枷の地 は、ガルーンド大陸西岸の大ムワンギの一部とその沖合いの島々で構成された、海賊の支配する地である。
かつてはこの地はガルーンド西岸に勢力を持つ古代王国ゴル=ガンの一部だった。彼らの遺跡には人肉食と血の祭儀の様子を描いた壁画が残されている。
4138AR、シェリアックスの植民地であるサルガーヴァが建てられ、本国との間で盛んに交易が行われるようになると、自然とその間にある船が隠れるのに都合のよい小島や入り江が多いこの地に海賊たちが集まるようになった。
4606AR、エイローデンの死亡後、枷の地の北方の海上に永続する暴風雨“アベンデゴーの眼” the Eye of Abendegoが発生し、サルガーヴァとアヴィスタンの間の交通は非常に困難となった。ほとんどの者がこの航路をあきらめ去っていったが、海賊たちはこの海域の暴風雨の研究を重ね、自分たちの隠れ家として利用するようになる。
4674AR、枷の地の海賊たちは団結して1つの大艦隊となり、ハリケーンの王の旗を掲げて近隣のみならずアヴィスタン近くの海域までも荒らしまわるようになる。
シェリアックスやラハドゥームの艦隊による攻撃も跳ね除け、この地は海賊と、麻薬や奴隷などの密輸商人の天国となっている。
主要種族の海賊たちの他に、多くの野蛮な種族がいる。最も多いのは人間だが、ハーフオークやハーフエルフも他の国よりは多く見られる。また、テングも数多く見られ、各都市にはテングの大きな共同体があり、幸運をもたらすという海賊たちの迷信から多くの船に乗り込んでいる。
内陸部の遺跡にはゴブリンや、遺跡を建造した人間の子孫といわれる食人族クル族 kuru が住み、北方の水没せし地の湿地からはリザードフォークが襲撃してくる。
鮫の多い海中には、ロキャーサやサフアグンの村があり、南部の海岸にはウォーターナーガが生息し、西の沖合いにはドラゴンタートルの縄張りがある。
枷の地の支配者はハリケーンの王ケーダック・ボーンフィスト Kerdak Bonefist である。彼の乗船 Filthy Lucre はアルケンスター製の大砲で武装した内海でも数少ない船の1つであり、自らも数百人の悪漢や官憲を射殺した魔法のピストルを持ち歩いている。彼の支配権は最大の港 Port Peril と最強の海賊艦隊を保持していることに由来しており、他の海賊艦隊の提督たちへの支配力は表面的なものに過ぎない。他の提督としては、次期海賊王に最も近いといわれる“クエントの女主人”テッサ・フェアウィンド Tessa Fairwind, Mistress of Quent、巨大イカの相棒を従える謎めいたドルイド船長“暴風の主” the Master of the Gales、 ワーウルフの乗組員を率いるブラッド・ムーン号の船長アヴィマール・ソリナシュ、最小勢力であるシェリアックス人のアロナクス・エンディミオン Arronax Endymion がいる。
他にも一隻だけあるいはごく少数の船からなる艦隊を率いる多くの自由船長がおり、自らの地位を高めるため、アベンデゴーの眼の勢力範囲ぎりぎりをコースとする年に1度の危険な競走 the Free Captain's Regatta に参加する。帰還できない者も多いが、優勝者は参加費(1人500Gp)を総取りし、海賊評議会に席を与えられる。しかしここ数年間は新しい海賊提督は生まれていない。
南方にあるサルガーヴァの防衛を請け負っており、代償として木材や奴隷などの供給を受けている。
ペリル港 Port Peril:大陸側のジェオパーディ湾 Jeopardy Bay にある枷の地最大の港。ハリケーンの王の本拠であるハザード砦 Fort Hazzard が盗品市場や賭博場などが立ち並ぶ街路を支配している。地下の洞窟には長年蓄えられた財宝が隠されていると噂されている。
ドレンチ港 Drenchport:枷の地の最も北にある暴風で洗われたテンペスト岩礁 Tenpest Cay にある港町。安くて美味い海草ビールで有名な酒場“溺れたドワーフ亭” Drowned Dwarf があるが、流血沙汰は極めて多い。
地獄港 Hell Harbor:アロナクス・エンディミオンの支配する Devil's Arches の港。枷の地で唯一のオペラハウスがある。アロナクスは祖国からの追っ手を極めて恐れ、シェリアックス人はこの島では歓迎さず、インプはすぐに殺される。
ネルマ Neruma:枷の地の大陸側にある数少ない居住地の1つ。テルワ川 Terwa_River のほとりにあり、大ムワンギや水没せし地で捕らえた奴隷交易の拠点となっているが、伝統的なリザードフォークの産卵場に建てられており、奪還しようとする彼らの襲撃を繰り返し受けている。
オロ Ollo:枷の地の西海域にある鮫島の港。アヴィマール・ソリナシュ配下のワーウルフがうろつき、沖合いのサフアグンがしばしば襲撃してくる。
クエント Quent:モタク島 Motaku Isle にある、枷の地で最も開放的な町。カリストリアの神殿があり、情報収集が最もやりやすい。
スリップコーヴ Slipcove:バグ島 Bag Island にある、枷の地最大のハーフリング共同体のある港。ここの支配者ジョリス・ラッフルズ f Jolis Raffles は元ガレー船の漕ぎ奴隷であり、シェリアックスの船を襲撃しては同胞を解放して仲間に加える(しかし、仲間に加わることを望まない者はまた売り払ってしまうという噂がある)。
人食い諸島 Cannibal Isles:鮫島の彼方、枷の地の最も西にある、ゴル=ガンの遺跡が数多くある小さな島々。クル族の住処であり、うかつに近づいた海賊は彼らの崇める the Blood Queen への供物として生きながら食べられることになる。
飢えた月の寺院 Temple of the Ravenous Moon:大陸側のテルワ高地にあるクル族の崇めるジグラット。ハリケーンの王は2回探検隊を送り込んだが、生還者はいない。現在パスファインダー協会が探検の準備をしている。
ラプター島 Raptor Island:鮫島の西にある恐竜が多く住む島。海賊船長は造反者をこの島の岸に置き去りにすることを好む。
ずるずる海岸 the Slithering Coast:大陸側南部の海蛇とウォーターナーガが多く住む海岸。海蛇の毒を求めて錬金術師などが向かうことがあるが、ナーガの縄張りに近づく者は攻撃されるため非常に危険。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 132. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 141. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
カテゴリー:内海地域