ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスはオークが所有するベルクゼンの地で、頑として独立している、包囲された町トルナウから始まる。この冒険はホープナイフ祭の前夜から始まる。ホープナイフ祭は地元の若人が成年へとなるときに催される重要な催事である。PCは町に到着し、住民を知るようになるが、その後災厄が起こるのだ!
このアドヴェンチャー・パスはトルナウという小さな町から始まるので、少なくとも一人のキャラクターがトルナウ生まれ、あるいは町へ定期的に来る普通の訪問者であることが最善である。このプレイヤーズ・ガイドのキャンペーン特徴の一つは、その特徴を選択した根本となるキャラクターを助け、残りの特徴もその地域からのキャラクターにとって有意義である。地元のキャラクターのプレイヤーがトルナウに慣れ親しむのを助けるために町の地名をこのガイドの7ページに記載している。この地名はトルナウで成長することがどのようなものであるかを理解し、町の最重要人物何人かを紹介するのに役立つものである。
君のキャラクターがトルナウ出身ではないが町に精通しているような場合、頻繁に訪れていることからこの情報を得ることができる。君のキャラクターは定期的に町へと運び込んでいる隊商の一員であったり、ベルクゼン南方を警邏して休息と物資の再補充のために町へ立ち寄るスカウトの一団であるかもしれない。
トルナウに以前は全く関与していなかったキャラクターなら、君のキャラクターは冒険が始まるその日まさに町に到着した隊商の一員であるかもしれないし、もしかしたらその一行は国境を接している別の国で結成され、ベルクゼン南部を通るところからその冒険を開始したのかもしれない。君のキャラクターは近くの部族から追放され文明化された社会を探しているハーフオークであったり、包囲されている町を調査しているグループの一員であるラストウォールの特使かもしれない。町へとやってきて、その外壁の安全性と住民のもてなしを楽しんでいるようなショアンティ人の放浪者であることは君のキャラクターとして普通なことではない。
いずれにせよ、君のキャラクターに勇敢で独立しているトルナウの町を訪れさせようと君が計画している場合にこのアドヴェンチャー・パスでは最も機能する。周辺諸国と近くの居住地についての詳しい情報や、パーソナリティの背景設定へのアドバイスに関しては、4ページの出身の項目を参照せよ。
君はジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスを始めるが、どのようなキャラクターをプレイするのだろうか? 山中で巨人と戦うというテーマに沿ったキャラクターを作り、キャンペーンで生き残るための準備ができているキャラクターを作る最良の方法はどのようなものか? 以下のヒント、提案、キャラクター・オプションは、このアドヴェンチャー・パスで君と君のパーティを待ち構えている脅威と課題を克服していくのに最適なキャラクターを作成するのに役立つ。以下の提案は決して徹底するものではなく、キャンペーンで輝く可能性のある数多ものキャラクター・コンセプトも存在する。ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスのキャラクターに関するより多くの議論のために、paizo.comの掲示板を見て、君の経験をこのキャンペーンを遊んでいる人と共有しよう。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスの大部分は、マインドスピン山脈を旅し、隠れ家で巨人と戦い、強力なアーティファクトを調べ、旅の途中で竜やその他危険な獣に遭遇したりする。全てのキャラクター・クラスがアドヴェンチャー・パスに適しているが、クラスによってはプレイヤーが選択できるテーマに合った選択肢がある。またキャンペーンの大部分が巨人の住処での巨人との戦いを扱うため、乗騎を得るキャラクター・クラスは、巨人より小さな人型生物によってつくられたダンジョンを進むよりもこのキャンペーンの数ある巨人用の通路を進む楽な時間を過ごせるかもしれない。
有用そうなアーキタイプが以下である。
Goliath druid(ドルイド) Pathfinder Player Companion:Giant Hunter's Handbook収録
Titan fighter(ファイター) Pathfinder Player Companion:Giant Hunter's Handbook収録
Vexing dodger(ローグ) Pathfinder Player Companion:Giant Hunter's Handbook収録
Advanced Race Guideは、ハーフリング・キャヴァリアーのために特に作られたキャヴァリアーの騎士団、パウ騎士団を含んでいる。山との強いつながりを持つキャラクターを作りたいと考えているならば、Pathfinder RPG Ultimate Magicに収録されている動物と地形の領域を使用するドルイドを遊ぶ人は山脈の領域を考慮すべきである。
上級クラスを持つことに興味があるキャラクターには多くの選択肢がある。以下の提案はジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスのテーマのものである:halfling opportunist(Pathfinder Player Companion:Halflings of Golarion)、ホライズン・ウォーカー(Advanced Player's Guide)、Pathfinder delver(Pathfinder Campaign Setting:Seeker of Secrets)、skyseeker(Pathfinder Campaign Setting:Paths of Prestige)。
ほとんどの血脈が良い選択肢であるが、以下に提案するものはジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスのテーマによく合うものである:地底(Advanced Player's Guide)、竜、元素、orc(Pathfinder Player Companion:Orcs of Golarion)、嵐(Advanced Player's Guide)。
アドヴェンチャー・パスのデータに最も強く結びついているオラクルの神秘は闘争、石、そして、シャーマンは同名の霊をよく合ったキャラクター・オプションとして選ぶことができる。
もちろん、これらの限られた提案だけがプレイヤーが選択できるものではない――ほとんどの血脈、神秘、霊がジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスで上手く機能するはずである。
キャラクターは様々な背景や遠く離れた地からこのアドヴェンチャー・パスへと集結することができるので、エキゾチックな動物の相棒や使い魔を連れてくることができる。しかしこの地域のキャラクターや環境に似合った動物を選びたい人はもう少し選択肢が欲しいかもしれない。以下に示す使い魔はこのアドヴェンチャー・パスの気候と地形で与えられる良い選択肢である:バットB1、キャットB1、ジャイアント・フリーB4、ゴートB3、ホークB1、ハウス・センチピードUM、リザードB1、アウルB1、レイヴンB1、スカーレット・スパイダーB4、ウィーゼルB1。
以下の動物はマインドスピン山脈とベルクゼンで見かけることができ、動物の相棒(あるいは同様の乗騎)のための良い選択肢である:オーロックスB1、ベアB1、バード(イーグルB1、ホークB1、アウルB1)、スモール・キャット(mountain lionB1)、ダイア・バットB1、ドッグB1、エルクB3、ホースB1、リザード(ジャイアント・ゲッコウB3)、リザード(モニター・リザードB1、cave lizardB1)、リャマ/llamaAA、ポニーB1、ラムB2、ロックB1、スタッグB4、ジャイアント・ヴァルチャーB3、ジャイアント・ウィーゼルB4、ウルフB1。
