基本のPathfinderにおける病気と毒のルールでは、必要性の観点から、真実味のある形でこれらの苦痛の進行を模倣してはいない。レッサー・レストレーションを少し準備したキャラクターは、ほとんどの病気を簡単に無視することができ、【耐久力】に影響を与えない病気と毒はキャラクターを殺すこともない。さらには、これらの苦痛は能力値に影響をあたえることが多いため、これらの効果は非現実的なほどに強力になることもある――【知力】にダメージを与える毒は、脅威度にかかわらず動物的な知性を備えたクリーチャーをなんであれ倒してしまう。以下の選択ルールで提供される病気と毒の進行トラックにより、犠牲者の状況は徐々に悪くなっていく。
最初のセーヴに失敗して病気や毒の影響を受けたとき、被害者はこれらの進行トラックの第一段階の効果を即座に受ける。病気における第1段階は“潜在的・保菌”であり、毒の場合は通常“弱体”である。これらは病気や毒の通常の効果(能力値ダメージや能力値吸収)を置き換えるが、多くの病気や毒は、追加の症状を引き起こす。GMの判断により、死に至る病気や毒は、通常よりも進行トラックが進んだ状態で始めることにしてもよい。病気トラックや毒トラックのすべての効果は累積する。
病気や毒のほとんどには終了段階――病気や毒が可能な限り進行した時点――がある。病気や毒が終了段階に到達すると、被害者は現在受けているすべての効果を保ったまま(よりひどい効果を受けるわけではない)、病気や毒から回復するためにセーヴィング・スローを試みることができなくなる。基本的に、それぞれの病気トラックと毒トラックは終了段階で死亡となっているが、そこまでひどい終了段階を持たない病気や毒もあるし、最悪でも特定の中間の段階までしか進行せず、被害者がセーヴを試み続けられるものもある。
一般に、被害者が病気や毒に対するセーヴィング・スローに1回失敗する毎に、進行トラックが1段階進行してこれまでの効果を全て保ったまま次の段階の効果を受ける。これが終了段階に至るまで続く。病気の影響を受けている場合、病気の治癒項に記載されている条件(通常は1回以上のセーヴの成功)を満たすと1段階“健康”へと移動する。“健康”に到達すると病気が治る。毒は異なった形で機能する――治癒項の条件を満たすと被害者の体から毒は取り除かれるが、トラックの同じ段階にとどまり、徐々に回復する(持続時間の過ぎ去った毒と同様に扱う)。安静にしている1日毎(あるいは通常の休息2日毎)に、被害者は1段階ずつ回復する。この回復は通常通り〈治療〉判定で2倍になり、取り去りにくい毒はより長い回復期間を必要とする可能性もある。
通常、ニュートラライズ・ポイズンやリムーヴ・ディジーズは即座に被害者を対応するトラックの“健康”段階に移動させる。また、ヒールは両方の呪文として機能する。しかし、病気や毒が終了段階に到達すると、ウィッシュやミラクルのようなより強力な呪文によってのみ、これらの効果を終了させることができる。
病気や毒の中には、状態(不調状態など)と同じ効果をもたらしたりキャラクターを麻痺させたりするものがある。
これらの状態を変更したり取り除いたりする効果(完全耐性など)は適用されない。適切な病気や毒の適用を妨げる効果や完全耐性のみが効果を持つ。
病気トラックは病期の進行を模倣しており、潜伏から始まる。病気の“潜伏期間”項を無視すること。被害者は病気の“頻度”に基づく割り合いでセーヴィング・スローを試みる。GMが望むなら、病気の“治癒”項で治療できないと記載されている場合、ヒールを使用しない限り病期の進行を戻すことはできないとしてもよい。また、リムーヴ・ディジーズに成功してもこれ以上の悪化を抑えられるだけとすることもできるだろう。
病気には異なるトラックが2つある。一方は肉体的能力値に影響を与える病気(腺ペストや溶死病など)であり、他方は精神的能力値に影響を与える病気(狂笑熱や焼脳病など)である。病気の例は後述する。
健康――潜在的・保菌――弱体――障害――満身創痍――病臥――昏睡――死亡
潜在的・保菌/Latent/Carrier:この段階のキャラクターは病気を有しており、伝染性のものなら蔓延させることもあるが、不利な効果は一切受けない。
弱体/Weakened:肉体的な病気で弱体段階になったキャラクターは、疲労状態と不調状態のすべての効果を受ける。
