ネックスは、ガルーンド大陸東岸に位置する、大魔導師ネックスによって建てられた魔法の国である。
数千年前、多くの英雄たちが闊歩した“運命の時代” Age of Destiny、この地にはいくつかの都市国家があるだけだった。そのうちの1つ Quantium に生まれたウィザードであるネックスは近隣の諸都市を支配しネックスを建国した。
-289 AR、領土拡張を続けるネックスは南方の死霊術士の国ゲブと衝突する。戦争は何世紀にもわたって続き、両国周辺は大いに荒廃し、難民の国であるアルケンスターが生まれた。
戦争のさなか、大魔導師ネックスは次元界のエネルギーの流動点に擬似次元界"ネックスの焦点" the Crux of Nex を築くことで、不死性を得る。
576AR、戦争のさなかに大魔導師ネックスは次元界の彼方へ去る。ゲブの攻撃は首都クオンティウムを蹂躙したが、残された者たちは何とかそれを撃退し、以後両国の間で休戦が結ばれる。
大魔導師ネックスが去って以来、この国は多くの魔術者の派閥が乱立する混沌と化したが、ゲブという共通の脅威の前に団結し、均衡を取った。それらの代表者によって構成された“三者と九者の評議会” Council of Three and Nine が現在の統治者である。上位の3名のうち2名の一致と、下位の9名の多数決により決議が下される。内部対立に明け暮れており、下位の者は頻繁に入れ替わるが、上位の者の地位は磐石で、その統治は安定している。上位者の1人がアークロードの長アグレルス・キスク Agrellus Kisk である。アークロードは大魔導師の個人的な奉公人の子孫であり、彼の遺産の幾分かを受け継いでいる。下位の者の中で比較的安定した地位を保っているのはエカヌスとオイノピオンの代表であり、ネックス第2の都市の地位を争っている。
クオンティウムQuantium:エレミオン河 River Elemion の河口に位置するネックスの首都。何世紀もの間ゴラリオン中から魔術師や商人を引き寄せてきた。高名な秘術大学があり、他所ではモンスターとみなされるような者が一市民として暮らしている。壮麗なる宮殿ベンデシャー Bendeshar があり、三者と九者の評議会が議論を戦わせ、地下のダンジョンにはネックスの避難所への入り口がある。数千の探検家や盗賊がそこに侵入したが、帰還した者はいない。東のヴァルクス島との間にある海域ミアスメア Miasmere にはさまざまな汚染物質が堆積しており、時として都市を悪臭で包み、防護されていない船を溶かしてしまう。
エカヌスEcanus:ゲブとの国境近く、ウストラディ河 Ustradi River のほとりにある要塞都市。戦闘魔術師と魔獣にまたがった機動部隊による軍隊が警備する。ネックス自身がつくった建造物サイズのアーティファクト、フレッシュフォージ Fleshforge があり、通常の家庭用ゴーレムから最強の竜に匹敵する巨大な戦闘獣までさまざまな奇怪なクリーチャーが生み出され、使役されたり、逃げ出して周辺諸国の生態系を混乱させたりしているが、近年は徐々に作動の信頼性が失われつつある。
オイノピオンOenopion:内陸部に存在する錬金術都市。経済上重要なエリクサーとポーションの産地であり、ゴーレム、ホムンクルス、粘体の製造技術で知られる。町の中心部の湖は集合知性を持つ粘体の群体で満たされており、失敗作のアイテムや国家の敵を溶かしてしまう。
ヴァルクス島Valkus Isle:クオンティウムの対岸にある島。かつて大魔導師の実験の失敗により危険な次元の歪みが発生し、それを封じ込めるため入ることはできるが出ることはできないバリアーで覆われた。現在は犯罪者とモンスターと危険な廃棄物の捨て場。
偽りの泉Well of Lies:ネックスの内陸部の荒野の奥深くには太古にサイクロプスが築いたダンジョンが存在し、その最深部には神託を与える泉があるというが、大魔導師自らによって封印されている。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 108. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 130. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
カテゴリー:内海地域