奈落界アビス は、有害なる混沌と、強者が弱者を恣に支配するという以外の一切の法に縛られない悪からなる外方次元界の1つである。メールシュトロームの果てにある巨大な裂け目や広大な深淵からなり、そこを降りていくと物質界の惑星を越えるようなサイズを有する階層に到達する。各階層は、裂け目や気まぐれに行き先を変えるポータルで、他の階層や次元界とつながっている。このような階層を丸ごと支配する、唯一無二のデーモンをデーモン・ロードという。彼らは階層その物に対して神と同じような支配力を持ち、地形や天候を自在に変え、その階層の物質からデーモンを作り出すことができる。
かつては悪と混沌の具現である Qlippoth がここの支配者であったが、太古、新たに生まれた Qlippoth と、邪悪な定命の者の魂を混合してみる実験が行われた。実験は大成功で、新たに生まれた種族、デーモンは、1つの魂がアビスにとらわれるごとに何十もの新たな個体を生み出し、瞬く間にアビスの主たる住人となった。Qlippoth は現在でも生き残っているが、デーモンに押されその数は極めて減少している。彼らは外見も精神も非人間的だが、その残酷さと破壊を求めることはデーモンと変わりない。
また、無限の多様性を持つアビスには、リトリーヴァーやベビリスのような、系統を異にするフィーンドも種々存在する。
Basalfeyst:ラマーシュトゥの階層に隣接し、それに依存して存在する亜階層。ゴブリンを創造した4柱のバーゲストの半神が住む。
Diovengia:禁断の知識のデーモン・ロードと、アブラクサス Abraxas の階層。惑星サイズのオウムガイの貝殻に似た洞窟で、各所に塔や城、図書館が存在する。アブラクサスは定命の魔術師の願いと引き換えに、後日に魂か彼らの図書館の蔵書全てを得るが(概ね取引の相手にとって最悪のタイミングで取り上げる)、その内容をデヴィルや定命の者のなめし革に書き写させて所蔵している。
High M'vania:空のデーモン・ロードと、パズスの階層。廃墟の大都市の周りを見上げるような崖が囲んでいる。パズスとその従者は空中に住み、請願者や敵を狩るときにしか降りてこない。
Kurnugia:ラマーシュトゥの居所。物質界の自然に似せた各種の地形にモンスター、特にこの女神にもっとも忠実なノールが溢れている。
The Midnight Isles:闇と色欲のデーモン・ロードと、ノクティキュラ Nocticula が支配する、超自然的な闇に包まれた漂流する島々。サキュバスとインキュバスが貴族階級を構成し、唯一無二の従者を多く抱える。
Nesh:吸血鬼の女王ズーラ Zura の階層。山々と森の中に、アズラント風の朽ちた城と、自分たちが未だ物質界にいると信じ込まされている定命の者が住む村が点在し、夜毎デーモン・ロードととその従者が血の饗宴を行う。
The Rasping Rift:虫害のデーモン・ロードと、デスカリ Deskari の階層。無数の虫や害獣で埋め尽くされた迷宮で、ここを訪れた者はデスカリやその従者の餌食とならなければ、ゆっくりと蟲の群れに変形していく。
[1] Todd Stewart(2009). The Great Beyond, . Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-167-1