ティエン・シア(天・下)は、ゴラリオン世界の東半球北部、内海地域のほぼ反対側に存在する大陸である。カスマロン大陸の東方の海に浮かび、北に世界の冠と接する。内海地域からの最短ルートは世界の冠を横断することである。また、大陸の西にあるカタペシュやアブサロムに匹敵する大港湾都市 Goka を窓口として、西方からの商船を迎え入れている。
大陸自体の広さはアヴィスタンと同程度だが、多くの島々に囲まれており、あわせると2倍ほどになる。
墙天山脈(Qiang Tian(チアーン・ティエン) mountains)はまず東西に走って世界の冠と大陸を隔て、その後大陸の西海岸にそって南へ延びる。北のステップ地帯は半遊牧民であるティエン・ラー族のホンガル汗国があり、中央部の肥沃な平野には1世紀前に滅んだロン・ワ帝国(Lung Wa)の後継である16の国があり、常にお互いに、あるいは南に隣接する Dtang Ma や Xa Hoi と争っている。最南部はナーガジョルなど密林に覆われた地域である。
ホンガル Hongal:大陸の最北にある勇猛と名誉を貴ぶ遊牧部族の国。この地の馬は大陸全土で珍重される。現在の部族を束ねる支配者はキリルタイ汗。
精霊の森 Forest of Spirits:ホンガルとミンカイを繋ぐ森林地帯。最初にカミが創造された地であり、彼らが大陸全土に散った後もその力が強く残っている。ミンカイにとって最重要の交易路である the Spirit Road があり、それの維持のため、カミを鎮めるべく道沿いに無数の神社が建てられている。
ズー・ハー Zi Ha:ホンガル南方にある山岳国家。サンサーランの故地であり、山頂に建てられた都市では彼らが霊的な啓発と学習に励んでいるが、排他的なタイガ・ジャイアントや食人部族が住む峰や、モンスターと野獣しかいない山々もある。
エイローデンの死の際の大異変によりロン・ワ帝国が滅亡し、数千の群小国家が生み出された。1世紀に及ぶ戦乱を経て、現在は残った16の後継諸国 Successor States がにらみ合っている。常に少なくとも二国の間で戦争が起きているが、一般にその規模も酷烈さも小さくなり続けている。
チュウ・イェ Chu Ye:ホンガルの南方、ズー・ハーの東方に位置するかつては大陸伝統の医術で知られていた地。密かにオニが巣食っていたが、ロン・ワ帝国崩壊時の混乱で彼らは表に出てきた。ツネニという名の強力なオニの将軍の幕府が支配し、オニとその配下であるジャイアント以外は武装を禁じられているが、ミズキヒカリという反抗組織が無手の武術を磨いてオニに抵抗している。
カオリーン Kaoling:ホンガル南方、ズー・ハーの西方にある国。北部の丘陵地帯にいるホブゴブリン部族にずっと悩まされていたが、ロン・ワ帝国崩壊によって彼らに占領される。人間の国々を模倣した官僚機構を整備している。
ジニン Jinin:ズー・ハーとカオリーンに半ば挟まれる位置にあるエルフの国。スターフォールの時に地下に逃れたエルフの一部が、ジニンシエルというオラクルの導きでドラウになる前にミスラルの豊富な鉱脈があるこの地に辿りついた。ミンカイのサムライ文化を受け入れ、西方の同胞よりもはるかに名誉と秩序を重んじる。
ワンショウ Wanshou:チュウ・イェの南方、シイダオ湾沿いにある地。かつては肥沃な米作地帯だったが、ロン・ワ帝国崩壊時の天変地異で津波と台風に襲われ、エルダー・クラーケンであるザナゴール Zhanagorr が神王として人間の奴隷を統治する湿地帯と化した。カッパとボガードが支配階級をなす。
クワンライ Kwanlai:ワンショウの南、シイダオ湾に面するテングの国。ロン・ワ帝国の時代には彼らは被差別種族であり、帝国の低開発地域に押し込まれていたが、エイローデンが死亡した時の大異変に乗じて蜂起し、自らの国を建てた。氏族間の諍いは絶えないが、北のクラーケンの脅威により、首都ヒスイカラスのハーフセレスチャル・テング女王の下に統一を保っている。
アマンダール Amandar:ズー・ハーの南方にある内海地域文化の飛び地。エイローデン死亡直前、没落していく祖国を救うため新天地を求めて船出したタルドールの将軍がロン・ワ帝国滅亡により混乱したこの地に辿りつき、周囲の山賊を平定して民を安んじ建国した国。軍の司令官が支配権を握り、タルドール人のみがその座につく事ができる。全ての市民は5年の軍役を義務とし、その訓練を生かして傭兵や護衛となる者が多い。
