、これらの性能は多種多様なありふれたキャラクターの基準を提供する。このキャラクターから多数の危険な遭遇を作ることができないわけではない。モンスターの一団と戦う闘士や兵卒の一団が危険をもたらすのと同じように、松明で武装した農民と職人の集団も危険な存在になりえる。危険な賞金稼ぎや悪名高い海賊の船長を冒険長編の敵役にGMがするのを止める術はないため、こうしたNPCの多くはキャンペーンで遥かに重要な役割を果たす可能性も秘めている。また、この章にはキャラクターが雇人として雇えるNPCの価格リスト、従者、さらには一時的なPCなどいざという時に使えるものも揃っている。最終的には、このキャラクター達はGMのために増強されたツールと選択肢を提供し、場当たり的なデータ作成などのゲームの障害を取り除き、ゲームにおける最も刺激的なところ、つまり「これから始まる冒険」に、GMが時間と想像力を好きなだけ使えるようにしてくれるのである。
この章ではあらゆる種類の、旅人と店主、衛兵と酔っ払い、王女と高位の僧侶、そしてその他多くのファンタジー世界の住人のデータを提供する。しかし、探検家、登山家、大艦隊の提督、ドラゴン・ライダー、そしてパーティが冒険のさなかで出会う、数えきれないほどの他のNPCといったキャラクターはいない。理由は2つある。1つは、あらゆるGMの想像力を満足させるキャラクターの一覧など到底不可能だという理由だ。そこで、パスファインダーRPGの冒険で頻繁に登場するものをここに挙げることにした。2つ目は、データ・ブロックのタイトルに「案内人」とつけたところで、そのデータを探検家や警官、牛飼いなどGMが必要としている類似のキャラクターとして扱うことを禁ずる理由はどこにもないからだ。
したがって、各NPCにはどのようなキャラクターかの説明に加えて、基本形として又はさまざまな代わりとなるキャラクターとしての使い方、そして(そのグループ用の増加した脅威度も併記して)他のどのようなNPCとともに現れうるか、といったことさえ説明されている。そのキャラクターの専門性において一般的な装備一式と、キャラクターのレベルに応じたGP資産も掲載されている。しばしば、説明文には様々な役割や異なるキャンペーンに合わせて上手にカスタマイズできるように代わりとなる装備や置き換える特技を提案していることもある。キャラクターの他の特徴と同じように、この要素もGMが適切と思うように修正して構わない。
さらに、各NPCは組織化を容易にするため、GMが特定の種類のキャラクターを数々の種類の中から簡単に探せるように類似したキャラクターのグループに分類されている(例えば、脅威度1/2のスリは遭遇としては物足らないが、脅威度2の強盗であれば十分だ)。このことは、同じ背景を持つか同じ人生を歩んできているNPC達は時に同時に見られ、顔を合わせているであろうがため、これらのキャラクターを使った遭遇を簡単に作る助けにもなっている。
GMには、ここに挙げているNPCをそれぞれのキャンペーンに相応しいように変更することを推奨しよう。ほとんどのキャラクターは標準的な役割を担い、中立の属性であることを前提とした能力値を持っている。もちろん属性は簡単に変更できるし、キャラクターの専門技術に合わせて技能(特に〈職能〉、〈製作〉、〈知識〉)を手早く修正することができる。
下記の図表では、この章のすべての基準となるキャラクターの一覧を掲載している。一覧ではキャラクターのクラス・レベルに加えて、GMがパーティ・レベルに相応しい挑戦を簡単に手早く作れるように、脅威度によってグループ分けしている。このキャラクター達には総じて個性や行動指針は含まれておらず、掲載データはGMが望むどのような役割にも適合させることができる。
ここに掲載されている多くのNPCに基づいて作られる、実際のキャラクターと遭遇の数々は、GMの想像力の限り自由に創造することができる。
NPCの恩恵では恩恵(特定のNPCが味方のPCに与えることができるゲーム上のちょっとしたボーナスと利益)に関する選択ルールが提示されている。この恩と利益のルールはPCに対し、連携しているNPCにより強い関心を持つことを促し、キャラクターに経験点と宝物以外の報酬を与えるものである。下記の各NPCのデータの最後に、このルールを使う場合にそのNPCに相応しいささやかな利益の提案がある。この恩恵を採用するか独自の恩恵を作ろうとするGMは、新しい利益のガイドとしてここに挙げたものを使うと良いだろう。また、GMは以下に示すNPCが必ず恩恵のいずれか(あるいは全て)を提供しなければならないのだ、と感じる必要はない。それらの恩恵は彼らの必要性にもっとも合致するようになっているが、独自の恩恵をデザインしたりゲームに合うように調整したいと感じるのであれば、遠慮なくこれらの効果に手を加えて構わない。
基準タイプ(Archetype) |
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歩兵(Foot Soldier) |
ウォリアー 1 |
1/3 |
従士(Squire) |
アリストクラート 1 |
1/3 |
村一番の愚か者(Village Idiot) |
コモナー 1 |
1/3 |
侍祭(Acolyte) |
クレリック 1 |
1/2 |
山賊(Bandit) |
ウォリアー 2 |
1/2 |
酒場の女給(Barmaid) |
コモナー 2 |
1/2 |
農場主(Farmer) |
1/2 | |
スリ(Pickpocket) |
ローグ 1 |
1/2 |
船員(Shipmate) |
1/2 | |
乞食(Beggar) |
1 | |
食人種(Cannibal) |
バーバリアン 2 |
1 |