ここに記載した動物に加え、Pathfinder Adventure Path #91:The Battle of Bloodmarch Hillのbestiaryは、PCが動物の相棒として選択できるベルクゼンとマインドスピン山脈固有の動物を記している。これらが可能かについてはGMと話しあうこと。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスの大部分はマインドスピン山脈が舞台となるが、冒険はPCを地下、丘陵、沼地の環境へと連れて行く。得意な地形の最善の選択肢は山岳(丘陵を含む)であり、2番目は地下である。得意な敵の最善の選択は人型生物(巨人)、竜、人型生物(オーク)、魔獣である。
他の多くの書籍が君のジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスの体験を強化するのに役立つ。以下は必須なものではないが、このキャンペーンを通じて楽しんでいる間に有用で刺激的なものであるかもしれない他の情報源である。
ベルクゼン南部の荒涼とした危険な土地(アドヴェンチャー・パスの最初の舞台となる場所)の詳細についてはPathfinder Campaign Setting:Belkzen, Hold of the Orc Hordesを参照せよ。君の巨人の伝説を強めるにはPathfinder Campaign Setting:Giants Revisitedを読もう。巨人との遭遇を視覚化する為にはPathfinder Flip-Mat:Giant Lairsを確認せよ。
巨人と戦うことの前提として、Pathfinder Player Companion:Giant Hunter's Handbookが貴重なものである。プレイヤー・キャラクターはあらゆる探索にもかかわるため、冒険中の生存へのヒントとしてPathfinder Player Companion:Dungeoneer's Handbookを参照せよ。
このアドヴェンチャー・パスにおいてハーフオークのキャラクターのための多くのオプションをもっと探したいと思うプレイヤーはPathfinder Player Companion:Bastards of Golarionをチェックし、ドワーフをプレイしたいプレイヤーはPathfinder Player Companion:Dwarves of Golarionをチェックせよ。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスでは、君のキャラクターがどこで生まれたかは重要な問題ではない。マインドスピン山脈はベルクゼンの領土、ヴァリシア、ニアマサス、ニダル、モルスーンを通じて広がり、ラストウォールの西部の国境から50マイル以内である。これらの国々全てはこのキャンペーンでキャラクターの郷土とすることができる。
マインドスピン山脈は内海地方全域をめぐる全ての来客をひきつけている。その多くは山岳地帯や麓からわずか数日の旅路のいずれかに居住地を作っている。ヴァリシアにあるオークの支配する都市アーグリンが近くにあり、ハーフオークのキャラクターの故郷であるかもしれない。必須ではないが、パーティの少なくとも一人はトルナウの出身者であるか、少なくとも町のことをよく知っている普通の訪問者であることを強く推奨する。犯罪者の集まったフリーダム・タウンは変化に富んだ過去を持つキャラクターのための素晴らしい故郷となるだろう。このキャンペーンのドワーフはジャンダーホッフ、薄明街、クラッゴダンからやって来ているかもしれない。血誓渓谷の両側には材木と採掘の居住地スケルトとヴァリシア人の都市国家コルヴォーサがあり、どちらもこのアドヴェンチャー・パスのキャラクターには良い故郷である。マインドスピン山脈の北端から西に僅か数百マイル離れているところにケル・マーガ――内海地方で最も奇妙な混血の人々にとっての故郷であり、異常なキャラクターにとっての起源として最適な場所――があり、ケル・マーガの南方にはコルヴォーサ領にある集落シラスーがある。この山脈のニダル国内にはブリムストーン温泉と呼ばれる、奇妙なミネラル成分で知られる温泉で有名な小さな町があり、入浴する者に魔法の利益を与えると言われている。モルスーンのキャラクターはアバダルの司祭によって支配された都市ブラガンザからやってきたかもしれない。
これらの近くの居住地の全てがキャラクター出身地としての良い場所である一方で、このキャンペーンで休息や宝物を売る場所、補給地点としても機能する。
アヴィスタン大陸西部はまだ多くの場所が人口密度の低いフロンティアである。全ての種類の人型生物の本拠地である一方で、人間がこの地域で最も一般的な種族である。ハーフオークもドワーフ、ハーフリング、ノーム、エルフ、ハーフエルフのように一般的な種族である。ドワーフとノームの防御修練の種族特徴はこれら両方の種族をこのアドヴェンチャー・パスにおいて強力な存在にする選択肢である。さらにこのキャンペーンのためにハーフリングのキャラクターを作成しているプレイヤーは、自身より大きな敵と戦うときにボーナスを得られる足の下にの代替種族特徴を確認したほうが良い。
人間の中では、ヴァリシア人、シェリアックス人、タルドール人がこの地域で最も一般的な人種である。しかし南部へと冒険を進めて、トルナウまでの旅路を終えたケーリド人やウールフェン人を目にしても場違いということはないだろう。同様にキャラクターは内海地方のどこからでもこのキャンペーンに登場させることができる。
このアドヴェンチャー・パスでは宗教は大きな役割を果たさないが、クレリックなしで冒険に行くべきという意味ではない。君のキャラクターがトルナウ出身である場合は、アイオメデイやアバダルを崇拝しているかもしれない。これら2柱の信仰はトルナウにはある。狩猟がトルナウ(そしてアヴィスタン大陸西部の荒涼とした土地全域)にとって重要であるので、エラスティルの信仰もこの地域では普通のものである。このアドヴェンチャー・パスの旅の要素のためにはデズナは素晴らしい信仰の対象であり、ゴズレーは戦争に関心を持つクレリックには良い選択である。トローグはドワーフだけでなく、鍛冶、守護、戦略を重んじる正義のキャラクターにも適している。
このアドヴェンチャー・パスでは他の技能よりも頻繁に使用するようになるような技能はないため、PCは一般的に冒険で役に立つ技能、特に山岳地帯での冒険のためのものを選ぶ必要がある。
〈軽業〉は巨人の途方もない間合い内で無傷で移動するのに役立つだけでなく、幅広い割れ目を飛び越えたり、狭い山道を進み、瓦礫やがれ場を移動して登山をするのにも役立つ。〈登攀〉は山を登り、巨人の隠れ家の中で動き回るときに有用である。野外での情報収集は重要であり、3種類の〈知識〉に注目することが良い選択であろう:〈知識:神秘学〉、〈知識:ダンジョン探検〉、〈知識:地域〉。〈生存〉はパーティが荒野に対処し、このアドヴェンチャー・パスで見つける山岳地帯をナビゲートするのに有用な選択であり、〈知覚〉はどのような冒険においても常に優先させる技能である。
パスファインダーには数多もの特技があり、巨人と戦うとき多くのキャラクターへと有意性を本当に与えることができる。そのような特技の最大級の資産はPathfinder Player's Companion:Giant Hunter's Handbookにあり、この本には特に巨大な敵と戦うためにデザインされた15もの特技が収録されている。この本に加えUltimate Combatにはドワーフとノームに、巨人に対してさらに優越性を与えるようにデザインされた2種類の一連のスタイル特技が収録されている。これは《地の民の束縛》、《地の民の型》、《地の民の足払い》と《対の雷鳴》、《対の雷鳴連打》、《対の雷鳴体得》である。Advanced Player's Guideには小型かそれより小さいキャラクターのための特技――《上からには下から》、《足元駆け抜け》――があり、両方とも巨人と戦う際に役立つ防御術である。最後に《一撃離脱》、《反撃の構え》は戦闘する者が巨人の長い間合いを対処するのに有用である。