障害/Impaired:肉体的な病気で障害段階になったキャラクターは、弱体に加えて過労状態の効果も受ける。標準アクションを行う際、キャラクターは病気の難易度と同じ難易度の頑健セーヴに成功しなければアクションを失い、1分の間吐き気がする状態となる。
満身創痍/Disabled:肉体的な病気で満身創痍段階になったキャラクターは、満身創痍状態となる。標準アクションを行うと、ヒット・ポイントは-1になるか1だけ減少する(いずれか悪い方)。
病臥/Bedridden:肉体的な病気で病臥段階になったキャラクターは、覚醒しており会話もできるが、自分の力で立つこともできず、標準アクションや移動アクションを行うこともできない。
昏睡/Comatose:肉体的な病気で昏睡段階になったキャラクターは、気絶状態であり熱にうなされている。病気トラックでこの段階にいる限り、このキャラクターはあらゆる意味で目覚めることができない。
死亡/Dead:病気は肉体の免疫系を圧倒し、キャラクターは死亡する。死体は病気を蔓延させる可能性がある。キャラクターが死亡すると異常な効果をもたらす病気もある。
健康――潜在・保菌――弱体――障害――前後不覚――錯乱――昏睡――死亡
潜在・保菌/Latent/Carrier:この段階のキャラクターは病気を有しており、伝染性のものなら蔓延させることもあるが、不利な効果は一切受けない。
弱体/Weakened:精神的な病気で弱体段階になったキャラクターは、不調状態のすべての効果を受ける。発動する呪文と擬似呪文能力の難易度は2だけ減少する。呪文の使い手の場合、被害者は発動できる最も高いレベルの呪文を発動できなくなる。
障害/Impaired:精神的な病気で障害段階になったキャラクターは、1日の使用ポイント数が決まっているもの(気蓄積や秘術蓄積など)、1日の使用回数(エネルギー放出や癒しの手など)、1日のボーナス呪文に精神的能力値の修正を加えることができなくなる。難易度はさらに2だけ減少する。呪文の使い手の場合、被害者は発動できる呪文の内、上位2レベルの呪文を発動できなくなる。
前後不覚/Befuddled:精神的な病気で前後不覚段階になったキャラクターは、思考と現実、自分自身を支配する力を失う。キャラクターは毎ラウンド50%の確率で意味のあるアクションを行うことができず、代わりにうわ言をつぶやいたり、フラフラさまよったり、見えない存在と会話したりする。
錯乱/Deranged:精神的な病気で錯乱段階になったキャラクターは、ほとんど完全に現実から切り離されてしまう。精神は覆われ、外界の刺激すべては奇妙な形へねじれてしまう。
昏睡/Comatose:精神的な病気で昏睡段階になったキャラクターは、現実への支配力をすべて失い、夢の内なる世界へ入っていく。病気トラックでこの段階にいる限り、このキャラクターはあらゆる意味で目覚めることができない。
死亡/Dead:病気はキャラクターの脳を修復不可能なまでに痛めつけ、死なせる。死体は病気を蔓延させる可能性がある。キャラクターが死亡すると異常な効果をもたらす病気もある。
毒トラックは毒が肉体に進行していく効果を模倣している。毒を受けたキャラクターは記載された“潜伏期間”の後、“頻度”に記載された時点でセーヴィング・スローをロールする。初めに毒に曝されたとき、セーヴの成否にかかわらず、被害者は(毒の難易度-10)÷2に等しい毒ダメージを受ける(例えば、難易度20の毒から5ポイントの毒ダメージを受ける)。これはヒット・ポイントへのダメージであり、能力値ダメージではない。被害者が同じ毒をさらに取り込み、セーヴに失敗したなら毒トラックは1段階進行し、持続時間が50%増加する。しかし難易度は変化しない。
弱体/Weakened:【筋力】毒で弱体段階になったキャラクターは【筋力】に基づく攻撃ロール、ダメージ・ロール、技能判定、能力値判定に-2のペナルティを受ける。運搬能力は1/3になる。このキャラクターは常に最低でも中荷重を運搬していると見なされる。
障害/Impaired:【筋力】毒で障害段階になったキャラクターは急速な筋肉の衰えを体験する。【筋力】に基づくロールへ追加で-2のペナルティを受ける。このキャラクターは常に最低でも重荷重を運搬していると見なされる。
よろめき/Staggered:【筋力】毒でよろめき段階になったキャラクターは、体の衰えのためによろめき状態の効果を受ける(ただし、純粋に精神的なアクションであれば全ラウンド・アクションを行うことはできる)。