隊商の護衛(Caravan Guard) |
ファイター 2 |
1 |
終末論者(Doomsayer) |
アデプト 3 |
1 |
酔っ払い(Drunkard) |
1 | |
衛兵(Guard) |
ウォリアー 3 |
1 |
門徒(Initiate) |
モンク 2 |
1 |
売春婦(Prostitute) |
1 | |
店主(Shopkeep) |
エキスパート 3 |
1 |
語り部(Storyteller) |
バード 2 |
1 |
チンピラ(Street Thug) |
1 | |
流民(Vagabond) |
1 | |
夜盗(Burglar) |
ローグ 3 |
2 |
カルト教徒(Cultist) |
クレリック 3 |
2 |
2 | ||
貴族の御曹司(Noble Scion) |
アリストクラート 4 |
2 |
囚人(Prisoner) |
エキスパート 4 |
2 |
酒場の主人(Barkeep) |
3 | |
売人(Dealer) |
3 | |
衛兵隊長(Guard Officer) |
ファイター 4 |
3 |
巡礼者(Pilgrim) |
コモナー 5 |
3 |
奴隷商人(Slaver) |
3 | |
罠狩人(Trapper) |
レンジャー 4 |
3 |
牢番(Turnkey) |
ウォリアー 5 |
3 |
武闘僧(Battle Monk) |
モンク 5 |
4 |
ウィザード崩れ(Hedge Wizard) |
4 | |
クレリック 5 |
4 | |
戦闘魔術師(Battle Mage) |
力術士 6 |
5 |
騎兵(Cavalry) |
ファイター 6 |
5 |
占い師(Fortune Teller) |
5 | |
剣闘士(Gladiator) |
5 | |
吟遊詩人(Minstrel) |
バード 6 |
5 |
モンスター狩り(Monster Hunter) |
レンジャー 6 |
5 |
襲撃者(Raider) |
バーバリアン 6 |
5 |
祈祷師(Shaman) |
アデプト 7 |
5 |
遺跡盗賊(Tomb Raider) |
ローグ 6 |
5 |
拷問吏(Torturer) |
5 | |
行商人(Traveling Merchant) |
エキスパート 7 |
5 |
考古学者(Archaeologist) |
ローグ 7 |
6 |
猛獣使い(Beast Master) |
レンジャー 7 |
6 |
召喚師(Conjurist) |
召喚術士 7 |
6 |
ドルイド 7 |
6 | |
追いはぎ(Highwayman) |
6 | |
聖戦士(Holy Warrior) |
パラディン 7 |
6 |
王女(Princess) |
アリストクラート 8 |
6 |
保安長官(Watch Captain) |
ファイター 7 |
6 |
案内人(Guide) |
エキスパート 9 |
7 |
騎士(Knight) |
7 | |
傭兵(Sellsword) |
ファイター 8 |
7 |
バイキング(Viking) |
7 | |
一等航海士(First Mate) |
8 | |
村長(Mayor) |
8 | |
貴族(Noble) |
アリストクラート 10 |
8 |
僧侶(Priest) |
クレリック 9 |
8 |
殺人鬼(Slayer) |
8 | |
チャンピオン(Champion) |
9 | |
豪商(Merchant Prince) |
9 | |
バード 11 |
10 | |
酋長(Chieftain) |
ウォリアー 12 |
10 |
将軍(General) |
ファイター 11 |
10 |
ギルドの首領(Guild Master) |
ローグ 11 |
10 |
女王(Queen) |
アリストクラート 12 |
10 |
山賊の首領(Bandit Lord) |
11 | |
賞金稼ぎ(Bounty Hunter) |
レンジャー 12 |
11 |
艦長(Captain) |
11 | |
カルト教団の指導者(Cult Leader) |
11 | |
海賊の船長(Pirate Captain) |
11 | |
賢者(Sage) |
11 | |
聖人(Saint) |
パラディン 12 |
11 |
高位の僧侶(High Priest) |
クレリック 13 |
12 |
国王(King) |
アリストクラート 16 |
14 |
達人(Master) |
モンク 15 |
14 |
※訳注:利便性を考慮して付け加えました。PRDにはありません。
冒険者:戦闘魔術師、モンスター狩り、遺跡盗賊
野盗:山賊、追いはぎ、山賊の首領
保安部隊:衛兵、衛兵隊長、保安長官
競技場:剣闘士、猛獣使い、チャンピオン
犯罪者I:スリ、チンピラ、夜盗
犯罪者II:奴隷商人、殺人鬼、ギルドの首領
殉教の戦士:従士、聖戦士、聖人
地下牢:囚人、牢番、拷問吏
エンターテイナー:語り部、吟遊詩人、著名な吟遊詩人
武術道場:門徒、武闘僧、達人
辺境:罠狩人、隠者、案内人
異端教徒:カルト教徒、召喚師、カルト教団の指導者
略奪者:襲撃者、バイキング、海賊の船長
傭兵:隊商の護衛、傭兵、賞金稼ぎ
商人:店主、行商人、豪商
軍人:歩兵、騎兵、将軍
貴族:貴族の御曹司、騎士、貴族
街道:放浪者、流民、巡礼者
王族:王女、女王、国王
水兵:船員、一等航海士、艦長
学者:ウィザード崩れ、考古学者、賢者
予言者:終末論者、霊媒師、占い師
路地:乞食、売春婦、売人
酒場:酒場の女給、酔っ払い、酒場の主人
神殿:侍祭、僧侶、高位の僧侶
部族:食人種、祈祷師、酋長
村人:村一番の愚か者、農場主、村長