ショクロ Shokuro:ジニンの南にある旧ロン・ワ帝国の穀倉地帯。西のリーンシェンに征服され、苛斂誅求を受けていたが、悪の道に堕ちた主君を討とうとしてミンカイから追放されたローニンであるトリアカが現地の抵抗運動をまとめ上げ、独立を勝ち取った。
シェンメン Shenmen:ショクロとティエンジーンの間にある、銀と木材の豊富な山岳地帯。ロン・ワ崩壊以降はジョロウグモをはじめとしたモンスターの支配する国となり、人々は毎年数人の若者をジョロウグモへの生贄として差し出さねばならず、そのため旅人や隣国を襲って人攫いを行うようになっている。
ティエンジーン Tianjing:クワンライの南、シェンメンの東にあるアーシマールの国。かつてこの地でクリフォトとセレスチャルの軍勢の戦いがあった。セレスチャルはアビスの軍勢を防ぎ止め、アーシマールの子孫たちを残して故郷に戻り、その後この地は帝国の庇護のもとで芸術と哲学の中心地となった。帝国崩壊後は自分たちを自分で守らなければならなくなり、そのためアビスへのポータルを監視するという古来の義務がおろそかになっている。
バウチェン Bachuan:帝国崩壊後もこの地を支配し続ける腐敗した官僚機構とそれに協力する堕落した宗教者たちに対し、ペイおじいさんと名乗る哲学者の教えの下、貧しい農民、漁民、職人が青天黄日旗を掲げて立ち上がり、平等な人民からなる共和国を築いた。しかし多少独裁的な傾向はあったものの概ね平和的な統治を行っていたペイおじいさんが死去し、その妻であるペイおばあさん Pu Yae Men が権力を掌握すると共和国は変質し、反対派を追放して虎衛兵 Tiger Brigadie と呼ばれる若者たちを使って人民を強権的に支配するようになり、現在は過酷な共産主義革命を近隣の国々、特にファンゴットに輸出しようとして軋轢が生まれている。
ファンゴット Hwanggot:バウチェンの南に位置する、花の王国と呼ばれる豊かで平和的な王国。文化と芸術が発達しており、多くの美術品を生み出している。
ゴカ Goka:大陸の西の入り口である巨大な港町。ティエン・シアで最大かつ最も富裕な都市国家である。地下にはUndermarketと呼ばれる何層も重なった危険な闇市がある。
リーンシェン Lingshen:ロン・ワ帝国の後継諸国中で最も強力な国の一つであり、精強な軍隊を保持している。彼らは敵に1回は降伏の機会を与え、受け入れないものは子供に至るまで殺戮する冷酷さで知られる。また兵士たちは死してもテラコッタ・ソルジャーとして蘇り、再び破壊されるまで戦う。
ポー・リー Po Li:かつてのロン・ワ帝国の都チャーンドー Changdo の所在地であり、後継諸国中最強の国の一つ。その皇帝を神と崇める久遠帝信仰 the Eternal Emperor の中心地。いまでも久遠帝信仰の聖職者であるオラクルたちが支配し、皇帝が再び地上に転生してくる日を待ち望んでいる。久遠帝以外の神の信仰は厳禁されている。
チュエイン Quain:後継諸国中最強の国の一つであり、武術の伝統の中心地。12年に一度この地を訪れるセレスチャル・ドラゴンに、繁栄と引き換えに王の娘の1人の心臓を引き渡すという伝統があるが、前回の来訪時に王位を簒奪したフィーンドがドラゴンを殺そうとしたため、王国は12年間の不運と天災に悩まされることになった。強力で効率的な官僚機構を持ち、そのほとんどは宦官に担われている。
ミンカイ Minkai:最東部にあるサムライとニンジャの住む半島国。
シイダオ Xidao:大陸本土とミンカイの間にある湾。ロキャーサを主とした比較的平和的な水棲種族の都市国家郡があり、アヤ・マル海溝 Aya-Maru に住むサフアグンやメロウ、クラーケンと争っている。
ミナタ Minata:ミンカイ南方の多島海。極めて野蛮なものから洗練されたものまでさまざまな文化と勢力がひしめき合い、かつてこの地を統一することができた者はいない。伝説によればかつてはこの地は大きな陸橋であり、南方のサルサン大陸とミンカイを繋いでいたという。
シャグアーン Shaguang:広大な砂漠地帯でムタビ・チイ Mutabi-qi と呼ばれるティエン・ラ系遊牧民以外住む者もいない。西部の墙天山脈との境界近くの上空に天空精 the Sky Spirits と呼ばれるいずこかから飛来した名状しがたい存在が浮遊しており、不必要に残忍な性格というわけではないがその異質さから現地人に崇められかつ怖れられている。