下記のキャンペーン特徴やGiant Hunter's Handbookにある特徴に加え、多くの他の特徴にはジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスのキャラクターに適しているものがある。Dwarves of Golarionには、マインドスピン山脈のキャラクターのための2つの地域特徴がある:〔blooded〕、〔coin hoarder〕。Advanced Player's Guideの〔ハイランダー〕の地域特徴はキャラクターが岩場で隠れるのに役立ち、Rise of the Runelords Anniversary Edition Player's Guideには〔giant slayer〕の特徴が収録されている――これは別のアドヴェンチャー・パスのキャンペーン特徴であるので、ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスでこの特徴を許可するかをGMに確認せよ。ヴァリシアのキャラクターはPathfinder Player Companion:Varisia, Birthplace of Legendsに収録されている〔regional recluse〕の特徴を選択することができるだろう。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスはマインドスピン山脈の様々な場所へとキャラクターを進ませるが、オークが支配するベルクゼンの領土にある人間の街トルナウから始まる。このキャンペーンのために作成されるプレイヤー・キャラクターは、トルナウの住人、あるいは最近町へやってきたものである必要がある。少なくとも1人のプレイヤーが自分のキャラクターに〔トルナウ生まれ〕の特徴を選択すると役立つだろうが、PCがどのキャンペーン特徴を選択するかに拘らず、戦っている巨人やその味方がどこにいるかに興味があるべきである。
〔アーティファクトを求めて〕/Artifact Hunter:君はいつだって魔法に興味があった。とりわけアーティファクトとして知られる伝説の魔法のアイテムに魅了された。何年もかけてこの伝説の神具を探し、記録に残る物語や伝説に全力を捧げてきた。今や君はこの手のことに関しては達人の類いだ。君は魔法のアイテムの特性を識別するための〈呪文学〉判定に+1の特徴ボーナスと、〈魔法装置使用〉判定に+1の特徴ボーナスを得る。さらに、これらのいずれか1つ(君が選ぶ)はクラス技能となる。加えて、アーティファクトを最初に見たとき、君は50%(+レベルごとに1%)の確率で、そのアーティファクトの名前、起源、アーティファクトの力や能力、危険がなんなのかを知ることができる。君が持つ知識がどの程度正確なのかは、GMの決定に従う。
〔竜の敵〕/Dragonfoe:君はいつだって竜が憎かった。ひょっとしたら祖先が有名な竜殺しなのかもしれないし、暴れ回る竜が家族や友達を殺したのかもしれない。騎士が囚われの姫を邪悪な竜の手中から救い出す物語を聞いて育つうちに、竜を殺そうと思い至ったのかもしれない。強迫観念の理由がなんであれ、それが、竜と戦いその恐るべき攻撃から身を守る術を学ぶきっかけになった。君は竜の種別を持つクリーチャーに対するアーマー・クラスに+1の回避ボーナスと、ブレス攻撃に対する反応セーヴに+2の特徴ボーナスを得る。
〔ドワーフ流訓練〕/Dwarf-Trained:ドワーフは巨人やオークによる脅威に精通している。彼らは何百年もの間、この敵と戦う訓練を磨き続けている。君はドワーフと共に訓練し、彼らが憎む敵に対する戦略をいくつか学んだ。君は(巨人)副種別を持つクリーチャーに対するアーマー・クラスに+2の回避ボーナス(これはドワーフやノームの“防衛訓練”種族特性とは累積しない)と、(オーク)副種別を持つクリーチャーに対する攻撃ロールに+1の特徴ボーナス(これはドワーフの“嫌悪”種族特性とは累積しない)を得る。ドワーフとノームはこの特徴を選択することはできない。
〔巨人の血〕/Giant-Blooded:血統のどこかで巨人の血が入り込んだという噂で、君の家族はいつも陰口をたたかれていた。錬金術の研究かもしくは魔法の研究か、はたまた遥か昔の先祖が巨人と結婚したからなのか、そのため君は種族の中でも身体が大きい。ひょっとしたら燃えるように赤い髪や蒼白な肌、馬鹿でかい掌のように、わずかではあるが表面上の特徴を巨人の血から与えられているかもしれない。君が自分のサイズよりも大きい武器を装備する際、適切でないサイズの武器を使用することで受ける攻撃ロールへのペナルティは半分に減少する。加えて、君は“ふっとばし攻撃”戦技に対する戦技防御値に+2の特徴ボーナスを得る。君がドワーフなら、“安定性”種族特性は“ふっとばし攻撃”戦技にも適用される。
〔巨人殺しの子孫〕/Giantslayer Scion:巨人の敵と大立ち回りをしたという、有名な先祖の話を聞いて君は育った。祖先の名前を口にすれば屈強な巨人の戦士すらもその心に恐怖を抱くほど。君は先祖の足跡を追いかけると決意した。君は(巨人)の副種別を持つ自分より大きなクリーチャーに対して、〈威圧〉判定にペナルティを受けない。君は(巨人)の副種別を持つクリーチャーに対して[恐怖]に基づく効果を使用する際、難易度に+1の特徴ボーナスを得る。
〔巨人が原因の孤児〕/Orphaned by Giants:君は山の近くにある穏やかで幸せな故郷で育った。しかしその幸せは砕かれる。巨人が山から下りてきて、君の住まいを襲撃したのだ。巨人は君の両親を殺し、君は若くして孤児となった。その日から、君は同族の死に報いると誓った。君は(巨人)の副種別を持つクリーチャーに対して行う攻撃ロールに+1の特徴ボーナスと、(巨人)の副種別を持つクリーチャーに対して行うクリティカル・ロールに+2の特徴ボーナスを得る。
〔かわしの匠〕/Roll With It:君はこの世で最高の巨人殺しと共に訓練し、巨人の強力な攻撃による最悪の効果を避ける術を学んだ。君は反応セーヴに+1の特徴ボーナスを得る。加えて、1日1回、(巨人)の副種別を持つクリーチャーが君に対して武器もしくは叩きつけ攻撃(魔法や特殊能力は除く)でクリティカル・ヒットを確定させた際、君はその攻撃をかわすことができる。まるでクリティカルが確定しなかったかのように、その攻撃から通常のダメージを受ける。君はその攻撃に気付いており、反応できなければならない――君が【敏捷力】ボーナスをアーマー・クラスに加えられない場合、この能力を使用することはできない。君がドワーフもしくはノームであれば、この能力を1日に2回使用することができる。
〔巨人族調査員〕/Student of Giantkind:君はいつも巨人種族に魅了されており、その歴史や社会を調べるのに可能な限り情熱を傾けている。そのため君は、彼らの思考と能力に対する閃きを得た。君は(巨人)の副種別を持つクリーチャーに対する〈交渉〉判定に+1の特徴ボーナスと、(巨人)の副種別を持つクリーチャーに関する〈知識:地域〉判定に+1の種族ボーナスを得る。加えて、これらの技能のいずれか1つ(君が選択する)はクラス技能となる。加えて、君は巨人語を知っている(これは君の言語の総数に加えない)。
〔トルナウ生まれ〕/Trunau Native:君はトルナウの町で生まれ、育った。この町はオークに支配されたベルクゼンの領土では珍しい、人間の居住地だ。オークの襲撃は絶えずつきまとう脅威であり、トルナウ人みんなと同じように、君は抗戦の誓いを立てた。オークであれ何であれ、トルナウを全ての攻撃から守る。自由に生き、絶対にやり遂げるのだ。成人し、君はホープナイフ/hopeknife――小さい鞘付きダガー。服の下にある鎖につけておく――を与えられた。そしてオークに囚われた時に自決し、傷ついたものに速やかに死の慈悲を与えられるように、この武器の使い方を教わった。この街出身であるため、君はトルナウの兵役に就き、警邏隊隊長であるクルスト・グラスやロドリク・グラスと共に戦った。君はホープナイフ(高品質のダガー)を持ってゲームを開始する。逆境に直面しても諦めない精神により、君は意志セーヴに+1の特徴ボーナスを得る。
