ヒット・ポイントは抽象的な概念である。ファイターはレベルを得るときに、その肉体が突然ダメージへの抵抗力を強めるわけではない。剣の一撃が突然それに比例して少ないダメージを与えるようになるのでもない。むしろヒット・ポイントはファイターがより多くの訓練を受けたことを示唆しており、ファイターは受ける傷の度合いを小さくする能力を強化したかもしれないが、より高いレベルで得たヒット・ポイントは若干の肉体的な負荷の許容量と大部分を占める命中を回避する技量、回避し、身をひねり、迂回する能力を反映している。ヒット・ポイントを失うたびに、この場合は戦闘の経過とともに次第に軽快さを失っていることを示唆している──言い換えると、ヒット・ポイントの減少は、全般的な耐久力と状態のマーカーである。しかしながら、クリティカル・ヒットをロールした後で、プレイヤーに相手は身をかわしたが剣による斬撃は敵の幸運をわずかに減少させたと告げるのは満足のいく説明とは言いがたい。
この負傷と活力を管理する変則システムはこの問題を解決するのに役立つだろう。この章の他のシステムと同様に、このシステムはすべて選択ルールである。
ヒット・ポイントの代わりに、このシステムを使用するクリーチャーはいくつかの負傷ポイントと活力ポイントを持つ。これらの2つの代替値は別々に管理し、キャラクターの負ったダメージを処理する異なる方法を表している。以下はこれらの値とダメージ管理の変則システムがどのように機能するかの説明である。
通常、クリーチャーは【耐久力】の2倍に等しい負傷ポイントを持つ。また、【耐久力】に等しい負傷閾値を持つ。
負傷ポイントはクリーチャーが死亡するまでに受けることのできる物理的な加虐の量を表す。クリーチャーの負傷ポイントが負傷閾値以下に低下した場合、クリーチャーは負傷状態になる。負傷状態になると、クリーチャーは負傷状態ではなくなるまでよろめき状態になる。また、クリーチャーが負傷状態である場合、そのクリーチャーが自身のターンになんらかの標準アクションまたは移動アクションを行った場合、残りの負傷ポイントが1減少し、難易度 10の【耐久力】判定を行わなければならない。この判定に失敗した場合、そのクリーチャーは気絶状態になる。
負傷ポイントと【耐久力】ダメージ、吸収、およびペナルティ/Wound Points and Constitution Damage, Drain, and Penalties:クリーチャーの負傷ポイントと【耐久力】は本質的につながっている。1ポイントの【耐久力】ダメージを負うごとにクリーチャーは2負傷ポイントを失うが、このダメージはクリーチャーの負傷閾値には影響を及ぼさない。【耐久力】へのペナルティを負うか、【耐久力】を吸収された場合、ペナルティまたは吸収の持続時間中、クリーチャーは1ポイントの吸収またはペナルティごとに1負傷ポイントを失う。【耐久力】へのペナルティまたは【耐久力】吸収はクリーチャーの負傷閾値には影響を与えない。
活力はクリーチャーが攻撃から受けるかもしれない実際の物理的ダメージの大部分を避けるための能力を表している。クリーチャーがダメージを負うとき、ダメージは通常は最初に活力ポイントを減少させる。負傷ポイントにダメージを直接与えるか、活力ポイントと負傷ポイントの両方にダメージを与える特殊攻撃もある(クリティカル・ヒットを参照)。
1以上の完全なヒット・ダイスかレベルを有するクリーチャーは活力ポイントを得る。各レベルを獲得するか、各ヒット・ダイスをクリーチャーが取得するときに、クリーチャーはそのヒット・ダイスの種類に基づいた活力ポイントを獲得する。活力ポイントを生成するために、ヒット・ポイントと同じように、しかしクリーチャーの【耐久力】修正値を加えることなく、そのクリーチャーのヒット・ダイスを使用すること。キャラクター・クラスのレベルから得る場合はクリーチャーは最初のヒット・ダイスから最大の活力ポイントを得る。NPCクラスまたは種族から完全なヒット・ダイスを得るクリーチャーは最初の活力ポイントを決定するためにヒット・ダイスをロールする。1未満のヒット・ダイスを持つクリーチャーは活力ポイントを持たない:負傷ポイントのみを持つ。
クリーチャーが活力ポイントを持たない場合、追加のダメージは負傷ポイントの合計を減少させる。
キャラクターは負傷ポイントおよび活力ポイントをいくつかの方法で回復することができるが、通常は負傷ポイントを回復する方が容易である。
治癒呪文および効果/Healing Spells and Effects:治癒呪文を発動するか治癒効果をもつ能力(生きているクリーチャーへの正のエネルギー放出やパラディンの“癒しの手”能力など)を使用する場合、呪文を発動するか効果を使用したクリーチャーは活力ポイントか負傷ポイントのいずれを治癒したいかを選択しなければならない。クリーチャーはこれを呪文を発動するか能力を使用する前に決定する。クリーチャーが活力ポイントを回復すると決定した場合、治癒呪文または効果は通常通りに機能し、呪文または効果が通常回復していたであろうヒット・ポイントと同数の活力ポイントを補充する。クリーチャーが負傷ポイントを回復すると決定した場合、治癒呪文または効果が通常ロールしていたであろうダイスと同数の負傷ポイントを回復する。ヒール呪文のように、呪文または効果が術者レベルごとに10ヒット・ポイントを回復する効果である場合は、クリーチャーが術者レベルに等しい負傷ポイントを回復する。
