その存在自体が話題となるかもしれないほど稀少な種族もいる。彼らは荒地の外れや地下深くの隠された洞窟、海の波間の下や夜空に浮かぶ雲の中に住んでいて、その種族で冒険に駆り立てられるものはほとんどいない。
本章に登場する14の種族はみな、PCとしてプレイするのに適したものだ。しかし彼らは珍しく孤立しているがゆえ、しばしばバラバラに行動する。その全てが風変わりなものではないが、その場合彼らが滅多にいないのはその姿の多様性が理由となる。ハグと定命のものの子孫チェンジリングは、そのような不快な組み合わせがめったにないために稀少なプレイヤー種族となる。キツネ、サンサーラン、ナガジ、ワヤンのような種族はとある遠方の地ではより一般的であることが多い。しかしそれ以外のほとんどの場所では目にすることがほとんどない。ギルマン、グリプリー、スヴァーフネブリン、ストリックス、マーフォークのような種族は一般に外から来たものを信用せず、自らの共同体を孤立した社会のままでいることを好む。
このような種族は珍しいものの、同時に冒険者になることを好んでいると言われることもある。冒険者になることは、通常の人生を望むものにあつらえたものではない。そしてこのような種族も、興奮や探究心を追い求めて世界中の未開の地へ向かおうという滅多にない精神を生じるのだ。
GMが許可すれば、君は以下に示す稀少種族からプレイヤー・キャラクターを選択することができる。各種族の項ではその種族のキャラクターが使用できるいくつかの新しい選択肢と合わせて、キャラクターを作成するために必要な情報が全て掲載されている。本章では以下の稀少種族の詳細を示す。
ヴァナラ:この悪戯好きな猿のような人型生物はジャングルや暖かい森に住む。柔らかい毛皮に覆われ、ものを掴むのに適した尾と手のような脚を持つヴァナラは、登攀の匠である。このクリーチャーは地上と樹上をともに住み処とする。
ヴィシュカニャ:奇妙な美しさの外見とその内に毒を持つヴィシュカニャは、切れ長の爬虫類の目を通して世界を見る。ヴィシュカニャは爬虫類の優雅さと敵の組みつきから容易に逃れることのできるねじりやすい身体を持つ。ヴィシュカニャは魅惑的で人心操作に長けている。彼らはその唾液や血で自らの武器に毒を塗布する。
キツネ:この姿を変える狐のような種族は、いたずらや芸術、生きている魅力的なものが好きだという共通点がある。彼らはその狐に似た人型生物という本来の姿とともに、特定の人間の姿を取ることができる。キツネは非常に機知に富み、機敏で社交的であり、このことが彼らのかなりの人数が冒険者となる。
ギルマン:祖国を破壊された、かつて地上に会った文明の生き残り、ギルマンはアボレスによって生き長らえたが水棲種族に変えられてしまった。多くの面で人間に似た姿をしているものの、ギルマンの明るい紫色の瞳とエラにより、彼らは人間から遠く離れた存在となっている。引きこもりがちで疑り深いギルマンは、ある日アボレスがその恩義の対価のために呼び戻すのだと知っている。
グリプリー:湿原や沼地で身を隠す能力を持つこそこそしたカエル人間、グリプリーは一般に水場を住み処とし、外の世界に興味を持つものはほとんどいない。湿原の環境から出て行く主となる動機は、金属や宝石の交易である。
サンサーラン:霊的な宿命に従う者、サンサーランは何千回もの輪廻の果てに真なる悟りに至るという希望を持つ、幾度となく転生を繰り返したクリーチャーである。人間や他の種族と異なり、この人型生物は過去生の多くを覚えている。
スヴァーフネブリン:暗い洞窟や地下深くの洞穴にある隠された居留地を守るノーム、スヴァーフネブリンは地上の従兄弟が気まぐれであるのと同じくらいに真面目だ。彼らは地下環境を共にする不浄なるクリーチャーの魔法に耐性を持ち、強力な防御魔法を身につける。スヴァーフネブリンは外から来たものを信用せず、彼らが近づくと姿を隠すことが多い。
ストリックス:翼持つデヴィルと見なされ人の手により狩られ数を減らしたもの、ストリックスは黒い肌を持つ夜空の主である。領土の衝突により、彼らは人間を忌み嫌うことになった。その長く続く確執により、この夜行性のクリーチャーは目につく人間をしばしば攻撃する。
スリ:スリジャーンとも呼ばれるこの人型生物は定命のものとジャーンの子供である。それぞれが強力で魅力的な存在であり、青年期になるとエレメンタルの力を使えるようになる。それにより彼らは地、火、冷気、電気を操る能力を得る。このエレメンタルの力はまた、スリの個性に反映される傾向がある。
チェンジリング:ハグと定命の恋人との間に生まれた子、チェンジリングは捨てられ里親に育てられる。常に女性のチェンジリングはみな、思春期にその本当の起源を見出す精神的な呼びかけを耳にする。背が高くほっそりとした体型、暗い色の髪と色が不揃いの瞳を持つチェンジリングは、薄気味悪いほどに魅力的である。