墙天山脈 Wall of Heaven:大陸の西端を南北に走る長大な山脈地帯。その厳しい自然環境にもかかわらずいくつものモンク僧院が点在する。高地の裂け目の中には異世界へのポータルが隠されていると噂され、レンをはじめとする異界のモンスターがうろついている。
ナーガジョル Nagajor:ナーガによって支配されている河と湖の国。鱗ある皮膚と蛇のような特徴を持つ奇妙な人型生物ナガジが主たる住人。ナーガの動きを模した Ular Tangan という武技を使う毒牙会 the Order of the Poisoned Fang という強力なモンクの集団があり、使節やスパイ、暗殺者としてナーガに仕え、ティエン・シア全域に散らばっている。
サー・ホイ Xa Hoi:人間の姿をとったソヴリン・ドラゴンが王位につくことから竜王国と呼ばれているティエン・シア東南の小国。ティアン・シア本土でロン・ワ帝国に屈しなかった唯一の国。その竜王の系譜は3000年に及ぶ。国民は種族や民族ではなく宗教的類縁関係に基づく無数の氏族にわかれ(同一の氏族に人間とワヤンやナガジが偏見なく混在していたりする)、代々受け継がれた職につく。ティエン・シアのほとんど全ての国と友好関係を保ち、また国民皆兵制度によるよく訓練された軍隊を持ち、その半分が女性であることで知られている。
ダン・マー Dtang Ma:そのジャングルに産するエキゾチックな物産を狙って何度もロン・ワ帝国に狙われ、その脅威を跳ね返してきたが、7年間に及ぶ破壊的な戦争の結果遂に屈したものの、ロン・ワ崩壊によって再び独立を取り戻した。嵐、フェイ、星の魂、大家の4つのソーサラーの血脈が支配しており、10年ごとにその中から選ばれたカムラテン kamraten が最高権力者となる。the Monastery of Shung-Li という僧院があり、He Fa Chu という名で呼ばれているブロンズ・ドラゴンが護衛兼導師を勤めている。彼は1500年前から60回以上の攻撃や強奪を跳ね返し、17人の王の祈りに応え、何千ものモンクを指導し、ティエン・シアで3番目に大きな図書館を作り、揉め事を仲裁している(直近の揉め事は近隣のカミと放浪のキツネとの諍い)。[3]
ヴァラシュマイジャングル Valashmai Jungle:ティエン・シア最南方の広大な熱帯雨林。ゴラリオンで最も危険な自然環境のいつであり、火山性の山脈と広大な湖沼が広がり、ティエン・シアの外ですら伝説として語られるモンスターと秘密を隠している。ジャングルの中には太古の種族の遺跡が点在し、最も謎めいた物はヴァラシャイアンとよばれる身長15フィートの爬虫類種族の遺したものである。グリプリーやキャットフォーク、リザードフォーク、アビスとつながりのある奇妙な混沌属性のジルが現在の主たる住人である。
[1] Erik Mona et al.(2008). Campaign Setting, p. 157. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] James Jacobs et al.(2011). The Inner Sea World Guide, p. 207. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
[3] Mike McArtor(2008). Dragon Revisited, p.26. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-165-7
[4] James Jacobs et al.(2011). Dragon Empires Gazetteer, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-379-8
[5] Tim Hitchcock and Jon Hodgson(2011). Dragon Empires Primer, Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-386-6
カテゴリー:内海地域