オシーリオンは、内海南岸の、ガルーンド大陸最北東部に位置するファラオの君臨する砂漠の国である。[1]
-3470AR頃、“運命の時代”Age of Destiny が始まった時、神王ファラオが支配する古代オシーリオン第一王朝が建てられる。スターストーン落下 Earthfall 後の野蛮化した世界における最初の文明の灯火となった。
-3047、アバドンの神格アーリマンと契約した〈忘れられた疫病〉のファラオが、その後継者である〈歌〉のファラオに打ち倒される。シマン・セク建設。
-3000AR頃から、古代オシーリオンは絶頂期を迎え、現在のスーヴィア、ラハドゥーム、カタペシュに当たる地を版図に加え、ゲブを植民地とすることになる。
-1498AR、四大神王登極(Four Pharaohs of Ascension)。オシーリオンを分割支配していた〈輝き〉〈数〉〈群青〉〈魔〉の4人の王が連合し、オシーリオン再統一。第二王朝期開始。
-1452AR、四大神王軍、テクリタニン同盟を破り、スーヴィアを併合。
-1432AR、四大神王自滅。古代オシーリオンは衰退を始める。
1532AR、カディーラの工作による奴隷の一斉蜂起によってファラオ、メネデス26世 Menedes XXVI の支配は打倒され、以後この地はカディーラに属する州 Satrap となる。2253ARにはサーレンレイの信者たちによってオシーリオンは独立するが、支配者はケレッシュ人のスルタンであった。
しかし、数千年にわたる外国支配によってもオシーリオン人の誇りは崩せなかった。
4609AR、エイローデンの死による混乱の中、古代第一王朝のファラオの血を引く強力なアーバダーのクレリック、〈未来をもたらす者〉the Forthbringer ケメト1世 Khemet I が現れ、砂漠のエレメンタルを召集する力を示し、熱狂した民衆に担がれ、外国の支配者を追い落として即位。再びオシーリオン人の支配するオシーリオンを築く。
40年後、父の死後、跡を継いだクロコダイル王ケメト2世は、父の魔法の才は受け継いでいたが統治への熱意はなく、ほとんどの時間をハーレムで過ごしていた。
30年後、ケメト2世は詳細がほとんど発表されない召喚中の事故で命を失い、新たなる〈未来をもたらす者〉ケメト3世が即位する。
4707AR、ケメト3世は外貨と古代オシーリオンの遺産を手に入れる手段としてオシーリオンの砂漠を外国の冒険者たちに開放。
現在のファラオは、紅玉公ケメト3世 the Ruby Prince, Khemet III である。まだ若年ではあるが、強力な召喚術師(クレリック15)であり、臣下に広く恐れられている。宮廷の助言を聞くことはほとんどなく、かわりに彼の腹心である不可視のエルダー・ファイアー・エレメンタルである Janhelia に相談することを好む。古代の大オシーリオンの栄光を復活させることを夢見ており、ゆっくりと軍備を拡大し、ジンニーや来訪者を交渉で味方につけている。
日常の業務は The Council of Sun and Sky が執り行っている。現在は腐敗した官僚と理想主義的な改革派との政争の場となっている。議長 First Speaker は解放奴隷の Dahnakrist Phi である。
ファラオとその家族の身は the Risen Guard が守っている。最低1度は死して、ファラオ自らの手で復活した彼らは忠実にファラオに仕える。彼らはまた首都 Sothis の治安維持にもあたっている。隊長は Khopeshman of Sothis と呼ばれる名を捨てた男である。ファラオの子である男女の双子の Ojan と Jasilia がこっそりと砂漠に探検に出かけるのを探して連れ戻すのも重要な任務である。the Dune Runners の異名をとる双子はホライズン・ウォーカーのレベルを持っている。[3]
オシーリオンには多くの神の神殿が存在し、聖職者は大いに尊敬される。ファラオ自身がアーバダーのクレリックでもある。オシーリオン古来の神も崇められてはいるが、外来の神々ほど一般的ではない。河川の神として2柱の蛇神がいる。恵み深きワジェト Wadjet はパピルスの茂る湿地に住まう知恵の授け手であり、恐るべきアペプ Apep は川の深みに潜む危険であり、洪水で全てを押し流す。農民は甲虫神ケプリ Khepri を信仰する。[2]
神名 |
権能 |
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ワジェト |
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アペプ |
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ケプリ |
農民、重労働、耐久力 |
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オシーリオンは砂漠の国だが、名高いスフィンクス河 River Sphinx のもたらす豊富な水資源がある。クルーク河 the Crook とアスプ河 the Asp が合流してできるこの大河は、毎年起きる洪水とヘトコシュ hetkoshu(アドヴァンスト・ダイア・クロコダイル)などの脅威ももたらすが、この地域の文明を支える礎である。[1]
流域の外は果てしなく続く砂丘であり、しばしば砂嵐によってその形を全く変えてしまう。