行動不能/Immobile:【筋力】毒で行動不能段階になったキャラクターは、体を全く動かせなくなる。このキャラクターは無防備状態であり、純粋に精神的なアクションのみを行うことができる。
死亡/Dead:心臓を含め、このキャラクターの筋肉は全て機能しなくなる。
健康――鈍重――硬直――よろめき――行動不能――死亡
鈍重/Sluggish:【敏捷力】毒で鈍重段階になったキャラクターは、反応が鈍くなる。このキャラクターは反応セーヴと全ての【敏捷力】基準の攻撃ロール、能力値判定、技能判定、アーマー・クラスに-2のペナルティを受ける。
硬直/Stiffened:【敏捷力】毒で硬直段階になったキャラクターは、無感覚になり自分の肉体を固く感じる。このキャラクターは立ちすくみ状態として扱われ、たとえ直感回避を有していたとしてもアーマー・クラスに【敏捷力】ボーナスを加えることができない。このキャラクターは機会攻撃を行えない。
よろめき/Staggered:【敏捷力】毒でよろめき段階になったキャラクターは、ゆっくりと動き体が固いために、よろめき状態の効果を受ける(ただし、純粋に精神的なアクションであれば全ラウンド・アクションを行うことはできる)。
行動不能/Immobile:【敏捷力】毒で行動不能段階になったキャラクターは、体を全く動かせなくなる。このキャラクターは無防備状態であり、純粋に精神的なアクションのみを行うことができる。
死亡/Dead:このキャラクターの体は全く動かせなくなり、死亡する。
弱体/Weakened:【耐久力】毒で弱体段階になったキャラクターは、全ての頑健セーヴと【耐久力】判定に-2のペナルティを受ける。この毒に対して頑健セーヴを試みるたびに、その成否にかかわらず最初に曝されたときと同様にダメージを受ける。
障害/Impaired:【耐久力】毒で障害段階になったキャラクターは、同様の判定にさらに-2のペナルティを受ける。
満身創痍/Disabled:【耐久力】毒で満身創痍段階になったキャラクターは、満身創痍状態となる。標準アクションを行うと、ヒット・ポイントは-1になるか1だけ減少する(いずれか悪い方)。
気絶/Unconscious:【耐久力】毒で気絶段階になったキャラクターはショック状態となり、この段階にいる限りいかなる方法でも目覚めることはできない。
死亡/Dead:このキャラクターの免疫系は毒に破壊され、キャラクターは息を引き取る。
弱体/Weakened:【知力】毒で弱体段階になったキャラクターは、全ての【知力】基準の技能判定と能力値判定に-2のペナルティを受ける。【知力】を用いて呪文を発動するキャラクターは呪文の難易度を2減少させ、最も高いレベルの呪文を発動できなくなる。
障害/Impaired:【知力】毒で障害段階になったキャラクターは、【知力】に基づいて1日の使用ポイント数や使用回数が決まる能力(秘術蓄積など)、1日のボーナス呪文に【知力】ボーナスを加えることができなくなる。【知力】基準の判定にはさらに-2のペナルティを受ける。【知力】に基づく呪文の使い手の場合、難易度はさらに2だけ減少し、発動できる呪文の内、上位2レベルの呪文を発動できなくなる。
知能低下/Animalistic:【知力】毒で知能低下段階になったキャラクターは、フィーブルマインドと同様の効果を受ける(ただし、【魅力】および【魅力】基準の技能はこの効果を受けない)。
昏睡/Comatose:【知力】毒で昏睡段階になったキャラクターは、思考を続けることができなくなる。毒トラックでこの段階にいる限り、このキャラクターはあらゆる意味で目覚めることができない。
死亡/Dead:キャラクターの脳は機能を止め、キャラクターは死亡する。
弱体/Weakened:【判断力】毒で弱体段階になったキャラクターは、全ての【判断力】基準の技能判定と能力値判定、そして意志セーヴに-2のペナルティを受ける。【判断力】を用いて呪文を発動するキャラクターは呪文の難易度を2減少させ、最も高いレベルの呪文を発動できなくなる。
障害/Impaired:【判断力】毒で障害段階になったキャラクターは、【判断力】に基づいて1日の使用ポイント数や使用回数が決まる能力(気蓄積など)、1日のボーナス呪文に【判断力】ボーナスを加えることができなくなる。【判断力】基準の判定にはさらに-2のペナルティを受ける。【判断力】に基づく呪文の使い手の場合、難易度はさらに2だけ減少し、発動できる呪文の内、上位2レベルの呪文を発動できなくなる。