〔煩わしい守護者〕/Vexing Defender:君は自分より大きな敵との戦闘法を訓練し、敵の足下で戦い続け、あらゆる方向から敵を悩ませることに熟達している。君は〈軽業〉判定に+1の特徴ボーナスを得、〈軽業〉はクラス技能となる。加えて、君は機会攻撃を誘発することなく敵の接敵面を通過する際に行う〈軽業〉判定に+4のボーナスを得る。ただしこのボーナスは敵が自分より大きい場合にのみ与えられる。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスはトルナウの街から始まる。町の辞典はPathfinder Campaign Setting:Towns of the Inner Seaから転記したものを下に記している。
ベルクゼンの2つしかない非オークの居住地のうちの一つであるトルナウは屈強な農民と勇敢な兵士からなる巨大な共同体であり、交易するやいなや殺すようなオークのぞっとするような海を漂っている。神の恩寵、指導者の卓越した粘り強さと創意工夫、そして先祖代々の土地から追い出されることに対する単純な魂からの拒絶を通じて彼らは生き延びている。
トルナウ人はあらゆる形での犠牲を知っている。彼らの生活は決して安泰なものではないが、理想主義者、悪党ども、追放者のこの一団は、敵対的な地域に自分たちの存在があるという独立性に大きな自尊心を持っている。彼らにとって、この町が存続する日々は文明の征服不可能な精神と驚異的な希望の強さの継続する例である。
国境が3828ARに“囁きの暴君”の敗北の後に確立されて以来、ベルクゼンの領土は着実に南方へとラストウォールまで拡大し、十字軍の戦線を押し戻し、オークの統治する領土内の数千マイルも続く国境上の破壊された要塞を朽ちるに任せた。4515AR、ハーキスト長城の陥落以来300年近く続く活発な戦争によって限界まで追い込まれた包囲された兵士と農民は、土塁と木製の柵より多少はマシなもので構築された話にならない出来の軍勢防衛線と呼ばれる新たな境界線を構築し、ケストレル川沿いで踏み留まった。それでも、その戦線より後ろの共同体がオークの脅威は最終的に阻止されたという希望をある程度持てるほどの時間を稼ぐことはできた。
しかしそうはならなかった。軍勢防衛線の建設後間もなくして、その西側の防塁が破壊され、オークがラストウォールの南側へと侵略した。ラストウォールの司令官はさらに別の場所への避難を渋々命じ、遥か東に後退させた新たな防衛線を引き、放棄された領地内の住民を持てる物と共に安全な所へと逃がし、そして死に物狂いで暴れ回るオークの一歩先を行った。
しかし誰も彼もが逃げたわけではない。ラストウォールの卑劣な裏切りと見做したものに対し憤慨した、トルナウの穏やかな居住地の農民らと退役した十字兵らは、逃げることを拒否した。岩の多い天然の要塞であるブラッドマーチ・ヒルと呼ばれる台地の上に位置する共同体は壕を掘り、杭を尖らせ、落とし穴を掘り、その人口は撤退して友を見捨てるつもりのない難民と兵士で膨れ上がった。避けられぬオークの到着の際、防衛者たちはトルナウの守備隊に優るとも劣らない獰猛さを見せつけ、侵入者たちは崖際や防柵への襲撃で手痛い損失を受けた後、南へと撤退し、放棄された居住地を略奪した。
勝利に浮かれ、生き残った住民たちは協定を結んだ。そこは今日抗戦の誓い(あるいは単に“誓い”)として知られている:その地に来るあらゆる者から自らの土地を守る為に、略奪するオークにも隣国の軍隊にも鐚銭も渡さない。どれだけの代償を払おうと、自らの大地に立ち、自由に生きる。
ここ数世紀の間、トルナウの人々はこの誓いを立ててきた。破壊的な襲撃や適地の中での生活の厳しさにもかかわらず町が陥落しなかったことは大きな誇りである。しかし、さらに重要なものは、北部のフリーダム・タウン――ラストウォールの厳しい法律から逃れるためにベルクゼンの領土内に定住した犯罪者と亡命者の街――とは異なり、トルナウの人々は基本的に文明的な性格を失ったことがなく、外部の団体から保護を求めたことがないことである。
多くの人々が影のある過去から逃げるために長年にわたりトルナウへ来る一方で、トルナウはそういった重荷を受け入れない; 仕事をしコミュニティに貢献する気がある者だけが、町の壁の安全性を共有できる。オークが来ると全ての男女が貧富や職業に関係なく、防衛を手助けすることが期待されている。義務を果たし名誉を持って行動する者はトルナウの住人が新しく来たものが以前はどのような人物であったかについてほとんど気にしない――気にするのは今どのような人物になろうとしているかだけである。
黒刃のチーフ・ディフェンダー ハルグラ Chief Defender Halgra of the Blackened Blades
議員 アグリット・スタギンスダー Councilor Agrit Staginsdar
議員 サラ・モーニングホーク Councilor Sara Morninghawk
司祭 タイリ・バルベイトス High Priestess Tyari Varvatos
店長 ケッセン・プルーム Master of Stores Kessen Plumb
警邏隊のキャプテン ロドリク・グラス Patrol Captain Rodrik Grath
警邏隊のリーダー ジャグリン・グラス Patrol Leader Jagrin Grath
トルナウの人々は絶えず脅威にさらされて生きており、死を単なる生命の別の一面として受け入れてきた。住民全員が自身の死の定めを完全に受容しているというわけではないが、単純に自らの死の定めは可能性が高いと認識しており、そのため略奪や不幸な事故によって命を落とすことについて過剰に心配することなく、最高の人生を過ごそうと努めている。
おそらくこれの最高の象徴物――そして、確実に最も想像力を掻き立て外部の者の目を惹くもの――はホープナイフの伝統である。トルナウの居住者全員が持ち歩いているホープナイフは小さな鞘に納められたダガーであり、通常は服の下の鎖に繋がれて身に付けられているが、最近は成人したばかりの若い大人が自らの短刀を見せびらかしていることもある。ホープナイフのこの伝統は、オークによる捕獲はしばしば迅速な死よりも遙かに悪いため、あらゆる住民は虜囚となる場合に自殺したり負傷者に慈悲を齎したりする準備をする必要があるという理解から生まれた。皮肉にも、元々は過酷な必要性に基づいていたが今では成人と独立の象徴となっており、多くの子供は自分の12歳の誕生日を今か今かと待ち構えており、その日になるとその者のホープナイフを手渡され、自分あるいは愛する者が敵の手に落ちる場合にその動脈を切断するのだと示される。ホープナイフは常に鋭利に保たれ、配偶者はしばしば結婚式の一環としてナイフを交換するが彼らの意図する目的以外には使用されない。
既に希望泉によって水の制御ができているトルナウで防衛に次ぐ問題事項は食料だ。町は国境のパトロールや警邏隊を国境付近の仮設の監視塔に配属し、多くの畑を維持し、長期間保存できる作物に焦点を当てて、包囲された場合に備え大規模な備蓄を維持することができる。しかし畑は簡単に燃やされるため、町は狩人と罠師にも大きく依存している――オークとの活発的な対立の間に、しばしば伝統的なファイターと協力し、食料と家畜をオークから盗み出す。
おそらく町の生存によってもっとも重要なものはシージストーンである。立ち上がって戦うとトルナウが決心した直後、町の指導者たちはこの町は飢餓に対し脆弱であることを認め、魔法による解決を見つけるために資源を共同出資することを決めた。取引の集団が町の容易に持ち運びできる貴重品の殆どを持たされ東のウースタラヴへと送られ、困難な時に味気のない粥をガロン単位で生産し、住民を全く飢えないようにできる巨大な大釜のような祭壇であるシージストーンと共に帰還した。石はロングハウスにあり、極度に必要な場合を除いて使用することはない――その魔法を使いつくす恐れがあり、また町の誰も平時に絶望の味を味わうことを熱望しない両方の理由からである。
トルナウの人々は生まれながらにして独立しているが、それでも全員が防衛評議会の知恵に従っている。2年置きに人民の階級から選ばれるこの6人は、町の物流と防衛の管理に従事し、法が順守され誰もこの共同体を危険に晒さないようにしている。6人の評議員のうち1人がチーフ・ディフェンダー/Chief Defenderの肩書を持つ。チーフ・ディフェンダーは町の安全に関する全ての最終的な決定権を持ち、危機が起こった時の指揮官である。それ以外では6人の評議員は町の繁栄、法律、仲裁などの問題については建前上は同等の権限を持っている。
