ラハドゥームは、ガルーンド大陸北部の砂漠地帯、内海南岸の最も西に位置する、神なき国である。
-4120頃、スターストーン落下による塵の雲がようやく去った“苦悩の時代”、最古の国の1つジストカ帝国 the Jistka Imperiumがこの地に築かれる。その後、ジストカ語のアルファベットはタルドール語(共通語)、ヴァリシア語、ウールフェン人たちのスカルド語に取り入れられた。
-2764AR、ジストカ帝国はオシーリオンに併合される。以後ジストカ文化はオシーリオンに同化され、消えていった。
1532AR、オシーリオンがケレッシュ帝国に屈した後、サーレンレイの信仰が東方から勢力を伸ばし、ラハドゥームに根付いていたネサスとノルゴーバー信仰と衝突を始める。
2498AR誓約戦争(Oath war)と呼ばれる宗教戦争は60年間にわたりこの地を荒廃させた。
2555AR、アジール(Azir)の哲学者カリム・オナク Kalim Onaku が民兵たちを指導し、アジールの全ての神殿を打ち倒し、全ての僧侶を追放した。この運動はラハドゥーム全土に広がった
2560AR、誓約戦争は終結し、「いかなる人間も神に恩義を受けてはならない」とする“人間の法”を奉ずる不信仰の国ラハドゥームが誕生した。[2]
ラハドゥームは全ての大きな居住地と遊牧部族の代表からなる長老議会 council of elders によって支配されている。その中から選挙によって代表者である the Keeper of the First Law が選ばれる。任期は5年であり、滅多に再選されることはないため、ラハドゥームの政治に外部から働きかけることを困難にしているが、現在の Keeper であるマルデュオニ Malduoni は2期目であり、諸外国は彼と取引を始めている。
ラハドゥームの住民はほとんどが人間であり、民族はガルーンド人、ムワンギ人(ボヌワット族とマウシ族)である。信仰魔法なしで厳しい環境に生きているため、頻繁に飢饉、疫病、虫害、砂漠化の進行などと戦わなければならず、非常に自己鍛錬的である。ほとんどの市民はよい教育を受けており、哲学と政治を共通の目標とし、家族と伝統を重んじる。自ら以外に頼る者がないため、いかなる苦境にあっても前向きさを保ち、ブラックジョークを好み、自分自身にもお互いにも責任というものを真剣に考える。また科学技術を重視し、アルケンスターから多くの機械設備を輸入している。
カタペシュから麻薬が流入しており、都市部では中毒者が多く見られる(しかし耽溺することは良しとされない)。また奴隷制度は普通に見られる。
アジールAzir:ラハドゥームの首都。アルカディア海に面する港湾都市。別名“無神港”Port Godless。迷信深い他国の水夫たちは神の不興を買うことを恐れ、船から足を下ろさない。芸術と建築学が発達している。
ボトサニBotosani:アイオーメディのカルトが根を張っていると噂される都市。
マナケトManaket:内海に面する港湾都市。名門の魔法学校 the Occularium があり、厳しい環境に立ち向かうための実用的な秘術の使用法を教えている。近年周辺の砂漠化が進んでおり、現在はドワーフの技術者と共に灌漑によって砂漠を緑化する研究に大きな力を注いでいる。近隣に住む Sarithil を始めとしたブラス・ドラゴンはこの計画に大いに興味を持ち、支援や助言を与えている。Sarithil は悪魔の国となったシェリアックスから逃れてきた竜で、ガルーンド北部からカディーラ、アブサロムに及ぶ、他の竜やジニーを含めた広大な人脈のネットワークを持ち、故郷に残って抵抗運動を続けている友人の Tyraxalan というカッパー・ドラゴンに支援を与えている。また Embirax というフェニックスもこの研究に協力していたが「ラハドゥームの全ての者が砂漠の砂を操るという考えを支持している訳ではないことを怖れている」と言い残し、姿を消した。研究者たちは彼が何ものかに捕えられたのではないかと憂慮している。[7]
ハルダン Haldun:かつてはリーゲンとの交易の中心の町だったが、現在は水没せし地の邪教徒やモンスターを押し留めるための砦。
その禁教政策のために外交的に味方と言える国は無いが、交易が盛んであり、エキゾチックな布などの物資や宝石を輸出している。また秘術の伝統から市場では多くの魔法のアイテムが商われている。強壮な遊牧民たちは砂漠と山脈を越えて大ムワンギまで出かけ、かの地の希少な財宝を持ち帰って巨利を得る。
ラハドゥームは内海とアルカディア海の双方に面しており、シェリアックスによって封鎖され、私掠船が出没する内海の西出口エイローデン海峡を避けるための陸上通商路が発達している。エイローデン海峡にかかるゴラリオン世界最大の橋エイローデンのアーチ the Arch of Aroden のたもとの都市 Kharijite はシェリアックス領となっており、信条の違いはさておいて両国の間で活発に交易が行われている。また枷の地の海賊の跳梁がアルカディア海の交通の大きな問題になっている。そのため、商人たちが大規模な the merchant marine fleet を組織し、航路の防衛に当たっている。[3][4]
純粋軍団 the Pure Legion という訓練された戦士の一団が宗教に対して警戒をしている。入国を希望する外国人は彼らによって厳重に検査され、聖印など信仰の徴が見つかると罰金を払わなければならず、追放されることもある。国内で布教活動を行う者は投獄される。しかし信仰の真空地帯に伝道師たちは引き寄せられていき、結果としてこの国にはあらゆる神の神殿が隠されている。
また、さまざまな神に仕える来訪者たちはこの国を中立地帯として使用しており、セレスチャルとフィーンドの暗闘の結果、しばしば説明できない超自然現象が発生する。
国土のほとんどは砂漠に覆われている。
永遠のオアシス Eternal Oasis:西部の砂漠地帯にある数千年間絶えることなく真水を湧き立たせているオアシス。砂漠の中に広大な湿地帯を森林を養い、謎めいた住人によって守られている。
ラスト・テンプルThe Last Temple:the Napsune Mountains の東の麓、あるいはその果ての砂丘にあると噂されるあらゆる神格を祀る寺院。常に移動しており、不信心者からその存在を隠し、それを最も必要とするものの前に現れるという。
ヌアト Nuat:ラハドゥーム西岸50マイルに浮かぶ島。枷の地の海賊たちに対する防衛線として海軍の拠点となっている。また南からの豊富な雨雲により、ラハドゥームの農業生産の中心となっている。極めて平坦で嵐の影響を受けやすく、そのためこの島の住人も不信仰者だが、さまざまな“迷信”を持っている(純粋軍団もこれを大目に見ている)。Thin Man と呼ばれる幽霊のような人影が葦原をうろつき回っているという。
牧者の岩 Shepherd's Rock:the Napsune Mountains の麓にある純粋軍団の司令部がある城砦。司令官は“人間の剣”カーサキム Karsakim。取り締まりに役立てるために、極めて希少なものも含む、押収した数千の宗教書を分析している図書館 the Vault of Lies があるが、部外者に閲覧が許可されたことはない。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 122. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 201. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[3] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 241. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[4] Joshua J. Frost et al.(2009). Cities of Golarion, p. 19. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-200-5
[5] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 185. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
[6]Mike McArtor(2008). Dragon Revisited, p.20. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-165-7
[7] Jonathan H. Keith et al.(2011). Mythical Monsters Revisited, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-384-2
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