例えば、12レベル・クレリックが正のエネルギー放出を生きているクリーチャーの負傷ポイントを回復するために使用した場合、通常はエネルギー放出の爆発内のすべての生きているクリーチャーは6負傷ポイントを回復するだろう。このクレリックがヒール呪文を発動した場合は、接触したクリーチャーの12負傷ポイントを回復するだろう。
休息/Rest:クリーチャーが完全に一晩休息した場合(8時間の睡眠かそれ以上)、そのクリーチャーはすべての活力ポイントと1負傷ポイントを回復する。休息中に長時間の中断を挟んだ場合、クリーチャーは負傷ポイントと活力ポイントのいずれも回復しない。クリーチャーが丸一日をベッドでの完全休息に充てた場合、レベルの半分の負傷ポイントとすべての活力ポイントを回復する。
レストレーションおよび同種の効果/Restoration and Similar Effects:レストレーション呪文または同種の効果によって【耐久力】を回復した場合、そのクリーチャーは回復した【耐久力】ごとに2負傷ポイントを回復する。【耐久力】ペナルティまたは【耐久力】吸収の除去は、ペナルティまたは吸収によって失われた負傷ポイントを回復させる。
いくつかの攻撃は負傷ポイントに直接ダメージを与えるために用いることができる。
クリティカル・ヒット/Critical Hits:クリーチャーがクリティカル・ヒットの対象となるとき、クリティカル・ヒットは通常通りにダメージを与え、まず活力ポイントを減少させ、活力ポイントがなくなった後で負傷ポイントを減少させる。クリティカル・ヒットはまた、クリティカル・ヒットによってクリーチャーが負ったかもしれない負傷ポイントへのダメージの上に、クリティカル倍率に等しい負傷ポイントへのダメージを与える(例えば、×3の倍率をもつ武器は3負傷ポイント)。
負のエネルギー・ダメージ/Negative Energy Damage:クリーチャーが呪文または効果によって負のエネルギー・ダメージを与えた場合、その呪文または効果によって活力ポイントまたは負傷ポイントのいずれのダメージ(しかし両方ではない)を与えるかを選択することができる。クリーチャーが活力ポイントへのダメージを与えることを選択した場合、呪文または効果は通常通りの負のエネルギー・ダメージを与え、そのダメージは目標の活力ポイント以上のダメージを与えた場合でさえ活力ポイントのみを減少させる。呪文または効果が直接に負傷ポイントに負のエネルギー・ダメージを与える場合、その効果によってクリーチャーがロールしていたであろうダイスと同数の負傷ポイントのダメージを与える; (ハーム呪文のように)その効果が術者レベルごとにいくつかのポイントのダメージを与える場合、その呪文の術者レベルに等しい負傷ポイントへのダメージを与える。
以下は負傷と活力システムを使用している場合に考えるべきいくつかのその他の考慮すべき点である。
一時的ヒット・ポイント/Temporary Hit Points:クリーチャーは通常は一時的ヒット・ポイントを獲得する場合に、代わりに一時的活力ポイントを獲得する。クリーチャーはダメージを受ける際に、先に一時的活力ポイントから失っていく。負傷ポイントのみにダメージを与える攻撃の場合、これらの一時的活力ポイントは失われない。
非致傷ダメージ/Nonlethal Damage:クリーチャーは非致傷ダメージを受ける際はその攻撃がクリーチャーの有する活力ポイントより多くのダメージを与える場合であっても活力ポイントのみにダメージを受ける。クリーチャーが活力ポイントを持たない(かつ一時的活力ポイントを持たない)場合、非致傷ダメージを与える攻撃からダメージを受けるたびに、1負傷ポイントのダメージか、攻撃がクリティカル・ヒットした場合はその攻撃のクリティカル・ヒット修正値に等しい負傷ポイントのダメージのいずれかを受ける。
ヒット・ポイントをトリガーとする呪文または効果/Spells or Effects with Hit Point Triggers:このシステムを使用している場合、呪文または能力が(ディスインテグレイト呪文のように)クリーチャーのヒット・ポイントを0以下にしたときに発生する効果を有する場合、その効果は代わりにクリーチャーが負傷状態になったときをトリガーにする。ハーム呪文または同種のクリーチャーのヒット・ポイントを1未満に減少できない呪文または効果の場合は、クリーチャーの負傷ポイントを負傷閾値以下に減少させることはできない。
以下は負傷と活力システムのための新しい、またはこのシステムでは異なる働き方をする特技である。
前提条件:【筋】13、【耐】13、《不屈の闘志》、《持久力》、基本攻撃ボーナス+6、オークかハーフオーク。
利益:君は負傷ポイントが負傷閾値に達した場合でもよろめき状態にならないが、君が自身のターン中に何らかのアクションを行う場合は1負傷ポイントを失う。君はアクションを行うラウンドごとに1負傷ポイントしか失わない。また、君は負傷ポイントが負傷閾値以下であるときに近接攻撃ロールとダメージ・ロールへの+2ボーナスを得る。
深手を受けている場合でさえ、君はダメージを無視して執拗な攻撃を続けることができる。
前提条件:【筋】13、【耐】15、《不死身の入門者》、《不屈の闘志》、《持久力》、《鉄の皮膚》、基本攻撃ボーナス+9、オークかハーフオーク。
利益:君の負傷ポイントが負傷閾値に達した場合、君はアクションを行なっても1負傷ポイントを失わない。
君は負傷ポイントが負傷閾値よりも少ないときでさえ進み続ける。
利益:君は現在の負傷ポイントの合計が負傷閾値よりも小さい場合でも、難易度 10の【耐久力】判定に成功する必要なく意識を保つ。