ドゥエルガル:灰色の肌を持つ地下深くに住むドワーフ、ドゥエルガルは明るい肌の従兄弟を忌み嫌い、人生を死によってのみ終わる絶え間ない苦難と見なしている。これらのドワーフは一般に悪属性だが、誇りや約束を守ることが彼らにとって重要であり、ごく稀に忠実な冒険者の仲間となることもある。
ナガジ:ナーガが自らの僕となる種族としてナガジを作り出したと信じられており、ナガジは自らの創造主を生ける神として信仰している。その爬虫類としての生態と奇妙な形式主義のため、この奇妙な鱗ある種族は恐れられ、その種族でない他の者から奇妙に感じられている。彼らは毒と精神に作用する魔法に抵抗力を持つ。
マーフォーク:このクリーチャーは上半身はがっしりした魅力的な人型生物であり、下半身はひれのある尾で構成される。彼らは水棲で泳ぐのが素晴らしく巧みではあるものの、その下半身のために地上で移動するのは苦手である。マーフォークは内気で引きこもりがちだ。彼らは一般に外に出ることはなく、地上に生活する異邦人を信用しない。
ワヤン:小さなワヤンは影界のクリーチャーである。彼らはその哲学さえ変えるほど影に同調しており、死とは彼らがほとんど闇に溶け込んでしまうことだと信じている。その影のような存在の神秘性は、彼らに正のエネルギーと同じように負のエネルギーでも傷を癒やす能力を与える。
それぞれの種族の説明は、その種族の信念や一般的な説明で始まる。すなわち種族の物理的な説明、社会、他の種族との関係、属性と宗教、その種族の一員が冒険に出る一般的な動機である。この説明はこの種族のキャラクターに包括的な背景と個性を作り出すのに十分な情報を提供している。
各種族の項目の補足説明欄には、その種族の一般的な種族特性が掲載されている。ここには情報として種族の種別、サイズ、視覚、基本移動速度が書かれており、その種族の大部分にとって一般的な他の特性も数多く書かれている。GMの許可があれば、下記の項に書かれているルールから、通常の種別特性のいくつかを代替種族特性へと変更する選択肢を得ることになる。
それぞれの種族に属する者は通常の種族特性を、本項に掲載された代替種族特性に置き換えることができる。それぞれの代替種族特性には、どの種族特性と置き換えればよいかが記載されている。特性を入れ替えるルールの全貌は、第一章:コア種族を参照のこと。
各種族は掲載された適性クラス・オプションを、通常の適性クラスの利益(+1hpか+1技能ランクのいずれか)の代わりに選択することができる。適性クラス・オプションに関するルールの全貌は、第一章:コア種族を参照のこと。
本項では稀少種族それぞれの種族アーキタイプを1つ掲載している。通常、その項の種族の一員のみが、掲載されたアーキタイプになることができる。アーキタイプはその種族の主題と紐つけられており、その種族の能力や背景を補完する能力がクラス特徴として与えられる。冒険者は社会のはみ出し者であることが多いため、ときおりこれらのアーキタイプが一般的な種族の性質から外れるテーマを表すこともある。GMが許可すれば、キャラクター・コンセプトに合致するとかキャラクターがその種族の一員に育てられたり訓練を受けたりしたという理由で、他の種族の一員であってもこういったアーキタイプを選択することができる。しかしこれらの種族はほとんどのキャンペーンでは一般的ではないため、こういった例外は本章で掲載されたアーキタイプでは非常に珍しいことであるべきだ。本章で掲載されたアーキタイプの全てを、種族毎に以下に掲載する。それぞれのアーキタイプのクラスについては、括弧に掲載した。
各種族の最後の項では、これまでに掲載した4つの項目に当てはまらない、その種族のアーキタイプ以外の新しい選択ルールを提供する。本章の種族全てに、以下の項目全てが掲載されているわけではない。
装備品:それぞれの種族の装備品項では、その種族が使用することのできる通常の装備品もしくは錬金術装備品が掲載されている。これらの装備品は自由市場で購入できたり他の種族の一員であっても購入することができることが多い。しかし多くの場合、特に錬金術装備品の場合には、効果がないかより弱い効果しか現れないか、他の種族には不利な効果を及ぼすことさえある。
特技:本項ではその種族の一員に向けた新しい種族特技を提供する。それらの特技はその種族の特定のテーマに適応したものや、多くの場合その種族の種族特性を拡張ないし強化するものであることが多い。それらの特技は全て前提条件に関連した種族を持つため、他の種族の一員はこれらを修得することはできない。
魔法のアイテム:本項で提供される魔法のアイテムはその種族の一員により作られ、その種族の一員にのみ使用できることが多い。種族特性に反応する効果を持つものもあれば、より広範な使用方法を持つものもあり、他の種族の一員が使用することができるものもある。
呪文:本項の呪文はその種族の呪文発動するものにとっては一般的なものだ。その種族の一員のみを目標とするものもあるが、単にその種族が秘術として守り通していることが多い。他の種族の一員であっても、GMの許可があればこれらの呪文を発動するために修得することができる。