ここ20年、チーフ・ディフェンダーの地位は黒刃のハルグラに保持されている。トルナウ生まれであるハルグラは幼き頃に町を去って冒険者となり、駆け塚から破砕海岸まで、そしてその遙か先のマンモス諸侯領に至るまで戦い襲撃をした。彼女は最終的に42歳にして、全員が異なる父親を持つ沢山の正真正銘の実子たちと共に帰郷し、余生を故郷の防衛の為に過ごそうと定住した。ジャグリン・グラスは現在巡視隊らと強襲する一行らを案内しているが、ハルグラはまだ山のような女性であり、彼女のトレードマークである黒く塗られた剣は素早く、巧みな駆け引きと戦術的な洞察力もあり誰も彼女の指導力の適性に正直に挑むことができない。
貿易はトルナウの生活の重要な一部である。大部分の確立された貿易ルートからは遠く離れているトルナウは、それでも放棄された居住地から町民が未だに引き上げている貴重な救出家財を熱望するラストウォールやニアマサスからの行商人を(「このような孤立した共同体から町民が要求できる」と商人が知っている暴騰した価格と同様に)迎え入れている。これらの中で最も一般的な貿易商はベルクゼンの領土を超えようとするヴァリシア人の隊商か、駆け塚のキチン質の化け物あるいはオークに対して自分自身を証明するためにヴァリシアから東へと来たショアンティ人の急襲隊である。トルナウ自身も隊商をラストウォールへと送り、必需品と引き換えに、オークの動きに関する貴重な情報を永立城の十字軍へと流している。グラスク・ウルデス/Grask Uldethによる貿易と文明への現在の心酔は長くは続かないだろうという共通の見解があるが、町はウルギルからの少数のオークの貿易商との関係を維持してさえいる。
オークはトルナウでは自然と軽蔑されているが、それでも皮肉なことに、他の場所よりもハーフオークはここでの偏見は少ない。オークが虜囚に対しどのような非道をなすかトルナウが知っている通りに、そしてハルグラ自身が冒険していた頃にハーフオークの恋人たちとの間に2人の子供をこさえたように、ハーフオークは同情されており、オークの収容所で育ったハーフオークはトルナウの壁の中での場所を獲得するために1人ならず逃げ出している。
トルナウは勤勉な共同体であるが、祝い事の価値を理解し、どこにいても安心できる共同体である。家族は緊密に結びついており、ほとんどの家族が、世代のある時点で結婚によって少なくとも多少は関連してる。住人はできるならば愛を見つけることを推奨され、住民が他人の自由を尊重する限り、社会的・性的なタブーはほとんどない。おそらく、トルナウの人生観で最も良い例は、ホールドファスト/Holdfastの休日である。この日は町で最初にオークに勝利したことへの祝祭であり、忘れられない思い出の堅苦しい朗読と小枝を編んで作った剣に火を灯すことから始まり、ゲーム、ダンス、エール、そして多数のロマンチックな私通へと続いていく。
トルナウの街で最も目に付く特徴はその柵である。当初は、柵は鋭く尖らせた枝で作ったその場しのぎのフェンスであったが、数十年にも渡る戦いの中で、トルナウ人は長く残る危険なものにした。高さ10フィートの木の幹が、頂上は凶々しく鋭くとがり、光さえ間を通らないほどきつく結ばれた状態で村の低い部分を取り囲んでいる。その根元は地中へと更に5フィートも刺さっており、その壁の下半分は荒いが頑丈な石の基礎で覆われている。小さな棘でいっぱいの壕は、襲撃から壁を守る致命的な茨の茂みを構成している。また、柵に組み込まれているものには更に高く聳える岩の断崖があり、門の両側を含む木製の見張り塔複数の底部を構成している。
門を過ぎると、町は丘の上から40フィート上の吹きさらしの石の台地にある崖に面した急なつづら折りへと上がっていく。これらの崖は町の真なる防衛機構である、何故なら一握りの防衛者たちでさえ切り立った崖を登ろうとする侵略者どもを簡単に狙い撃ちすることができ、市民が大部分の防衛を下側の柵へと集中できるようになるからだ。石造りの見張り塔は町の高い位置にあり、通常の家と店の間にも強固に作られた構造物がある。納屋やそのほかの作業を行う建築物は、壁の外側に置かれ、多くの住民がその建物で日夜過ごしているが、全ての住民は町で自分の区画を維持するか、オークからの攻撃が来た間にのみ使用する壁の中の誰かの家の1区画か部屋を借りるために「包囲網料/siege fee」を払わなければならない。包囲網料は不当な利益を獲得することを防ぐために、防衛評議会によって決められた利率である。
1.メイン・ゲート/Main Gate:トルナウには一つしかゲートがない。包囲された際に出入りする者は町の高い方の崖から吊るされた縄梯子を使うだけである。ゲートは両側で石が積み重なるように造られ、丘の岩が破城槌に対しての補強をしている。岩の上には、十数人の守備兵が弓を放つか相対的に安全な場所から攻撃者に熱湯を放つのに十分な大きさの、木製の見張り塔がある。オークを威嚇し火のついた矢から守るために、塔の側面と屋根は壁を襲って死んだオークの盾や胸当てで装甲されており、様々な一族のシンボルが目立つように飾られている。町の評議会は昼夜問わず多くの目が確実に壁の上にあるようにするため精密な監視日程を設定しており、村民の全ての大人は定期的な時間割で動くことを要求される。
2.アイヴォリー・ホール/Ivory Hall:トルナウの権力の座であるアイヴォリー・ホールはもともとトルナウの最初の包囲の際に倒れた凶暴なオークの覇者たち及び酋長たちの頭蓋骨で花綵状に飾られており、その中空の眼窩はトルナウの存在の足下にある絶え間ない脅威と、住民によるそれを生き延びるための揺るぎない献身の両方への無言の証明となっていた。後の世代の評議員は展示物があまりにも恐ろしく、オークの独自のトロフィーを飾っておく伝統と類似していたがために、骨を捨ててしまった。今日ホールはその華麗な白い壁からその名称を名付けられ、チーフ・ディフェンダーである人の家としても用いられている。ハルグラはこの邸宅をよく利用し、成長した彼女の子供たちの家族をその多くの部屋に住まわせている。残りの無鉄砲な彼女の一族が立ち入り禁止となっているのは会議室である――周囲の田園風景を見渡しながら彼女は戦争の評議会を主宰し、貿易商やヴィジルやフィリン城からの使者、あるいはベルクゼンへの探検の出発地点としてトルナウを利用するパスファインダー協会の者などの訪問客を楽しませたりする。
3.哀悼の焔/Flame of the Fallen:トルナウ人は殺害した敵の骨を集め、残った骨から荒々しいモニュメントを作り上げるというオークの習慣にあまりにも精通している。倒れた死者を敬い、自分たちの敵にその死体を骨だけのまがい物へと変化させる機会を与えないために、トルナウ人は戦いで殺された市民の死体を取り戻すためにどんなことでもする。回収されたものは、町の頂きにある崖に沿って大きな火で燃やし、その光と煙は空に広がる無限の自由へと流れ込む。包囲される間、篝火が昼夜問わず燃え続け、守備隊を鼓舞し、オークに対して挑戦し続ける――が、一部の皮肉屋は、新しい死体がだんだんと増えていくことに市民が気付いて絶望してしまうのを防ぐために火を燃やし続けていると主張している。
4.コモンズ/Commons:トルナウの共同体の中心的な特徴は石畳のある広い円形状の一段盛り上がった舞台を備えたステージである。日によってはコモンズはトルナウの訓練場として用いられ、住民はジャグリン・グラスの下で武道の訓練を行う――町での主な役割にもよるが、一部の熱心な戦士たちはほぼ毎日訓練を受けている。しかし他の能力に秀でている人は少なくとも1か月に1日は訓練を受けることになっている。しかし夜になると、コモンズは寛ぎや祝宴の場へと変わり、町の人々が集まり、若者のためのホープナイフの儀式を執り行い、あるいは他の祝いの名目に夢中になる。子供のための学校の授業は階段状になった座席の列で行われることが多く、舞台は発表や演劇のために使われる。一般にコモンズは全ての住民にとって快適な野外の集会場である。
