破滅界アバドン は、外方次元界の中でおそらく最も敵対的な次元界である。この地の多くはうんざりするような冷たい霧に覆われており、日蝕の黄昏が永遠に続いている。下方次元界を貫く記憶を奪うステュクス川の源流がある。
住人であるダイモン Daemon は、デヴィルの圧制とも、デーモンの野蛮な破壊とも違う、死と破滅を司るフィーンドであり、四騎士 Four Horsemen と呼ばれるアークダイモンに率いられる。彼らの考えでは、自分たちは来るべき黙示録の時代のために世界によって選ばれた道具なのだという。
疫病を司る騎士アポリオン Apollyon の領地は惑星数個の表面に匹敵する広さの、疫病のはびこる湿地と水浸しになった森林であり、物質界から戦利品として引きずり込まれた少数の住人が住む都市と城砦が点在している。
アポリオンの居城は the Throne of Flies と呼ばれる謎の巨大な死体を使って作られた巨城で、死んだ神の身体なのではないかと噂されているが、真実は分からない。
ステュクス川の渡し守でもある死を司る騎士カロン Caron は、ローブとつば広帽をまとった背の高い骸骨じみた男の姿で、顔は鈍く光る目と輪郭しか分からない。その領地はステュクス川と水上の浮き城である the Drowning Court だけである。噂によれば、城の中心にある the Whirlpool に、ステュクス川で奪われた記憶が蓄えられているという。
戦を司る騎士ズリエル(Szuriel)は、自称“荒廃の天使”であり、大理石のように白い肌と烏のような黒い羽、薄絹を身にまとい、グレートソードを振るう彫像のような優美な女性の姿をしたアークダイモンである。その漆黒の目からは滝のように血の涙を流し、口には鋸のようにギザギザの歯が生えている。
その領地は死火山と生物の住めない塩で覆われた平原、彼女の軍勢の城砦からなり、その大気は有毒ガスと皮膚や肺を傷つける溶岩ガラスの微粒子で満ちており、1時間もそれに晒されれば自らの血で溺れ死ぬこととなる。その居城は the Cinder Furnace と呼ばれ、灰と白骨に覆われ、まるで雪を冠した山のように見える。
飢饉を司る騎士トレルマリキシアン Trelmarixian はもっとも若い、ジャッカルの頭をしたアークダイモンであり、魂を使った実験に取りつかれている。その領地は成功した融合生物とグロテスクな失敗作で一杯で、どろりとした化学物質の川や湖が点在している。
その居城は the Weeping Tower と呼ばれ、迷宮のような構造をした実験室、成果の保管庫、リンパ液のような液体で満たされた、他の種のダイモンには出入りが困難な小部屋などからなる。
最初のダイモン、孤独の王 the Lord of the Forsaken、オイノダイモン the Oinodaemon、縛られた王 the Bound Prince などの異名を持つ、かつてのアバドンの支配者。ダイモンたちから神のごとく崇められていたが側近である四騎士に裏切られ、殺すことが不可能であったため、アバドンの中心にある尖塔に封印されている。
また、アバドンに居所を定める神格として、ウルガソーアとジーフェスがいる。四騎士の領地からは遠くはなれ、ダイモンとは関わらないようにしている。
[1] Todd Stewart(2009). The Great Beyond, . Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-167-1