ソシス/Sothis:スフィンクス河の河口に位置する、ロヴァググの落とし子である巨大なスカラベ Ulunat の甲羅 the Black Dome の周りにできた都市。第一王朝期にもオシーリオンの都だった。かつてガルーンド大陸北部を荒らしたこの巨虫は、未だ定命の存在であったネサスによって討たれたという。 the Black Dome の中にはファラオの宮殿など都市の中枢部分がある。
アン/An:クルーク河とアスプ河の合流点にある三角都市 City of Triangles 。-107AR、当時のファラオ Hirkoshek I が自分の墓を立てる労働者の住居として建てた都市。北のナ・ケン山 Mount Na-Kenと南に立ち並ぶいくつかのピラミッドが三角形の影を落とす。ピラミッドの中にはロヴァググを信奉していた悪名高い Kamaria the Brazen の物も存在し、そのカルトは今もアンに残っておりピラミッドを探検しようとする愚かな外国人を餌食にしている。
テプ/Tephu:葦の民の街 City of the Reed People と呼ばれる、クルークとアスプの合流点にある3都市の1。その名のごとくパピルスの生産地であり、それを使う学者や魔術師のアカデミーが存在する。歴史や魔術の研究の記録を多数保持しているが、外部の者には容易には見せようとしない。
ワチ/Wati:半分の街 the Half-City と呼ばれるクルークとアスプの合流点の3都市の1。2499ARの疫病とラマーシュトゥのカルトの跳梁により、人口の半分を失い、都市の半分が廃墟と化した。ファラズマ教会はその半分を残りの半分の合わせ鏡である死者の街として封印し、再び町に生命を取り戻した。
イペク/Ipeq:クルーク河の畔にある南オシーリオン最大の都市。伝説によればかつて〈剣〉のファラオが魔法によって1日で建設したとされる。ソシスに次ぐ軍事拠点であり、南からの侵攻に備え、交易路を防備するとともに、首都に急変あるときはスコーピオン・ボート・トークン(スワン・ボートと同じ)でスフィンクス河を下って急行する。
トトラ/Totra:内海に面する港湾を持つソシスに次ぐ都市。“覇王”アンによって建設され、かつてスーヴィアやラハドゥームを征服した奴隷艦隊の拠点となった。ケレッシュ人の支配時代はその経済的な重要性から文化的な抑圧を強く受けており、現在はその富を費やしてオシーリオン風の装飾を復活させ、重税に不満を持ちつつも紅玉公の支配を忠実に受け入れている。
ツメン/Tumen:ソシスの東の砂漠 Underdunes の中にある、第2王朝期の都の遺跡。魔法の水源を持っていたと伝えられるが、それを失うと瞬く間に滅んだ。多くのトレジャーハンターやオシーリオン学者が捜し求めている。
シマン・セク/Shiman-Sekh:〈歌〉のファラオによって西部の黄金のオアシス the Golden Oasis の西端に建設された、西の砂漠に対する防衛のための城塞都市であり、地下には〈忘れられた疫病〉のファラオの遺産を封印するためのダンジョンが埋められている。
エト/Eto:スーヴィアとの交易路上、シマン・セクとソシスの中間点にある都市。ケメト1世の支配下に最初に入った都市であり、現在は中央の砂漠地帯を探検しようとする冒険者で溢れているが、彼らが持ち帰った財宝を狙って人間やノールの山賊もまた集まってきている。
ロヴァググの足跡/Footprints of Rovagug:南西部のバリアーウォール山脈 the Barrier Wall の麓にある砂漠地帯。活火山帯でもあり、オアシスの代わりに温泉が点在し、レッド・ドラゴン Asuulek が根城にしている。近年、火山 Sokar's Boil に古代の建造物が発見され、紅玉公は大いに興味を示しているが、それと時期を同じくして Asuulek は近隣の都市や隊商を襲撃するのをやめ、縄張りに留まるような行動をとっている。
スフィンクス・ヘッド/the Sphinx Head:シマン・セクとスーヴィアとの国境であるジュニラ河 the Junira との間にある、巨大な黒いスフィンクスの頭部。〈空〉のファラオ、メネデス1世の墓とされる。内部に通じるドアがあるが、メネデス1世が契約していた風の元素界の力で内部は真空に保たれ、その中に調査に入って出てきた者はいない。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 116. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] James Jacobs et al.(2009). Osirion, Land of Pharaohs, p. 4. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-144-2
[3] Michael Kortes.(2007). Entombed with the Pharaohs, p. 3. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-052-0
[4] PAIZO掲示板でのJason Nelsons の発言
[5] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 42. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
カテゴリー:内海地域