5.バーターストーン/Barterstones:トルナウは壁の中で店舗を設けているが、一般的な商売のほとんどは町の東側にある幅の広い平らな岩の上で開かれた屋外市場で行われる。元々この市場は共同体の壁の中へ入ることを許されるまでの信頼を得られていなかった外部の人々とオークとの貿易にのみ使われていたが、時間とともに、町の中の急で幅の狭い通りでワゴンや家畜を率いるよりもここで会うのが簡単であると町の農民と牧畜家は気が付き、今ではこの地の貿易の大部分がバーターストーンでも行われ週2回市場が開かれる(そして貿易商が来る頻度も増えている)。
6.疫病の家/Plague House:軍勢防衛線が陥落する前、ここは地元の農業のコミュニティに貢献したアイオメデイの小さな教会であった。ラストウォールの軍が撤退しトルナウが立って戦うと決めた時、アイオメデイの司祭が彼らに加わった――しかし他の住民とは違い、司祭長アーサリス・ベインと2人のアシスタントは要塞の壁の中に退くことを拒否した。アイオメデイの怒りが彼らのために迎え来る襲撃者を襲うと確信していた。
司祭は勇敢に戦ったが、教会は猛攻するオークたちによってすぐさまほとんどが全焼し、その住人3人は全員殺害された。教会は何十年も燃え尽きた残骸として立っており、そして50年前町を襲う疫病で苦しんでいる人々を救う場所として急遽再建された。町の壁の中から疫病を取り除くことは間違いなく多くの人々を救ったが、疫病の家は完成後数夜で謎の火災で、患者と治療者20名とともに燃え尽きてしまった。火災は事故であるか永久に疫病を止めようとした放火犯の犯行であるかは誰も知らないが、誰も2度とこの現場で再建をしようと提案しなかった。
今日、この地――「燃え落ちた教会/Burned Church」と「疫病の家」の両方として知られている地――には日没後に黒焦げの角材の中央部に子供たちが勇敢にも立つことが時折あることを除いて、ひと気がない。しかし、夜にこの教会で光が動き回っているのが最近見かけられるが、最高の追跡者でさえ翌朝にその痕跡の証拠を見つけられない。町全体は新しい目撃の度に突飛な推測で騒めく。
7.聖域/Sanctuary:トルナウの古い教会が失われてから1年後、宣教師たちがアイオメデイの教会から到着し、かの女神を称え、トルナウの人々に仕える為の新しい礼拝堂を作り始めた――今回は賢明にも町の壁の中に建設した。新しい聖域には6人のパラディンとクレリックが住み、町の防衛に協力するだけでなく、大規模な礼拝堂と戦闘後に怪我人が運ばれる可能性のある休憩所にスタッフを派遣する。一部の市民はアイオメデイ信者を不信の目で見てはいる――彼ら全員はまだ正式にラストウォールに忠誠を主張しており、ここでの自分たちを、国境がもう一度拡大されるまで前哨基地との外交関係の維持を手伝っている存在だと見做している――が、特筆すべき理由として彼らは政府の立場に仕えることを拒否しているため、勤勉で大切な住人であるアイオメデイ信徒を本当に締め出す気のある者はいない。
聖域の現在の寮母はヴィジルのSecond Sword Knight of the Sancta Iomedaeの若きシスターであるタイリ・バルベイトス/Tyari Varvatosという若いクレリックである。彼女が何故他の有名なシスターと一緒ではなく、トルナウで精を出して働いているかについて、他のシスターの影で生きるよりはむしろ自分の名前を売ることだろうと多くの人が推測している。彼女の最も忠実な味方は以前フィリン城に駐留していたブラントス・カルデロン/Brantos Calderonという名の逸脱したパラディンであり、この過酷な開拓地に挑む断固たる若いクレリックであるタイリに自身の刃(と噂によれば、心臓)を捧げるために、自身の立場を捨てた人物だ。
聖域に最も長くいる居住者(兼患者)はカツレズラ/Katrezraという名の老いたハーフオークである。空拳族の中で育った彼は、嫉妬深い指導者が苦痛に満ちた未来の幻視を体験させるために硫黄臓卜寺院へと彼を行かせたときに得た、顔と両腕の血の滲む爛れと肺の恐ろしい感冒で苦しんでいる。オークの野蛮性に飽き飽きした彼は自分に聖域を与えるようハルグラを説得し、以来アイオメデイの光の中に再誕を見出し、そして町の防壁の上で何度も忠義を示している。彼は未だ時として幻視を見、多くのものが幻覚や注目を集めたいだけだと切り捨てているが、タイリ/Tyariは重要な啓示を指している可能性を秘めているとして記録している。
8.辻宿/Ramblehouse:独立した町として創立される前は、トルナウには宿の需要は殆どなく、多くの世代の間、町に訪れる稀な訪問客は空いた場所に滞在した。しかし30年弱前にモルスーンから逃げ出してきた一握りのハーフリングの奴隷は新しい人生を始めることを決意し遙々トルナウへと北上した。そのうちの一人チャム・ラーリングファス/Cham Larringfassは自分と友人のための場所だけでなく、宿屋と下宿も建てることを決めた。彼女はその努力の途上で残りの仲間を引き入れ、まもなくして町の下端に、あらゆる形状とあらゆるサイズの部屋を詰め込んだ、無秩序に広がる奇抜な邸宅ができあがった。客はまだ珍しいが、適切に名付けられた辻宿は現在の町のハーフリングの人口のかなりの部分だけでなく、他の種族の多くの下宿人が住んでいる。チャムはまだ宿屋の主人であり、包囲網料でよい生活を送っているので、他のハーフリングや「正しいサイズ」の種族との取引を結ぶことを好む――彼女の気質で唯一面倒なのは、客候補向けに仲介人を演じるところだ。
9.ロングハウス/Longhouse:この町で最も大きな建物であるロングハウスはトルナウの中心的な集会場であり、議会の会議が行われ、天候が悪い日には様々なトレーニングや通常コモンズで催される祝賀会が行われる。宴会や会議のための大きな共有ルームに加え、建物には幾つかの兵舎が内蔵されており、性別を問わず若い未婚の兵士がより民兵としての訓練に集中できるような生活が送れる。ここのチーフはジャグリン・グラスであり、警邏隊のリーダーという単純な選ばれた称号にもかかわらず、町の民兵を訓練し指揮している評議員である。彼の妻――才能あるレンジャーにして戦士でもあった――がオークの強襲隊の手にかかって死んだあと、彼とその息子はロングハウスへと移動し、これ以上の家族が離れ離れになることがないように、町を守り、犠牲者を増やし続けるオークたちに略奪し返し、トルナウの住民全員に兵士の技術を訓練することに尽くしている。個人的な巡回部隊の先導に加えて、彼は見張り塔の交代勤務の組織化と任命を担当しており、ロングハウスの長大な地下にある包囲戦用の携帯食、武器、ポーションの膨大な在庫が利用可能であるとケッセン・プルーム評議員がきちんと確認することを手伝っている。滑車などの道具なしで動かすにはあまりにも重いシージストーンを除き、ロングハウスにある在庫全てにはカギがかけられており、6人の評議員のみが合鍵を持つ。
10.トルナウ会計室/Trunau Countinghouse:ラストウォールが初めてトルナウを放棄した時、バラン・クランキンという名のこの地域のアバダルの収税吏は遊蕩してトルナウの住人と運命を共にようと決心した、彼らを蛮行に直面しながら文明を推進しようと足掻く自身の信仰の模範であると見做したからだ。彼はこの町で他の同志の商人を集め、住民が自分の財産を家に隠してオークの襲撃時に失う可能性を生じさせる代わりにそれを安全に預け、利息を得ることができる銀行「トルナウ会計室」を設立した。
今日では、トルナウ会計室は地元住人や行商人の銀行業と精神的なニーズの両方を兼ね備えた大きく堂々とした建物へと成長した。その所有者である評議員にして銀行員のレッシー・クランキンは、自分の血筋を銀行の創業者まで誇らしげに遡り、十分仕事に取り込んでいるが、一部の人々は訓練場での彼女の武器の技術の確かさだけでなく、町から離れる巡察隊を熱心に監視する彼女のやり方にも気が付いている――特に彼らのリーダーであるジャグリン・グラスは。
11.希望泉/Hopespring:元々は単に「ヒルスプリング/Hillspring」という名であったこの淡水の流れは、この町が建立した理由とその存在の鍵である。石の深い所から湧き上がってくるこの驚異的な流れは、町に純粋の滝を提供し、数マイル離れた小川で地表に現れる前に地下を流れ、もう一度岩の隙間を流れて濾過されて町の貯水池を満たす。
