ヴァリシア は、アヴィスタン亜大陸の西岸に位置する辺境の地である。
かつてこの地にアズラントからシン Xin という強力なウィザードが追放されてきた。彼はここで部族生活を送っていたヴァリシア人たちに文明を伝え、サーシロン帝国(Thassilon/THAHS ih lon)を築いた。彼は高弟である7人のルーンロードに帝国を支配させたが、ルーンロードたちは主導権を争いあって堕落し、帝国は退廃への道を辿り、最終的に-5293AR、スターストーン落下 Earthfall の際に滅びてしまった。
それから何千年もの間、荒野と化したこの地域に住むのは、ショアンティ Shoanti と知られるバーバリアンの部族と、帝国の生き残りである放浪生活を送るヴァリシア人だけだった。
4405AR、シェリアックスによる入植が始まり、現地人と衝突しながら勢力を広げている。
コルヴォーサ(Korvosa):シェリアックスによって建設された最初の都市。商人たちのこの地域への入り口。シェリアックスの伝統を強く残し、ヴァリシアの文化の中心を自認するが、同時に退廃的で社会的な格差が激しい。
マグニマール(Magnimar):国際色豊かなこの地域第2の都市。自由な商業活動を認めることよって急速に発展している。ヴァリシアの現地人に対してもコルヴォーサよりは寛容。
リドルポート(Riddleport):北部の商人、海賊、山賊の集まる港湾都市。サーシロン時代の石製の巨大な円形の門、Cyphergate があり、それを研究するため多くの学者や賢者が集まっている。
定住民の町や村のほとんどは、この3都市のいずれを保護者としている。
スクザーニ Sczarni はSczarni はヴァリシア人の山賊、密輸商、盗賊からなるゆるやかな組織である。スクザーニとつながりを持つのは少数のヴァリシア人だけだが、その活動はヴァリシア人は油断のならない盗賊であるという偏見の大きな原因となっている。構成員は固い絆を持つファミリーに所属し、ファミリー同士はほとんど共通の技能や目的を持たず、窃盗、詐欺、スリなど比較的平和的な犯罪に従事している。しかし事が失敗した後に暴力を用いることはよくある。
北西から南東に向かって走る、古代人によって一面に彫刻のなされた巨大な岩崖、ストーヴァル隆起 the Storval Rise によって、2つに分けられている。
ヴァリシア第4の都市ケル・マーガ Kaer Maga は the Storval Rise を越える交易路上の遺跡に立てられた都市である。内海地域中から亡命者やお尋ね者が集まる非常に治安の悪い都市で、モンスターと主要種族が入り混じって暮らしており、異邦人都市という異名を持つ。[2]
北東部は岩がちな丘陵地帯や不毛の荒野である。ストーヴァル隆起のすぐ北東のストーヴァル高原 the Storval Plateau や火山性の有毒ガスや野火に悩まされる荒野シンダーランド Cinderlands には、部族生活を送るショアンティが7つの氏族に分かれて生活している。サーシロン帝国の戦士階級の子孫である彼らは、他の地域から地理的に隔離されているため、独自の伝統と言語(ショアンティ語)を持つに至っている。ヴァリシア語、ハリト語、古代サーシロン語を理解できる者なら何とか彼らと意思疎通することができる。近年は文明を受け入れて町での生活を選ぶ者も一部存在する。
北東部のほとんどは未だに荒野であり、多くのゴブリン類、オーガ、トロル、そしてサーシロン帝国の奴隷の子孫であるジャイアントのような、野蛮な種族が勢力を張っている。シンダーランドにはオークの支配する都市 Urglin が存在する。
最も北東にあるベルクゼンの領土との境界、恐らく内海地域の最高峰である the Kodar Mountains には、その高度と気候に適応した巨人、イエティ、ルフ、竜、ウェンディゴのようなクリーチャーが住み、そのもっとも奥深くには伝説の古代都市 Xin-Shalast が隠されているという。その麓には Mobhad Leigh(ショアンティの言葉で「地獄への階段」)と呼ばれる、ダークランドへの入り口がある。明らかに人工的に作られた円形の縦穴で、深さ数百フィートまで壁に螺旋階段がついているが、そこから下は崩れ落ちており、ロープを使うか飛ぶかしない限り降りられない。およそ6,300フィートまで降りるとセカミナのサーペントフォークの失われた都市 Sverenagati の近くに着くが、帰ってきた者はおらず、占術での調査も必ず失敗(時には魔力の逆流によって死をもたらす)ため、詳細は不明。[4]
南西部は平原、丘陵、森林からなる比較的穏やかな地域であり、ヴァリシアの文明圏である。
その北部にはエルフの住む the Mierani forest がある。よそ者が入ることはほとんど許されない。奥地には廃都 Celwynvian がある。エルフたちはこの都市を取り戻そうと何度も試みているが、中に潜む何者か(一説によるとドラウ)のために失敗に終わっている。この近隣の Calphiak Mountains にある“臆病者の洞窟” the Caves of the Craven から、スターストーン落下時にゴラリオンに残留したエルフたちが地下へと逃れた。現在はその洞窟の表層には無数のゴブリン部族が住み、そのさらに下はトログロダイトの大居住地 Kuvhoshik である。[4]
ヴァリシア湾南部の Lost Coast には the Old Light と呼ばれる古代サーシロン時代の塔の遺跡があり、その周りにはこの40年間発展を続けている、ヴァリシア第6の都市サンドポイントがある。急速な発展のひずみで犯罪が増加し、また周囲のゴブリン部族に悩まされているが、その前途は明るい。
ヴァリシア湾にほど近いカール森 Churlwood の Wolf's Ear は、比較的平和的なライカンスロープ(主にワーウルフ)の居住地である。かつてマグニマールとエラスティル教会が行ったライカンスロープ撲滅作戦の結果、その本性を隠して生活している。通常は密かにマグニマールの権威を傷つけるだけで満足しているが、彼らの縄張りと自治が侵害された場合は、深刻な脅威となるだろう。[5]
ヴァリシア湾を囲むようにある島々の1つ、リヴァーレイク島の最高峰ホロウ山 Hollow Mountain には、サーシロンの遺跡である女性の顔が彫られている。顔の中心にある裂け目からは洞窟網が続いており、その地下には憤怒のルーンロードの都市シン・バクラカン Xin-Bakrakhan があるといわれている。
南東端のマインドスピン山脈 the Mindspin Mountains の麓には、ドワーフ最古の都市 Sky Citadel の1つである鉱山町ジャンダーホフ Jandarhoff があり、北方のバーバリアンとコルヴォーサとの交易の中継点として繁栄している。
最も南はゴラリオン最大の湿地の1つ、the Mushfens がある。未だ入植が成功しておらず、完全な自然が保たれている。the Sunken Queen と呼ばれる女性の彫刻がなされたサーシロン時代の巨大なピラミッドがあることが知られているが、現在はボガードに占拠されている。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 144. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] James L. Sutter(2010). City of Strangers, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-248-7
[3] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 194. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
[4]:James Jacobs and Greg A. Vaughan.(2008). Into the Darklands, p.4, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-140-4
[5] James Jacobs et al.(2010). Classic Horrors Revisited, p. 61. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-202-9
カテゴリー:内海地域