混乱/Confused:【判断力】毒で混乱段階になったキャラクターは、現実を処理するのが困難になり、自分と他人の両方にとって危険な存在となる。毎ラウンド、このキャラクターはアクションを決定するためにコンフュージョンの表をロールする。
昏睡/Comatose:【判断力】毒で昏睡段階になったキャラクターは、現実を体験したりカンカン情報を返すことができなくなる。毒トラックでこの段階にいる限り、このキャラクターはあらゆる意味で目覚めることができない。
死亡/Dead:自分の内なる現実で永遠にさまよった結果、このキャラクターの脳は機能を止め、キャラクターは死亡する。
弱体/Weakened:【魅力】毒で弱体段階になったキャラクターは、全ての【魅力】基準の技能判定と能力値判定に-2のペナルティを受ける。【魅力】を用いて呪文を発動するキャラクターは呪文の難易度を2減少させ、最も高いレベルの呪文を発動できなくなる。
障害/Impaired:【魅力】毒で障害段階になったキャラクターは、【魅力】に基づいて1日の使用ポイント数や使用回数が決まる能力(癒しの手など)、1日のボーナス呪文に【魅力】ボーナスを加えることができなくなる。【魅力】基準の判定にはさらに-2のペナルティを受ける。【魅力】に基づく呪文の使い手の場合、難易度はさらに2だけ減少し、発動できる呪文の内、上位2レベルの呪文を発動できなくなる。
従順/Pliable:【魅力】毒で従順段階になったキャラクターは、自我をほとんど持たず、ほとんどなんでも言われたことに従う。従順段階のキャラクターに対する〈威圧〉、〈交渉〉、〈はったり〉判定は自動的に成功する。ただし、態度を変化させるために行う〈交渉〉判定には通常の難易度を用いる。つまり、従順段階であっても敵対的や非友好的なキャラクターには、〈交渉〉を用いて要請を行うことができるわけではないということだ。
強硬症/Catatonic:【魅力】毒で強硬症段階になったキャラクターは、周囲を見、聞き、処理することはできるが、それに対応することができない。そして何らかの形で世界に反応することもできない。
様々なトラックを用いる病気の例を以下に示す。病気が特定の効果を持たない場合、該当するトラックの被害者の状態の効果のみを受ける。
効果 障害段階において、弱体段階によるペナルティはヒールもしくはレストレーションを受けるまで永続する
効果 病気がリムーヴ・ディジーズで取り除かれたとしても、グレーター・レストレーションあるいはヒールを受けるまで受けた状態は取り除かれない
効果 “潜在的・保菌”段階を持たない; 被害者は肉体的病気トラックと精神的病気トラックの両方から、進行度に合わせてペナルティをすべて受ける
治癒 リムーヴ・カースとリムーヴ・ディジーズを互いから1分以内に発動
効果 障害段階とそれ以降において、弱体段階によるペナルティはヒールもしくはレストレーションを受けるまで永続する
種別 病気、接触型、吸入型、または致傷型; セーヴ 頑健・難易度12
効果 健康――潜在・保菌――鈍重――硬直; 鈍重段階と硬直段階は【敏捷力】毒として扱う。硬直段階は終了段階
様々なトラックを用いる毒の例を以下に示す。毒が特定の効果を持たない場合、該当するトラックの被害者の状態の効果のみを受ける。
効果 弱体段階の後、被害者はヒールあるいはレストレーションを受けるまで回復しない
トラック 【知力】; 潜伏期間 10分; 頻度 1/分(6ラウンド間)
トラック 【判断力】; 頻度 1回/ラウンド(6ラウンド間)
トラック 【魅力】(特殊); 潜伏期間 1分; 頻度 1回/ラウンド(6ラウンド間)
効果 健康――弱体――障害――従順――従順; 2つ目の従順は終了段階
トラック 【敏捷力】; 頻度 1回/ラウンド(4ラウンド間)
効果 鈍重段階の後、セーヴに2回失敗すると段階が1つ進行する
トラック 【耐久力】; 頻度 1回/ラウンド(6ラウンド間)
トラック 【耐久力】(特殊); 潜伏期間 1分; 頻度 1回/ラウンド(6ラウンド間)
トラック 【耐久力】(特殊); 頻度 1回/ラウンド(2ラウンド間)
効果 健康――弱体――気絶; 終了段階はない