滝が自然なものであるか魔法的なものであるかは誰も口にできない――だがそのことは誰も知らないということを意味しているわけではない。その萎びた特徴が彼の歳経ぬ種族の間でさえ彼の年齢を敬うべきものにしている唖のエルフのドルイドは、静かにこの泉とその貯水池を観察しているが、その静かな瞑想の目的は誰にも推量できない。街の住人から銀蓬髪/Silvermane と呼ばれている彼は、町が建立される前からこの丘に住み、この泉の近くで眠っている。彼は誰とも滅多にコミュニケーションをとらないが、時々何らかの形の手話を介してハルグラと会話しているのが見かけられる。概して町の出来事から距離を取っているにも拘らず極稀な――瀕死の子供を治癒したり、侵略者に稲妻を落としたりといった――魔法の行使によって彼は大半の住人から尊敬を得てはいるが、それは彼の不可解な動機に関する疑問と混じり合ったものだ。最も一般的な噂は彼が凶暴なドルイドたちの寄り合いであった茨評議会/Council of Thornsの唯一の生き残りであるというもので、その議会の会員たちは幽霊火沼/Ghostlight Marshにその名前を与えた並外れた血の儀式でその人生を終えている。
12.インナー・クォーター/Inner Quarter:トルナウには2つの石の内壁があり、台地の頂上まで続いている斜面区画を塞いでいる。これらの内壁は主となる柵が破られた場合に市民が町のより高い場所へ退却できるようにする為に設計されており、坂の両端に門を持つことで防衛側は侵略者を効率よく詰まらせられるようになり、この傾斜全てを鏖殺場に変え、壁や崖の上から矢を放てるようになっている。
13.希望の家/House of Wonders:呪文発動を購入したり、魔法のアイテムを購入したりしようとする多くの訪問客はアグリット・スタギンスダー/Agrit Staginsdarを紹介され驚く。秘密の理由でジャンダーホッフを離れトルナウへとやってきた戦士たちの長い列の唯一の娘である彼女は、兵法学を学んでいたほんの1~2年の期間の後に秘術の魔法へ目を向けると主張して、家族を大いに失望させた。彼女は自ら素晴らしいビジネスを構築したが、彼女の家族はまだ彼女の居場所は町の外のパトロールにあると強く感じている――サラ・モーニングホーク/Sara Morninghawkとの子供のいない結婚がスタギンスダー家の末裔として終わらせたことは喜ばしいことではない。アグリットは自分の人生の選択について激しく防衛的になることがあるが、自分の仕事について話すか町のその他の急成長している秘術の術者を指導しているときに明るくなる。彼女は常に馴染みのない魔法のアイテムを調べたがっており、そして不思議と神秘の感覚に訴える者はだれでも無償で魔法のアイテムを特定することをアグリットに頼むことができる(難易度15の〈交渉〉判定に成功する必要がある)。
14.轟き屋/Clamor:技術的には「モーニングホーク良鉄店」ではあるが、この鍛冶屋は日中に雷が鳴るかの如くハンマーが絶え間なく叩かれていることから「轟き屋」というニックネームで知られている。オーナーであるサラ・モーニングホークは町についた時点ですでに妊娠していたショアンティの女性の娘で、過去について話すことに興味がない。サラは自らの混血の血統についてほとんど気にしていないが、その血が自身に「鍛冶屋としての仕事をするのにふさわしい肩」を与えていることに留意している点は除く。
モーニングホークは取引の様々な局面に特化したような数人の見習いを含む町の金属加工の全てを監督している。彼女は母の斧を置いてどこにも行かず、常に背中に結んでいる。サラは自分とアグリットとの結婚について一部の人間が眉をひそめているのをかなり気にかけているが、屈強な上腕二頭筋を見せつけながら明るく反応し、ドワーフ以外の誰が自分を扱えるのかという質問で返す。
15.鏖殺場/The Killin' Ground:町の2つの内門の間にある上り坂に位置することからその名がつけられたこの関所は、レイブス・クレアンストンが自身の愛する密造酒の製造の資金を調達する為の道として始まった。タイリと町の一部の道徳的な住人の非難の声にもかかわらず、レイブスは活発的にビジネスをしている――彼の取引を管理している唯一の法律は、誰かが彼の製品を呑みながら巡回や当直をしていた場合にはレイブス自身もその罰を共有しなければならないというものである。その結果レイブスは誰よりもシフトのスケジュールを知っている。彼のほぼ常時の酩酊状態にもかかわらず、彼は次の当番の4時間以内(飲むのをやめられなくなる者に対しては、6時間もしくは8時間にさえなることもある)に彼の関所内で飲むことを許可しない。
鏖殺場自体は足下から始まる壁を有し、屋根が完全に粗布でできている奇妙な建築物である。地方の激しい嵐に巻き込まれるとき、レイブスは粗布を引いて、雨とこの丘の斜面を利用してこの関所で常時行われている宴会の汚れを洗い流す――そして丘の下の住人を大きく悩ませる。
16.あの店/That 'n' Such:正式な名前――ミーソン新品回収品店/Meeson's Goods & Salvage――ではなくニックネームで知られているもう一つの店、「あの店」はトルナウにある店の中で雑貨屋に最も近い。所有者であるジェス“クレイジー・ジェス”ミーソンはほとんどの事柄に敏感なビジネスマンであるが、ラストウォールの国境が後退する前の日から残留品回収に対する彼女の情熱は遠慮がなくなり、彼女の店は町の人々にとって有用なありふれた商品と、パトロールと冒険者から購入した「宝物」で散らかっている。彼女の夫Gorkis Meesonは町でただ一人の在住の薬剤師として自身の趣味に同じように憑りつかれている。店の後ろにある彼の作業場で、病気のために町の信仰系の治療者を探すのがあまりに恥ずかしいか気難しい人のために、彼は魔法とありふれたものでポーションと薬を作っている。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスの始まりの地ベルクゼンの領土には長い歴史があり、オークの群れはラストウォールの騎士を南方へと幾度となく押しやり、人間に彼らの国の国境を引き直すことを何度も強要している。残念なことに複数の退却により、複数の製品上で矛盾した日付が生じた。
特にPathfinder Campaign Setting:Belkzen, Hold of the Orc Hordesには、軍勢防衛線の陥落について誤った日付が記されている。軍勢防衛線の陥落の正確な日付は、印刷版に記載されている4524ARではなく4517ARである。PDF版には正しい日付を入れるためにアップデートを行い、 ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスではアップデートを行った日付を使用している。
アップデート版Pathfinder Campaign Setting:Belkzen, Hold of the Orc HordesのPDFに書かれている日付はPathfinder Adventure Path#11の“The Hold of Belkzen”の記事にある元の日付より優先される。
ジャイアントスレイヤー・アドヴェンチャー・パスは君のキャラクターをマインドスピン山脈の奥深くへと誘う。山間部を移動するとき、遭遇するかもしれない危険な状況に注意せよ。君の技能を磨き、正しい装備を持ち込み、目を見開いて、以下の環境のルールを考慮せよ――迅速かつ簡便化のためのリファレンスをここに転記するが、大元はPathfinder RPG Core Rulebookにある。
丘はどんな地形にあってもおかしくないが、丘陵群が景色の主要な要素になっている土地もある。このような地形としての丘陵には、大別して2種がある。なだらかな丘陵と起伏の多い丘陵である。丘陵地形はしばしば、移動困難な地形(山岳など)と平坦な地形(平地など)の間に中間地帯として存在する。
ゆるやかな斜面:ゆるやかな斜面の勾配は、移動に影響を与えるほどではない。それでも、斜面の上のほうにいるものは、下の敵への近接攻撃に+1のボーナスを得る。
急な斜面:急な斜面を登る(隣の、より高度の高いマス目に移動する)キャラクターは“急な斜面”のマス目に入る場合、1マスあたり2マス分の移動がかかる。上から下へ(隣の、より高度の低いマス目へ)疾走または突撃を行うキャラクターは、その疾走や突撃の中で最初に“急な斜面”のマス目に入った時点で、難易度10の〈軽業〉判定を行わねばならない。騎乗したキャラクターは〈軽業〉ではなく難易度10の〈騎乗〉判定を行う。これらの判定に失敗したものはつまづき、1d2×5フィート先で移動を終えねばならなくなる。5以上の差で失敗したものはそのマス目で転倒して伏せ状態になり、そこで移動を終える。急な斜面では〈軽業〉の難易度は+2される。
崖:典型的な崖はよじ登るのに難易度15の〈登攀〉判定が必要で、高さは1d4×10フィート。ただし自作のマップに必要なら、もっと高い崖を出しても差し支えない。崖は完全に垂直なものではなく、高さ30フィート未満なら一辺5フィートの正方形を占め、高さ30フィート以上なら一辺10フィートの正方形を占める。
軽度の下生え:丘陵にはヤマヨモギその他の小ぶりな灌木が生えているが、あたりじゅう下生えだらけということはない。軽度の下生えは視認困難を提供し、〈軽業〉と〈隠密〉の判定難易度を+2する。
丘陵のその他の地形の構成要素:丘陵に木が生えているのは珍しくない。谷間には水の流れる小川(幅5から10フィート、深さ5フィート以下)や水の涸れた川床(幅5~10フィートの塹壕として扱う)がよくある。水は常に上から下へ流れることに注意。
丘陵での隠密行動と探知:なだらかな丘陵では、近くに他者のいるのを探知するために〈知覚〉判定を行える最大距離は2d10×10フィート、起伏の多い丘陵では2d6×10フィートである。丘陵で〈隠密〉技能を使うのは、手近に下生えがないかぎり困難である。丘のてっぺんや尾根は、背後にいる者に遮蔽を提供してくれる。
地形としての山岳には3種がある。高原、起伏の多い山岳、険しい山岳である。キャラクターが山岳地帯を上へ上へと登っていくと、これら3種類に順番に出くわすことになる。まず高原、次に起伏の多い山岳、最後に山頂近くの険しい山岳。
山岳には岩壁という重要な地形の構成要素が存在する。これはマス目を占めるのではなく、マス目とマス目の間の境界線上に記される。
ゆるやかな斜面、急な斜面:これについては『地形:丘陵』を参照。
崖:丘陵の崖と同様に機能するが、ただ山岳の典型的な崖は高さ2d6×10フィート。高さ80フィートよりも高い崖は、水平方向にして20フィートを占める。
裂け目:裂け目は、普通の地学的プロセスによって形成されたものであり、ダンジョンにおける落とし穴と同様の機能を有する。裂け目は隠されているわけではないので、うっかり裂け目に落ち込んでしまうなどということはない(突き飛ばしを受ければ話は別だが)。典型的な裂け目は深さ2d4×10フィート、長さ20フィート以上、幅は5~20フィート。裂け目を登って出るには難易度15の〈登攀〉判定を要する。“険しい山岳”では、典型的な裂け目の深さは2d8×10フィートになる。
ガレ場:ガレ場には小さなぐらぐらする石くれが一面に散らばっている。移動速度に影響はないが、斜面にこんなものがあると、とんだことになりかねない。ゆるやかな斜面がガレ場になっていると、〈軽業〉判定の難易度が+2され、急な斜面にあると+5される。また、なんらかの斜面がガレ場になっていると、〈隠密〉の判定難易度が+2される。
重度の瓦礫:地面が大小の瓦礫に覆われている。“重度の瓦礫”に覆われたマス目に入るには、1マスにつき2マス分の手間がかかる。重度の瓦礫の上では〈軽業〉の難易度は+5、〈隠密〉の難易度は+2される。
岩壁:岩壁は石の垂直な平面であり、これを登るには難易度25の〈登攀〉判定が必要になる。典型的な岩壁の高さは“起伏の多い山岳”では2d4×10フィート、“険しい山岳”では2d8×10フィート。岩壁はマス目の中ではなく、マス目とマス目の間に描かれる。
洞窟の入り口:洞窟の入り口は崖のマス目、急な斜面のマス目、岩壁の隣などにあり、典型的なもので幅5~20フィート、高さ5フィート。その奥には単なる1個の岩室から、複雑極まりない大迷宮まで、あらゆるものが存在し得る。モンスターの巣になっている洞窟には、典型的なもので1d3個の部屋があり、それぞれ差し渡し1d4×10フィート。
山岳のその他の地形の構成要素:高原は森林限界線よりも標高が高いところから始まるのが普通である。このため、山岳では木などの森林でよく見られる地形の構成要素は稀になっている。水の流れる小川(幅5~10フィート、深さ5フィート以下)や水の涸れた川床(幅5~10フィートの塹壕として扱う)はよくある。標高が特に高い場所は、周りのもっと低い場所よりも概して気温が低く、氷に覆われていることがある(『地形:砂漠』を参照)。
山岳での隠密行動と探知:山岳では一般に、近くに他者のいるのを探知するために〈知覚〉判定を行える最大距離は4d10×10フィートである。むろん一部の頂や尾根に立てば、もっと遠くまで見渡せ、入り組んだ谷や渓谷では視認可能な距離がもっと短くなる。視線をさえぎる植生が少ないので、マップがどうなっているかを細かに見れば、それだけで遭遇がどの距離で始まるかを判断するヒントが得られるだろう。丘陵と同様、山岳でも山頂や尾根は背後のものに遮蔽を提供してくれる。
山岳では遠くの音を聞き取るのが容易い。音による〈知覚〉判定の難易度は、聞く者と音源の間が(10フィートではなく)20フィート離れているごとに+1される。
標高の高い場所を旅するのは、慣れていないクリーチャーにはひどく疲れる──それどころか、時には致命的である。寒さははなはだしく、空気中の酸素不足はもっとも頑健な戦士をもへたばらせてしまう。
高地に順応したキャラクター:高地に慣れたキャラクターは、山岳では低地民よりもうまくやっていける。“出現環境”の項に山岳が入っているキャラクターは山岳の原住者であり高地に慣れている者として扱われる。また、高地で1ヶ月以上暮らしたキャラクターは高地に慣れる。2ヶ月以上山岳から離れていたキャラクターは、再び山岳に戻る際には、もう一度順応をやり直さなければならない。アンデッド、人造、その他呼吸をしないクリーチャーは高度の影響を受けない。
高度帯:一般的に言って、山岳には3つの高度帯がありうる。低い峠、低い頂/高い峠、高い頂である。
低い峠(高度5,000フィート未満):低い山での旅の多くは、低い峠を進むことになる。この高度帯の多くは高原と森林でできている。旅人たちは進むのが難しいと感じるかもしれない(これは山岳を移動する際の修正に反映されている)。ただし高度自体の影響はない。
低い頂/高い峠(高度5,000フィート~15,000フィート):低い山の頂近くの斜面を登る場合や、高い山を普通に旅するにあたってのほとんどの場合は、この高度を通ることになる。高地に順応していないクリーチャーはみな、この高度の薄い空気を呼吸するだけで一苦労である。こうしたキャラクターは、1時間ごとに1回頑健セーヴ(難易度15、加えて2回目以降1回ごとに+1)を行い、失敗すると疲労状態になる。この疲労は、キャラクターがもっと空気の濃い場所に降りた時点で終わる。高地に順応しているキャラクターは、この頑健セーヴを行う必要がない。
高い頂(高度15,000フィート以上):もっとも高い山には高度20,000フィート(約6,000メートル)を越えるものもある。この高度ではキャラクターは高い高度による疲労(前項参照)の影響を受け、加えて高山病の影響を受ける。キャラクターが高地に順応していようといまいと関係ない。いわゆる高山病というのは、“長い間体に酸素が十分回っていないことをあらわすもの”であり、精神的能力値と肉体的能力値の両方に影響を与える。キャラクターは高度15,000フィート以上の場所で6時間を過ごすごとに1回、頑健セーヴ(難易度15、加えて2回目以降1回ごとに+1)を行い、失敗すると全ての能力値に1ポイントの能力値ダメージを受ける。高地に順応しているキャラクターは、高い高度による疲労や高山病に抵抗する際のセーヴィング・スローに+4の技量ボーナスを得る。とはいえ、どんなベテランの山男も、この高度にいつまでもとどまっているわけにはいくまい。